私がモンスター発生源?! 〜異世界で考えたさいきょうの魔物育成計画〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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1章 ダンジョンと少女

剣と洞窟とにわとりと

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「誰かいるのかー?」
「ねぇアレン、やっぱり魔物だってば。
 キューブで一気に倒しちゃいましょうよ」
「でもなぁ……万が一襲われて動けない人間だったら」

 男の呼びかける声と、その男に話しかける女の声が聞こえていた。
 話の内容から察するに、ここに連れてきた首謀者ではなさそうだったが、状況が状況だけにおいそれと姿を現すわけにはいかないと考える凍花。

「に……にゃぁぁあ」
 完全に冷静さを欠いている凍花は、あろうことかで猫の声真似をしたのだ。

『なんだ猫か』
『そうね、気のせいだったかしら』

 ……なんて世界線は、存在しなかった。
 女は急に騒ぎ出し、男もカチャカチャと騒がしく音を立てている。

 動物の動画を毎日見ているだけあって、猫の声真似には多少の自信はあったのだ。
 それなのに『焼き尽くした方が』だの『やられる前に』だのと物騒な言葉が飛んでくるのだから凍花もそれはもう焦っていた。

「ちょ、ちょっと本当になんなの一体!!」
 意を決して二人の前に姿を現した凍花。
 仕事で着ていたベージュのジャケットを脱ぐと、それを盾にしながら恐る恐る二人の顔を覗き込んでいた。

「人がいるのかっ?!
 おいっ、パンテラが近くにいるぞ、早く逃げろ!」
 厚い革の腰巻きと鉄のプレートを胸に当てた男が、西洋風の剣を構えてこちらを見ていた。

 とんでもないコスプレだ。
 同人ゲームでも見ないほど雑であるその姿は、まるで薬草を摘みに来ただけの村人A。
 カゴを脇に抱えていて、その中には草を詰めてある。
 女の方はといえば、脛には厚めに布を巻いており寝巻きにしても質素な上下に首には破れた麻布らしきものを巻いている。
 男が村人Aならば、こちらは囚人Aといったところ。
 薄暗くてハッキリはしなかったが、どちらも髪の色が白に近いようで、目や口元も日本人とは違う雰囲気を持っていたのは凍花にとってとても印象的であった。

 そして囚人Aこと、女もまた声をかけてくる。
「お、女の子??
 とりあえず危険だからこっちに来なさい。パンテラがいるのよ!」

 パンテラというものが凍花には何のことかはわからなかったが、二人は敵ではないようだ。
 奥にまだ人がいるのかと尋ねられた凍花だが、状況が全く理解できていないせいで返答もできやしない。
 女が凍花の身体を抱きしめると、男は剣を握ったまま凍花のいた方向へと歩を進める。

 『もう大丈夫だから』と優しく声をかける女に、凍花はパンテラとは何かと聞くことにした。
 毒蛇か蜘蛛か、はたまた地方独自の幽霊みたいなものなのか?
 そうだとしても、凍花にはここへ連れてこられた理由は全くわからないのだったが。

「何って、聞こえなかったの?
 さっき威嚇してる声が聞こえたじゃない。
 階層の浅いダンジョンだからポロくらいしか沸いてこないと思ってたのに」
「ポロ……?威嚇??」

 聞き慣れない言葉に、首を傾げる凍花。
 男も周囲を警戒しながら凍花たちの元へと戻ってくる。
 その手には淡い光を放つ四角い物体があり、剣には何かを切ったような液体が付いている。
 それもまた凍花には見慣れない光景であったのは間違いがない。

 しかし、凍花には考える間も与えてはくれないようで、何かに反応した男は再び剣を構える。
 今いた場所とは反対側の、二人がやってきた方へ警戒を強めたのだ。
「パンテラは見当たらなかったが警戒しててくれ、サラ。
 俺はポロを倒してくる」
「わかったわアレン。……ほら、行くわよ!」

 アレンとサラ。
 来た道を戻る二人をなりきりコスプレイヤーとばかり思い込んでいたが、どうにも様子がおかしい。
 日本人ではなく、知っているキャラの格好ではない。
 だが言葉は通じるし、洞窟も剣もおそらく本物である。

 疑念が湧いて止まらなく、今は大人しく着いていくしかない凍花だったが、すぐ後に見た光景によって一つの答えを導き出すこととなった。
「よし、仕掛けるぞ」
「ポロは……他にはいないみたいね。
 気をつけてね、アレン」

 二人がポロと呼んでいるそれは、どう見ても鶏と表現するのが正しかった。
 正確には、眼の鋭く光った鶏のような、限りなく近いけれどどことなく恐ろしい雰囲気を纏った生物。
 トサカがちょっと大きくて、小さくコッココッコ鳴いているようだ。

 そしてアレンは後ろを向いていたポロに向かって斬りかかったのだ。
 5メートルはあろう間合いを、一瞬で詰めて上から一気に剣を振り落とす。

 そして、幾ばくかの砂になったそれの中から小さな何かを拾い上げるアレン。

「わかった……これ異世界転生ものじゃん……」
 サラに手を握られたまま、呆然と立ち尽くす凍花の姿がそこにはあったのだった。
 





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