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1章 ダンジョンと少女
そして連れてこられた地へ
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「いやいや……まってよ……」
そう口にはしたものの、誰も待ってくれるものなどいない。
いや、そもそも岩壁以外の存在自体が無いのだが。
凍花は混乱していた。
仕事終わりにコンビニで晩酌用のビールを2本購入し、スマホで動物系の動画投稿者にコメントを打っていたはずなのだ。
この日に限っては年齢確認もスルーしてくれた当たりの日だったので、26歳の心は健やかであったと自信を持って言えたはずだったのに。
前兆らしきものが無かったわけではない。
あまりに疲れが溜まって、後頭部に鋭い痛みが走ったような感じはあった。
もしかしたら、極度の緊張から一気に解放されたことも原因だったのかもしれない。
『てば:毎日モフ君に癒されよる私……(;▽;)あぁ病んだ精神が浄化されていくぞい……』
チャンネル登録者数も少なく、本当になんてことのないハムスターやうさぎの動画だったが、それが凍花の癒しになっていた。
『主:てばさん、イイねありがとう(^^)』
『てば:毎日投稿マジ感謝、モフ君たちに囲まれて思いっきりうずくまりたい……』
『主:わかりみ深いーー笑』
そんな他愛のないやりとりの直後、ふっと凍花の目の前が暗転してしまった。
よく、救急車を呼ぶこともできずに亡くなったなんて話を聞いていた。
そして、それが実際に自分の身に起きたのなら、少しくらいは余裕だってあり、実際にはスマホの緊急通報くらいは可能だろう……なんてことを凍花は思っていたこともあった。
どうして操作ができようか。
本当に一瞬の出来事であり、考える意識はあっても身体は一切動かなかったのだ。
倒れて頭を打ったような感覚はあったが痛みは無かった。
手のひらからスマホが離れたような気もしたが音は聞こえなかった。
もはや身体と脳が完全に切り離されてしまったのだろう。
【魔物好きなら、ボクの代わりに……】
囁く声で何か言われた気がしたが、それほど意識は長く保っていられなかった凍花だった……
そして気付けば目の前には薄暗い洞窟である。
命が助かったとか、感覚が戻ったなどという感想は二の次だ。
暗転の中で聞こえた声の主が、もしも救急隊員かなにかなら目の前は白い天井のはずだった。
しかし凍花の知る中には、薄暗くゴツゴツとした岩に囲まれた病室などもちろん存在しない。
つまりは拉致られて……という線が濃厚になってくるわけだ。
などと、思考は変なミステリーへと繋がっていった。
「待って待って待って待って!!」
そう騒ぐと、反響した自身の声が跳ね返ってくる。
もし本当に拉致られたのなら、冷静になり静かに様子を見るべきかもしれなかった。
声に反応した何かが、洞窟と思われるこの場所の、そのまた見えない向こうからやってくる。
今更後悔しても遅かったが、凍花は息を潜めて壁にもたれかかる。
唯一の救いは、意識がハッキリしていて身体もしっかりと動くこと。
そして次に思うことは明日の会社をどうすべきなのかということ……
(あぁ、それどころじゃないんだった……)
そう。会社の心配をしてしまう前に、自分の心配をすべきなのだ。
我ながら随分と社畜に成り果てたものだと思いながら、ちょっとした岩の出っ張りに身を潜め続ける凍花であった……
そう口にはしたものの、誰も待ってくれるものなどいない。
いや、そもそも岩壁以外の存在自体が無いのだが。
凍花は混乱していた。
仕事終わりにコンビニで晩酌用のビールを2本購入し、スマホで動物系の動画投稿者にコメントを打っていたはずなのだ。
この日に限っては年齢確認もスルーしてくれた当たりの日だったので、26歳の心は健やかであったと自信を持って言えたはずだったのに。
前兆らしきものが無かったわけではない。
あまりに疲れが溜まって、後頭部に鋭い痛みが走ったような感じはあった。
もしかしたら、極度の緊張から一気に解放されたことも原因だったのかもしれない。
『てば:毎日モフ君に癒されよる私……(;▽;)あぁ病んだ精神が浄化されていくぞい……』
チャンネル登録者数も少なく、本当になんてことのないハムスターやうさぎの動画だったが、それが凍花の癒しになっていた。
『主:てばさん、イイねありがとう(^^)』
『てば:毎日投稿マジ感謝、モフ君たちに囲まれて思いっきりうずくまりたい……』
『主:わかりみ深いーー笑』
そんな他愛のないやりとりの直後、ふっと凍花の目の前が暗転してしまった。
よく、救急車を呼ぶこともできずに亡くなったなんて話を聞いていた。
そして、それが実際に自分の身に起きたのなら、少しくらいは余裕だってあり、実際にはスマホの緊急通報くらいは可能だろう……なんてことを凍花は思っていたこともあった。
どうして操作ができようか。
本当に一瞬の出来事であり、考える意識はあっても身体は一切動かなかったのだ。
倒れて頭を打ったような感覚はあったが痛みは無かった。
手のひらからスマホが離れたような気もしたが音は聞こえなかった。
もはや身体と脳が完全に切り離されてしまったのだろう。
【魔物好きなら、ボクの代わりに……】
囁く声で何か言われた気がしたが、それほど意識は長く保っていられなかった凍花だった……
そして気付けば目の前には薄暗い洞窟である。
命が助かったとか、感覚が戻ったなどという感想は二の次だ。
暗転の中で聞こえた声の主が、もしも救急隊員かなにかなら目の前は白い天井のはずだった。
しかし凍花の知る中には、薄暗くゴツゴツとした岩に囲まれた病室などもちろん存在しない。
つまりは拉致られて……という線が濃厚になってくるわけだ。
などと、思考は変なミステリーへと繋がっていった。
「待って待って待って待って!!」
そう騒ぐと、反響した自身の声が跳ね返ってくる。
もし本当に拉致られたのなら、冷静になり静かに様子を見るべきかもしれなかった。
声に反応した何かが、洞窟と思われるこの場所の、そのまた見えない向こうからやってくる。
今更後悔しても遅かったが、凍花は息を潜めて壁にもたれかかる。
唯一の救いは、意識がハッキリしていて身体もしっかりと動くこと。
そして次に思うことは明日の会社をどうすべきなのかということ……
(あぁ、それどころじゃないんだった……)
そう。会社の心配をしてしまう前に、自分の心配をすべきなのだ。
我ながら随分と社畜に成り果てたものだと思いながら、ちょっとした岩の出っ張りに身を潜め続ける凍花であった……
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