私がモンスター発生源?! 〜異世界で考えたさいきょうの魔物育成計画〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

文字の大きさ
14 / 55
1章 ダンジョンと少女

ランク5

しおりを挟む
 村にやってきたオークの最後の1匹を始末した。
 幸い、キューブによる火魔法の攻撃が効いたようで、村へのダメージは外壁の損傷程度で済んだのである。

 しかし、それで全てが終わったわけではなく、戻ってきた冒険者の言葉の通り、一回り体格の大きなオークがやって来るのが視界に入ったのだ。

 身体にはいくつもの傷を負っているが、その迫力は今までのオークの比ではない。
 対峙していた冒険者も、そのオークの一振りで簡単に吹き飛ばされてしまう。

「急げっ! 女子供はすぐに隣のアラド村まで逃げるんだ!
 男は武器を持って来い!
 少しでもいい、時間を稼ぐんだ!」
 誰かが叫ぶと、それに呼応するように次々と威勢の良い声が聞こえてくる。

 中には『もうお終いだぁ』なんて弱気な言葉もあったが、それでも村の入り口には多くの男衆が集まっていたのだ。

 あとは武器やキューブを持った男に任せておけばよい。
 倒せたならそれでよし。それがダメでも生きていればどうにかなるものだ。
「テバちゃん! 私たちも行くよっ!」
 サラも12、3の少女にこれ以上戦わせる意思はなかったのだが、凍花はそうではない。

「ううん、足止めだったら私にもできるからっ!
 スライムっ出てきて!」
 都合47体、追加1体、クールタイム12秒。
 全てのスライムを街道に配置すると、凍花は攻撃を命じたのだった。

 これまでの戦いも見ていた誰しもが、少しは善戦するものと思っていた。
 良くて数分。ダメでも1分程度の足止めにはなるだろう。

 ところが、現実はそう甘くはない。
「グォォォ!!」
 オークが見せた咆哮は、スライムたちの動きを完全に止めてしまう。
 そして一振り、二振りと大きく動かしたオークの腕は、スライムたちをまとめて彼方へ消し去ってしまったのだ。
 そして周囲には警報かはたまた警告音のような音が鳴り響く。

「うそ……」
 強化値最大、スキル持ち。
 それなのにダメージ一つ与えられずに凍花も驚きを隠せない。
 そしてオークは待ってはくれないのだ。
 飛んでくる火魔法や水魔法をものともせず、村への距離はあとわずかとなっていた。

「早く次のスライムを出さなきゃ!
 ……でも、出してもまた一瞬で……」
 クールタイム残り4秒。
 ほんの数秒が、これほど長く感じたことは、凍花の人生で初めてだった。

 3秒。もうスケルトンでもゴブリンでもいいから、別の魔物を召喚するべきかと悩んだ。
 2秒。オークの腕が再び一人の冒険者を薙ぎ払う。もう猶予は無い。

「テバちゃん! 逃げるよ!」

 1秒。サラの声は凍花には届いておらず、膝をついて肩を落とす凍花を見たサラはすぐに駆け寄った。

「ウガァァ!」
 近くにあった太い木の枝を拾い上げたオークは、それを持つ右腕を大きく振りかぶる。

 0秒……

 太い木の枝は、大きく反動をつけたオークの右腕から放たれると、ブンブンと回転しながら一直線に凍花の元へ。

 その時、凍花は意を決して一つの選択を行うこととなる。
「……パンテラ! 真空斬り!」
「ニャァアア!!」

 スライム召喚同様に、パッと手元が光ると1匹の魔物が召喚される。
 聞いたこともなく、先ほどのオークとの戦いでレベルが上がったことによって増えた選択肢。
「高レベルで習得した魔法はスキルは強いんだって、相場が決まってるのよぉ!
 ……例外はいーっぱい知ってるけどさぁ」

 大型の猫というのが適しているだろうか?
 パンテラという魔物から放たれた風の攻撃スキルが木の枝に当たると、互いに弾けて周囲に飛び散ったのである。

「クールタイム600秒か……
 ギリギリ最大強化はできたけど、マテリアが足りないし、これでダメだったらアウトみたいね」
 パンテラに付与したスキルは『跳躍』『強撃』『真空斬り』の3つ。
 攻撃魔法は風系のもので、素早さ特化型の魔物である。

 勢いよく駆けていくパンテラは、オークの首筋に噛みつくと、その勢いのまま身体を捩り肉を食いちぎる。
 人間であれば頸動脈まで到達しているダメージで、失血死は免れない状況なのだろう。
 しかしながら魔物はそう一筋縄ではいかないものである。

 オークが地面にあった石を投げつけると、未だ空中で受け身を取る姿勢であったパンテラに直撃。
 姿勢を正してパンテラは再び攻めるが、首元を狙おうとすれば腕で防がれ、足元へのダメージに対しては『些末なものだ』とでも言わんばかりに反撃に転じてくる。

 パンテラがいかに高レベルであったとしても、体力は無限にあるわけではない。
 凍花に見えていたステータスには、もって3発程度という限界に近い数値である。

 クールタイムの終わった真空斬りも、オーク相手には大きなダメージは与えられず、リミットは近い。
 唯一の可能性がある強撃も、腕で防がれてはダメージは期待できそうもない。

「……グォォォ!」
 
 再びオークから咆哮が放たれ、パンテラは怯む。
 腕を大きく振りかぶったオークは、反動をつけて勢いよく殴りつけるが、それを間一髪でかわすパンテラ。
 なんとか直撃だけは避けられたが、わずかなダメージを負ってしまい、なおも逼迫した状況は続く。

「跳躍は高く飛び上がるスキル……
 隙をついて見失ってくれたら頭から攻撃できる?
 ……いや、落下中は動かれただけで避けられる可能性が高いし。勢いをつけて走った方が……」

 手段はそれほど多くはない。
 冒険者たちも魔物同士の戦いに圧倒され、今は魔法も放たれていない。

 ーーチャンスは一度きりである。


「みんな、合図をしたら魔法斉射お願い!」
 齢12かそこらの少女が屈強な大人たちに命令を下す。
 緊急時とはいえ、いや、だからこそ本来はあってはならない事なのだろう。
 これはゲームではなく、失敗すれば悲惨な事態が待ち受けているのだから。

「……」

 ほんの1、2秒。静寂に包まれた戦場。
 しかしパンテラの動きはもう止まらない。

 自分一人のウインドカッターで、どれだけオークの意識を引きつけられるだろうか。
 諦めの混じった表情でパンテラを見つめる凍花だったが、一人の男の大きな怒号が聞こえたのだ。
「テバちゃんがお願いしてんだろうがぁ!! わかったら返事をしろぉぉ!!!」

【ギルド長:39歳独身、ランク7】
 好きなものは小さくて可愛いもの。

 首に噛みついたのは初撃のみ。
 あとはダメージの小さな腕か足で、その場合のほとんどは反撃にあっていた。
 だからこそ再び首筋を狙う。

「ガァ!」
 腕でそれを防いだオークは、振り払おうと勢いよく腕を振る。
 おおよそ見当通り。その飛ばされる先には木々が生えている。

「今よ! ウインドカッター!!」
 凍花の魔法に続いて、何発もの様々な魔法が飛んでいく。
 わずかに怯むオークだが、それほどのダメージはないようにも感じた。
 だがそれで良かった。

 何かを感じ取ったオークは、再び腕を上げようとしたのだが……
「遅いわっ!」
 すでにパンテラの爪は、オークの首筋に触れていた。
【強撃:通常の3倍の威力を持つ強力な一撃】

 振り払われたパンテラは、木にぶつかる寸前にスキルを使用する。
 跳躍によるエネルギーは縦方向ではなくオークに向かって使われたのだ。
 そして反応を鈍らせる魔法の一斉攻撃が、オークにわずかな隙を作らせる。

 弱点×クリティカル×スキル乗算ダメージだとして、いったいどれほどの威力があったのだろうか?
 あっけなく跳んだ魔物の頭部が地面に落ちた時、村の入り口では大きな歓声が鳴り響いたのであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...