22 / 55
1章 ダンジョンと少女
ダンジョン攻略③
しおりを挟む
「いらっしゃいませ……ってアレンさん?
パンを買いに来たんですか?」
「いや、実は……」
早朝、突如店にやって来て『スライムを貸してほしい』などと言い出したアレンだった。
話を聞いてみると、どうやら近くの川の汚染がひどく、放置すれば村にも影響がありそうだということであった。
それにしても次から次へと忙しい村である。
ダンジョン調査の件は知っていたようで、ならばいつぞやに噂になった掃除屋のスライムを試してみようとのことである。
「ちょっと待ってねー。
魔物も出るだろうし、ステータスは攻撃と素早さに振って……アレンさんを対象……っと」
「あ……いや、この間の……」
この間の模擬戦を行ったスライムくらいで良いと言いたかったアレンだったが、言い終わる前にスライムの召喚は済んでしまい、アレンの横には1匹のスライムが出現している。
そこらの魔物よりは早く動けるため、魔物を見かけた場合は先制攻撃で仕留めてしまうように命じるように伝え、悪食の効果が30分しか無いことも言っておく。
このスキルを使用しない場合は、せいぜいスライムと同体積のものしか消化しないのだから仕方ない。
「3匹もいれば十分だよね?」
「え? あ、いや1匹でじゅう……」
ポンッ……ポンッと更に2匹のスライムがいつの間にか出現していた。
アレンが言わんとしていることなど関係なく、それが凍花にとっての最良の対応である。
「スライムって基本なんでも消化するんだけど、ちゃんと指示してあげればそれ以外は消化しないから。
ちなみに、身体の気になる場所にも使えたりなんてことも……」
凍花はアレンの足元を見ながら、そう呟く。
強く縛った集めの革の靴、一日中着けている厚手の脛当てに胸当て。
それらがどういう弊害をもたらすかは、よくわかっている。
ニヤニヤとする凍花の表情に、アレンは何も言えずにただスライム3匹を借りるだけであった。
そんなことはともかく、パンの販売がひと段落すると凍花は出発の準備を急いだ。
「気をつけなよー。
今日くらい、別に休んだって良いんだからな」
「そんなの悪いよ。
この間も私の勝手で2日も休ませてもらってたんだし」
今でも自分のスキルのことを考えると気分は良くはない。
しかし、この世界で生きていかなくてはいけない状況に、悩んでばかりもいられない。
「よろしくね、トラ」
『ニャア』
凍花は荷物をまとめると、パンテラを連れて村を出発する。
村から出てからはパンテラに跨がれば目的地もすぐそこであった。
はてさて、ちょっとした遠征になるのだと聞かされていたが数キロ先の山を遠征と言って良いものだろうか?
改めて村の周囲を見回せば、盆地になっているようで周囲は山に囲まれている。
どの方位にも、おおよそ10kmも進めば山に当たるような地形であり、それを超えるというのはつまりは別の村か街へと行くことになるという。
問題があるとすれば、体感数百メートル間隔で魔物が現れて、その度に追いかけられるので都度手間であることか。
行商はこれを振り払うために馬を用意するという。
しかしながら、所詮はゴブリンかウサギか食人植物か。
あの後もステータスが上がっているパンテラの相手になるような魔物ではないので都度倒すことにした。
「小銭稼ぎも無駄になっちゃったし、少しでもドロップ集めないとねぇ。
……あ、また魔物? いえ、冒険者っぽいけど……」
遠目に見えるのは、人型らしき影が木に寄りかかって休んでいるようなもの。
慎重に近付いていくと、大きな2つの耳を上方へ尖らせている様子。
最初はそれも被っているフードの装飾なのかと思えたが、どうやら耳は頭から直接生えているようである。
となれば、人ではない魔物だろうと思ったのだが、そういうわけでもないのかもしれない。
凍花に気付いた人影は立ち上がり、木の裏に隠れてしまう。
全身を毛で覆われていたようにも見え、背は低くダボついたパーカーでも着ている様子であったのだ。
「魔物なら襲いかかってくるよね?
んー……コスプレしてるってこと?」
不思議に思い凍花は更に近付くが、相手は一向に姿を現そうとはしてこない。
そのため、意を決して木の反対側へと回り込んだ凍花が見たものは、異世界といえばとも言うべき『獣人』の姿であった。
パンを買いに来たんですか?」
「いや、実は……」
早朝、突如店にやって来て『スライムを貸してほしい』などと言い出したアレンだった。
話を聞いてみると、どうやら近くの川の汚染がひどく、放置すれば村にも影響がありそうだということであった。
それにしても次から次へと忙しい村である。
ダンジョン調査の件は知っていたようで、ならばいつぞやに噂になった掃除屋のスライムを試してみようとのことである。
「ちょっと待ってねー。
魔物も出るだろうし、ステータスは攻撃と素早さに振って……アレンさんを対象……っと」
「あ……いや、この間の……」
この間の模擬戦を行ったスライムくらいで良いと言いたかったアレンだったが、言い終わる前にスライムの召喚は済んでしまい、アレンの横には1匹のスライムが出現している。
そこらの魔物よりは早く動けるため、魔物を見かけた場合は先制攻撃で仕留めてしまうように命じるように伝え、悪食の効果が30分しか無いことも言っておく。
このスキルを使用しない場合は、せいぜいスライムと同体積のものしか消化しないのだから仕方ない。
「3匹もいれば十分だよね?」
「え? あ、いや1匹でじゅう……」
ポンッ……ポンッと更に2匹のスライムがいつの間にか出現していた。
アレンが言わんとしていることなど関係なく、それが凍花にとっての最良の対応である。
「スライムって基本なんでも消化するんだけど、ちゃんと指示してあげればそれ以外は消化しないから。
ちなみに、身体の気になる場所にも使えたりなんてことも……」
凍花はアレンの足元を見ながら、そう呟く。
強く縛った集めの革の靴、一日中着けている厚手の脛当てに胸当て。
それらがどういう弊害をもたらすかは、よくわかっている。
ニヤニヤとする凍花の表情に、アレンは何も言えずにただスライム3匹を借りるだけであった。
そんなことはともかく、パンの販売がひと段落すると凍花は出発の準備を急いだ。
「気をつけなよー。
今日くらい、別に休んだって良いんだからな」
「そんなの悪いよ。
この間も私の勝手で2日も休ませてもらってたんだし」
今でも自分のスキルのことを考えると気分は良くはない。
しかし、この世界で生きていかなくてはいけない状況に、悩んでばかりもいられない。
「よろしくね、トラ」
『ニャア』
凍花は荷物をまとめると、パンテラを連れて村を出発する。
村から出てからはパンテラに跨がれば目的地もすぐそこであった。
はてさて、ちょっとした遠征になるのだと聞かされていたが数キロ先の山を遠征と言って良いものだろうか?
改めて村の周囲を見回せば、盆地になっているようで周囲は山に囲まれている。
どの方位にも、おおよそ10kmも進めば山に当たるような地形であり、それを超えるというのはつまりは別の村か街へと行くことになるという。
問題があるとすれば、体感数百メートル間隔で魔物が現れて、その度に追いかけられるので都度手間であることか。
行商はこれを振り払うために馬を用意するという。
しかしながら、所詮はゴブリンかウサギか食人植物か。
あの後もステータスが上がっているパンテラの相手になるような魔物ではないので都度倒すことにした。
「小銭稼ぎも無駄になっちゃったし、少しでもドロップ集めないとねぇ。
……あ、また魔物? いえ、冒険者っぽいけど……」
遠目に見えるのは、人型らしき影が木に寄りかかって休んでいるようなもの。
慎重に近付いていくと、大きな2つの耳を上方へ尖らせている様子。
最初はそれも被っているフードの装飾なのかと思えたが、どうやら耳は頭から直接生えているようである。
となれば、人ではない魔物だろうと思ったのだが、そういうわけでもないのかもしれない。
凍花に気付いた人影は立ち上がり、木の裏に隠れてしまう。
全身を毛で覆われていたようにも見え、背は低くダボついたパーカーでも着ている様子であったのだ。
「魔物なら襲いかかってくるよね?
んー……コスプレしてるってこと?」
不思議に思い凍花は更に近付くが、相手は一向に姿を現そうとはしてこない。
そのため、意を決して木の反対側へと回り込んだ凍花が見たものは、異世界といえばとも言うべき『獣人』の姿であった。
0
あなたにおすすめの小説
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる