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1章 ダンジョンと少女
ドラーニア
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狩りを終えた翌日、ステータスカードの確認をするとダンジョンは無事攻略されていた。
念願であった火魔法を覚えているニクスの召喚に加え、遠視のスキル付与を獲得。
「うーん……火魔法は惜しいからパスで」
「えーっ、お姉ちゃんばっかりズルい!」
「だからジェラートスライムだったら好きにしていいってば。
元々ラビのスキルで手に入った魔物なんだし」
「だって、スラちゃん冷たくて気持ちいいんだもん……」
「私も生肉ばかりは食べたくないし、火魔法は譲れませーん」
大会の特訓がてら、湖畔まで来ていた。
お昼時まで新たに召喚したニクス相手に、レプロの上空での戦いの特訓をしていたのだ。
ラビは今日になってようやくリンクスキルのクールタイムが終わったらしく、新たに1体の魔物の譲渡が可能になった。
しかし、いざ選ぼうとすると召喚できなくなるのが惜しいのである。
「じゃあゴブリン?」
「それ、お姉ちゃんが前に『混ざるところを想像したくない』って言ってた」
「あぁ……うん。無しね」
もっと獣感のある魔物を譲渡したいと言い出したのは凍花なのだ。
今から狩りに行くにも、トカゲか芋虫くらいしか思い浮かばないでいる。
しかもそんな話をしていると、せっかく作ったサンドイッチが美味しくなくなるので残念でしかない。
「やぁ、随分と美味しそうなものを食べているじゃないか」
休んでいる時に声をかけてきた人がいた。
身長は170以上でスラッとした細身の女。
肩と脛には防具を着けているが、全体的にはかなりの軽装備。
「あ、邪魔でしたらもう行きますので……」
「いやいや、別に気にしなくて良いよ。
アタシも別に狩りをしにきたわけじゃないからさ」
胸の大きいし、この人が話題のリフィル様とやらかと思ったほど。
しかし武器も持たないし、噂では街でも兜をつけていると聞く。
狩りではないのなら何の用事なのかと思ったが、どうやら食事が気になって見にきたようである。
「ニクスを挟んだパンかい。
ソースも刺激的な香りだし、野菜も新鮮そうだ。
街でこんなものを出す店はあったかな?」
突然のことに驚いたラビは凍花の腕を掴む。
凍花もやはり緊張はしていたが、無碍に去ることもできず話を続けた。
「手作りなんですよ。……よ、よかったら1つ食べますか?」
「いいのかい?
んんー……いやぁ、ニクスの肉も当分はお預けだと思うと、一層美味しく感じるものだね」
その見た目とは裏腹に豪快にかぶりつく女性。
凍花の手のひらサイズに作られたサンドイッチは、ほんの二口でお腹の中に収まってしまったようだ。
「それは良かったです。
街で食べたのって味は薄いし、いくら美味しくても肉だけじゃ飽きちゃうし」
「そうだねぇ。
野生味が強いから茹でて食べるもんだと思っていたが、焼いて表面のパリパリしているのは初めて食べた。
臭みは香辛料で消しているのか……変わった調理法だな」
それはそうである。
先日受け取ったヒュム草の報酬をほぼ全額使い買い揃えたスパイスと調味料なのだ。
店で提供したら幾らの値段をつけて良いものか。
「馳走になってしまったな。
……いや、せっかくだ。お前たち、そこの人の街で店をするつもりはないか?
うん。いいね、そうしよう。
ついこの間までパンを売っていた店があったんだが、辞めてしまってね。
山向こうの村に人気のパン屋があるみたいだから向かおうかと思っていたんだよ」
一人で勝手に盛り上がる女性。
突然店と言われてもさすがに無理である。
「わ、私は人様に売れるような料理は……」
凍花が断ろうとすると、腕を掴んでいたラビの手に力が入る。
「ラビ……?」
「お、お姉ちゃん……」
首を横に振って何かを訴えかけるラビ。
野生の感というのか、女性に何かを感じとっているのであろう。
一呼吸置いて、女性は再び話を続ける。
「まだ名乗ってなかったね。アタシはドラーニア。
お前たちが店を開いてくれれば、きっと街はもっと良くなるぞ」
その言葉に何か圧を感じてしまう凍花。
断ろうにも断れる雰囲気ではなくなっていき、遂に凍花は折れることになってしまった。
念願であった火魔法を覚えているニクスの召喚に加え、遠視のスキル付与を獲得。
「うーん……火魔法は惜しいからパスで」
「えーっ、お姉ちゃんばっかりズルい!」
「だからジェラートスライムだったら好きにしていいってば。
元々ラビのスキルで手に入った魔物なんだし」
「だって、スラちゃん冷たくて気持ちいいんだもん……」
「私も生肉ばかりは食べたくないし、火魔法は譲れませーん」
大会の特訓がてら、湖畔まで来ていた。
お昼時まで新たに召喚したニクス相手に、レプロの上空での戦いの特訓をしていたのだ。
ラビは今日になってようやくリンクスキルのクールタイムが終わったらしく、新たに1体の魔物の譲渡が可能になった。
しかし、いざ選ぼうとすると召喚できなくなるのが惜しいのである。
「じゃあゴブリン?」
「それ、お姉ちゃんが前に『混ざるところを想像したくない』って言ってた」
「あぁ……うん。無しね」
もっと獣感のある魔物を譲渡したいと言い出したのは凍花なのだ。
今から狩りに行くにも、トカゲか芋虫くらいしか思い浮かばないでいる。
しかもそんな話をしていると、せっかく作ったサンドイッチが美味しくなくなるので残念でしかない。
「やぁ、随分と美味しそうなものを食べているじゃないか」
休んでいる時に声をかけてきた人がいた。
身長は170以上でスラッとした細身の女。
肩と脛には防具を着けているが、全体的にはかなりの軽装備。
「あ、邪魔でしたらもう行きますので……」
「いやいや、別に気にしなくて良いよ。
アタシも別に狩りをしにきたわけじゃないからさ」
胸の大きいし、この人が話題のリフィル様とやらかと思ったほど。
しかし武器も持たないし、噂では街でも兜をつけていると聞く。
狩りではないのなら何の用事なのかと思ったが、どうやら食事が気になって見にきたようである。
「ニクスを挟んだパンかい。
ソースも刺激的な香りだし、野菜も新鮮そうだ。
街でこんなものを出す店はあったかな?」
突然のことに驚いたラビは凍花の腕を掴む。
凍花もやはり緊張はしていたが、無碍に去ることもできず話を続けた。
「手作りなんですよ。……よ、よかったら1つ食べますか?」
「いいのかい?
んんー……いやぁ、ニクスの肉も当分はお預けだと思うと、一層美味しく感じるものだね」
その見た目とは裏腹に豪快にかぶりつく女性。
凍花の手のひらサイズに作られたサンドイッチは、ほんの二口でお腹の中に収まってしまったようだ。
「それは良かったです。
街で食べたのって味は薄いし、いくら美味しくても肉だけじゃ飽きちゃうし」
「そうだねぇ。
野生味が強いから茹でて食べるもんだと思っていたが、焼いて表面のパリパリしているのは初めて食べた。
臭みは香辛料で消しているのか……変わった調理法だな」
それはそうである。
先日受け取ったヒュム草の報酬をほぼ全額使い買い揃えたスパイスと調味料なのだ。
店で提供したら幾らの値段をつけて良いものか。
「馳走になってしまったな。
……いや、せっかくだ。お前たち、そこの人の街で店をするつもりはないか?
うん。いいね、そうしよう。
ついこの間までパンを売っていた店があったんだが、辞めてしまってね。
山向こうの村に人気のパン屋があるみたいだから向かおうかと思っていたんだよ」
一人で勝手に盛り上がる女性。
突然店と言われてもさすがに無理である。
「わ、私は人様に売れるような料理は……」
凍花が断ろうとすると、腕を掴んでいたラビの手に力が入る。
「ラビ……?」
「お、お姉ちゃん……」
首を横に振って何かを訴えかけるラビ。
野生の感というのか、女性に何かを感じとっているのであろう。
一呼吸置いて、女性は再び話を続ける。
「まだ名乗ってなかったね。アタシはドラーニア。
お前たちが店を開いてくれれば、きっと街はもっと良くなるぞ」
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