49 / 55
1章 ダンジョンと少女
ドラーニア
しおりを挟む
狩りを終えた翌日、ステータスカードの確認をするとダンジョンは無事攻略されていた。
念願であった火魔法を覚えているニクスの召喚に加え、遠視のスキル付与を獲得。
「うーん……火魔法は惜しいからパスで」
「えーっ、お姉ちゃんばっかりズルい!」
「だからジェラートスライムだったら好きにしていいってば。
元々ラビのスキルで手に入った魔物なんだし」
「だって、スラちゃん冷たくて気持ちいいんだもん……」
「私も生肉ばかりは食べたくないし、火魔法は譲れませーん」
大会の特訓がてら、湖畔まで来ていた。
お昼時まで新たに召喚したニクス相手に、レプロの上空での戦いの特訓をしていたのだ。
ラビは今日になってようやくリンクスキルのクールタイムが終わったらしく、新たに1体の魔物の譲渡が可能になった。
しかし、いざ選ぼうとすると召喚できなくなるのが惜しいのである。
「じゃあゴブリン?」
「それ、お姉ちゃんが前に『混ざるところを想像したくない』って言ってた」
「あぁ……うん。無しね」
もっと獣感のある魔物を譲渡したいと言い出したのは凍花なのだ。
今から狩りに行くにも、トカゲか芋虫くらいしか思い浮かばないでいる。
しかもそんな話をしていると、せっかく作ったサンドイッチが美味しくなくなるので残念でしかない。
「やぁ、随分と美味しそうなものを食べているじゃないか」
休んでいる時に声をかけてきた人がいた。
身長は170以上でスラッとした細身の女。
肩と脛には防具を着けているが、全体的にはかなりの軽装備。
「あ、邪魔でしたらもう行きますので……」
「いやいや、別に気にしなくて良いよ。
アタシも別に狩りをしにきたわけじゃないからさ」
胸の大きいし、この人が話題のリフィル様とやらかと思ったほど。
しかし武器も持たないし、噂では街でも兜をつけていると聞く。
狩りではないのなら何の用事なのかと思ったが、どうやら食事が気になって見にきたようである。
「ニクスを挟んだパンかい。
ソースも刺激的な香りだし、野菜も新鮮そうだ。
街でこんなものを出す店はあったかな?」
突然のことに驚いたラビは凍花の腕を掴む。
凍花もやはり緊張はしていたが、無碍に去ることもできず話を続けた。
「手作りなんですよ。……よ、よかったら1つ食べますか?」
「いいのかい?
んんー……いやぁ、ニクスの肉も当分はお預けだと思うと、一層美味しく感じるものだね」
その見た目とは裏腹に豪快にかぶりつく女性。
凍花の手のひらサイズに作られたサンドイッチは、ほんの二口でお腹の中に収まってしまったようだ。
「それは良かったです。
街で食べたのって味は薄いし、いくら美味しくても肉だけじゃ飽きちゃうし」
「そうだねぇ。
野生味が強いから茹でて食べるもんだと思っていたが、焼いて表面のパリパリしているのは初めて食べた。
臭みは香辛料で消しているのか……変わった調理法だな」
それはそうである。
先日受け取ったヒュム草の報酬をほぼ全額使い買い揃えたスパイスと調味料なのだ。
店で提供したら幾らの値段をつけて良いものか。
「馳走になってしまったな。
……いや、せっかくだ。お前たち、そこの人の街で店をするつもりはないか?
うん。いいね、そうしよう。
ついこの間までパンを売っていた店があったんだが、辞めてしまってね。
山向こうの村に人気のパン屋があるみたいだから向かおうかと思っていたんだよ」
一人で勝手に盛り上がる女性。
突然店と言われてもさすがに無理である。
「わ、私は人様に売れるような料理は……」
凍花が断ろうとすると、腕を掴んでいたラビの手に力が入る。
「ラビ……?」
「お、お姉ちゃん……」
首を横に振って何かを訴えかけるラビ。
野生の感というのか、女性に何かを感じとっているのであろう。
一呼吸置いて、女性は再び話を続ける。
「まだ名乗ってなかったね。アタシはドラーニア。
お前たちが店を開いてくれれば、きっと街はもっと良くなるぞ」
その言葉に何か圧を感じてしまう凍花。
断ろうにも断れる雰囲気ではなくなっていき、遂に凍花は折れることになってしまった。
念願であった火魔法を覚えているニクスの召喚に加え、遠視のスキル付与を獲得。
「うーん……火魔法は惜しいからパスで」
「えーっ、お姉ちゃんばっかりズルい!」
「だからジェラートスライムだったら好きにしていいってば。
元々ラビのスキルで手に入った魔物なんだし」
「だって、スラちゃん冷たくて気持ちいいんだもん……」
「私も生肉ばかりは食べたくないし、火魔法は譲れませーん」
大会の特訓がてら、湖畔まで来ていた。
お昼時まで新たに召喚したニクス相手に、レプロの上空での戦いの特訓をしていたのだ。
ラビは今日になってようやくリンクスキルのクールタイムが終わったらしく、新たに1体の魔物の譲渡が可能になった。
しかし、いざ選ぼうとすると召喚できなくなるのが惜しいのである。
「じゃあゴブリン?」
「それ、お姉ちゃんが前に『混ざるところを想像したくない』って言ってた」
「あぁ……うん。無しね」
もっと獣感のある魔物を譲渡したいと言い出したのは凍花なのだ。
今から狩りに行くにも、トカゲか芋虫くらいしか思い浮かばないでいる。
しかもそんな話をしていると、せっかく作ったサンドイッチが美味しくなくなるので残念でしかない。
「やぁ、随分と美味しそうなものを食べているじゃないか」
休んでいる時に声をかけてきた人がいた。
身長は170以上でスラッとした細身の女。
肩と脛には防具を着けているが、全体的にはかなりの軽装備。
「あ、邪魔でしたらもう行きますので……」
「いやいや、別に気にしなくて良いよ。
アタシも別に狩りをしにきたわけじゃないからさ」
胸の大きいし、この人が話題のリフィル様とやらかと思ったほど。
しかし武器も持たないし、噂では街でも兜をつけていると聞く。
狩りではないのなら何の用事なのかと思ったが、どうやら食事が気になって見にきたようである。
「ニクスを挟んだパンかい。
ソースも刺激的な香りだし、野菜も新鮮そうだ。
街でこんなものを出す店はあったかな?」
突然のことに驚いたラビは凍花の腕を掴む。
凍花もやはり緊張はしていたが、無碍に去ることもできず話を続けた。
「手作りなんですよ。……よ、よかったら1つ食べますか?」
「いいのかい?
んんー……いやぁ、ニクスの肉も当分はお預けだと思うと、一層美味しく感じるものだね」
その見た目とは裏腹に豪快にかぶりつく女性。
凍花の手のひらサイズに作られたサンドイッチは、ほんの二口でお腹の中に収まってしまったようだ。
「それは良かったです。
街で食べたのって味は薄いし、いくら美味しくても肉だけじゃ飽きちゃうし」
「そうだねぇ。
野生味が強いから茹でて食べるもんだと思っていたが、焼いて表面のパリパリしているのは初めて食べた。
臭みは香辛料で消しているのか……変わった調理法だな」
それはそうである。
先日受け取ったヒュム草の報酬をほぼ全額使い買い揃えたスパイスと調味料なのだ。
店で提供したら幾らの値段をつけて良いものか。
「馳走になってしまったな。
……いや、せっかくだ。お前たち、そこの人の街で店をするつもりはないか?
うん。いいね、そうしよう。
ついこの間までパンを売っていた店があったんだが、辞めてしまってね。
山向こうの村に人気のパン屋があるみたいだから向かおうかと思っていたんだよ」
一人で勝手に盛り上がる女性。
突然店と言われてもさすがに無理である。
「わ、私は人様に売れるような料理は……」
凍花が断ろうとすると、腕を掴んでいたラビの手に力が入る。
「ラビ……?」
「お、お姉ちゃん……」
首を横に振って何かを訴えかけるラビ。
野生の感というのか、女性に何かを感じとっているのであろう。
一呼吸置いて、女性は再び話を続ける。
「まだ名乗ってなかったね。アタシはドラーニア。
お前たちが店を開いてくれれば、きっと街はもっと良くなるぞ」
その言葉に何か圧を感じてしまう凍花。
断ろうにも断れる雰囲気ではなくなっていき、遂に凍花は折れることになってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる