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傭兵を雇うつもりはないのです
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「本気で言ってんのか?」
「だって、フロックスよりも強い傭兵なんて滅多にいないんでしょ?」
「ま、まぁそうだが……二人だけだと魔物の大群に出くわしたら困るだろうが!」
また金策をしなくてはいけない、なんてことをフロックスが言うもんだから、僕は移動に必要な最低限だけ揃えれば大丈夫だと言った。
一つは、足手まといになるような戦力がいらないということ。
もう一つは、僕のスキルはあまり人に見られたくないということ。
馬車を買い取る資金だけ貯めて、三人で次の街へ向かおうと思っているのだ。
「ヤエもいるのに、俺は知らねぇぞ……」
「大丈夫だよ。多分戦力になってくれると思うし」
「はぁっ? こんなに咳き込んでばかりの子供に戦わせるって、お前まさか最初から囮にするつもりだったのかよ?」
街を出て人気のない荒野へ。
そこでフロックスがギャーギャーと騒ぎ立てるもんだから、ヤエも委縮してしまっている。
「それよりもさ、魔法の練習のできそうな場所ってこの辺でいいんだよね?」
「あ、あぁ……見渡し良好、魔物は少ない。
それでいて冒険者には来る価値のない場所だから自由に魔法を使える」
そうと分かれば、僕はさっそく準備にとりかかる。
フロックスには暇つぶしに近くで魔物狩りでもしてきてもらうことにしよう。
できれば色々な素材で僕のスキルを試してみたかったし、数よりも種類多めに。
「お前のおかげで稼げているのも事実だ……今は付き合うが、無理だと思ったら俺は身を引くからな」
「それは困るよ。フロックスじゃないと僕が安心できないもん」
「勝手ばかり言いやがって。だったら俺が納得できるように説明してほしいもんだぜ」
ぶつくさと言いながらも、木々が生えている方へと向かってフロックスは歩き出す。
僕はというと、ヤエと共に魔法の特訓をするだけだ。
魔力暴走というと恐ろしく聞こえてしまうが、簡単な話、打ち出す魔法に対して出力が高すぎるだけのこと。
授業中は電圧とかに置き換えて話を聞いていたから、すんなりと頭に入ってきた。
解決方法は二つで、一つは自分自身の抵抗力を高めること。
魔力に負けない身体をつくる……といかいう脳筋理論。
ゴムじゃないんだから、どれだけ走りこんだって効果は薄いんじゃないかと思ってしまう。
つまり、暴走してもケガをしにくい身体を作れってことみたいだったし……
「で、もう一つは純粋に打ち出す魔法の出力を上げる方法。
自分自身が空気清浄機から電子レンジに……ってのはわかるわけないか」
消費電力に例えて考えてばかりいたから、人に教えるのも大変だ。
小さな家庭用ホースで、消防に使う水圧が……とか、どうしても例えが生前のものになってしまう。
「えっと……私、魔法は使ったことがなくて……」
「そうだった! 先に魔力操作を覚えなくちゃいけないんだっけ?」
そんなことをしながら、すんなり行くだろうと思っていた魔法の授業は、半日かかってもほとんど進展がなかったのだった。
「調子はどうだ?」
「あっ、フロックスおかえり。すっごい量だね」
「誰かさんがたくさん採ってこいって言ったからな」
そこまで言ったつもりはないが、フロックスなりの嫌味なんだろうか?
「魔力を感じることはできているんだろ?
そんなに難しいもんかねぇ?」
フロックスは、指先でちょろちょろと水を出しながら呟いている。
やはり誰でも魔法くらいは簡単に使えるみたいだ。教え方が悪いんだろうか……
「試しにお前が見せてやればいいじゃねーか。
そのために素材を集めてきてやったんだぜ?
つか……そんなに無理させて身体は大丈夫なのか?」
「あ……はい。息苦しいのも嘘だったみたいに……」
「薬が効いたってわけか。でもまぁ、治ったばかりで無理をすると、また倒れちまうぞ」
「ありがとうフロックスさん……」
僕がお手本を……といっても、魔法は使えないからなぁ。
ツグミちゃんのように、すんなりと石塊を生み出すかと思ったけど、そう簡単じゃないのか……
あの学校にいたみんなは、やっぱりそれなりに才能があったということなんだろうなぁ。
ヒガラお嬢様にヤンバルクイナ三人組、他の二人や先生たちも今はどうしているだろうか?
急にいなくなったから夜逃げだなんて思われてないだろうか?
しかし、休み時間の度に新しい魔法を教えてほしいなんて言われていたけど、みんな魔法が好きだったんだろうなぁ……
「あー……もしかして魔法が怖い?」
「えっ、あ、あの……そんなことは……」
少し困った表情を浮かべるヤエ。
「自分の身体を傷つけたものを怖くないわけないだろうが」
フロックスがそう言うと、ヤエは申し訳なさそうに『ごめんなさい……』と頭を下げていた。
そう言われればその通りである。
僕にとっては興味の対象でしかなかったし、ツグミちゃんみたいに色々と聞いてくるのが普通だと思ってしまっていたみたいだ。
「いやこちらこそごめん、全然気付いてあげられなかったよ。
そっか……じゃあ何か楽しくなりそうな魔法でもあるといいんだけどなぁ」
「見せてやれよ、料理でも武器づくりでも興味を持ったら少しは怖くなくなんだろ?」
フロックスは、狩ってきた魔物の素材を抱えて僕に言う。
いやぁ……見せれても魔法じゃないし同じことは多分できないだろうしなぁ……
「悩んでねぇで、とりあえずやってくれよ。
俺も動き回って腹が減ってきたんだよ、飯にしようぜ飯に」
そう言われると仕方ない。
食材になりそうな魔物があるのか見てみたのだけど、『ザ・鹿』みたいなやつは意外と少ないみたいだ。
大きいキノコっぽい魔物は毒がありそう。大きい芋虫っぽい魔物は食べる気になれない。大きい石ころはそもそも魔物なのだろうか?
「トレントもいたぜ。こいつの樹液が甘くて美味いんだ」
そういってフロックスが見せてくれるのは、一本の切り株。
僕は魔物を甘く見ていたようだ。
どれもこれもが装備や食料になるなんて思ってはいけなかったのだろう。
とにかくフロックスに言われたトレントに対してミルを使用する。
ポンッと小気味良い音とともに、切り株がコップ入りのジュースらしきものに変わるのだ。
なんだか、コレジャナイ感を感じながら、フロックスの持ってきた素材を色々と試してみた。
やはり中には食材にならないものもあったし、芋虫がスープに変わったとて飲みたいとは思わなかった。
「す、すごいですクロウさん。
練習したら私にもできるようになるんですか?」
僕としてはすごくガッカリしていたんだけど、ヤエも少しは魔法に興味を持ったみたいだった。
「得意魔法があるから、同じ魔法が使えるかどうかは……わからないけど」
その後は『これ、すっごく美味しいですっ』なんて言いながら、フロックスと一緒に芋虫スープを飲んでいるわけだが……僕はあまり食欲が出ずにトレントジュースだけを口にしていた。
まぁ、色々と試して分かったことは、素材によって食料か武器に。
武器は剣か槍か杖のどれかに加工ができる。
ただ、どれもステータス上昇値は微々たるものだったわけで……
素材集めはパッとせず、午後はフロックスも共に魔法の特訓をすることになったわけだ。
「だって、フロックスよりも強い傭兵なんて滅多にいないんでしょ?」
「ま、まぁそうだが……二人だけだと魔物の大群に出くわしたら困るだろうが!」
また金策をしなくてはいけない、なんてことをフロックスが言うもんだから、僕は移動に必要な最低限だけ揃えれば大丈夫だと言った。
一つは、足手まといになるような戦力がいらないということ。
もう一つは、僕のスキルはあまり人に見られたくないということ。
馬車を買い取る資金だけ貯めて、三人で次の街へ向かおうと思っているのだ。
「ヤエもいるのに、俺は知らねぇぞ……」
「大丈夫だよ。多分戦力になってくれると思うし」
「はぁっ? こんなに咳き込んでばかりの子供に戦わせるって、お前まさか最初から囮にするつもりだったのかよ?」
街を出て人気のない荒野へ。
そこでフロックスがギャーギャーと騒ぎ立てるもんだから、ヤエも委縮してしまっている。
「それよりもさ、魔法の練習のできそうな場所ってこの辺でいいんだよね?」
「あ、あぁ……見渡し良好、魔物は少ない。
それでいて冒険者には来る価値のない場所だから自由に魔法を使える」
そうと分かれば、僕はさっそく準備にとりかかる。
フロックスには暇つぶしに近くで魔物狩りでもしてきてもらうことにしよう。
できれば色々な素材で僕のスキルを試してみたかったし、数よりも種類多めに。
「お前のおかげで稼げているのも事実だ……今は付き合うが、無理だと思ったら俺は身を引くからな」
「それは困るよ。フロックスじゃないと僕が安心できないもん」
「勝手ばかり言いやがって。だったら俺が納得できるように説明してほしいもんだぜ」
ぶつくさと言いながらも、木々が生えている方へと向かってフロックスは歩き出す。
僕はというと、ヤエと共に魔法の特訓をするだけだ。
魔力暴走というと恐ろしく聞こえてしまうが、簡単な話、打ち出す魔法に対して出力が高すぎるだけのこと。
授業中は電圧とかに置き換えて話を聞いていたから、すんなりと頭に入ってきた。
解決方法は二つで、一つは自分自身の抵抗力を高めること。
魔力に負けない身体をつくる……といかいう脳筋理論。
ゴムじゃないんだから、どれだけ走りこんだって効果は薄いんじゃないかと思ってしまう。
つまり、暴走してもケガをしにくい身体を作れってことみたいだったし……
「で、もう一つは純粋に打ち出す魔法の出力を上げる方法。
自分自身が空気清浄機から電子レンジに……ってのはわかるわけないか」
消費電力に例えて考えてばかりいたから、人に教えるのも大変だ。
小さな家庭用ホースで、消防に使う水圧が……とか、どうしても例えが生前のものになってしまう。
「えっと……私、魔法は使ったことがなくて……」
「そうだった! 先に魔力操作を覚えなくちゃいけないんだっけ?」
そんなことをしながら、すんなり行くだろうと思っていた魔法の授業は、半日かかってもほとんど進展がなかったのだった。
「調子はどうだ?」
「あっ、フロックスおかえり。すっごい量だね」
「誰かさんがたくさん採ってこいって言ったからな」
そこまで言ったつもりはないが、フロックスなりの嫌味なんだろうか?
「魔力を感じることはできているんだろ?
そんなに難しいもんかねぇ?」
フロックスは、指先でちょろちょろと水を出しながら呟いている。
やはり誰でも魔法くらいは簡単に使えるみたいだ。教え方が悪いんだろうか……
「試しにお前が見せてやればいいじゃねーか。
そのために素材を集めてきてやったんだぜ?
つか……そんなに無理させて身体は大丈夫なのか?」
「あ……はい。息苦しいのも嘘だったみたいに……」
「薬が効いたってわけか。でもまぁ、治ったばかりで無理をすると、また倒れちまうぞ」
「ありがとうフロックスさん……」
僕がお手本を……といっても、魔法は使えないからなぁ。
ツグミちゃんのように、すんなりと石塊を生み出すかと思ったけど、そう簡単じゃないのか……
あの学校にいたみんなは、やっぱりそれなりに才能があったということなんだろうなぁ。
ヒガラお嬢様にヤンバルクイナ三人組、他の二人や先生たちも今はどうしているだろうか?
急にいなくなったから夜逃げだなんて思われてないだろうか?
しかし、休み時間の度に新しい魔法を教えてほしいなんて言われていたけど、みんな魔法が好きだったんだろうなぁ……
「あー……もしかして魔法が怖い?」
「えっ、あ、あの……そんなことは……」
少し困った表情を浮かべるヤエ。
「自分の身体を傷つけたものを怖くないわけないだろうが」
フロックスがそう言うと、ヤエは申し訳なさそうに『ごめんなさい……』と頭を下げていた。
そう言われればその通りである。
僕にとっては興味の対象でしかなかったし、ツグミちゃんみたいに色々と聞いてくるのが普通だと思ってしまっていたみたいだ。
「いやこちらこそごめん、全然気付いてあげられなかったよ。
そっか……じゃあ何か楽しくなりそうな魔法でもあるといいんだけどなぁ」
「見せてやれよ、料理でも武器づくりでも興味を持ったら少しは怖くなくなんだろ?」
フロックスは、狩ってきた魔物の素材を抱えて僕に言う。
いやぁ……見せれても魔法じゃないし同じことは多分できないだろうしなぁ……
「悩んでねぇで、とりあえずやってくれよ。
俺も動き回って腹が減ってきたんだよ、飯にしようぜ飯に」
そう言われると仕方ない。
食材になりそうな魔物があるのか見てみたのだけど、『ザ・鹿』みたいなやつは意外と少ないみたいだ。
大きいキノコっぽい魔物は毒がありそう。大きい芋虫っぽい魔物は食べる気になれない。大きい石ころはそもそも魔物なのだろうか?
「トレントもいたぜ。こいつの樹液が甘くて美味いんだ」
そういってフロックスが見せてくれるのは、一本の切り株。
僕は魔物を甘く見ていたようだ。
どれもこれもが装備や食料になるなんて思ってはいけなかったのだろう。
とにかくフロックスに言われたトレントに対してミルを使用する。
ポンッと小気味良い音とともに、切り株がコップ入りのジュースらしきものに変わるのだ。
なんだか、コレジャナイ感を感じながら、フロックスの持ってきた素材を色々と試してみた。
やはり中には食材にならないものもあったし、芋虫がスープに変わったとて飲みたいとは思わなかった。
「す、すごいですクロウさん。
練習したら私にもできるようになるんですか?」
僕としてはすごくガッカリしていたんだけど、ヤエも少しは魔法に興味を持ったみたいだった。
「得意魔法があるから、同じ魔法が使えるかどうかは……わからないけど」
その後は『これ、すっごく美味しいですっ』なんて言いながら、フロックスと一緒に芋虫スープを飲んでいるわけだが……僕はあまり食欲が出ずにトレントジュースだけを口にしていた。
まぁ、色々と試して分かったことは、素材によって食料か武器に。
武器は剣か槍か杖のどれかに加工ができる。
ただ、どれもステータス上昇値は微々たるものだったわけで……
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