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ダストボックスと名付けたのです
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投げた紙屑をくずかごに入れる。
ベッドから天井に目掛けてポイっと。
くずかごが天井にあるわけではまい、天井にくずかごを作ったのだ。
その中に吸い込まれた紙屑は、パッと姿を消してどこかへと……
「で、取り出したいと思うと手のひらに出てくる……と」
あれか、いわゆる空間収納か?
こんなものドリンクバーのどこに……って、答えは出てるな。まんまゴミ箱だわ……
「すっごい魔法! ねぇ、これもやって!」
「これって……そっか、夜は付けて寝てたんだっけ?」
手渡されたのはお世辞にも可愛いとは言い難い小さな首輪。
パチッと後ろで止めるような形をしているけど、それにしても小さいと思ってしまう。
「預けておいたら、寝る前にクロウとお話しできるっ」
ニコッと笑って僕の腕を掴むヤエ。
ほんっと、いちいち言うことが可愛らしい……
「わかったよ、でももうヤエには首輪はいらないと思うけどなぁ」
「そんなことないよ、それ着けていると安心して寝れるもんっ。
それに、クロウとフロックスがくれた私の宝物」
ははっ、そこまで言われるとちょっと恥ずかしい。
どうせなら無理してでも、もっと可愛らしい首輪を買ってきてもらえばよかったなぁ。
「そろそろ行くか。
俺は情報を集めにギルドと酒場を回るが、お前たちはどうする?」
「んー……旅費も欲しいし、魔物でも狩ってこようかな?」
ギルドと酒場は任せておこう。
そう伝えるとフロックスはまたも怪訝な表情で。
「まぁ……心配はしねぇが、あんまり目立つようなことはするなよ?」
そうだよね、見た目は子供なんだし……
「クロウが行くなら私も賛成っ!」
「ヤエは元気よねぇ……私はどうしよっかな? うん、やっぱり天気も良いし一緒に行こっと」
これで少年少女3人パーティーだ。
しかも種族はバラバラという、嫌でも目立ちそうな組み合わせに。
「キュッ!」
俺を忘れるな! とでも言いたげなキュー助。
うん、強いからねぇ……キュー助は。
大きな剣も咥えれるみたいだけど、水の短剣『水月』だったらもうちょっと扱いやすいだろう。
いずれは専用武器なんかも作ってあげれたらと思ってしまう。
そういえば結局何だったんだろうなぁ?
キメラとか、3つの意識が混ざったような感じがーって言うから怖いことばっかり想像しちゃったけど……
どう見ても普通の(どこが普通だ?)フェレットにしか見えない。
「じゃあ、俺は終わったら積荷の補充なんかをしておくからな。
宿の裏にいなかったら市場にいると思ってくれ」
「うん、わかったよ」
ギルドに立ち寄って、このところ討伐頻度の少なそうな魔物を探す。
中に入ると、早速周りから稀有な目で見られていたけれど、あまり気にしないでおこう。
「テトラプラント……ですか?
それでしたら南の林の中に、ごく稀に出現すると言われています。
希少個体ですので、出会ったものは幸福になれるとか。
まぁ、素材が高級な香水に使用されるくらいで、実際のところはなかなか手に入らない商人たちが広めたデマなんですが……」
「……それって僕たちに教えちゃって良いの?」
「高価買取ですからねぇ。それ自体が幸せとも言えますし、人によって幸せなんて色々ありますから」
数多くは納品しないよう、それでも単価の高く、このところ実績のない取引アイテム。
当然珍しいか強い魔物かのどちらかである。
そして今回選んだテトラプラントは前者だったので、これ幸いと依頼内容の書いた紙を一枚受け取った。
一個売れば30万G……なんて美味しいんだ冒険者稼業。
なんて思っていたのが、数時間前。
「またモノプラントだったよ。
サーチすれば一瞬で見つかると思ったのに……」
出てくる魔物の形はまるで球根のよう。
テトラプラントというのは魔物の名前かと思っていたのだが、素材の名前だそうだ。
球根を叩くと、パッと芽が出て葉っぱになる。
魔物自体はそれほど強いわけでもないので、どうやらジプラントまでは一撃で倒せるみたいだ。
トリプラントになると少しだけ強く、未だにテトラプラントには出会っていない……
「キュー助! そっちの奴を任せたっ!」
「キューッ!」
球根の魔物は総称して『プラント』という。
つまり、倒すまではどの素材が手に入るかわからない。
葉っぱが一枚のものがモノプラントで緑色。
ジプラントが2枚で黄色い葉をしている。
トリプラントになるとオレンジ色で3枚だ。
確率は一枚増えるごとに10分の1といったところか……
「クロウ、トリプラント出たよ」
「うん、ありがとうヤエ。
ダストボックス……もう少しだけ入りそうかなぁ……」
すでにプラントは数百体倒している。
周囲には冒険者の姿もなく、いかに面倒な依頼なのかを物語っているなと思う。
「ふゎぁ……お疲れー。時間も遅くなってきたし、諦めない?」
「でも……ほら、あとちょっと倒したら出るかもしれないじゃん……」
ここまでたくさん倒したんだから、せめて1個くらい。
1個出てきたらそれで帰るから……
ほら、1000体に1個だったらそろそろ手に入るかもしれないじゃん。
……結局その後も、少しだけ戦い続けていたのだけど、テトラプラントが手に入ることはなかったのだった……
ベッドから天井に目掛けてポイっと。
くずかごが天井にあるわけではまい、天井にくずかごを作ったのだ。
その中に吸い込まれた紙屑は、パッと姿を消してどこかへと……
「で、取り出したいと思うと手のひらに出てくる……と」
あれか、いわゆる空間収納か?
こんなものドリンクバーのどこに……って、答えは出てるな。まんまゴミ箱だわ……
「すっごい魔法! ねぇ、これもやって!」
「これって……そっか、夜は付けて寝てたんだっけ?」
手渡されたのはお世辞にも可愛いとは言い難い小さな首輪。
パチッと後ろで止めるような形をしているけど、それにしても小さいと思ってしまう。
「預けておいたら、寝る前にクロウとお話しできるっ」
ニコッと笑って僕の腕を掴むヤエ。
ほんっと、いちいち言うことが可愛らしい……
「わかったよ、でももうヤエには首輪はいらないと思うけどなぁ」
「そんなことないよ、それ着けていると安心して寝れるもんっ。
それに、クロウとフロックスがくれた私の宝物」
ははっ、そこまで言われるとちょっと恥ずかしい。
どうせなら無理してでも、もっと可愛らしい首輪を買ってきてもらえばよかったなぁ。
「そろそろ行くか。
俺は情報を集めにギルドと酒場を回るが、お前たちはどうする?」
「んー……旅費も欲しいし、魔物でも狩ってこようかな?」
ギルドと酒場は任せておこう。
そう伝えるとフロックスはまたも怪訝な表情で。
「まぁ……心配はしねぇが、あんまり目立つようなことはするなよ?」
そうだよね、見た目は子供なんだし……
「クロウが行くなら私も賛成っ!」
「ヤエは元気よねぇ……私はどうしよっかな? うん、やっぱり天気も良いし一緒に行こっと」
これで少年少女3人パーティーだ。
しかも種族はバラバラという、嫌でも目立ちそうな組み合わせに。
「キュッ!」
俺を忘れるな! とでも言いたげなキュー助。
うん、強いからねぇ……キュー助は。
大きな剣も咥えれるみたいだけど、水の短剣『水月』だったらもうちょっと扱いやすいだろう。
いずれは専用武器なんかも作ってあげれたらと思ってしまう。
そういえば結局何だったんだろうなぁ?
キメラとか、3つの意識が混ざったような感じがーって言うから怖いことばっかり想像しちゃったけど……
どう見ても普通の(どこが普通だ?)フェレットにしか見えない。
「じゃあ、俺は終わったら積荷の補充なんかをしておくからな。
宿の裏にいなかったら市場にいると思ってくれ」
「うん、わかったよ」
ギルドに立ち寄って、このところ討伐頻度の少なそうな魔物を探す。
中に入ると、早速周りから稀有な目で見られていたけれど、あまり気にしないでおこう。
「テトラプラント……ですか?
それでしたら南の林の中に、ごく稀に出現すると言われています。
希少個体ですので、出会ったものは幸福になれるとか。
まぁ、素材が高級な香水に使用されるくらいで、実際のところはなかなか手に入らない商人たちが広めたデマなんですが……」
「……それって僕たちに教えちゃって良いの?」
「高価買取ですからねぇ。それ自体が幸せとも言えますし、人によって幸せなんて色々ありますから」
数多くは納品しないよう、それでも単価の高く、このところ実績のない取引アイテム。
当然珍しいか強い魔物かのどちらかである。
そして今回選んだテトラプラントは前者だったので、これ幸いと依頼内容の書いた紙を一枚受け取った。
一個売れば30万G……なんて美味しいんだ冒険者稼業。
なんて思っていたのが、数時間前。
「またモノプラントだったよ。
サーチすれば一瞬で見つかると思ったのに……」
出てくる魔物の形はまるで球根のよう。
テトラプラントというのは魔物の名前かと思っていたのだが、素材の名前だそうだ。
球根を叩くと、パッと芽が出て葉っぱになる。
魔物自体はそれほど強いわけでもないので、どうやらジプラントまでは一撃で倒せるみたいだ。
トリプラントになると少しだけ強く、未だにテトラプラントには出会っていない……
「キュー助! そっちの奴を任せたっ!」
「キューッ!」
球根の魔物は総称して『プラント』という。
つまり、倒すまではどの素材が手に入るかわからない。
葉っぱが一枚のものがモノプラントで緑色。
ジプラントが2枚で黄色い葉をしている。
トリプラントになるとオレンジ色で3枚だ。
確率は一枚増えるごとに10分の1といったところか……
「クロウ、トリプラント出たよ」
「うん、ありがとうヤエ。
ダストボックス……もう少しだけ入りそうかなぁ……」
すでにプラントは数百体倒している。
周囲には冒険者の姿もなく、いかに面倒な依頼なのかを物語っているなと思う。
「ふゎぁ……お疲れー。時間も遅くなってきたし、諦めない?」
「でも……ほら、あとちょっと倒したら出るかもしれないじゃん……」
ここまでたくさん倒したんだから、せめて1個くらい。
1個出てきたらそれで帰るから……
ほら、1000体に1個だったらそろそろ手に入るかもしれないじゃん。
……結局その後も、少しだけ戦い続けていたのだけど、テトラプラントが手に入ることはなかったのだった……
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