【未完】ファミレス転生 〜デザートはケモノ成分大盛りで〜

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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如月やよいの悩み

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 クロウが転生するかなり前、一人の少女は女神のいる神界で不安になっていた。

「私は一体……どうしちゃったの?」
 先ほどまで、ファミレスで明香と喋っていた。
 しかし、気付けばここは真っ白な空間である。

「ようやく目覚めましたか。
 まぁ早い方ですね、あちらに引っかかっている魂は未だにうんともすんとも言いませんから」

 不思議な女性が私に問いかけてくる。
 『何を望むのだ』と。
「えっ……鏡を見に来ただけなのに、どうして?」
 私の中で巻き起こる混乱は、そのまま思っていることを口にすることで解消される気がしたのだろう。
 誰かが助けに来てくれるとも思ったかもしれない。

 だが、結果として私は不思議な世界へと落とされた。白い姿の女の両腕によって……

 突き落とされたのだ。謎の場所から新しい世界へと。

「鏡……か、面白い力を選ぶじゃないか」
 何を言っているのか、さっぱりわからなかった。
 そして気付けば私は動物になっていた……

 動物……いや、アニメなんかに出てくるケモノの姿である。
 新しい生を受け、この私のいる世界が夢ではないのだと気付くのに10日ほどはかかった。

 その頃には私も立って歩いていたのだ。
 ワーウルフと呼ばれる姿で、裸のまま家の中を……
 子供の獣人は成長が遅くなるからと衣類は基本的には身に付けないのだと聞いた。
 それでも中には大人の真似をして着たがる子もいたりするらしい。
 当然、私もねだった。

 5歳にもなると、近所の友達ができた。
 名前はフロックス。オスのワーウルフだ。
 他の種族だと力が違いすぎて怪我をさせる恐れがあったらしい。
 だからそれまでは家族以外と話すことは滅多になかったのだ。

「フロックス、ちゃんとお風呂入ってる?」
 匂いが気になり出したのは10歳の頃。
 それまではケモノ臭とでもいうのか、これが当たり前だと感じていた。

 ただ、日に日に強く感じてくるその匂いは私が原因だった。
 一定の間隔で訪れる隠しきれない欲情。
 それは私がフロックスの匂いに強く惹かれてしまっているからなのだ。

 恥ずかしい、我慢できない……
 そう思うたびにフロックスには辛く当たってしまったと思う。
 そして私は……逃げてしまった。

 こんな淫靡な身体が嫌だ。
 力は強く、周りに馴染めない身体は嫌だ。
 毛むくじゃらで……お洒落もできない生活はもう辞めたいっ!

 私は逃げて、一人泣きながら東の街へと身を移していた。
 元々は少ないワーウルフ。
 街が変われば解消される問題は多かった。
 まずは着るものだ。
 動きやすさや大事な箇所を隠すのに真剣に選んだ。
 尻尾を出す為に、後ろにスリットがありフックが上部に付いているパンツ。
 探せば色々とあるものだ……

 性欲は我慢した。
 どうにもならなければ、諦めて一人で解消するようにした。
 こんなことは前世でもやっていなかったというのに……

 そして大事なことがもう一つ。
 お金のことだ……

 私のスキルは『鏡』。
 何ができるのかも詳しくは知らない。
 とにかくは冒険者として登録し、魔物がいる平原で試す他なかったのだ。

 急に家出した少女を拾ってくれるところなど無いと思っていたし、元の街に戻るのも嫌だった。
 故の選択。
 冒険者として生きていければ、生活の殆どが改善されると信じていたのだ。

 結果、私のスキルはどうやら冒険者に向いていることは理解した。
 さすがは神の力なのだろう。
 超感覚や魔法を使う獣人たちに引け目は感じていたが、それを軽く上回るスキルを、私は持っているみたいだ。

 鏡……考え方少し違うだけで、こんなにもさまざまな効果を生み出す……か。
 白い衣装の女が女神だったのだろう。
 アレを許すつもりはない。
 だが、この力は大いに活用させてもらおうじゃないか……
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