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文化祭
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「疲れた……」
半ば強制的に校舎内の見回りに同行させられてから三十分後。
飲み物の調達に行きたいと近くの教室でやっているカフェに入って行った北川辺先輩を見送ると、廊下の壁にもたれかかってそう呻く僕。
──装飾品やコスプレが解禁されたことではしゃぎ過ぎちゃう人たちもいるだろうなとは思っていたけど、まさかここまでとは……!
少しでも疲れを取るために両目を瞑った際に脳内を駆け巡るのは、この三十分の間に僕が服装の指導に入った生徒たち。
おとぎ話に出てくる王子様とお姫様が着るような煌びやかな衣装に身を包み『廊下が汚いからドレスが汚れた』と通路のど真ん中で喚き散らす男女カップル、憧れのヤンキー漫画の登場人物たちになりきるためと改造学ランでナンパに繰り出し他校の女子をドン引きさせていた男子の一団、『小悪魔ちゃんのコスプレです!』と言い張り下着姿にしか見えない格好で校内を練り歩いていた女子グループ──……思い出すだけで頭がいたくなってくる。
服装に関して緩くなっても節度を守って楽しんでいる生徒がほとんどの中、そんな感じで目に余る行動をする人たちも一定数いた。特に二、三年生は去年まで文化祭でもクラスTシャツ以外のイレギュラーを許されてなかった反動か、余計にハメを外してしまったように見える。
──最初は北川辺先輩に付いてくだけのつもりが、あまりにも酷かったんで途中から僕もがっつり指導に入ってしまった……。
──午後には生徒会の方で決めた見回りもあるっていうのに体力持つかなぁ。
「待たせたな、東山くん!」
というかあの人が買い物に行った今なら適当な理由を付けてここを離れられるのでは?と思い立ったところで、飲み物を両手にひとつずつ持った北川辺先輩が戻って来る。……判断が遅れて逃げそびれてしまった。
「カフェオレと無糖のアイスコーヒー、どちらが好きかな?」
「えっ?あ、すみません僕の分まで!おいくらでしたか?」
「結構だよ。君には存外負担をかけてしまったからな、労いだと思って受け取ってほしい」
「……そういうことでしたら……カフェオレをいただいて良いですか?」
「ああ」
透明のプラスチックのカップに並々と入ったカフェオレを僕に渡し、傍の壁に背を向けて立つ北川辺先輩。僕よりも多くの指導をこなしたはずなのに疲れた様子はなく、涼しい顔でアイスコーヒーを啜っている。
「それで──君はいつ風紀委員会に来るのだろうか」
「ぶっ……!?」
ストローからひとくち飲み、ああ僕好みの甘さだ……疲れた身体に染みる……と気が抜けたところで北川辺先輩から放たれたそれに、噴き出しそうになったふたくち目のカフェオレをかろうじて飲み込む。
──そうだった、僕まだ北川辺先輩にお返事してない!
「先ほどの指導も実に素晴らしかった。下級生にはその服装の何がモラルに反するのか要点を噛み砕いて説明し、上級生に対しては毅然と、かつ敬意を忘れない丁寧な言葉遣い──君の指導には風紀委員の理想が詰まっている!」
「ああああのですね北川辺先輩っ、僕は風紀委員長には……」
「さすがにあそこまで混沌とするとは私も予想外だったが――」
次期生徒会長と次期風紀委員長、身の丈に合わない期待をふたつも背負ってしまってることを今更思い出しキリキリと胃を痛めながら丁重にお断りしようとするけど、急に声のトーンを落とした前置きに阻まれる。
「たった一日、装飾品などを解禁しただけであの惨状になるのなら……来春以降はどうなると思う?私は考えるだけで肌が粟立つよ」
そうこちらに語りかけながらも、北川辺先輩の視線は廊下を歩く生徒たちに固定されている。“来春以降”とは諸々の調整が済んでついに来年の春から反映される、服装に関する規定を少し緩くするための校則の改訂のことだろう。……安西会長の前の代の生徒会長の時から進めていたもので、これがきっかけで生徒会と風紀委員会の不和が決定的なものになったと聞いている。
「“常識の範囲内で”などと個人に判断を委ねる形で規制を緩めれば、自由と身勝手を履き違えた者が秩序を乱す。それで割を食うのは、大多数の良識ある生徒たちだ」
「それ、は」
「そんな未来が目に見えていたので私としてはなんとしても校則の改訂を食い止めたかったが──今更どうこう出来ることではないのでこれ以上の言及は控えよう」
今回の装飾品の解禁を決めた安西会長を暗に批判するような言い回しに反発の言葉が出かかったけど、前方に向けられるあまりに真剣な眼差しにひとまずは話を聞こうと続きを待った。
「スカートの短さや装飾品に関する許容範囲が曖昧になる故に、服装に関する指導に入る際は“常識の範囲内で”を軸に臨機応変に対応出来る能力が求められる。……風紀委員会の後輩たちは皆優秀で従順だがいかんせんその辺りの判断が不得手だ。このままでは私の愛した秩序ある学校が落ちぶれてしまう──そう憂いていた時、君に出会った」
ここで、それまで前を向いていた北川辺先輩が僕に顔を向ける。
「やるべきことを瞬時に見極め実行に移すまでの速さ、誰が相手でも物怖じしない胆力。君なら校則が改訂された後も清く正しく、そして時には厳しさを持ってこの学校の秩序と平和を守ってくれると確信している。──もう一度だけ聞こう東山くん、君は私の次の風紀委員長にならないか?」
「……僕は……」
体育祭の時の勧誘とはまた違った本気のそれについ押し黙る僕。
──正直、生徒会長になるよりも気苦労は少なそうだもんな……。
北川辺先輩や他の風紀委員の面々が聞いたら嬲り殺されそうな本音が脳裏を掠める。最初に勧誘された時は一年生からやってる生徒会ですらいっぱいいっぱいなのに畑違いのところで委員長なんて荷が重いにもほどがある!なんて思ったけど、改めて考えると『正義の心に目覚めたので風紀委員長になります!』と言えれば次期生徒会長を辞退する理由としてじゅうぶんだ。風紀委員の主な仕事である放課後の見回りと校則違反者への指導は確かに大変だけど生徒会の仕事で僕もその辺りの心得は叩き込まれてるし、全校生徒の代表である“生徒会長”の肩書きを背負うよりはずっと気が楽なんじゃないか。
──って、それとこれとは話が別なんだけど。
「……僕は、北川辺先輩が思ってるような人間じゃありません」
北川辺先輩の話が始まってから飲まずにいたカフェオレを両手で軽く握りながら口を開く。
「僕は他の人よりも要領が悪いからいち早く動く必要があるってだけで、指導だって心の中ではこれで正しいのかな?逆ギレされたらどうしよう……っていつもビクビクしながらやってます。それでもどうにか頑張れてるのは今の生徒会のメンバーが大好きで──彼らに失望されたくないからです」
お互いがお互いの方を向いてるので必然的に北川辺先輩と見つめ合う形になり、落ち着かなくて一瞬だけ視線を彷徨わせる。その時見えた北川辺先輩の服装は半袖シャツと白のベスト、きっちりと締めたネクタイ、スラックスという学校指定のもので、それは安西会長と間壁先輩も同じだったけど、ブレスレットやネクタイピンなど何かしらの装飾品を身に着けていたあの二人とは違い余計な物が一切ないその姿は周りが好きな格好をしている中で逆に個性を際立たせていた。
「北川辺先輩の言う通り、校則を改訂した直後は何かしらの問題が起きるのは間違いないと思います。でも僕は生徒会役員として、信頼出来る仲間たちとその課題に向き合っていきたい。……だからごめんなさい、僕は風紀委員長にはなれません」
安西会長には任期が終わるまで生徒会にいますと、祖父江くんには彼の右腕になると約束してるからというのもあるけど、現状これが一番の理由だ。
なるべく深く下げた頭を次に上げた時には、北川辺先輩の顔はまた廊下の方に向けられていた。
「……あくまで生徒会長として立ち向かいたいと言うのだな」
「いえ、そもそも僕は生徒会長には──」
「他ならぬ東山くんがそう言うのなら致し方ない。安西も君を次の生徒会長にすべく推薦状の用意を始めたと聞くしな!」
「え"っ!?ちょっとそれ僕初耳──」
「さて!そろそろ他の風紀委員たちの手が空く頃だろう。それを飲んだら君はもう上がってくれ!」
「まっ、待ってください推薦状についてもう少し詳しく──」
「……最後に君と過ごせて楽しかったよ」
「えっ?」
「それでは、良い文化祭を!」
今最後って言った?それは、北川辺先輩は三年生だから生徒として文化祭に参加するのはこれで最後だろうけど──と少し考え込んでる間に、かの人は颯爽と歩き出していた。納得はいかないけど、まだ飲み物のお礼を言っていなかったことを思い出して「カフェオレありがとうございました!」とだけ声をかければ、こちらに背を向けたままひらりと片手を上げて応えてくれた。
──推薦状の話がすっっごく気になるけど、次会長に会ったら直接聞いてみるか……。
「──あれ、電話……?」
と、ここでストラップを付けて斜め掛けにしていたスマホが震えて着信を知らせる。タイミングが良いことに安西会長からだ。
「──はいっ、東山です!」
【安西だ。東山、今時間はあるだろうか?】
「時間ですか?ちょうど今空いたところですが……」
【それは良かった】
僕の返事に満足気に頷く気配を電話越しに感じる。そこから一拍置いた後、会長は続けた。
【今から体育館へ来てくれないか】
◇◇
「東山」
「会長!」
ずっと手に持ったままだったカフェオレを二秒くらいで飲み干してから体育館へ向かうと、扉の前で安西会長が待ってくれていた。
「先ほど教室に寄った際君が見当たらないと思えば、午前中はフリーになったと祖父江から聞いた。呼びつけてすまなかったな」
「いえ、それは全然……」
申し訳なさそうに言う会長に軽く首を振って答えながら、「こっちだ」と歩き出した背中に付いていく。
──北川辺先輩は、安西会長が僕を次の生徒会長にするにあたって推薦状を作ってるって言ってたけど……本当だったら大変なことだぞ。
──完全に外堀を埋められる前にどうにか思いとどまってもらいたいけど──今ここで切り出しても良いのかな……?
迷ってるうちに正面の扉ではなく裏口を通って辿りついたのは、演劇部が絶賛公演中のステージ上──の、端っこ、いわゆる舞台裏の部分だ。
「ここは放送委員の管轄なのだが、前生徒会長の伝手で一年生の頃から入れてもらっている。その礼も兼ねて君と解散してからはずっとステージの準備を手伝っていた」
「そうだったんですね……」
「下手に午前中はフリーだと教えなくて良かったな。最初から知っていれば問答無用で付き合わせていた」
「むしろ付き合いたかったですよ……」
「そうか?」
──“予定”って、ステージ発表の準備のことだったのか。それなら午前中はフリーだって最初から話しておけば良かった……。
反対側の袖には色々な機材やステージの出演者が待機する場所があるけど、ここはそんなに広くなくて使いようがないからか今いるのは僕と安西会長の二人だけだ。
分厚いカーテンの隙間からは演劇部が迫真の演技を繰り広げているのがよく見えるのに、会長の視線はその前の観客席に注がれている。今の体育館はステージ以外の照明はほぼ落とされているけどそれでも観客の顔がよく見えて、一般公開中で外部の来場者も混ざっているなかうちの生徒がどこにいるのかもすぐに分かった。
「“生徒会が文化祭に向けて進めてきた準備が正しかったどうかは当日の参加者の表情が教えてくれる”、“特にステージ発表を見てる観客の顔は分かりやすい”──そう前会長に教わった。だから俺も、今日は必ずここに来ようと決めていた」
「表情が……」
安西会長に倣い、その後ろから少し顔を出して観客席を見てみる。ちょうど演劇部の公演が終わり出演者が一斉にお辞儀するのを観客たちがスタンディングオベーションで称える様子は、みんな純粋に劇を楽しんでいたと分かる。──だけど会長の顔はどこかすっきりしないものだった。
「……俺は大きな間違いを犯してしまった」
「え?」
「ここまでの道中、“常識の範囲内”を明らかに逸した格好の生徒を何人か見た。去年まではそんなこともなかったが校則から解放され気が大きくなったのか、外部からの来場者に難癖を付ける者もいた」
観客たちの方を見たまま──だけどどこか別のところに意識をやっているような──ぽつぽつと話される内容には僕も覚えがあって、思わず息を飲む。
──会長もあの惨状を見ていたのか。
「厳しい校則に縛られ自分らしさを見失わないでほしい──そう思い装飾品の解禁を決めたが、結果一部の生徒の問題行動を助長させた。こうなると来春から反映される改訂された校則についても異議を唱える者が現れるだろう。……次に生徒会長を引き継ぐ者に大きな課題を残すことになった」
ここで観客席から僕の方へ視線を移す安西会長。次に生徒会長を、と言った時にこの人が誰を思い浮かべたのかなんて、この流れで察せないわけがなかった。
──安西会長は、僕が次の生徒会長になるんだと信じきっている。
──でも……。
安西会長がここまで真剣にこの学校のことを考えているなら、尚更僕は生徒会長を継ぐべきじゃない。いつも目の前のことをこなすのに精一杯で、この学校の未来だとか生徒たちが自分を見失わないようにだとか考えていられないからだ。
──僕がもっと器用で、ポンコツじゃなくて……それこそ会長が本来付き合いたいタイプである思慮深い人間だったら、胸を張って後を引き継げたんだろうけど。
今の僕じゃどんなに取り繕ってもいつか必ずボロが出てしまう。尊敬する先輩に──ずっと好きで奇跡的にお付き合い出来た恋人に“コイツは大した奴じゃなかった”なんて、幻滅されたくない。
「生徒会の後輩たちには本当に申し訳ないことをした。来年には俺はこの学校にはいないが償いは必ずする、来春以降も何か困ったことがあればいつでも連絡を──」
「──のは」
「ん?」
「後悔するのは、まだ早いんじゃないでしょうか」
幻滅されたくない。だから今すぐ適当な理由を付けて辞退の意志を伝えないといけない、北川辺先輩に持ち掛けられた次期風紀委員長の話をきっぱりと断れたみたいに。……そう思うのに、実際口を突いたのは予定とは違った内容だった。
「先ほど校舎内の見回りに少し参加していたので、状況は僕も把握しています。確かに目に余る服装や行動の生徒が多かったので、月曜日風紀委員が何かしらの意見書を叩きつけてくるのは間違いありません。……でも体育館(ここ)に来るまでの間、対策をいくつか考えたので文化祭の振り返りとして組み込んで迎え撃ちます。卒業後の安西会長のお手を煩わせるほどじゃないでしょう」
卒業後、と言ったのは自分だけど、今目の前にいる彼は来年には学校にいないんだという事実が胸をぎゅっ、と握り潰す。安西会長と言えば突然堰を切ったように喋り出した僕に面食らってるようだけど、顔だけこちらに向いていたのを身体ごと動かして聞く姿勢を取ってくれていた。
「前の生徒会長は、“生徒会が文化祭に向けて進めてきた準備が正しかったどうかは当日の参加者の表情が教えてくれる”……そう仰っていたんですよね。なら今年は大成功です、ほとんどの生徒は常識の範囲内で好きな格好を楽しんでいました」
言いながら真っ先に思い出されるのは思い思いの格好をし、弾んだ足取りで通り過ぎていく顔と名前しか知らない生徒たち──ではなく、今日ここに来るまでに出会った生徒会メンバー。おばあさんが買ってくれたいうピアスを付けた祖父江くん、鮮やかな色のリボンを付けてお揃いの髪型なのだと教えてくれた小川さんと後藤さん、部活の後輩にもらったというネクタイピンを付けた間壁先輩。……僕とお揃いの物を身に着けたいとブレスレットをくれた安西会長。
「だからそんな顔しないでください。あなたが散々頭を悩ませながら進めてきたことは間違いなんかじゃないって、僕が必ず証明しますから」
──あっ、次の生徒会長を辞退したいって言えてない……!
言い切ってからそう気づいて心の中で慌てふためく。だって償いは必ずすると言った安西会長の、今にも泣きそうな顔を目の当たりにして自分の要望だけ押し通せるわけがないじゃないか。
──それにしたってあの言い方だと、東山は生徒会長になるの乗り気なんだなって捉えられてもおかしくない!
──っていうか待って、いつのまにか会長の顔がものすごく近くにある!!
語っているうちに熱が入り過ぎたのか、気づけば僕が安西会長へ詰め寄るような形になってしまっている。
「な、なんて偉そうに言っちゃいましたけどっ。基本的に僕は身内が楽しそうだったらそれで良いので、そういう意味では生徒会長には向いてないなーって思ってて……!」
きっぱり断ることは出来なかったけど、こう言っておけばそんな身内贔屓な奴を生徒会長に指名したくなくなるはずだ。
──……あれ?これ言うくらいなら最初から“実は僕会長が思ってるよりポンコツなんです”って白状した方がイメージ的に良かったんじゃ……?
こういう行き当たりばったりなところが僕を生徒会長にしてはいけない一番の理由だ。そう思いながらも、ひとまず文字通り目と鼻の先にある会長のご尊顔から距離を取るのが先だとそろそろと後ずさろうと──したけど、前から伸びてきた手が僕の左頬を捉えたことによって叶わなかった。
「かっ、会長……?」
「──全体を変えるには、まずは身近なところに目を向けることが重要だ」
数秒前まできゅ、と固く結ばれていた口元はいつのまにか緩やかな弧を描いていて、ああ良かったいつもの安西会長の顔だ、とほっとしている間に僕の頬を包み込む大きな手は後頭部をもがっちり巻き込み、気づけば抜け出せなくなっていた。
「少なくとも俺はそう教わってきた。文化祭での装飾品の解禁を最終的に決断したのは“すべての生徒に自分らしく楽しんでほしい”という思いからだが、きっかけは可愛い恋人と揃いの物を着けて高校最後の文化祭を歩きたい──そんなものだった」
「……恋人って……?」
みるみるうちに熱が籠ってくる瞳はこれまでに何度も見てきたもので答えなんて分かりきってるのに、ほぼ無意識にそう問いかければ返事の代わりに軽く首を傾けて角度を変えた会長の顔がゆっくりと僕のそこに被さってくる。額、鼻先……とパーツ同士が掠めたところで咄嗟に目を閉じた。
──こ、これってもしかしなくてもキス……するってことだよね?ぼぼ僕、とうとう会長とキスを……!?
──確かにここは薄暗いし人もこないし、そういうことをするにはうってつけだけれども!
──あっ、違う。こんなところでキスなんかしたら……!
ここが学校だったことを思い出し慌てて両目をカッ、と見開くと(絶対にもうちょっと可愛い開眼の仕方があった)、そっと離れていく会長の罰の悪そうな表情が視界に入った。
「──生徒会役員が学校ですることじゃないな」
「……ですね」
同じタイミングで気づいたらしい会長に頷いて応える。現生徒会と次期生徒会長が学校でキスしたなんて、風紀委員の耳に入れば大変なことに──いや、だから僕は生徒会長にはならないんだって!あまりにあちこちで言われるからついに自分から名乗っちゃったよ……。
「すまなかった。君に一喝入れられ色々と吹っ切れてしまったみたいだ」
「い、いえ。僕も乗ってしまいそうになったので……」
「すんでのところで思いとどまれて良かった。……せっかくなら、いつもの姿の君としたいしな」
「いつもの……?──あっ」
僕の頬に置いていた手も外して控えめに上下を行き来する会長の視線を目で追い掛けて、気づいた。
──僕、女装したままだった……!
途中からすっかり忘れていた。会長の前には小川さんと後藤さんと間壁先輩、北川辺先輩にだって会ったのに、誰一人僕の姿に言及しなかったから……。っていうかあの人たち──会長も含めて、全員この姿をひと目見ただけで僕だって気づいたけど観察眼すご過ぎない……?
「午後の見回りまでまだ時間があるだろうから着替えてくると良い。……終わったらメッセージをくれ、君が良ければ一緒に後夜祭に出よう」
「……はいっ!」
願ってもないお誘いにそう元気よく頷くと、僕はいそいそと自分の制服が置いてある教室へと戻るのだった。
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