私の主人はワガママな神様

どろろ

文字の大きさ
2 / 146

1.1日のはじまり(2)

しおりを挟む
「うぐぅ……ね、む……い………」
「ほら、起きてください。遅刻しますよ」
「ち、こく……? んん………あ、学校?!」

 意識が覚醒したのか、がばりとベッドから転げ落ちるように飛び起きた。

「いっ、今何時だ?!」
「おはようございます。7時10分です」
「あ、おはよう……なんだ、まだそんな時間か。焦ったあー」
「今日の朝食は和食ですが、飲み物はどうしますか?」
「んー……いつものカフェオレでいいや」
「かしこまりました。では、リビングで待っていますので、ご支度を」
「はーい。タオルは?」
「こちらをお使いください」
「ん、ありがとう」

 バンドタオルはを手渡すと、家主はパタパタとスリッパを鳴らしながら脱衣所へ向かった。
 その間に彼が所望したミルクたっぷりのカフェオレと朝食をリビングのダイニングテーブルに準備して、テレビを付ける。彼がいつも見ている朝のニュース番組にチャンネルを設定する。

「んー、いい匂いがするなー」

 顔を洗ってさっぱりした彼は、そう言ってダイニングテーブルの前に座る。いただきます、と手を合わせると行儀良く食べ始める。
 彼が食事をしている間に使った調理器具を片付け、食事を終えて身支度をしている間に食器を片付ける。


「よし、準備できたぞー」

 彼が身支度を終えリビングへ戻って来ると、あらかじめ準備していたコートを開いて差し出す。彼はそれに自然に腕を通した。

「では、行きましょうか」
「ああ、頼む」

 彼の学校カバンと弁当の入った袋、車のキーを持って一緒に家を出た。しっかりと施錠すると、エレベーターに乗って最上階から地下の駐車場まで一気に降りる。
 車の左後ろのドアを開くと、彼は不満そうに首を振った。

「今日は助手席が良い」
「かしこまりました」

 カバンと弁当の袋を後ろの席に置いて、ドアを閉めた。助手席のドアを開けようとする前に、彼は勝手にドアを開けて既に乗り込んでいた。自分は運転席に座り、エンジンをかける。
 
「何か良いことがありましたか?」
「ん? いやー、別に!」

 助手席を所望する日は、決まって機嫌が良い日だ。はぐらかされてしまったが、嬉しそうに笑う彼の顔はとてもわかりやすい。
 ここ数日、彼はとても機嫌が良い。それもそのはず。もうすぐ彼の17歳の誕生日なのだ。祝って貰えるのが楽しみだなんて、年相応の少年らしくて可愛らしい。もちろん、盛大に祝うつもりである。
 しばらく車を走らせて、最寄り駅のロータリーに駐車場する。

「よし、行ってくる!」
「お待ちください、今お荷物を……」
「それくらい自分で出来るから、大丈夫だ」

 そう言って彼は後ろの席から勝手にカバンと弁当箱の入った袋を取り出した。2つ持つのは面倒だったのか、カバンを開いて無理やり弁当袋を詰め込んだ。

「じゃあ、行ってきます!」
「はい、いってらっしゃいませ」

 元気に駅の方へ駆けていく背中を見送る。ここまでが、この男——七海壮介ななみそうすけの朝の仕事である。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

処理中です...