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10.家族の集まり(6)
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仙台駅に向かう東北新幹線の中、兄弟たちはそれぞれ好きなことをし始める。晴太郎と七海はせっかくだからと座席を回転させてボックス席にし、後ろの座席に座っていた風太郎とその従者である水森と話をしていた。
「晴太郎、久しぶりだね。なんか……大人っぽくなったね」
「風兄さんこそ、久しぶりにこういう集まりに現れたな」
「まあ、今回のは姉さんの結婚祝いだし、さすがに……七海も久しぶり」
「お久しぶりです、風太郎様。水森も」
風太郎は中条家の第三子。天才エンジニアで、中条ホールディングスシステム開発部のエースと呼ばれている。他の天真爛漫な兄弟たちとは違い、少し引っ込み思案なところがあるので、こういった集まりに参加するのは珍しい。
風太郎の従者である水森は、風太郎の仲の良い同級生から従者になった。彼もシステム開発部で働くエンジニアで、仕事も私生活も風太郎の右腕として頑張っている。唯一、七海より歳下で後輩の従者だ。
「大人になったと思ったけど、甘えたなとこは直ってないんだね……」
「えっ俺が? 甘えた?」
「うん、だって……ずっと七海に引っ付いてるじゃないか」
風太郎が七海と晴太郎を指差していった。彼の言う通りだ、と七海は思う。今日の晴太郎は何故かずっと七海の腕にくっ付いていて離れない。香菜子の前では仕方がないと思っていたが、今彼女は離れた席にいる。
「まあ、仲良いことは良い事ですし。ね、晴太郎様」
「水森の言う通りだけど……ま、いいや」
風太郎が何か言いたげにしていたが、大した事ではなかったのか、言うのをやめてしまった。
「今回の旅行って何で仙台なんだろ。風兄さん、何か知ってる?」
「……たぶんだけど、仙台支店の本格始動の前に、仙台に来たかったんじゃないかなあ」
「仙台支店、ですか?」
仙台支店、と聞いて七海は首を傾げる。ここ数年、社内で仙台支店が出来るという噂話が流れてはいるが、本当の事は詳しく知らなかった。
風太郎の話では、すでにオフィスも借りていて水面下では動いているらしい。来年の春には本社から仙台へ人を動かし、仙台支店での採用活動を本格的にスタートさせるそうだ。
「仙台への辞令があるかも、という噂は本当だったんですね」
「うん、僕も詳しくは聞かされてないけど……来年にはもっと人が行くと思うよ」
「仙台に行かないかって言われた」と総務部の数人が話していたことを思い出した。今は主に東北出身者に声を掛けているらしい。
晴太郎の従者である七海には転勤なんて遠い話だ。彼の傍に居るのが本職なので、本社からの異動は絶対にない。
仙台駅に向かう東北新幹線の中、兄弟たちはそれぞれ好きなことをし始める。晴太郎と七海はせっかくだからと座席を回転させてボックス席にし、後ろの座席に座っていた風太郎とその従者である水森と話をしていた。
「晴太郎、久しぶりだね。なんか……大人っぽくなったね」
「風兄さんこそ、久しぶりにこういう集まりに現れたな」
「まあ、今回のは姉さんの結婚祝いだし、さすがに……七海も久しぶり」
「お久しぶりです、風太郎様。水森も」
風太郎は中条家の第三子。天才エンジニアで、中条ホールディングスシステム開発部のエースと呼ばれている。他の天真爛漫な兄弟たちとは違い、少し引っ込み思案なところがあるので、こういった集まりに参加するのは珍しい。
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「えっ俺が? 甘えた?」
「うん、だって……ずっと七海に引っ付いてるじゃないか」
風太郎が七海と晴太郎を指差していった。彼の言う通りだ、と七海は思う。今日の晴太郎は何故かずっと七海の腕にくっ付いていて離れない。香菜子の前では仕方がないと思っていたが、今彼女は離れた席にいる。
「まあ、仲良いことは良い事ですし。ね、晴太郎様」
「水森の言う通りだけど……ま、いいや」
風太郎が何か言いたげにしていたが、大した事ではなかったのか、言うのをやめてしまった。
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「……たぶんだけど、仙台支店の本格始動の前に、仙台に来たかったんじゃないかなあ」
「仙台支店、ですか?」
仙台支店、と聞いて七海は首を傾げる。ここ数年、社内で仙台支店が出来るという噂話が流れてはいるが、本当の事は詳しく知らなかった。
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