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11.七海の弱点(7)
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「……七海、大丈夫じゃないだろ。体調悪いの、ずっと隠してたのか?」
部屋に戻りたい、と言ったのはきっと七海をあの場から連れ出すため。離れた場所にいたのに、しっかり七海の異変に気付き気を回せるほどに晴太郎は立派になっていた。
「本当に……体調は、大丈夫です」
「嘘だろう。なんだよ……俺にも本当のこと、言えないのかよ……」
晴太郎はきゅっと唇を噛み締めた。拗ねたようなその表情は、なんだか少し悲しそうに見える。どうして言わないんだという不満や怒りではなく、どうして頼ってくれないんだという悲しさや悔しさが滲み出ていた。そんな顔をさせるつもりではなかったのに。
晴太郎が悲しそうだと、七海も悲しい。なんとかしてやりたくなる。主人にそんな顔をさせてしまうくらいなら、いっその事打ち明けてしまっても良いのではないか? 酒のせいで回転の悪い頭に、そんなことが過る。
——中条家の人にバレたら従者で居られなくなるかもしれないのに? 本当に大丈夫なのだろうか? 酔った頭では何が最善なのかわからない。
けれども、ひとつだけ信じられることがある。晴太郎も七海と一緒にいたいと思ってくれているということ。
だから、晴太郎に言っても、彼はきっと他言しない。わざわざ自分から、七海と離れ離れになるような事はしないのだ。
「……実は、下戸なんです」
「…………げこ?」
「酒……駄目なんです」
「えっ、そうなのか?」
「ずっと、黙っていて……すみません。本当に、駄目なんです……弱いんです……」
「そっか、知らなかったな……」
こんなに一緒に居てまだ知らないことがあったのか、と晴太郎は驚いた様子で言った。誰にもバレないように隠していたのだから、知らないのも無理はない。
「何で黙ってたんだ? 最初から言ってくれればみんな飲ませたりなんかしなかったのに……」
「弱いと……クビになる、かもしれない」
「そんな決まりあったのか?」
「クビは、嫌なんです……俺は、あなたの傍にいたい」
「むっ、そ、そうか……」
少し嬉しそうな、恥ずかしそうな複雑な顔をして晴太郎が視線を逸らす。照れさせるようなことを言ったつもりはなかったのだが、何か恥ずかしい事でも言ってしまっただろうか。酔った頭ではよくわからない。
「七海、これ何本に見える?」
「…………4本です」
「違う、2本だ……相当ダメなんだな、早く部屋に行こう」
目の前に晴太郎が手を出してきたが、その指の本数すら数えられない。目が悪いわけではないのに、視界がぼやけてはっきりしない。七海がもう限界が近いと分かり、晴太郎は部屋へ急ぐ。晴太郎は部屋までの間、ずっと七海に肩を貸してくれた。
部屋に戻りたい、と言ったのはきっと七海をあの場から連れ出すため。離れた場所にいたのに、しっかり七海の異変に気付き気を回せるほどに晴太郎は立派になっていた。
「本当に……体調は、大丈夫です」
「嘘だろう。なんだよ……俺にも本当のこと、言えないのかよ……」
晴太郎はきゅっと唇を噛み締めた。拗ねたようなその表情は、なんだか少し悲しそうに見える。どうして言わないんだという不満や怒りではなく、どうして頼ってくれないんだという悲しさや悔しさが滲み出ていた。そんな顔をさせるつもりではなかったのに。
晴太郎が悲しそうだと、七海も悲しい。なんとかしてやりたくなる。主人にそんな顔をさせてしまうくらいなら、いっその事打ち明けてしまっても良いのではないか? 酒のせいで回転の悪い頭に、そんなことが過る。
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だから、晴太郎に言っても、彼はきっと他言しない。わざわざ自分から、七海と離れ離れになるような事はしないのだ。
「……実は、下戸なんです」
「…………げこ?」
「酒……駄目なんです」
「えっ、そうなのか?」
「ずっと、黙っていて……すみません。本当に、駄目なんです……弱いんです……」
「そっか、知らなかったな……」
こんなに一緒に居てまだ知らないことがあったのか、と晴太郎は驚いた様子で言った。誰にもバレないように隠していたのだから、知らないのも無理はない。
「何で黙ってたんだ? 最初から言ってくれればみんな飲ませたりなんかしなかったのに……」
「弱いと……クビになる、かもしれない」
「そんな決まりあったのか?」
「クビは、嫌なんです……俺は、あなたの傍にいたい」
「むっ、そ、そうか……」
少し嬉しそうな、恥ずかしそうな複雑な顔をして晴太郎が視線を逸らす。照れさせるようなことを言ったつもりはなかったのだが、何か恥ずかしい事でも言ってしまっただろうか。酔った頭ではよくわからない。
「七海、これ何本に見える?」
「…………4本です」
「違う、2本だ……相当ダメなんだな、早く部屋に行こう」
目の前に晴太郎が手を出してきたが、その指の本数すら数えられない。目が悪いわけではないのに、視界がぼやけてはっきりしない。七海がもう限界が近いと分かり、晴太郎は部屋へ急ぐ。晴太郎は部屋までの間、ずっと七海に肩を貸してくれた。
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