私の主人はワガママな神様

どろろ

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17.彼の場所へ(7)

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 知っていそうな兄や姉たちに聞いても、誰も七海の居場所を教えてくれる人はいなかった。もちろん、近しい従者たちにも聞いたし、今車を運転している黒木にも聞いたことがある。
 誰からも聞き出すことが出来なかった七海の居場所を、こんな形で知ってしまうなんて。

「な、なあ……黒木。この荷物、送らなくていいのか?」
「ああ、すみません。送らないといけないのに、うっかり、忘れていました」

 うっかりを強調した不自然な言い回しに、違和感を覚えた。具体的に何がおかしいか分からないが、なんとなく黒木らしくない言い方だ。それに、準備された台本を読んでいるような、そういう感じがする。

「送っていないことがバレたら怒られてしまうので……この荷物と送り状を見たこと、内緒にしていてもらえませんか?」

 送り状、とわざわざ明言した黒木の意図に、やっと気付いた。
 これはわざとだ。黒木は意図して、七海宛の荷物を後部座席に置いているのだ。
 晴太郎に、七海の居場所を伝えるために。

「……うん、わかった」

 なんで直接教えてくれないのか、どうしてこんな遠回りした方法で伝えたのか、など聞きたいことは色々ある。しかし、晴太郎がそれを聞いてもたぶん黒木は答えてくれない。わざわざこんな方法で七海の居場所を伝えてきたのだ。きっと何か直接言えない理由があるはず。——たぶん、父親か一番上の兄の命令なのだろう。


 ずっと探していた七海の居場所がわかった。あの送り状にあった場所に行けば、彼に会えるかもしれない。

 仙台は行ったことがあるが、ひとりで行ったことはない。仙台だけでなく、晴太郎はひとりで出歩いたことがほとんどない。ひとりで行くことが許されているのは学校だけで、他は必ず誰か家の人が護衛として付いてくる。
 自分の立場が他の人たちと違うことを理解して、常に誰かに守られて生きてきた。たまに鬱陶しいと思うこともあったが、特に不満もなく、自分の立場に甘えてきた。でも、それでは駄目だ。
 いつまでも守られてばかりのお坊ちゃんではいられない。ちゃんと、自分の意思で、自分のために行動しなければ。

 もし、本当に父や兄の命令で七海と離されたなら、気を付けなければならない。家の人に七海に会いに行くとバレてしまったら、きっとすぐに家に戻される。家の人の目を掻い潜って仙台まで行くなんて、晴太郎にできるだろうか。
 でも、せっかく黒木がくれた大チャンス。無駄にしたくない。ここで七海の元に行くことを諦めたら、絶対後悔する。また彼の夢を見て、枕を涙で濡らす日々を過ごすのだ。——そんなの、もう嫌だ。

 晴太郎は、ぎゅっと膝の上で手を握りしめた。
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