~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女

にせぽに~

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少女達の輪舞曲《ロンド》

初依頼と謎の少女

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審査が終わった次の日、私は宛がわれた部屋で悪戦苦闘していた。

「え~っと、こっちが椅子でこっちが机………だっけ?
 そうなるとこれは………」

 コンコン

私が頭を捻ってると部屋のドアからノックがする。

「レンさん、ちょっといいですか?
 冒険者証が出来たので渡しに来ました」

おや、アイシャちゃんの声だ。
冒険者カードってゼーレンさんがフィルに見せてた奴だよね、もう出来たんだ。
けど今ちょっと手が離せないから部屋に入ってもらおうかな。

「わざわざ有難う、アイシャちゃん
 けどゴメン、今手が離せないから部屋に入ってくれるかな?」
「あ………はい、それではお邪魔しますね」

遠慮がちに扉を開け、アイシャちゃんが入ってくる。

「お邪魔します………ってレンさん何やってるんですか?」

部屋に入るなりアイシャちゃんが驚く。
そりゃそうだよね、備え付けのテーブルの上に紙が散乱してて
それにはぐにゃぐにゃとした幾何学模様が描かれてるんだから。

「えっと、とりあえず読み書きの勉強中、かな?」

審査が終わった後、私達はアイシャちゃんから「冒険者の手引き書」なるものを
貰ったんだけど、案の定私は全く読めなくてアイシャちゃんに
全部朗読させちゃったんだよね。
流石に年下の女の子にそんな事をさせるのはどうかと思ったし、依頼書とかを
読めなかったら色々と支障が出そうだから、フィルに頼んで文字の勉強を
始めたんだけど………
ちなみにフィル自身は買い出し中だったりする、早急に揃えないといけない物が
結構あったりするし、文字が読めない私が行っても邪魔にしかならないという事で
1人で行って貰っている、フィル自身は私と一緒に行きたがってたけどね。

「中々に難しいね………私の国の文字とは根本的に造形が違うから
 覚えにくいんだよね」

この世界の文字はパッと見記号にしか見えない、記号が横にずらずらと
並んでる感じでエジプトの遺跡文字の印象を受ける。

「確かに文字を覚えるのは大変でしたね、私もママに怒られながら
 やっと覚えましたから」

アイシャちゃんが私のいびつな書き取りを見てクスリとほほ笑む。
うん、改めて見るとホントに美人だねこの子。
ゼーレンさんによるとアイシャちゃんはこの国の
冒険者内でのアイドル的存在らしい。
どうも冒険者内で「抜け駆け禁止」の暗黙の了解が出る程で
たまに他の国所属の冒険者が彼女に悪絡みするとその場にいる冒険者全てに
フルボッコにされるほどの人気みたい。
だからアイシャちゃんに怒られた時ガディって人は狼狽えたんだよね。

「とりあえず冒険者証の説明をしますね。
 それには登録者の依頼の達成状況と冒険者としての評価が記録されていて
 基本的に本人のみにしか効力を発揮しません。
 普段は読めませんが各冒険者ギルドに設置されている読み取り用の
 魔晶石にかざすと中身が映し出されます。
 内容の更新はギルド役員のみが可能です。もし不正に更新や偽造をした場合
 剥奪の上各国の法に照らし合わせて罰せられますので絶対にしないでください。
 当然、その他の犯罪に故意に関わった場合も同様です。
 また、身分証としても機能しますので身の証を立てるときは提示してください。
 万が一紛失等をしてしまった場合、再発行に1万ルクルと7日間の活動禁止が
 ペナルティと課せられますので気を付けてください。
 但し、悪意ある盗難と認められた場合はその限りではありません。
 ………以上です、何かご質問ありますか?」

ふむふむ、基本は元の世界の資格証書と同じような物だね。
とすると………

「有効期限とか最低限こなさないといけない義務とかあるのかな?
 半年に1回必ず依頼をこなさないといけないとか」
「特には無いですが、依頼達成数が登録年数に比べて極端に少なかったり
 理由も無く期間が空いてたりするとギルドからの信用を失って
 依頼を回して貰えなくはなりますね。
 尤も、冒険者の主な収入は依頼の達成ですからそんな事態はほぼないですが
 後、依頼の失敗が多すぎると不適正とみなされて没収される可能性はあります」

成程ね、まぁ自分達の力量を見極めて適度に依頼をこなしてれば
基本は大丈夫っぽいね。

「丁寧な説明ありがとね、大体分かったよ」
「これが私のお仕事ですから、それではお渡ししますね」

アイシャちゃんから冒険者証を受け取る、一先ず当面の仕事は確保かな。
何とか人心地着いた気分だね、まぁこれからが大変そうだけど。

「あの………レンさん」

呼ばれたのでふと見るとアイシャちゃんが何か言いたそうにもじもじしている。
ん?何か他に用でもあるのかな?

「どうしたの?他に何か伝え忘れでも?」
「いえ!そうではなくてですね、えっと………ここからは個人的な
 お願いになるんですが」

個人的なお願い?知り合ったばかりのアイシャちゃんが私にお願いなんて何だろ?

「あの、お暇な時でいいので依頼であったお話を聞かせて貰えませんか?」

ん?どういう事?

「えっと、それって依頼の報告とは別って事なのかな?」
「は、はい。見ての通り冒険者って男の人だらけで女の人がいません
 なので女の人の冒険者って興味があって………それに」
「それに?」
「私のママ………うちのギルドマスターは元冒険者なんです
 しかも相当腕利きだったってパパがよく言ってたんですけど、ママに聞いても
 はぐらかすばかりで教えてくれないんです」
「そうなんだ………何か知られたくない理由でもあるのかな?」
「分かりません。ただ、ママの過去が知りたいって訳でもないんです
 純粋に女性冒険者ってどんな事をしてるんだろうって興味があって」

成程、純粋に男社会にいる女性がどんな感じか知りたいだけなんだ。
工事現場で女性が働いてるのを見て興味を持ったって感じかな。
まぁ、この先お世話になるんだしその位ならお安い御用かな。

「別に構わないよ、面白い話になるかは保証しないけど」
「有難うございます。では、なるべく面白い話になるような依頼を回しますね♪」
「こらこら、そんな事したら職権乱用でマイーダさんに怒られるよ」
「そうでしたね、あはははは」

冗談を言い合いながら2人して笑う。
うん、この子とは仲良くできそうだね。

「あっとそうだ、早速ですがママがレンさん達に任せたい依頼がある様なので
 一先ず落ち着いたら一声かけて欲しいそうです」
「おや、早速ギルドマスターからのお仕事とは期待されてるのかな、私達」
「どうでしょう、ただ単に面白そうだからと思ったからかも知れません
 ママってそういう所ありますから」

え~っと、それって組織のトップとしてどうなの?
まぁ、女性ながら男社会の冒険者を取り仕切ってるっぽいから
仕事は出来るんだろうけど。

「そ、そっか、取り合えずフィルが帰ってきたら顔を出しに行くよ」
「お願いします、それでは失礼しますね」

アイシャちゃんはぺこりと頭を下げ部屋を出ていく。
それにしても早速依頼か………まぁ新人にはそんな無茶な仕事は
振らないとは思うけど、さてさて。


………



………………



………………………



「護衛依頼?」
「そ、商人のね」

あれから数時間後、買い出しから帰ってきたフィルと一緒に
マイーダさんの所へ行くと、依頼書を手渡されながらそう言ってきた。

「護衛依頼って、新人が受けていいような依頼なんです?」

いきなりそんな依頼を回されるとは思わず、マイーダさんに問いかける。
こういうものって新人は雑用を主にやっていくものだと思ったけど、違うのかな。

「まぁ、普通は新人にやらせる仕事じゃないわね
 だけど少しばかり事情があってね、逆に言うと貴方達じゃないとダメなのよ」
「はい?私達じゃないとダメってどう言う事ですか?」

私の質問にマイーダさんは少し困った様な笑みを浮かべ

「前にうちの冒険者に護衛して貰ったことが在るみたいなんだけど
 どうもこの男達がデリカシーに欠けてたらしくてね、それ以来
 この依頼者は男の冒険者を信用しなくなっちゃってるのよ。
 だから今回の依頼は女性なのが最低条件って言われちゃってね
 ギルドとしても商人を敵に回したくはないし、とは言え
 護衛を任せられる女冒険者なんていないから、貴方達に回した訳」

マイーダさんはそう言うと小さくため息をつく。
成程、そう言う理由なら私達に声がかかるのも納得だけど………

「護衛はジダの村まで、報酬は諸経費込みで1500ルクルね
 村の場所は………この辺りかしら」

依頼書を読んでいたフィルが壁にある地図を指さす。
地図上からしたら比較的近いっぽいけど、縮尺どのくらいなのかな。

「距離は少しあるけど、きちんとした街道も通ってるし
 レンが対処できない様な魔物の出現も確認されてないから、大丈夫かしらね」
「そうなんだ、じゃ依頼を受けてもいいっぽいね」
「レンがそう言うなら、私に異論はないわ」

依頼を受ける方向で固まった私達に安心したのか、マイーダさんは
にっと歯を見せて笑う。

「助かるよ、出来れば早めに出発したいって言ってたから
 明日にでも取り掛かって頂戴」
「了解です。それじゃフィル、早速準備しよっか」
「ええ、思ったより早かったけど、レンの為なら頑張らないとね」
「んっふっふ~、それじゃ張り切っていこうかね、お姉ちゃん達」

なっ、誰!?
いきなり後方から声が聞こえ思わず振り向く、けど、そこには誰もいない。
一体どこから………と思った瞬間。

「あはははは、これから楽しくなりそうだよ♪」

頭上から声が聞こえ、見上げるとそこには
天井から逆さまになってぶら下がった女の子の姿があった。
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