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闇天羅
ヒノカミヒメとボイドリアの為の決戦場は、ソルグランドの参戦によってその雰囲気を大きく変えていた。アンテンラをして可能性はないと排除していた異常事態の発生である。
ザンエイを巡る戦闘においても邪魔汰退悪呂土の出現とソルグランドの数々の神通力によって魔物と機械兵器が返り討ちになって、骸をツイノエの上に晒し続けている。
もっとも、ザンエイの撃破よりもヒノカミヒメとソルグランドの排除こそ、アンテンラにとって最重要事態となり、優先順位ははるか下へ下げられていた。
むしろザンエイという退路を断つことによって、両者が自爆特攻を即座に選択し、ツイノエごとアンテンラを抹殺しようと動く危険性が高い。
追い詰めたはずが逆に追い詰められる。そんな理不尽をアンテンラにいつも叩きつけてくるのが、ソルグランドという規格外の魔法少女──魔法祖父なのだ。
そしてアンテンラの期待を一身に背負うボイドリアは、アンチ・ソルグランド・ウェポンとして作成された常夜を手に、倍加した敵戦力の撃破に向けて、全身の細胞に備わった演算能力をフル稼働させている。
一方、ヒノカミヒメと並び立ったソルグランドは、ラグレックとの戦闘で消耗した魔法少女達が後退し、残るラグレッグの排除の為に再編成を始めたのを気配で察し、こちらの準備は整ったと判断した。
現状、ほとんど消耗がないのはソルグランドただ一人。アンテンラの破壊を考慮しても、ここでボイドリアを全力で叩くのが正解だ、とソルグランドは決意する。
「ボイドリア、懐かしい再会ではあるが、今日来た目的はお前さんにリベンジすることじゃないんでね。俺達の邪魔をしないんならそこらへんで適当に昼寝でもしていてくれ。それなら見逃すぜ」
ソルグランドがリベンジマッチだと意気込んでいるのは本当だが、さりとてボイドリア個人に特別な憎悪や執着があるわけではない。
戦う必要がないのなら戦わなくてもいいのだ。もっとも、ボイドリアが戦いを放棄するわけがないと、分かり切っていた以上、どちらかと言えば挑発の意味合いが強い煽り文句になっていた。
「本機からの回答はただ一つ。ソルグランド、貴機を改めて排除する」
「だわな。この創造主大好きっ子ちゃんめ」
今のところ、フォビドゥンやディザスターみたいに、アンテンラから切り捨てられていないんだから、そりゃ戦うわな、とソルグランドは心の中で零し、次の瞬間には鋭い犬歯の覗く美しい獣の笑みを浮かべる。
ソルグランドの肉体を構成する闘争の神々の因子が、やにわに活性化してボイドリアへの勝利の道筋を無数に描き出す。
「それなら遠慮なく行かせてもらおうか、苦殺那祇剣!」
虚空を蹴って飛び出すソルグランドの右手に、数多の名を持つ神剣を模した炎の刃が形を成す。
これまでラグナラク、ボイドリアに超絶の破壊力と神威を知らしめてきた剣は、広範囲に広がるのではなく、ソルグランドの手の中で天滅之無羅苦莽剣と同じく、古代の意匠風の直剣となる。
ソルグランドが飛び出すのに合わせて、ヒノカミヒメもまたボイドリアへと向けて、先ほどまでとは打って変わり、微笑を浮かべて斬りかかる。今、この瞬間こそ、ヒノカミヒメの精神は最高潮に達していた。
「ソルグランドの再破壊を最優先任務に追加。行動を開始する」
生き残りのラグレックはブレイブローズとスタープレイヤーを筆頭に、消耗の少ない魔法少女と少なくなったネイバー達が抑え込んでいる。どれだけ早く、お互いを排除できるかで両勢力の戦いの趨勢は決まるといっていい。
かつてソルグランドに痛恨の一撃を見舞った常夜が、二度、空中にX字の斬撃を刻んだ。
斬撃の軌跡はそのまま灰色に空間を染めて、雷の速度で動く一人と一柱に襲い掛かる。
(プラーナ無効と神通力耐性を掛け合わせたエネルギーの刃ってとこか。斬られるよりも削られるってところだな)
ソルグランドは即座にボイドリアの攻撃の正体を察し、ヒノカミヒメと左右に分かれて、斬撃を回避。流れるような動作で苦殺那祇剣を一振りし、お返しとばかりに三日月型の炎の刃がボイドリアに襲い掛かった。
「まずは挨拶代わりっと!」
神通力で作り出した太陽の中心部に匹敵する高熱を圧縮した刃を、ボイドリアは常夜の縦一文字の斬撃で迎え撃った。常しえの夜と名付けられた刃は、燃える三日月と触れた瞬間から、その熱とプラーナを吸い取り、神通力を分解せんとした。
ぐにゃりと燃える三日月が蜃気楼に包まれたように歪んだと見えた瞬間、跡形もなく消え去る。常夜の機能によって圧縮が緩んだところを分解・吸収されたのと、どこか別の空間に飛ばされたのだと、ソルグランドの瞳は見抜いていた。
「結局、斬られるのは極力、避けなけりゃならんのは一緒か。流石はアンテンラの切り札だな」
一手ずつの攻防の先に、三者が互いに切り結ぶ距離に迫っていた。元より一つの肉体を共有していたソルグランドとヒノカミヒメの連携については、なんの問題もなかった。
ヒノカミヒメはずっとソルグランドの戦いを見ていて、彼の戦いを参考にして自分の戦い方を構築していた。一方でソルグランドもまた自分の戦い方を元にしているヒノカミヒメを、再誕するまでの調整期間中に学習して息を合わせられるレベルに達している。
「お覚悟!」
ヒノカミヒメがボイドリアの右側面に回り込み、独楽のように美しく回転しながら斬り込めば、ソルグランドもまた同じタイミングで左側面に回り込み、こちらは飛び上がりながら縦の回転斬りを放つ。
合わさればボイドリアの胴を泣き別れにし、さらに前後で縦半分にする、残酷極まりない連撃である。
しかし、ソルグランド達の斬撃は空を切った。ボイドリアが前方に飛び込むように跳躍して回避と同時、空中で天地を返して常夜を横薙ぎに振るい、ソルグランド達が咄嗟に手首を返して軌道を曲げた神剣二振りと刃を打ち合わせた。
どこまでも澄んだ音が二つ。苦殺那祇剣と天滅之無羅苦莽剣ほどの神剣ともなれば、いかに改良を加えられた常夜といえど分解は出来ず、互いに刃を弾き合うのみ。
一人と一柱と一体はそのまま虚空を駆け抜ける。
重力の鎖がなく、空間が延々と拡張される世界で、三者の動きは自由自在そのものだった。
これまでの戦闘と異なる大きな点は、それぞれが五体と手にした武器以外を振るう暇が無かったことだ。
時間が経過するごとに三者のプラーナは高まり、戦闘能力が上昇し続けて、相手に斬撃を叩き込むことと相手の斬撃を防ぐ選択肢が常に生じている。
知の神々に由来する演算能力を持つソルグランドとヒノカミヒメ、異星の超技術に由来する演算能力を持つボイドリアをして、己の五体以外を使用する余裕がなかったのである。
真上大我に最適化されたソルグランドの戦闘能力は、ボイドリアを通じてアンテンラにリアルタイムで報告され、その脅威度はヒノカミヒメと同等と評価されていた。
ほとんど貼りつくようにしてボイドリアの周囲を飛び回り、刹那の休みもなく繰り出される斬撃ばかりか、打撃と蹴り、さらには関節技すら含む猛攻をボイドリアは悉くさばくだけでなく、反撃すら加えている。
互いに一撃を入れる間もなく戦い続ける中、ソルグランド参戦前に負っていたヒノカミヒメとボイドリアの傷は癒えて、プラーナと神通力の消耗以外には問題の無い状態にまで回復している始末。
その中でソルグランドはボイドリアのプラーナの上昇と二対一の状況で、互角に渡り合う戦闘能力に、内心で舌を巻いていた。
(俺とヒノカミヒメの二人掛かりなら早々に決着がつくと思っていたんだが、こりゃ想像以上だな。ナラカ・コーラルのバックパックを受けていたのと同じで、ツイノエの動力炉からエネルギー供給を受けているな?)
ボイドリア自身の出力も相当だが、それだけでソルグランド達を相手に渡り合うパワーとスピードを維持し続けるのには、並大抵のエネルギーでは賄えまい。
(ラグナラク以上の強敵と見るべきか。加えて俺とヒノカミヒメ対策をしているんだから、アンテンラは厄介な真似をしてくれる)
正面から斬り合う中、互いの刃を弾いた瞬間にソルグランドの右足が跳ね上がった。鋭い足刀はボイドリアの仰け反った顎先を掠め、わずかに赤くさせたが、蹴られた勢いを利用したボイドリアの回転蹴りが、今度は真下からソルグランドを襲う。
咄嗟に両脚でボイドリアの左足を挟み込み、直撃を避けたソルグランドが両手で弓矢のように引き絞った苦殺那祇剣を仰け反るボイドリアの上半身へ突き込む。
同じくタイミングを合わせたヒノカミヒメが下方から飛び込んできて、ボイドリアの首をうなじの側から斬り落とそうと天滅之無羅苦莽剣を振り上げる。
必殺のタイミングで放たれた二撃。これをボイドリアは挟み止められた左足を強引に振り回すことでソルグランドの体勢を崩し、神剣の切っ先はあらぬ方向へと流れた。
後ろから首を落としに来た天滅之無羅苦莽剣は、背中の鞘に納刀するような動きで常夜を回し、かろうじて受け止めるのに成功する。
「おおおお!!!」
ボイドリアの喉から製造から初めて裂ぱくの気合が叫ばれると、彼女の身体が大渦のように回転して、ソルグランドは蹴り飛ばされ、ヒノカミヒメは噛み合った刃を弾き飛ばされる。
凄まじい勢いで吹き飛ばされた両者が体勢を立て直す間に、ボイドリアは狙いをソルグランドに定めて飛んだ。一度は倒したはずの女神に向けて、技術もなにもないシンプルな直線軌道を描いて突っ込んでゆく。
ボイドリアの中にわずかに搭載を許された精神が叫んでいるのだ。
絶対にあいつを生かして帰すな、今度こそ倒して自分の価値を証明しろと。むき出しの殺意、抑えきれない怒り、そして隠しきれない焦り。
「おうおう、ずいぶんと人間臭い表情をするようになったな。心を持たせるとは、アンテンラも酷な真似をする」
ぐるんと縦に一回転したソルグランドの回し蹴りが、しゃにむに突っ込んで来たボイドリアの左側頭部を痛烈に叩くが、ボイドリアはその場で堪えきり、両手で握った常夜をなにも考えず、ただ全力を持って振り下ろす。
ソルグランドの全身が盛大に警鐘を鳴らし、回避が間に合わないと悟ると同時に、両手で握った苦殺那祇剣で常夜を受け止めるが、止めきれずにそのまま押し込まれて左肩へ苦殺那祇剣の刃が触れる。
「ぐううう、気合が、入っているな!」
苦殺那祇剣はソルグランドのプラーナと神通力によって作られている。その為、決してソルグランドを傷つけはしないが、苦殺那祇剣越しに常夜の刃が確実にソルグランドへと近づいてくる。
「本機の存在理由、当機の戦果! 返してもらう、ソルグランド!!」
血を吐くか、それとも火を噴くかの如きボイドリアの叫びに、ソルグランドはあろうことか笑い返した。
「お人形さんを相手にするよりも、ファイトが湧いてくるってもんだ。お前さんの親玉はつまらなそうだけど、なあ!!」
ふっと小さな呼吸と共にソルグランドの全身の筋肉が躍動して、一気にボイドリアを押し返した。大きく後ろに吹き飛ぶボイドリアに、今度はソルグランドが果敢に斬りかかり、苦殺那祇剣の刃が真っ赤な炎を纏う。
「苦殺那祇剣の炎の味は、忘れられるもんじゃなかったろう?」
「プラーナの増大を確認。ソルグランド、更に出力上昇っ」
ソルグランドに呼応するように、更にボイドリアに流れ込むツイノエのエネルギー量が増した。それを肌で感じつつ、ソルグランドに恐れはない。これまで星をいくつも滅ぼしてきた相手なのだ。その数だけの星を相手にするくらいのことは、想定済みである。
一合、二合、三合……夜空に尾を引く流れ星の雨の如く、苦殺那祇剣が炎の軌跡を描いてボイドリアと切り結ぶ。
常夜の刃が肉体に届かなくても、髪や装束に触れる度、その箇所を構成するプラーナがごっそりと削られ、瞬間的に消失しては復活する光景が繰り返される。
末端部分では抵抗する間もなく消滅させられる常夜の凶悪な機能は、かつて受けた苦痛を嫌でもフラッシュバックさせるが、その恐怖をねじ伏せるだけの勇気と覚悟がソルグランドにはあった。
一方でボイドリアも苦殺那祇剣の切っ先が触れた箇所が、単なる斬撃と燃焼に留まらず、再生機能が不全を起こす事実に苦渋を味わっていた。
ヒノカミヒメからしてもそうだったが、ダメージを与えた箇所にプラーナを残留させて、再生を阻害するどころか破壊を促進する技術を、両者は共有していたのである。
そしてソルグランドとヒノカミヒメの場合、これに祟り、呪詛が加わって、ボイドリアは神通力耐性を傷口に割り振って、浸食を防がなければならなかった。
ソルグランドとヒノカミヒメが多少の傷は、瞬く間に回復する中、ボイドリアは受けた傷の再生の数秒を要し、常夜による対策があるとはいえ、じりじりと追い詰められているのは明白。それをボイドリアは他の誰よりも理解している。
ソルグランドとボイドリアが天地を逆にした状態で向かい合う中、不意にソルグランドの下方に転がっていたラグレックの残骸が起き上がって割って入り、彼女の視界を一瞬だけ塞いだ。
アンテンラの遠隔操作で再起動したのだが、もはや攻撃する機能もエネルギーも残っておらず、一瞬だけ動かすのが限度。それでも、三者の戦場に不確定要素を持ち込み、戦況を変えるきっかけを生むのには十分すぎた。
ラグレックの残骸をボイドリアはどう活かすか? 隠れ蓑にしてソルグランドの死角へと回り込むか、あるいは残骸を除ける手間を狙って一撃を叩き込む? ともすればソルグランドを放置してヒノカミヒメに襲い掛かるか?
「ああああ!!」
答えはラグレックの残骸ごとソルグランドへ体当たりを敢行し、常夜の刺突を見舞うことだった。艶を失ったラグレックの銀色の装甲を貫いて飛び出す常夜に、身を捩るソルグランドの左腰が裂かれた。
巫女装束を切り裂き、その下の肉も切り裂いた刃に、血肉を分解される苦痛が齎され、傷口から滲む先から血が消える。
「づあ、やって、くれる!」
左腰に常夜の刃を埋めたまま、ソルグランドもまたラグレックの残骸越しに苦殺那祇剣を下方から抉るように突き込んだ。
水を貫くような軽い手応えと共に、苦殺那祇剣がボイドリアの左脇腹から入り、右肩から切っ先が出る。
体内を縦断する苦殺那祇剣の熱と呪詛の数々に、ボイドリアは自身の機能が次々とエラーを吐くのを理解せざるを得なかった。
ならばせめてもと、アンテンラの勝利に繋がるようにソルグランドへ少しでも多くの損傷を与えようと、残る力を振り絞って常夜の刃を左に振り抜こうと足掻く。
ソルグランドの胴体を泣き別れにしようと、常夜の刃が肉を断つ音を立てて進んでゆく。
窮地に陥ったボイドリアの精神は爆発的なプラーナの生成へと繋がり、苦殺那祇剣による大損害を感じさせない力を発揮していた。
「はっ! 今わの際にやるじゃねえか。火事場の馬鹿力ってやつを魔物少女に見せられるとは思っていなかったぜ?」
まるで思わぬ才能を見せた生徒を褒める教師のように、ソルグランドは柔らかな声音でボイドリアを賞賛した。そこへ、張り詰めた表情を浮かべるヒノカミヒメが二人の頭上から飛び込んでくる。
「やああああ!!」
天滅之無羅苦莽剣の刃にありったけのプラーナと神通力を込め、振り下ろした刃がボイドリアの両腕を容赦なく断ち切る。そのままボイドリアの胴体を蹴り飛ばし、その勢いで苦殺那祇剣の抜けたボイドリアに返す刃を送った。
ボイドリアの左腰から右肩口を、苦殺那祇剣に貫かれた箇所をなぞるようにして天滅之無羅苦莽剣が斬り裂いてゆく。異星の臓腑を、神経を、血管を、骨を断ち、刃が抜けた。
「ああ、がぁ、本機、は……」
ヒノカミヒメはボイドリアへ視線と警戒を外さず、背後のソルグランドの気配を探る。
プラーナと神通力の減少は続いているが、その量は減ってきており、常夜は引き抜いたようだった。
ボイドリアは天滅之無羅苦莽剣の斬撃を受けた箇所から、苦殺那祇剣の残り火を噴き出し、その身体を徐々に焼かれ始めている。
「ああして見ると、ちょいと残酷な絵面になっちまったな」
少しだけ痛みをこらえているソルグランドの声に、ヒノカミヒメは安堵しそうになる自分を引き締めた。尊敬するソルグランドの発言は分からないでもないが、それにしたって怨敵を相手に、ヒノカミヒメは容赦する気にはなれなかった。
引き抜いた常夜を左手に、ソルグランドは神の造りたもうた美貌をわずかにしかめて、ヒノカミヒメの隣に並ぶ。一人と一柱の目の前で、ボイドリアはゆっくりと落下を始めていた。
「十秒もありゃ傷口は塞がる。あんまり心配しなくていいぞ」
「するなと言う方が無理でございます。ソルグランド様と二人掛かりでも、意外と手こずらされましたね。ですが、これで阻む者はもう居りません。念の為、跡形もなく粉微塵にしておきますか? それか私達の神域に隠してしまいましょうか?」
先ほどのラグレックのように、アンテンラがボイドリアの残骸を操作する危険性を考慮しての発言である。
「憐れみがないわけじゃないが、まあ、それなら今後の研究の為にもって建前で、神隠ししておくか。跡形もなく砕くまではしたくねえやな」
ひたすら生みの親に従順だったボイドリアに対する憐憫が、はっきりと聞き取れるソルグランドに、ヒノカミヒメは小さく溜息を吐いた。
ソルグランドの中身は人の親であり、祖父であるから、ふとした時に見せる甘さや情は、ヒノカミヒメよりもはるかに強い。だからこそ人間を見守ってきた神の末席として、ヒノカミヒメはソルグランドに惹かれてしまうのだが。
「その前に情報をできるだけ引っこ抜いておかねえとな。それが出来ないとなりゃ、最悪、ツイノエそのものをぶっ壊して、アンテンラを始末する羽目になる。流石にそれはしんどいぜ」
ソルグランドの裂かれた脇腹の傷口は塞がり、なまめかしい皮膚にうっすらと線が残るばかり。周囲にラグレックや魔物の転移反応がないのを確かめながら、ソルグランドとヒノカミヒメがボイドリアへと近づく。
ボイドリアはかろうじて機能停止に陥っていないが、自力では指一つ動かすこともままならないだろう。それでも自爆くらいはできるかもしれないと、慎重に警戒しながら近づく一人と一柱を、ボイドリアの瞳がじっと睨んでいる。
ボイドリアに対する注意と警戒こそ緩まぬソルグランドだったが、アンテンラは彼らの意表を見事に突いた。
ボイドリアに干渉すると想定されたアンテンラだったが、彼らはアンテンラではなくツイノエそのものにこれまでとは異なる行動を起こさせたのだ。
『魔物少女最終号機ボイドリアの敗北を認定。現有戦力でソルグランド並びにヒノカミヒメの撃破を不可能と判断』
『ツイノエ表層部における戦闘は継続中。ただし好転する見込みは微少。他戦線より招集中の戦力の投入により撃破は可能なれど、撃破までに想定される被害は甚大。今後の監査に多大な悪影響を及ぼす』
『ラグナラク完全沈黙、ラグレック残機なし。想定通りの性能を発揮するも敵魔法少女の戦闘能力が、こちらの想定を超過した。二百七十四周期ぶりの危機的状況に陥っていると判断する』
アンテンラの三つの声がツイノエ中枢で状況を報告し合い、統括意思はかつての危機を乗り越えた前例に倣い、行動に移した。
『ツイノエ、中枢部を除く全階層を分離。戦闘形態への移行を開始する』
『残余戦力に対して回避行動を指示。指示に応じられない機体は廃棄』
『敵勢力殲滅を開始。最優先目標はソルグランド並びにヒノカミヒメのまま維持』
そしてこれまで三つ存在したアンテンラの思考と声が、一つへと重なり合う。
『分割思考による意思決定を一時期的に凍結。統括意思アンテンラを統合統括意思アンテンラへと仕様変更。エゼキド監査軍自己防衛フェーズ、ファイナルへ移行』
アンテンラが次の行動を決定するのと同時にツイノエ全体に衝撃が走り、神域化していた箇所を除いて、次々と物理的結合が解除されてゆく。
それまで戦闘を続けていたザンエイ付近の敵勢力が後退を始め、明らかに戦力を再編成する動きを見せる。更にはツイノエ全体に生じた異常事態に、ザンエイは展開していた味方を収容し、ツイノエからの一時的な離脱に向けて動き出していた。
一方でツイノエに最も奥深く侵入していたソルグランド達も、前後左右、全てで生じる異常に気付いて、判断を迫られていた。このまま中枢部を目指して前進を続けるか、それとも後退して味方と合流を目指すか。
ここまで多大な労力を払ってきたことを思えば、簡単には前進を諦めることは出来ない。
決断は自然と突入部隊の指揮を執ったヒノカミヒメへと委ねられ、そうなるとソルグランドに委ねられたも同然となる。
「ソルグランドさん、ヒノカミヒメ、ここは脱出の一手です」
ところが真っ先に意思を表明したのは夜羽音であった。ソルグランドにとっては気の置けない、種族を超えた友であり相棒。ヒノカミヒメにとっては生まれた時から面倒を見てくれた恩ある相手であり神としての先達。
無碍に出来る相手ではないのに加えて、夜羽音が導きの権能を持つ八咫烏の末席であるのも、夜羽音の言葉に耳を傾ける大きな理由だ。
「夜羽音さん、その心は? ひょっとして自爆の前触れかなんかですかね?」
ソルグランド達の周囲に突入部隊の面々が集まる中、ソルグランドが問えば夜羽音は次々に切れ目が走り、分離を始めた床と天井を見回してから答えた。
「いいえ。私も詳細が分かっているわけではありませんが、ここから離れた方がよいのは確実です。そして戦いはまだ終わっておりません。私の本能、としておきましょう。それが今は外へと皆さんを導くべきだと訴えているのです」
「なるほど、それなら従うのが最善ですね。にしても、なんだ? このツイノエ自体が動いているのか? ふーむ、となると」
ソルグランドは薄々とだが何が起きているのかを、察しつつあった。これまで仕入れたサブカルチャーの知識と人間の限界を超える脳が、まもなく遭遇する未来を正確に見ていたからだ。
中枢を目指している最中に、敵要塞で発生した異変。これが自爆の前触れでないのなら、切り札となる巨大兵器が出てくるか、あるいは要塞そのものが変形するか……
「さしずめツイノエをアンテンラの身体にするべく、作り替えているところなのでしょう。いよいよ部下に任せていられなくなって、自ら手を下す気になったか。そこまで追い詰めることに成功したと、喜んでおきますかね」
この異常事態が終わった時が、本当の意味で最後の戦いになるとソルグランドは確信していた。それから、アンテンラからの通達を聞き、脱出のままならないまま、宇宙を漂流する運命に投げ出されたボイドリアが目についた。
「お前さんを再利用されても困るからな。鹵獲させてもらうぜ」
左手の常夜を右手の苦殺那祇剣とまとめて持ち、左手でボイドリアの首根っこを掴む。ソルグランドの意思によって、体内を焼いていた炎は熾火程度に収まり、再生を阻むだけになっている。
「離せ。アンテンラ、からの、指示にのみ本機は、従う……」
ツイノエの組み換えに対し、回避行動の指示が送られているが、今のボイドリアに対応する力は残されていない。アンテンラもそれを理解している以上、大破したボイドリアを斬り捨てたことを意味する。
ボイドリアとてそれを理解している。ヒノカミヒメとソルグランドの撃破が叶わず、いくばくかの損傷と消耗を与えただけとあっては、廃棄されても当然だと、そう納得していた。
どうしてか、胸の奥が痛んで、鼻の奥がツンとするけれど、その理由はいくら考えてもボイドリアには分からなかったし、どうして眼球から液体が溢れるのかなんて、もっと分からない。
ソレがソルグランドに建前を口にしてまでボイドリアを回収する決断をさせたのだが、ボイドリアにはこれも分からない。分からないことだらけだった。
「言ったろ。鹵獲だって。味方として引き入れるんでも、捕虜として扱うわけでもない。お前さんの意思に関係なく、こっちの都合でやることさ」
ボイドリアはまだなにか言っていたし、ヒノカミヒメは珍しくも呆れた表情を浮かべていたが、ソルグランドはそれらに気付いていないフリをして、突入部隊の生き残りに呼び掛けた。
「よっし、ここまできておいて残念だが、いったんザンエイに戻るぞ。ただ、戦いはまだ終わりじゃない。予想が正しければ大物相手の戦いになる。気を抜くんじゃないぞ」
そうして夜羽音とソルグランド、ヒノカミヒメを先導役に、残りのネイバーが殿を務めて突入してきた時と同じ勢いで彼らは脱出を試みる。
通ってきた通路は次々と分離を始め、自ら動いてその形を組み替えていた。ソルグランドは自分の予想が当たるのを、ほぼ確信した。
構造の組み換えに巻き込まれた魔物や機械兵器がそこかしこで爆発し、押し潰されるのを横目に、自分達が同じ目に遭わないように気を配りながら、ソルグランド達は分離した構造体の隙間から覗く外を目指す。
「こういう時はショートカットするに限るってな! 凍れ!」
ソルグランドが隙間から覗く外の宇宙へと目掛け、苦殺那祇剣を一振るいするとその先へと目掛けて、巨大な氷が生まれる。
諏訪湖の御神渡りに由来する氷結した場所をすべて通過した痕跡と見做し、票家t個所に自在に転移する権能を使い、味方ごとまとめて転移する為の目標作りだ。
「よっしゃ! 跳ぶぞ、目を回すな!」
誰かが返事をする間もなく、ソルグランドは御神渡りの権能を行使して、まだ外部まで数キロメートルあった距離を一瞬で転移して、突入部隊の全員をツイノエの外へと放り出すのに成功する。
変形を始めたツイノエの外装から離脱したザンエイの姿を見つけ、まずはあそこを目指すと決めたソルグランドだったが、すぐにそれに気付いた。
ツイノエが、ひび割れた顔面の中心に赤い光を脈動させる水晶柱を据えて、手足の生えた蛇体のそこかしこに水晶を生やした異形に形を変えてゆくのを。
「それがエゼキド星人の姿だったりするのかね? ええ、アンテンラさんよ」
ザンエイを巡る戦闘においても邪魔汰退悪呂土の出現とソルグランドの数々の神通力によって魔物と機械兵器が返り討ちになって、骸をツイノエの上に晒し続けている。
もっとも、ザンエイの撃破よりもヒノカミヒメとソルグランドの排除こそ、アンテンラにとって最重要事態となり、優先順位ははるか下へ下げられていた。
むしろザンエイという退路を断つことによって、両者が自爆特攻を即座に選択し、ツイノエごとアンテンラを抹殺しようと動く危険性が高い。
追い詰めたはずが逆に追い詰められる。そんな理不尽をアンテンラにいつも叩きつけてくるのが、ソルグランドという規格外の魔法少女──魔法祖父なのだ。
そしてアンテンラの期待を一身に背負うボイドリアは、アンチ・ソルグランド・ウェポンとして作成された常夜を手に、倍加した敵戦力の撃破に向けて、全身の細胞に備わった演算能力をフル稼働させている。
一方、ヒノカミヒメと並び立ったソルグランドは、ラグレックとの戦闘で消耗した魔法少女達が後退し、残るラグレッグの排除の為に再編成を始めたのを気配で察し、こちらの準備は整ったと判断した。
現状、ほとんど消耗がないのはソルグランドただ一人。アンテンラの破壊を考慮しても、ここでボイドリアを全力で叩くのが正解だ、とソルグランドは決意する。
「ボイドリア、懐かしい再会ではあるが、今日来た目的はお前さんにリベンジすることじゃないんでね。俺達の邪魔をしないんならそこらへんで適当に昼寝でもしていてくれ。それなら見逃すぜ」
ソルグランドがリベンジマッチだと意気込んでいるのは本当だが、さりとてボイドリア個人に特別な憎悪や執着があるわけではない。
戦う必要がないのなら戦わなくてもいいのだ。もっとも、ボイドリアが戦いを放棄するわけがないと、分かり切っていた以上、どちらかと言えば挑発の意味合いが強い煽り文句になっていた。
「本機からの回答はただ一つ。ソルグランド、貴機を改めて排除する」
「だわな。この創造主大好きっ子ちゃんめ」
今のところ、フォビドゥンやディザスターみたいに、アンテンラから切り捨てられていないんだから、そりゃ戦うわな、とソルグランドは心の中で零し、次の瞬間には鋭い犬歯の覗く美しい獣の笑みを浮かべる。
ソルグランドの肉体を構成する闘争の神々の因子が、やにわに活性化してボイドリアへの勝利の道筋を無数に描き出す。
「それなら遠慮なく行かせてもらおうか、苦殺那祇剣!」
虚空を蹴って飛び出すソルグランドの右手に、数多の名を持つ神剣を模した炎の刃が形を成す。
これまでラグナラク、ボイドリアに超絶の破壊力と神威を知らしめてきた剣は、広範囲に広がるのではなく、ソルグランドの手の中で天滅之無羅苦莽剣と同じく、古代の意匠風の直剣となる。
ソルグランドが飛び出すのに合わせて、ヒノカミヒメもまたボイドリアへと向けて、先ほどまでとは打って変わり、微笑を浮かべて斬りかかる。今、この瞬間こそ、ヒノカミヒメの精神は最高潮に達していた。
「ソルグランドの再破壊を最優先任務に追加。行動を開始する」
生き残りのラグレックはブレイブローズとスタープレイヤーを筆頭に、消耗の少ない魔法少女と少なくなったネイバー達が抑え込んでいる。どれだけ早く、お互いを排除できるかで両勢力の戦いの趨勢は決まるといっていい。
かつてソルグランドに痛恨の一撃を見舞った常夜が、二度、空中にX字の斬撃を刻んだ。
斬撃の軌跡はそのまま灰色に空間を染めて、雷の速度で動く一人と一柱に襲い掛かる。
(プラーナ無効と神通力耐性を掛け合わせたエネルギーの刃ってとこか。斬られるよりも削られるってところだな)
ソルグランドは即座にボイドリアの攻撃の正体を察し、ヒノカミヒメと左右に分かれて、斬撃を回避。流れるような動作で苦殺那祇剣を一振りし、お返しとばかりに三日月型の炎の刃がボイドリアに襲い掛かった。
「まずは挨拶代わりっと!」
神通力で作り出した太陽の中心部に匹敵する高熱を圧縮した刃を、ボイドリアは常夜の縦一文字の斬撃で迎え撃った。常しえの夜と名付けられた刃は、燃える三日月と触れた瞬間から、その熱とプラーナを吸い取り、神通力を分解せんとした。
ぐにゃりと燃える三日月が蜃気楼に包まれたように歪んだと見えた瞬間、跡形もなく消え去る。常夜の機能によって圧縮が緩んだところを分解・吸収されたのと、どこか別の空間に飛ばされたのだと、ソルグランドの瞳は見抜いていた。
「結局、斬られるのは極力、避けなけりゃならんのは一緒か。流石はアンテンラの切り札だな」
一手ずつの攻防の先に、三者が互いに切り結ぶ距離に迫っていた。元より一つの肉体を共有していたソルグランドとヒノカミヒメの連携については、なんの問題もなかった。
ヒノカミヒメはずっとソルグランドの戦いを見ていて、彼の戦いを参考にして自分の戦い方を構築していた。一方でソルグランドもまた自分の戦い方を元にしているヒノカミヒメを、再誕するまでの調整期間中に学習して息を合わせられるレベルに達している。
「お覚悟!」
ヒノカミヒメがボイドリアの右側面に回り込み、独楽のように美しく回転しながら斬り込めば、ソルグランドもまた同じタイミングで左側面に回り込み、こちらは飛び上がりながら縦の回転斬りを放つ。
合わさればボイドリアの胴を泣き別れにし、さらに前後で縦半分にする、残酷極まりない連撃である。
しかし、ソルグランド達の斬撃は空を切った。ボイドリアが前方に飛び込むように跳躍して回避と同時、空中で天地を返して常夜を横薙ぎに振るい、ソルグランド達が咄嗟に手首を返して軌道を曲げた神剣二振りと刃を打ち合わせた。
どこまでも澄んだ音が二つ。苦殺那祇剣と天滅之無羅苦莽剣ほどの神剣ともなれば、いかに改良を加えられた常夜といえど分解は出来ず、互いに刃を弾き合うのみ。
一人と一柱と一体はそのまま虚空を駆け抜ける。
重力の鎖がなく、空間が延々と拡張される世界で、三者の動きは自由自在そのものだった。
これまでの戦闘と異なる大きな点は、それぞれが五体と手にした武器以外を振るう暇が無かったことだ。
時間が経過するごとに三者のプラーナは高まり、戦闘能力が上昇し続けて、相手に斬撃を叩き込むことと相手の斬撃を防ぐ選択肢が常に生じている。
知の神々に由来する演算能力を持つソルグランドとヒノカミヒメ、異星の超技術に由来する演算能力を持つボイドリアをして、己の五体以外を使用する余裕がなかったのである。
真上大我に最適化されたソルグランドの戦闘能力は、ボイドリアを通じてアンテンラにリアルタイムで報告され、その脅威度はヒノカミヒメと同等と評価されていた。
ほとんど貼りつくようにしてボイドリアの周囲を飛び回り、刹那の休みもなく繰り出される斬撃ばかりか、打撃と蹴り、さらには関節技すら含む猛攻をボイドリアは悉くさばくだけでなく、反撃すら加えている。
互いに一撃を入れる間もなく戦い続ける中、ソルグランド参戦前に負っていたヒノカミヒメとボイドリアの傷は癒えて、プラーナと神通力の消耗以外には問題の無い状態にまで回復している始末。
その中でソルグランドはボイドリアのプラーナの上昇と二対一の状況で、互角に渡り合う戦闘能力に、内心で舌を巻いていた。
(俺とヒノカミヒメの二人掛かりなら早々に決着がつくと思っていたんだが、こりゃ想像以上だな。ナラカ・コーラルのバックパックを受けていたのと同じで、ツイノエの動力炉からエネルギー供給を受けているな?)
ボイドリア自身の出力も相当だが、それだけでソルグランド達を相手に渡り合うパワーとスピードを維持し続けるのには、並大抵のエネルギーでは賄えまい。
(ラグナラク以上の強敵と見るべきか。加えて俺とヒノカミヒメ対策をしているんだから、アンテンラは厄介な真似をしてくれる)
正面から斬り合う中、互いの刃を弾いた瞬間にソルグランドの右足が跳ね上がった。鋭い足刀はボイドリアの仰け反った顎先を掠め、わずかに赤くさせたが、蹴られた勢いを利用したボイドリアの回転蹴りが、今度は真下からソルグランドを襲う。
咄嗟に両脚でボイドリアの左足を挟み込み、直撃を避けたソルグランドが両手で弓矢のように引き絞った苦殺那祇剣を仰け反るボイドリアの上半身へ突き込む。
同じくタイミングを合わせたヒノカミヒメが下方から飛び込んできて、ボイドリアの首をうなじの側から斬り落とそうと天滅之無羅苦莽剣を振り上げる。
必殺のタイミングで放たれた二撃。これをボイドリアは挟み止められた左足を強引に振り回すことでソルグランドの体勢を崩し、神剣の切っ先はあらぬ方向へと流れた。
後ろから首を落としに来た天滅之無羅苦莽剣は、背中の鞘に納刀するような動きで常夜を回し、かろうじて受け止めるのに成功する。
「おおおお!!!」
ボイドリアの喉から製造から初めて裂ぱくの気合が叫ばれると、彼女の身体が大渦のように回転して、ソルグランドは蹴り飛ばされ、ヒノカミヒメは噛み合った刃を弾き飛ばされる。
凄まじい勢いで吹き飛ばされた両者が体勢を立て直す間に、ボイドリアは狙いをソルグランドに定めて飛んだ。一度は倒したはずの女神に向けて、技術もなにもないシンプルな直線軌道を描いて突っ込んでゆく。
ボイドリアの中にわずかに搭載を許された精神が叫んでいるのだ。
絶対にあいつを生かして帰すな、今度こそ倒して自分の価値を証明しろと。むき出しの殺意、抑えきれない怒り、そして隠しきれない焦り。
「おうおう、ずいぶんと人間臭い表情をするようになったな。心を持たせるとは、アンテンラも酷な真似をする」
ぐるんと縦に一回転したソルグランドの回し蹴りが、しゃにむに突っ込んで来たボイドリアの左側頭部を痛烈に叩くが、ボイドリアはその場で堪えきり、両手で握った常夜をなにも考えず、ただ全力を持って振り下ろす。
ソルグランドの全身が盛大に警鐘を鳴らし、回避が間に合わないと悟ると同時に、両手で握った苦殺那祇剣で常夜を受け止めるが、止めきれずにそのまま押し込まれて左肩へ苦殺那祇剣の刃が触れる。
「ぐううう、気合が、入っているな!」
苦殺那祇剣はソルグランドのプラーナと神通力によって作られている。その為、決してソルグランドを傷つけはしないが、苦殺那祇剣越しに常夜の刃が確実にソルグランドへと近づいてくる。
「本機の存在理由、当機の戦果! 返してもらう、ソルグランド!!」
血を吐くか、それとも火を噴くかの如きボイドリアの叫びに、ソルグランドはあろうことか笑い返した。
「お人形さんを相手にするよりも、ファイトが湧いてくるってもんだ。お前さんの親玉はつまらなそうだけど、なあ!!」
ふっと小さな呼吸と共にソルグランドの全身の筋肉が躍動して、一気にボイドリアを押し返した。大きく後ろに吹き飛ぶボイドリアに、今度はソルグランドが果敢に斬りかかり、苦殺那祇剣の刃が真っ赤な炎を纏う。
「苦殺那祇剣の炎の味は、忘れられるもんじゃなかったろう?」
「プラーナの増大を確認。ソルグランド、更に出力上昇っ」
ソルグランドに呼応するように、更にボイドリアに流れ込むツイノエのエネルギー量が増した。それを肌で感じつつ、ソルグランドに恐れはない。これまで星をいくつも滅ぼしてきた相手なのだ。その数だけの星を相手にするくらいのことは、想定済みである。
一合、二合、三合……夜空に尾を引く流れ星の雨の如く、苦殺那祇剣が炎の軌跡を描いてボイドリアと切り結ぶ。
常夜の刃が肉体に届かなくても、髪や装束に触れる度、その箇所を構成するプラーナがごっそりと削られ、瞬間的に消失しては復活する光景が繰り返される。
末端部分では抵抗する間もなく消滅させられる常夜の凶悪な機能は、かつて受けた苦痛を嫌でもフラッシュバックさせるが、その恐怖をねじ伏せるだけの勇気と覚悟がソルグランドにはあった。
一方でボイドリアも苦殺那祇剣の切っ先が触れた箇所が、単なる斬撃と燃焼に留まらず、再生機能が不全を起こす事実に苦渋を味わっていた。
ヒノカミヒメからしてもそうだったが、ダメージを与えた箇所にプラーナを残留させて、再生を阻害するどころか破壊を促進する技術を、両者は共有していたのである。
そしてソルグランドとヒノカミヒメの場合、これに祟り、呪詛が加わって、ボイドリアは神通力耐性を傷口に割り振って、浸食を防がなければならなかった。
ソルグランドとヒノカミヒメが多少の傷は、瞬く間に回復する中、ボイドリアは受けた傷の再生の数秒を要し、常夜による対策があるとはいえ、じりじりと追い詰められているのは明白。それをボイドリアは他の誰よりも理解している。
ソルグランドとボイドリアが天地を逆にした状態で向かい合う中、不意にソルグランドの下方に転がっていたラグレックの残骸が起き上がって割って入り、彼女の視界を一瞬だけ塞いだ。
アンテンラの遠隔操作で再起動したのだが、もはや攻撃する機能もエネルギーも残っておらず、一瞬だけ動かすのが限度。それでも、三者の戦場に不確定要素を持ち込み、戦況を変えるきっかけを生むのには十分すぎた。
ラグレックの残骸をボイドリアはどう活かすか? 隠れ蓑にしてソルグランドの死角へと回り込むか、あるいは残骸を除ける手間を狙って一撃を叩き込む? ともすればソルグランドを放置してヒノカミヒメに襲い掛かるか?
「ああああ!!」
答えはラグレックの残骸ごとソルグランドへ体当たりを敢行し、常夜の刺突を見舞うことだった。艶を失ったラグレックの銀色の装甲を貫いて飛び出す常夜に、身を捩るソルグランドの左腰が裂かれた。
巫女装束を切り裂き、その下の肉も切り裂いた刃に、血肉を分解される苦痛が齎され、傷口から滲む先から血が消える。
「づあ、やって、くれる!」
左腰に常夜の刃を埋めたまま、ソルグランドもまたラグレックの残骸越しに苦殺那祇剣を下方から抉るように突き込んだ。
水を貫くような軽い手応えと共に、苦殺那祇剣がボイドリアの左脇腹から入り、右肩から切っ先が出る。
体内を縦断する苦殺那祇剣の熱と呪詛の数々に、ボイドリアは自身の機能が次々とエラーを吐くのを理解せざるを得なかった。
ならばせめてもと、アンテンラの勝利に繋がるようにソルグランドへ少しでも多くの損傷を与えようと、残る力を振り絞って常夜の刃を左に振り抜こうと足掻く。
ソルグランドの胴体を泣き別れにしようと、常夜の刃が肉を断つ音を立てて進んでゆく。
窮地に陥ったボイドリアの精神は爆発的なプラーナの生成へと繋がり、苦殺那祇剣による大損害を感じさせない力を発揮していた。
「はっ! 今わの際にやるじゃねえか。火事場の馬鹿力ってやつを魔物少女に見せられるとは思っていなかったぜ?」
まるで思わぬ才能を見せた生徒を褒める教師のように、ソルグランドは柔らかな声音でボイドリアを賞賛した。そこへ、張り詰めた表情を浮かべるヒノカミヒメが二人の頭上から飛び込んでくる。
「やああああ!!」
天滅之無羅苦莽剣の刃にありったけのプラーナと神通力を込め、振り下ろした刃がボイドリアの両腕を容赦なく断ち切る。そのままボイドリアの胴体を蹴り飛ばし、その勢いで苦殺那祇剣の抜けたボイドリアに返す刃を送った。
ボイドリアの左腰から右肩口を、苦殺那祇剣に貫かれた箇所をなぞるようにして天滅之無羅苦莽剣が斬り裂いてゆく。異星の臓腑を、神経を、血管を、骨を断ち、刃が抜けた。
「ああ、がぁ、本機、は……」
ヒノカミヒメはボイドリアへ視線と警戒を外さず、背後のソルグランドの気配を探る。
プラーナと神通力の減少は続いているが、その量は減ってきており、常夜は引き抜いたようだった。
ボイドリアは天滅之無羅苦莽剣の斬撃を受けた箇所から、苦殺那祇剣の残り火を噴き出し、その身体を徐々に焼かれ始めている。
「ああして見ると、ちょいと残酷な絵面になっちまったな」
少しだけ痛みをこらえているソルグランドの声に、ヒノカミヒメは安堵しそうになる自分を引き締めた。尊敬するソルグランドの発言は分からないでもないが、それにしたって怨敵を相手に、ヒノカミヒメは容赦する気にはなれなかった。
引き抜いた常夜を左手に、ソルグランドは神の造りたもうた美貌をわずかにしかめて、ヒノカミヒメの隣に並ぶ。一人と一柱の目の前で、ボイドリアはゆっくりと落下を始めていた。
「十秒もありゃ傷口は塞がる。あんまり心配しなくていいぞ」
「するなと言う方が無理でございます。ソルグランド様と二人掛かりでも、意外と手こずらされましたね。ですが、これで阻む者はもう居りません。念の為、跡形もなく粉微塵にしておきますか? それか私達の神域に隠してしまいましょうか?」
先ほどのラグレックのように、アンテンラがボイドリアの残骸を操作する危険性を考慮しての発言である。
「憐れみがないわけじゃないが、まあ、それなら今後の研究の為にもって建前で、神隠ししておくか。跡形もなく砕くまではしたくねえやな」
ひたすら生みの親に従順だったボイドリアに対する憐憫が、はっきりと聞き取れるソルグランドに、ヒノカミヒメは小さく溜息を吐いた。
ソルグランドの中身は人の親であり、祖父であるから、ふとした時に見せる甘さや情は、ヒノカミヒメよりもはるかに強い。だからこそ人間を見守ってきた神の末席として、ヒノカミヒメはソルグランドに惹かれてしまうのだが。
「その前に情報をできるだけ引っこ抜いておかねえとな。それが出来ないとなりゃ、最悪、ツイノエそのものをぶっ壊して、アンテンラを始末する羽目になる。流石にそれはしんどいぜ」
ソルグランドの裂かれた脇腹の傷口は塞がり、なまめかしい皮膚にうっすらと線が残るばかり。周囲にラグレックや魔物の転移反応がないのを確かめながら、ソルグランドとヒノカミヒメがボイドリアへと近づく。
ボイドリアはかろうじて機能停止に陥っていないが、自力では指一つ動かすこともままならないだろう。それでも自爆くらいはできるかもしれないと、慎重に警戒しながら近づく一人と一柱を、ボイドリアの瞳がじっと睨んでいる。
ボイドリアに対する注意と警戒こそ緩まぬソルグランドだったが、アンテンラは彼らの意表を見事に突いた。
ボイドリアに干渉すると想定されたアンテンラだったが、彼らはアンテンラではなくツイノエそのものにこれまでとは異なる行動を起こさせたのだ。
『魔物少女最終号機ボイドリアの敗北を認定。現有戦力でソルグランド並びにヒノカミヒメの撃破を不可能と判断』
『ツイノエ表層部における戦闘は継続中。ただし好転する見込みは微少。他戦線より招集中の戦力の投入により撃破は可能なれど、撃破までに想定される被害は甚大。今後の監査に多大な悪影響を及ぼす』
『ラグナラク完全沈黙、ラグレック残機なし。想定通りの性能を発揮するも敵魔法少女の戦闘能力が、こちらの想定を超過した。二百七十四周期ぶりの危機的状況に陥っていると判断する』
アンテンラの三つの声がツイノエ中枢で状況を報告し合い、統括意思はかつての危機を乗り越えた前例に倣い、行動に移した。
『ツイノエ、中枢部を除く全階層を分離。戦闘形態への移行を開始する』
『残余戦力に対して回避行動を指示。指示に応じられない機体は廃棄』
『敵勢力殲滅を開始。最優先目標はソルグランド並びにヒノカミヒメのまま維持』
そしてこれまで三つ存在したアンテンラの思考と声が、一つへと重なり合う。
『分割思考による意思決定を一時期的に凍結。統括意思アンテンラを統合統括意思アンテンラへと仕様変更。エゼキド監査軍自己防衛フェーズ、ファイナルへ移行』
アンテンラが次の行動を決定するのと同時にツイノエ全体に衝撃が走り、神域化していた箇所を除いて、次々と物理的結合が解除されてゆく。
それまで戦闘を続けていたザンエイ付近の敵勢力が後退を始め、明らかに戦力を再編成する動きを見せる。更にはツイノエ全体に生じた異常事態に、ザンエイは展開していた味方を収容し、ツイノエからの一時的な離脱に向けて動き出していた。
一方でツイノエに最も奥深く侵入していたソルグランド達も、前後左右、全てで生じる異常に気付いて、判断を迫られていた。このまま中枢部を目指して前進を続けるか、それとも後退して味方と合流を目指すか。
ここまで多大な労力を払ってきたことを思えば、簡単には前進を諦めることは出来ない。
決断は自然と突入部隊の指揮を執ったヒノカミヒメへと委ねられ、そうなるとソルグランドに委ねられたも同然となる。
「ソルグランドさん、ヒノカミヒメ、ここは脱出の一手です」
ところが真っ先に意思を表明したのは夜羽音であった。ソルグランドにとっては気の置けない、種族を超えた友であり相棒。ヒノカミヒメにとっては生まれた時から面倒を見てくれた恩ある相手であり神としての先達。
無碍に出来る相手ではないのに加えて、夜羽音が導きの権能を持つ八咫烏の末席であるのも、夜羽音の言葉に耳を傾ける大きな理由だ。
「夜羽音さん、その心は? ひょっとして自爆の前触れかなんかですかね?」
ソルグランド達の周囲に突入部隊の面々が集まる中、ソルグランドが問えば夜羽音は次々に切れ目が走り、分離を始めた床と天井を見回してから答えた。
「いいえ。私も詳細が分かっているわけではありませんが、ここから離れた方がよいのは確実です。そして戦いはまだ終わっておりません。私の本能、としておきましょう。それが今は外へと皆さんを導くべきだと訴えているのです」
「なるほど、それなら従うのが最善ですね。にしても、なんだ? このツイノエ自体が動いているのか? ふーむ、となると」
ソルグランドは薄々とだが何が起きているのかを、察しつつあった。これまで仕入れたサブカルチャーの知識と人間の限界を超える脳が、まもなく遭遇する未来を正確に見ていたからだ。
中枢を目指している最中に、敵要塞で発生した異変。これが自爆の前触れでないのなら、切り札となる巨大兵器が出てくるか、あるいは要塞そのものが変形するか……
「さしずめツイノエをアンテンラの身体にするべく、作り替えているところなのでしょう。いよいよ部下に任せていられなくなって、自ら手を下す気になったか。そこまで追い詰めることに成功したと、喜んでおきますかね」
この異常事態が終わった時が、本当の意味で最後の戦いになるとソルグランドは確信していた。それから、アンテンラからの通達を聞き、脱出のままならないまま、宇宙を漂流する運命に投げ出されたボイドリアが目についた。
「お前さんを再利用されても困るからな。鹵獲させてもらうぜ」
左手の常夜を右手の苦殺那祇剣とまとめて持ち、左手でボイドリアの首根っこを掴む。ソルグランドの意思によって、体内を焼いていた炎は熾火程度に収まり、再生を阻むだけになっている。
「離せ。アンテンラ、からの、指示にのみ本機は、従う……」
ツイノエの組み換えに対し、回避行動の指示が送られているが、今のボイドリアに対応する力は残されていない。アンテンラもそれを理解している以上、大破したボイドリアを斬り捨てたことを意味する。
ボイドリアとてそれを理解している。ヒノカミヒメとソルグランドの撃破が叶わず、いくばくかの損傷と消耗を与えただけとあっては、廃棄されても当然だと、そう納得していた。
どうしてか、胸の奥が痛んで、鼻の奥がツンとするけれど、その理由はいくら考えてもボイドリアには分からなかったし、どうして眼球から液体が溢れるのかなんて、もっと分からない。
ソレがソルグランドに建前を口にしてまでボイドリアを回収する決断をさせたのだが、ボイドリアにはこれも分からない。分からないことだらけだった。
「言ったろ。鹵獲だって。味方として引き入れるんでも、捕虜として扱うわけでもない。お前さんの意思に関係なく、こっちの都合でやることさ」
ボイドリアはまだなにか言っていたし、ヒノカミヒメは珍しくも呆れた表情を浮かべていたが、ソルグランドはそれらに気付いていないフリをして、突入部隊の生き残りに呼び掛けた。
「よっし、ここまできておいて残念だが、いったんザンエイに戻るぞ。ただ、戦いはまだ終わりじゃない。予想が正しければ大物相手の戦いになる。気を抜くんじゃないぞ」
そうして夜羽音とソルグランド、ヒノカミヒメを先導役に、残りのネイバーが殿を務めて突入してきた時と同じ勢いで彼らは脱出を試みる。
通ってきた通路は次々と分離を始め、自ら動いてその形を組み替えていた。ソルグランドは自分の予想が当たるのを、ほぼ確信した。
構造の組み換えに巻き込まれた魔物や機械兵器がそこかしこで爆発し、押し潰されるのを横目に、自分達が同じ目に遭わないように気を配りながら、ソルグランド達は分離した構造体の隙間から覗く外を目指す。
「こういう時はショートカットするに限るってな! 凍れ!」
ソルグランドが隙間から覗く外の宇宙へと目掛け、苦殺那祇剣を一振るいするとその先へと目掛けて、巨大な氷が生まれる。
諏訪湖の御神渡りに由来する氷結した場所をすべて通過した痕跡と見做し、票家t個所に自在に転移する権能を使い、味方ごとまとめて転移する為の目標作りだ。
「よっしゃ! 跳ぶぞ、目を回すな!」
誰かが返事をする間もなく、ソルグランドは御神渡りの権能を行使して、まだ外部まで数キロメートルあった距離を一瞬で転移して、突入部隊の全員をツイノエの外へと放り出すのに成功する。
変形を始めたツイノエの外装から離脱したザンエイの姿を見つけ、まずはあそこを目指すと決めたソルグランドだったが、すぐにそれに気付いた。
ツイノエが、ひび割れた顔面の中心に赤い光を脈動させる水晶柱を据えて、手足の生えた蛇体のそこかしこに水晶を生やした異形に形を変えてゆくのを。
「それがエゼキド星人の姿だったりするのかね? ええ、アンテンラさんよ」
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