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第12話 「姉」と呼ぶ存在
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PCの電源を落としてベッドに寝転がりスマホをいじっていると、メッセージアプリから通知が来た。今日はやたらと連絡が来る日だな、と思いながらアプリを開く。
『ヨナちゃん配信お疲れ様~!
なんか疲れてたみたいだけど大丈夫??』
可愛らしいくまがしょんぼりした顔をしているスタンプと共に送られてきたそのメッセージは、「熊白ゆき」からのものだった。
私はひがおさんのことを「ママ」とは呼ばないけれど、ゆきのことはゆき姉と呼んでいる。そう呼んで、と彼女に言われたからだ。ゆきは私よりもVTuberの活動に積極的で、私がデビューしたころは「ひがお家姉妹」なんてコラボに誘ってもらっていた。
そんな関係もあって、彼女にはリアルでも使っているメッセージアプリのアカウントを教えている。SNS上でも連絡は取れるけれど、やっぱりこっちの方が便利だ。
『大丈夫だよ~!!ありがとう、見ててくれたの?』
ゆきは私よりずっと忙しい。彼女が配信をしているのは私が使っている配信サイトではなく、独自のプラットフォームを持つアプリだ。私もそのアプリを入れていて、配信はしないけれどたまにゆきの配信を見に行く。そこではよくランキング形式のイベントが行われていて、上位に入ればその順位に伴った景品が送られる。それは物だったりもするけれど、大体は雑誌や、動画広告に出演できる権利だ。
ゆきはそのイベントによく参加している。何回か上位を取っていて、彼女が載った雑誌を買いに行ったこともあった。確かどこかのお店のアンバサダーなんかもしていた気がする。
そんな風に頑張っている彼女が、私にとっては憧れだった。憧れというか、私はゆきみたいに必死になれないから、頑張れる彼女や、それについていって応援しているリスナーがいる環境が羨ましいのかもしれない。
イベントがあるときは1日に何時間も配信をしている彼女は、リアルでも仕事をしていると言っていた。それなのに、こうしてわざわざ私の配信を見てくれるのはありがたい。
『見てた! ヨナちゃん可愛いからつい配信見ちゃう~~
大丈夫ならいいけど、お仕事とかも大変だろうし無理しないでね!』
ゆきは配信でも裏でもあんまり口調に変化がない。だから文字が私の中でゆきの可愛らしい声で再生され、思わず笑みがこぼれた。
私はひとりっ子だから、自分のことを妹として扱ってくれるゆきに最初こそ違和感があったけれど、今では姉がいたらこんな感じなのだろうか、なんて思っている。何より彼女はいつも私のことを可愛いと言って慕ってくれるから、尚更ゆきのことが好きだった。
『うれしいありがとう~~!! がんばるね!!』
5分ほど返信の内容に悩んでから、結局短い文章を送る。長く書いても引かれるだろうし、やり取りを続けようとするのも邪魔かもしれないし、と思うと、そっけないメッセージしか送れない。元々人付き合いが苦手で、ゆきにもこんな風に向こうからメッセージが送られてきたときくらいしか会話をすることがなかった。
数分後にまた笑ったくまのスタンプが送られてくる。ちょっとだけ時間をおいてから既読をつけると、スマホを閉じた。
配信終わりのモヤモヤとした気分が、ほんの少し晴れた気がする。
『ヨナちゃん配信お疲れ様~!
なんか疲れてたみたいだけど大丈夫??』
可愛らしいくまがしょんぼりした顔をしているスタンプと共に送られてきたそのメッセージは、「熊白ゆき」からのものだった。
私はひがおさんのことを「ママ」とは呼ばないけれど、ゆきのことはゆき姉と呼んでいる。そう呼んで、と彼女に言われたからだ。ゆきは私よりもVTuberの活動に積極的で、私がデビューしたころは「ひがお家姉妹」なんてコラボに誘ってもらっていた。
そんな関係もあって、彼女にはリアルでも使っているメッセージアプリのアカウントを教えている。SNS上でも連絡は取れるけれど、やっぱりこっちの方が便利だ。
『大丈夫だよ~!!ありがとう、見ててくれたの?』
ゆきは私よりずっと忙しい。彼女が配信をしているのは私が使っている配信サイトではなく、独自のプラットフォームを持つアプリだ。私もそのアプリを入れていて、配信はしないけれどたまにゆきの配信を見に行く。そこではよくランキング形式のイベントが行われていて、上位に入ればその順位に伴った景品が送られる。それは物だったりもするけれど、大体は雑誌や、動画広告に出演できる権利だ。
ゆきはそのイベントによく参加している。何回か上位を取っていて、彼女が載った雑誌を買いに行ったこともあった。確かどこかのお店のアンバサダーなんかもしていた気がする。
そんな風に頑張っている彼女が、私にとっては憧れだった。憧れというか、私はゆきみたいに必死になれないから、頑張れる彼女や、それについていって応援しているリスナーがいる環境が羨ましいのかもしれない。
イベントがあるときは1日に何時間も配信をしている彼女は、リアルでも仕事をしていると言っていた。それなのに、こうしてわざわざ私の配信を見てくれるのはありがたい。
『見てた! ヨナちゃん可愛いからつい配信見ちゃう~~
大丈夫ならいいけど、お仕事とかも大変だろうし無理しないでね!』
ゆきは配信でも裏でもあんまり口調に変化がない。だから文字が私の中でゆきの可愛らしい声で再生され、思わず笑みがこぼれた。
私はひとりっ子だから、自分のことを妹として扱ってくれるゆきに最初こそ違和感があったけれど、今では姉がいたらこんな感じなのだろうか、なんて思っている。何より彼女はいつも私のことを可愛いと言って慕ってくれるから、尚更ゆきのことが好きだった。
『うれしいありがとう~~!! がんばるね!!』
5分ほど返信の内容に悩んでから、結局短い文章を送る。長く書いても引かれるだろうし、やり取りを続けようとするのも邪魔かもしれないし、と思うと、そっけないメッセージしか送れない。元々人付き合いが苦手で、ゆきにもこんな風に向こうからメッセージが送られてきたときくらいしか会話をすることがなかった。
数分後にまた笑ったくまのスタンプが送られてくる。ちょっとだけ時間をおいてから既読をつけると、スマホを閉じた。
配信終わりのモヤモヤとした気分が、ほんの少し晴れた気がする。
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