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第29話 最善策
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『ひがおさんにブロックされてた……』
『あー、やっぱりそうだよね』
ゆきにメッセージを送り、どうしようかな、と椅子にもたれかかって考える。
ここで契約していない証拠を出して、ひがおさんを悪にするのは容易い。でも、それが正しいのかがわからない。契約していないということはすでにツイートしているし、私がツイートすることでまた騒ぎになるのも嫌だった。
『これからどうするの?』
『どうしようかなって迷ってる……。ゆき姉がくれた情報を使うのは簡単だけど、でもそれでまた騒がれるのも嫌だし』
もう誰も傷つかないのは無理だ。私のリスナーは傷ついていて、ひがおさんのファンは激怒している。みんなの感情が収まるのを待つべきなのかもしれない。
『でも、ヨナちゃんのリスナーは安心するんじゃない? ひがおさんからのツイートも、ヨナちゃんからのツイートも、結局証拠はなかったわけだし……。
ヨナちゃんが本当に契約してなくて、責められるいわれはないってわかったら嬉しいと思うよ』
ゆきの言葉はもっともだ。私が守るべきものは「月島ヨナ」とそのリスナーたち。なら、私は悪くないときちんと証明した方が、両方を守ることに繋がるだろう。
『そっか、それもそうだね。
ありがとう、ゆき姉からもらった画像借りるね!もしゆき姉の方にも迷惑がかかったらごめん』
『全然いいよ、気にしないで~』
SNSのツイート欄を開き、文章を考えながら打ち込んでいく。
『ひがおさんとの件についてです。
ひがおさんの口から、「月島ヨナと契約していない」と発言されたものを共有させてください。(画像は熊白ゆきさんからお借りしています)
これをもって、この件は終わりにしたいと思います。私はもうこの事については触れませんし、私への誹謗中傷もやめてください。』
この文章が最適とは思えなかったけれど、今私に言えることはこれがすべてだ。最後にゆきからもらった画像を抜粋して添付し、何度か見直してツイートをする。
真っ先にリツイートしてくれたのはゆきだった。通知欄には今まで散々暴言を送ってきたアカウントや、自分のリスナーたちのアカウントが並んで、また賑やかになる。
『お疲れさまでした、報告してくれてありがとう』
『了解! ありがとう』
リプライにはリスナーからのそんな言葉が並んでいて、この選択は間違っていなかったのかもしれない、と少しだけ思える。
私とひがおさんが和解できる状態にない以上、この問題の解決方法に正解などなかった。それでも、最善策は選べる。これが私にとっての最善策で、リスナーがそう感じてくれているなら、もうそれでいい。
「引退配信、どうしようかな……」
この件が終わったら、とは思っていたけれど、いつにしよう。スケジュール帳を手元に引き寄せてパラパラと開く。今日、月曜日は店が定休日だし、来週の同じ日にしようか。特別何か記念日があるわけでもないし、休日の方が私もきちんと準備できる。平日にはなってしまうけれど、どうせ配信をやるのは夜だから問題ないだろう。
そのことをツイートしようとして思いとどまる。今ツイートしてもリスナーを混乱させてしまうだけだ。せめてこの報告は明日にしよう。
そう考え、PCの電源を落とす。ここまで来るのに4日もかかってしまった。いや、4日で済んだと喜ぶべきだろうか。
引退をすると告げた日から、もっと時間が経っているような気がした。引退するためにここまで頑張って、苦しんだのかと思うとなんだか笑えてしまう。
「……がんばろ」
明日からはまた仕事が始まる。椅子から立ち上がり、ぐうっと背伸びをすると、溜めていた洗濯物を片づけるために洗面所へと向かった。
『あー、やっぱりそうだよね』
ゆきにメッセージを送り、どうしようかな、と椅子にもたれかかって考える。
ここで契約していない証拠を出して、ひがおさんを悪にするのは容易い。でも、それが正しいのかがわからない。契約していないということはすでにツイートしているし、私がツイートすることでまた騒ぎになるのも嫌だった。
『これからどうするの?』
『どうしようかなって迷ってる……。ゆき姉がくれた情報を使うのは簡単だけど、でもそれでまた騒がれるのも嫌だし』
もう誰も傷つかないのは無理だ。私のリスナーは傷ついていて、ひがおさんのファンは激怒している。みんなの感情が収まるのを待つべきなのかもしれない。
『でも、ヨナちゃんのリスナーは安心するんじゃない? ひがおさんからのツイートも、ヨナちゃんからのツイートも、結局証拠はなかったわけだし……。
ヨナちゃんが本当に契約してなくて、責められるいわれはないってわかったら嬉しいと思うよ』
ゆきの言葉はもっともだ。私が守るべきものは「月島ヨナ」とそのリスナーたち。なら、私は悪くないときちんと証明した方が、両方を守ることに繋がるだろう。
『そっか、それもそうだね。
ありがとう、ゆき姉からもらった画像借りるね!もしゆき姉の方にも迷惑がかかったらごめん』
『全然いいよ、気にしないで~』
SNSのツイート欄を開き、文章を考えながら打ち込んでいく。
『ひがおさんとの件についてです。
ひがおさんの口から、「月島ヨナと契約していない」と発言されたものを共有させてください。(画像は熊白ゆきさんからお借りしています)
これをもって、この件は終わりにしたいと思います。私はもうこの事については触れませんし、私への誹謗中傷もやめてください。』
この文章が最適とは思えなかったけれど、今私に言えることはこれがすべてだ。最後にゆきからもらった画像を抜粋して添付し、何度か見直してツイートをする。
真っ先にリツイートしてくれたのはゆきだった。通知欄には今まで散々暴言を送ってきたアカウントや、自分のリスナーたちのアカウントが並んで、また賑やかになる。
『お疲れさまでした、報告してくれてありがとう』
『了解! ありがとう』
リプライにはリスナーからのそんな言葉が並んでいて、この選択は間違っていなかったのかもしれない、と少しだけ思える。
私とひがおさんが和解できる状態にない以上、この問題の解決方法に正解などなかった。それでも、最善策は選べる。これが私にとっての最善策で、リスナーがそう感じてくれているなら、もうそれでいい。
「引退配信、どうしようかな……」
この件が終わったら、とは思っていたけれど、いつにしよう。スケジュール帳を手元に引き寄せてパラパラと開く。今日、月曜日は店が定休日だし、来週の同じ日にしようか。特別何か記念日があるわけでもないし、休日の方が私もきちんと準備できる。平日にはなってしまうけれど、どうせ配信をやるのは夜だから問題ないだろう。
そのことをツイートしようとして思いとどまる。今ツイートしてもリスナーを混乱させてしまうだけだ。せめてこの報告は明日にしよう。
そう考え、PCの電源を落とす。ここまで来るのに4日もかかってしまった。いや、4日で済んだと喜ぶべきだろうか。
引退をすると告げた日から、もっと時間が経っているような気がした。引退するためにここまで頑張って、苦しんだのかと思うとなんだか笑えてしまう。
「……がんばろ」
明日からはまた仕事が始まる。椅子から立ち上がり、ぐうっと背伸びをすると、溜めていた洗濯物を片づけるために洗面所へと向かった。
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