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第47話 終幕
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次の日、私は4日ぶりに仕事に向かった。店長も柳くんも相沢さんも心配してくれていて、なんだか申し訳ないのと同時に、みんなの顔を見れて安心する。山田に会ったことと、もう来ないと思うということを伝えると、店長と柳くんに「危ないでしょ」と怒られた。
それからの生活は、びっくりするほど穏やかだった。今まで通り仕事をして、帰ったら眠る生活は変わらない。けれど心身を脅かすものがなくなると、疲労感も減る。今は新しい趣味を探している。
SNSはしばらくログインしていたけれど、山田からのメッセージがくることはなかった。というか、あの日にアカウントが消えていた。でもトラブルを避けるために私も「月島ヨナ」のアカウントを消した。配信サイト上のアーカイブや動画は、リスナーとも約束したから残している。
配信のことを忘れてしばらく経ったある日、ネットでVTuberへのストーカーが話題になっているのを目にした。問題は解決に向かっているらしいが、何度も手紙が送られてきたり、家のポストに変な荷物が入っていたらしい。山田はそういうことはしなかったな、とふと思い出し、それから、久しぶりにPCを立ち上げた。
VTuberの活動中にストーカーに遭う人たちはもちろん災難だけれど、私のようにVTuberをやめてからストーカーされる人もいるだろう。もしもそういうことがあったときに、参考になればいいと思ってブログを書き始めた。実際参考になるようなことは何もできていない。あれを解決できたのは周りの人たちの助けがあってこそだ。でも、自分だけがこんな目に遭っているという孤独感くらいは解消できるかもしれない。
私は少しずつ、VTuberだったころの気持ちと、ストーカーされていた時期の話を書き連ねた。長い文章を書くのは大学のレポート以来で、それに自分の経験となるとなんだか書くのが難しい。結局すべてを書き終わるのに3日がかかった。
「月島ヨナ」という名前は使わなかったけれど、もしかしたらリスナーには気づかれるかもしれない。それでもいい。もしかしたら彼らを不安にさせるかもしれないけど、この件は解決している。それに、私はただみんなに知ってほしいだけだ。
長い長い文章を何度か読み返し、誤字を修正して、いよいよ投稿ボタンを押す。
ブログのタイトルは、『VTuberをやめました。』
それからの生活は、びっくりするほど穏やかだった。今まで通り仕事をして、帰ったら眠る生活は変わらない。けれど心身を脅かすものがなくなると、疲労感も減る。今は新しい趣味を探している。
SNSはしばらくログインしていたけれど、山田からのメッセージがくることはなかった。というか、あの日にアカウントが消えていた。でもトラブルを避けるために私も「月島ヨナ」のアカウントを消した。配信サイト上のアーカイブや動画は、リスナーとも約束したから残している。
配信のことを忘れてしばらく経ったある日、ネットでVTuberへのストーカーが話題になっているのを目にした。問題は解決に向かっているらしいが、何度も手紙が送られてきたり、家のポストに変な荷物が入っていたらしい。山田はそういうことはしなかったな、とふと思い出し、それから、久しぶりにPCを立ち上げた。
VTuberの活動中にストーカーに遭う人たちはもちろん災難だけれど、私のようにVTuberをやめてからストーカーされる人もいるだろう。もしもそういうことがあったときに、参考になればいいと思ってブログを書き始めた。実際参考になるようなことは何もできていない。あれを解決できたのは周りの人たちの助けがあってこそだ。でも、自分だけがこんな目に遭っているという孤独感くらいは解消できるかもしれない。
私は少しずつ、VTuberだったころの気持ちと、ストーカーされていた時期の話を書き連ねた。長い文章を書くのは大学のレポート以来で、それに自分の経験となるとなんだか書くのが難しい。結局すべてを書き終わるのに3日がかかった。
「月島ヨナ」という名前は使わなかったけれど、もしかしたらリスナーには気づかれるかもしれない。それでもいい。もしかしたら彼らを不安にさせるかもしれないけど、この件は解決している。それに、私はただみんなに知ってほしいだけだ。
長い長い文章を何度か読み返し、誤字を修正して、いよいよ投稿ボタンを押す。
ブログのタイトルは、『VTuberをやめました。』
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