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第5話「過失100%」
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第5話「過失100%」
蛍は心の中で大きく深呼吸を二回した。(ここは「飴と鞭」やな!まずは、「飴」や!)
「お兄ちゃん、大丈夫か?頭打ったり、腕や膝捻ってへんか?きちんと立てるか?」
と優しい声をかけた。少年が立ち上がると右手の手のひらを少し擦りむいていたので、運転席のドリンクホルダーのミネラルウォーターを取り出すと、美少年の握手を取り、傷を洗い流した。スーツのポケットからハンカチを出すと拭き取り傷を確認した。
「よかった、傷は深くないけど、血が出てるから、絆創膏を貼っといたろな!」
とポーチから絆創膏を取り出すと、少年の手を取り、ゆっくりと貼ってあげた。少年の色白の顔に紅がさした。(おっ、うぶな反応してくれるやんか!これは、久しぶりにときめいてしまうよなぁ!)
「す、すみません…。」
小さく震えた声で、少年は蛍にお礼を言うと直角にお辞儀をした。(おうおう、行動もかわいいやないの!さて、これからどう料理したろかなぁ!ここからは「鞭」やな!)
蛍は、少年に背を向けベンツのドアを確認した。リアドアからサイドミラーまで自転車のグリップのゴムであろう約1センチの黒い筋が続き、サイドミラーは完全に根元から折れ、4本の配線でかろうじてぶら下がっている。ボディーに指を添わすとへこんでいる感じはない。(ミラーはともかく、ドアの黒線はコンパウンドで撮れるレベルかな?)と思ったが、ここは攻め時とばかりに、
「お兄ちゃん、免許証か学生証出しや!私の車、何かわかるよな!私は完全停車中。君が一方的にぶつかってきたんやから、責任が君に全てあるのはわかってるよな!」
と凄んだ。
ブラックスーツに真っ赤なシャツ、サングラスに派手なベンツ…。勝手に女やくざかなにかと思ったのであろう、手のひらに絆創膏を貼った震える指で財布から学生証を取り出し蛍に渡した。
蛍は受け取った学生証を見た。今よりかなり短いスポーツ刈りで映る写真もイケメンであることに変わりはなかった。門真工科高校の3年生のようである。誕生日は「4月」ということは「18歳」であることがすぐに分かった。名前に目を通すと、蛍の動きが止まった。
「かわ、かい、こ、なぎ?これなんて読むん?」
蛍は震えるイケメンに尋ねた。
「よ、読みにくくて済みません。サンズイの「河」に貝殻の「貝」に子供の「子」で「かわにな」と読みます。名前は風が収まる「凪」でそのまま「なぎ」。「かわにななぎ」と言います。門真工科高校の3年生です。免許は持っていません。
お、お姉さんの車、べ、ベンツですよね。た、高いんですか?た、高いんですよねえぇ…。」
と言うと、半泣きでうるんだ瞳を蛍に向けてくる。
(がおっ!ナイスリアクション!思いっきりいじめたくなってまうやん!「カワニナ」ってまさにゲンジボタルの幼虫の時の餌そのもんや!」、これは食ったるしかあれへんわな!)蛍は、少し意地悪な顔をした。
「後でもめるの嫌やから、先に「凪君」の学生証写真撮らせてもらって、君が停まってる私の車に一方的に突っ込んできたって動画を撮らせてもらうわな。もちろんええよな!」
すっかりチジミあがってる凪は、了承した。蛍は、学生証をスマホで撮影すると凪に返し、胸の前に持たせて宣誓させた。
「ぼく、河貝子凪は、〇月×日お昼12時過ぎに停まっているベンツに自転車でぶつかってしまい、ドアを傷つけミラーを折ってしまいました。責任は100%僕にあります。すみませんでした。」
凪の「宣誓」をスマホで再生確認すると、倒れたままに凪の自転車を起こすと、右のグリップが削れてはいるが、金属部分にまでは削れていないことを確認した。
「凪君、自転車、とりあえずそこの駐輪場に止めておいで。私の車の修理代、「ぼったくられてる」とか思われたらいややから、今から一緒に車屋に行って見積り取るで。その方が安心やろ?」
と声をかけた。
凪は蛍の指示に従い、近くの店の駐輪スペースに自転車を移動させると、すぐに戻ってきた。その間に、蛍は車を購入したブローカーに事故の内容と「見積りは思いっきり乗っけたって下さい。」とのメッセージを送っていたが、凪は全く気づいてはいなかった。
凪が戻ってくると蛍は優しい口調で言った。
「凪君、この後の予定は?」
「はい、夕方5時半からアルバイトがあるんですけど、それまでは大丈夫です。今、家に帰るところでしたんで…。」
「わかった。私は、佐久間蛍。じゃあ、今から車屋に行くから、右側から乗って!」
蛍は心の中で大きく深呼吸を二回した。(ここは「飴と鞭」やな!まずは、「飴」や!)
「お兄ちゃん、大丈夫か?頭打ったり、腕や膝捻ってへんか?きちんと立てるか?」
と優しい声をかけた。少年が立ち上がると右手の手のひらを少し擦りむいていたので、運転席のドリンクホルダーのミネラルウォーターを取り出すと、美少年の握手を取り、傷を洗い流した。スーツのポケットからハンカチを出すと拭き取り傷を確認した。
「よかった、傷は深くないけど、血が出てるから、絆創膏を貼っといたろな!」
とポーチから絆創膏を取り出すと、少年の手を取り、ゆっくりと貼ってあげた。少年の色白の顔に紅がさした。(おっ、うぶな反応してくれるやんか!これは、久しぶりにときめいてしまうよなぁ!)
「す、すみません…。」
小さく震えた声で、少年は蛍にお礼を言うと直角にお辞儀をした。(おうおう、行動もかわいいやないの!さて、これからどう料理したろかなぁ!ここからは「鞭」やな!)
蛍は、少年に背を向けベンツのドアを確認した。リアドアからサイドミラーまで自転車のグリップのゴムであろう約1センチの黒い筋が続き、サイドミラーは完全に根元から折れ、4本の配線でかろうじてぶら下がっている。ボディーに指を添わすとへこんでいる感じはない。(ミラーはともかく、ドアの黒線はコンパウンドで撮れるレベルかな?)と思ったが、ここは攻め時とばかりに、
「お兄ちゃん、免許証か学生証出しや!私の車、何かわかるよな!私は完全停車中。君が一方的にぶつかってきたんやから、責任が君に全てあるのはわかってるよな!」
と凄んだ。
ブラックスーツに真っ赤なシャツ、サングラスに派手なベンツ…。勝手に女やくざかなにかと思ったのであろう、手のひらに絆創膏を貼った震える指で財布から学生証を取り出し蛍に渡した。
蛍は受け取った学生証を見た。今よりかなり短いスポーツ刈りで映る写真もイケメンであることに変わりはなかった。門真工科高校の3年生のようである。誕生日は「4月」ということは「18歳」であることがすぐに分かった。名前に目を通すと、蛍の動きが止まった。
「かわ、かい、こ、なぎ?これなんて読むん?」
蛍は震えるイケメンに尋ねた。
「よ、読みにくくて済みません。サンズイの「河」に貝殻の「貝」に子供の「子」で「かわにな」と読みます。名前は風が収まる「凪」でそのまま「なぎ」。「かわにななぎ」と言います。門真工科高校の3年生です。免許は持っていません。
お、お姉さんの車、べ、ベンツですよね。た、高いんですか?た、高いんですよねえぇ…。」
と言うと、半泣きでうるんだ瞳を蛍に向けてくる。
(がおっ!ナイスリアクション!思いっきりいじめたくなってまうやん!「カワニナ」ってまさにゲンジボタルの幼虫の時の餌そのもんや!」、これは食ったるしかあれへんわな!)蛍は、少し意地悪な顔をした。
「後でもめるの嫌やから、先に「凪君」の学生証写真撮らせてもらって、君が停まってる私の車に一方的に突っ込んできたって動画を撮らせてもらうわな。もちろんええよな!」
すっかりチジミあがってる凪は、了承した。蛍は、学生証をスマホで撮影すると凪に返し、胸の前に持たせて宣誓させた。
「ぼく、河貝子凪は、〇月×日お昼12時過ぎに停まっているベンツに自転車でぶつかってしまい、ドアを傷つけミラーを折ってしまいました。責任は100%僕にあります。すみませんでした。」
凪の「宣誓」をスマホで再生確認すると、倒れたままに凪の自転車を起こすと、右のグリップが削れてはいるが、金属部分にまでは削れていないことを確認した。
「凪君、自転車、とりあえずそこの駐輪場に止めておいで。私の車の修理代、「ぼったくられてる」とか思われたらいややから、今から一緒に車屋に行って見積り取るで。その方が安心やろ?」
と声をかけた。
凪は蛍の指示に従い、近くの店の駐輪スペースに自転車を移動させると、すぐに戻ってきた。その間に、蛍は車を購入したブローカーに事故の内容と「見積りは思いっきり乗っけたって下さい。」とのメッセージを送っていたが、凪は全く気づいてはいなかった。
凪が戻ってくると蛍は優しい口調で言った。
「凪君、この後の予定は?」
「はい、夕方5時半からアルバイトがあるんですけど、それまでは大丈夫です。今、家に帰るところでしたんで…。」
「わかった。私は、佐久間蛍。じゃあ、今から車屋に行くから、右側から乗って!」
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