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第6話「契約」
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第6話「契約」
凪は初めて乗る左ハンドル車の助手席から見える景色にドキドキすると同時に、車内に漂う「女性の香り」と颯爽と大型の外車を運転する蛍のサングラスをかけた横顔にも鼓動が高まった。
交差点で停車した際、蛍は緊張した表情の凪に優しく言葉をかけた。
「凪君、誤解されないように言っておくけど、私、やくざでもやくざの女でもないから変な心配せんとってよ。山に埋めるとか海に沈めるってことはあれへんからな。
ただ、この車は、会社の車みたいなもんやから、修理はせんとあかんから。まあ、凪君も「ベンツ」って車の名前くらいは聞いたことあると思うんやけど、この車も3000万くらいする車やから、修理代もそれなりの金額になると思うんや。
だから、一緒に修理屋さん行って、金額を確認してもらうためやから、いきなり「死ね」とか「臓器売れ」いう話やないからな。」
凪の表情は一瞬緩んだが、すぐに真剣な顔をして蛍に聞いた。
「すみません。僕、まだ高校生ですし、僕の家、母子家庭で妹もいるんで、高い金額言われてもすぐには払えないんです…。その時はどうしたらいいんでしょうか?できれば、お母さんや妹に心配かけたくは無いんですけど。
今、やってるアルバイトもお給料はほとんど家に入れてるんで、僕の小遣いは月5000円くらいなんです…。どうやって、お支払いしたらいいんでしょうか?」
(ふーん、今時珍しい、いい子やないの。高校生でアルバイトして、家に入れてるって関心やな!)蛍は感心しつつも、横目で不安そうにしている凪の顔を確認するとドライに返事をした。
「まあ、修理代がなんぼになるんかわからんけど、ローン組んで月10万くらいまでやったら、私が立て替え払いせなしゃあないわな。」
「えっ、10万!」
「うん、前に、バンパーの角をちょっと当て逃げで擦られただけでも80万くらいかかったからなぁ。今回はドア二枚と前のボディーまでいってしもてるから、ちょっとなんぼになるんかは想像つけへんわ。」
瞬く間に凪の顔色が蒼くなっていくのがわかった。(おー、ビビってる、ビビってる!どう出てくるかな?)凪が、震える声で尋ね直した。
「僕、今のアルバイトでも月6万円なんです。あと、どんなにシフト増やしても2万円分増やせるかどうか…。どうしたらいいんでしょうか?何でもしますので助けてください。」
(おー、ものの見事に引っかかった感じやな。ここでいっちょ、とどめ刺しといたるか!)蛍はあえて横は見ず淡々と話した。
「凪君、今のバイトって時給なんぼや?週何時間、働いてるんや?」
「はい、時給は1000円で、週5日、3時間ずつです。飲食店のバックヤードとホールをやってます。」
蛍は心の中で舌を出した。(あー、典型的な苦学生やな。おっしゃ、週二日間、買い取ったるか!)
「凪君、週2日、私の言うこと聞けるか?そしたら、修理代とは別に、1日5千円出したるわ。私の言うこと聞くんやったら、一日あたり、修理代を1万円ずつ給料とは別に引いてあげるわ。どうや?それでよければ契約や。」
「えっ、本当ですか?いいんですか?何でもします。何でもします。お姉さんの言うとおりにしますんでよろしくお願いします。」
「凪君、今、何でもしますって言うたけど、その言葉に間違いはないな?」
「はい、間違いはありません!本当に助かります。」
と助手席で何度も頭を下げていた。
蛍の運転するベンツは、購入したブローカーのガレージに到着した。店長は、蛍の連れているイケメン高校生に興味津々だったが、車に着いた傷を確認し、二人に対し、
「板金と、このカラーは特殊色の電着塗装なんでドア二枚と前サイドパネル脱着と塗装、そしてガラスコーティングで普通やったら、330万はかかるんやけど、黒瀬さんとこなんで、思いっきり勉強して込々の280万でやらせてもらいますわ。」
と言った。
「それ以上、安くなれへんの?」
「うーん、このクラスで雑な仕上げするのは…。まあ、36回払いのローンは何とかさせてもらいますけど、工賃は最低で見積もらせてもらっての結果です。」
「しゃあないな、汚いまま乗るのは社長は許してくれへんやろうから、それで頼むわ。ローン名義は私で頼むわな。今日から、最短で修理して!黒瀬社長には内緒にしとってな。私がぶつけたってばれたら、会社、クビになってしまうからな。そこは頼むで。」
と言い、凪を連れて、事務所でローン契約書を作成した。毎月の払いは85151円になることが凪にもわかったが、その場で何も言うことはできなかった。
代車に出された、ベンツCクラスに乗り換えると凪が言った。
「佐久間さん、すみません。何としてでもお支払いしますんで…。」
「あぁ、せやな。凪君、今から3時間、ホテルで初仕事やで。拒否権は無しやでな!」
凪は初めて乗る左ハンドル車の助手席から見える景色にドキドキすると同時に、車内に漂う「女性の香り」と颯爽と大型の外車を運転する蛍のサングラスをかけた横顔にも鼓動が高まった。
交差点で停車した際、蛍は緊張した表情の凪に優しく言葉をかけた。
「凪君、誤解されないように言っておくけど、私、やくざでもやくざの女でもないから変な心配せんとってよ。山に埋めるとか海に沈めるってことはあれへんからな。
ただ、この車は、会社の車みたいなもんやから、修理はせんとあかんから。まあ、凪君も「ベンツ」って車の名前くらいは聞いたことあると思うんやけど、この車も3000万くらいする車やから、修理代もそれなりの金額になると思うんや。
だから、一緒に修理屋さん行って、金額を確認してもらうためやから、いきなり「死ね」とか「臓器売れ」いう話やないからな。」
凪の表情は一瞬緩んだが、すぐに真剣な顔をして蛍に聞いた。
「すみません。僕、まだ高校生ですし、僕の家、母子家庭で妹もいるんで、高い金額言われてもすぐには払えないんです…。その時はどうしたらいいんでしょうか?できれば、お母さんや妹に心配かけたくは無いんですけど。
今、やってるアルバイトもお給料はほとんど家に入れてるんで、僕の小遣いは月5000円くらいなんです…。どうやって、お支払いしたらいいんでしょうか?」
(ふーん、今時珍しい、いい子やないの。高校生でアルバイトして、家に入れてるって関心やな!)蛍は感心しつつも、横目で不安そうにしている凪の顔を確認するとドライに返事をした。
「まあ、修理代がなんぼになるんかわからんけど、ローン組んで月10万くらいまでやったら、私が立て替え払いせなしゃあないわな。」
「えっ、10万!」
「うん、前に、バンパーの角をちょっと当て逃げで擦られただけでも80万くらいかかったからなぁ。今回はドア二枚と前のボディーまでいってしもてるから、ちょっとなんぼになるんかは想像つけへんわ。」
瞬く間に凪の顔色が蒼くなっていくのがわかった。(おー、ビビってる、ビビってる!どう出てくるかな?)凪が、震える声で尋ね直した。
「僕、今のアルバイトでも月6万円なんです。あと、どんなにシフト増やしても2万円分増やせるかどうか…。どうしたらいいんでしょうか?何でもしますので助けてください。」
(おー、ものの見事に引っかかった感じやな。ここでいっちょ、とどめ刺しといたるか!)蛍はあえて横は見ず淡々と話した。
「凪君、今のバイトって時給なんぼや?週何時間、働いてるんや?」
「はい、時給は1000円で、週5日、3時間ずつです。飲食店のバックヤードとホールをやってます。」
蛍は心の中で舌を出した。(あー、典型的な苦学生やな。おっしゃ、週二日間、買い取ったるか!)
「凪君、週2日、私の言うこと聞けるか?そしたら、修理代とは別に、1日5千円出したるわ。私の言うこと聞くんやったら、一日あたり、修理代を1万円ずつ給料とは別に引いてあげるわ。どうや?それでよければ契約や。」
「えっ、本当ですか?いいんですか?何でもします。何でもします。お姉さんの言うとおりにしますんでよろしくお願いします。」
「凪君、今、何でもしますって言うたけど、その言葉に間違いはないな?」
「はい、間違いはありません!本当に助かります。」
と助手席で何度も頭を下げていた。
蛍の運転するベンツは、購入したブローカーのガレージに到着した。店長は、蛍の連れているイケメン高校生に興味津々だったが、車に着いた傷を確認し、二人に対し、
「板金と、このカラーは特殊色の電着塗装なんでドア二枚と前サイドパネル脱着と塗装、そしてガラスコーティングで普通やったら、330万はかかるんやけど、黒瀬さんとこなんで、思いっきり勉強して込々の280万でやらせてもらいますわ。」
と言った。
「それ以上、安くなれへんの?」
「うーん、このクラスで雑な仕上げするのは…。まあ、36回払いのローンは何とかさせてもらいますけど、工賃は最低で見積もらせてもらっての結果です。」
「しゃあないな、汚いまま乗るのは社長は許してくれへんやろうから、それで頼むわ。ローン名義は私で頼むわな。今日から、最短で修理して!黒瀬社長には内緒にしとってな。私がぶつけたってばれたら、会社、クビになってしまうからな。そこは頼むで。」
と言い、凪を連れて、事務所でローン契約書を作成した。毎月の払いは85151円になることが凪にもわかったが、その場で何も言うことはできなかった。
代車に出された、ベンツCクラスに乗り換えると凪が言った。
「佐久間さん、すみません。何としてでもお支払いしますんで…。」
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