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母を訪ねて
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「テレビの再現VTRで見たけど、記憶を巻き戻したり早送りしたりして、失踪した人がどこに隠れているか見つけるんでしょう?」
興奮をかくせないタイチのほほは赤く、目が輝いている。
ハダはタイチの質問には答えずに、周辺を注意深く見回した。
もうとっくにやっているなどとは、探偵が母親を発見できると信じて疑わない子どもに言えるはずがなかった。いつも通りの手順が、うまくいかない。なぜならこれは、記憶ではないから。
こんな荒廃した風景が思い出だなんて、冗談じゃない。
巻き戻しても、早送りにしてもまったく変化のない風景。地面を割れてきざきざしたさまざまなサイズのガラスの破片が、びっしりと埋めつくしている以外は何もない。太陽も星も月もない空は、真っ暗ではないものの、灰色がかった、それでいてときどき絵の具のチューブから絞り出したような、黄色や緑や赤、オレンジといった原色の筋が渦を巻いて複雑な色合いをかもし出している。じっと見つめすぎると、めまいを起こしそうだった。
冷たい風が吹いているというのに、ハダは汗をかいていた。
風など感じるはずがないのに。
もちろん、汗をかくはずもない。探偵はそんな見せかけの感覚には惑わされないように訓練を積んでいる。それがどんなに恐ろしい、おぞましい記憶でも、目をそむけたくなるような悲しい思い出でも客観的に直視する、それが記憶探偵の基本のキだ。それなのに。
冷たい風が汗びっしょりの彼の体を冷やしていく。タイチも寒そうに首をすくめている。
だから嫌だったんだ。
これは通常の記憶ではないから、記憶探偵としては百戦錬磨のハダの経験もあまり役に立たない。
かすかに、さらさらとガラスの破片が動く音が二人の背後でした。ハダはうなじの毛が逆立つのを感じた。
「お母さん?」
喜々として振り返ったタイチの顔がひきつり、凍りついた。
それは、あばら骨が浮くほどやせ細っているくせに腹だけ突き出した胴体にクモの手足をくっつけたような姿をしていた。胴体に比べて小さい顔は、悪意に満ちていた。口の両端から牙を生やし、転げ落ちそうなほど飛び出した大きな目の周りはげっそりと落ち窪んでいたが、見間違えようもないていどには面影を残していた。
そのバケモノは、タイチの顔をしていた。
興奮をかくせないタイチのほほは赤く、目が輝いている。
ハダはタイチの質問には答えずに、周辺を注意深く見回した。
もうとっくにやっているなどとは、探偵が母親を発見できると信じて疑わない子どもに言えるはずがなかった。いつも通りの手順が、うまくいかない。なぜならこれは、記憶ではないから。
こんな荒廃した風景が思い出だなんて、冗談じゃない。
巻き戻しても、早送りにしてもまったく変化のない風景。地面を割れてきざきざしたさまざまなサイズのガラスの破片が、びっしりと埋めつくしている以外は何もない。太陽も星も月もない空は、真っ暗ではないものの、灰色がかった、それでいてときどき絵の具のチューブから絞り出したような、黄色や緑や赤、オレンジといった原色の筋が渦を巻いて複雑な色合いをかもし出している。じっと見つめすぎると、めまいを起こしそうだった。
冷たい風が吹いているというのに、ハダは汗をかいていた。
風など感じるはずがないのに。
もちろん、汗をかくはずもない。探偵はそんな見せかけの感覚には惑わされないように訓練を積んでいる。それがどんなに恐ろしい、おぞましい記憶でも、目をそむけたくなるような悲しい思い出でも客観的に直視する、それが記憶探偵の基本のキだ。それなのに。
冷たい風が汗びっしょりの彼の体を冷やしていく。タイチも寒そうに首をすくめている。
だから嫌だったんだ。
これは通常の記憶ではないから、記憶探偵としては百戦錬磨のハダの経験もあまり役に立たない。
かすかに、さらさらとガラスの破片が動く音が二人の背後でした。ハダはうなじの毛が逆立つのを感じた。
「お母さん?」
喜々として振り返ったタイチの顔がひきつり、凍りついた。
それは、あばら骨が浮くほどやせ細っているくせに腹だけ突き出した胴体にクモの手足をくっつけたような姿をしていた。胴体に比べて小さい顔は、悪意に満ちていた。口の両端から牙を生やし、転げ落ちそうなほど飛び出した大きな目の周りはげっそりと落ち窪んでいたが、見間違えようもないていどには面影を残していた。
そのバケモノは、タイチの顔をしていた。
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