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第一章 異変
五話 秘密の話
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────昔話を少ししようか。
ある街の小さな家に双子が生まれたらしい。
その街で双子はとても珍しく、近所からも愛されてながら育っていった。姉は明るく元気な性格で、弟とはそれとは真逆の物静かな性格だった。
時は経ち、二人は九歳になった。九歳になった誕生日も大勢で集まり、楽しくお祝いしていた───はずだった。
誕生日会も終わりに近づいた頃だっただろうか。双子の家の庭に一人の男が刃物を片手に入ってくる。
双子の母がその男の前に駆け寄り、外に出てもらうよう説得していた。だが男は母の姿など眼中になく、その目には双子の姿だけが映っていた。
すると男は目の前の母を邪魔そうに突き飛ばし、ナイフを双子の姉に向けながら走っていく。双子の姉は動揺したまま動くことができずにただその場に立っていた。それを見た弟は姉を守るかのように姉の前に立ったらしい。男は尚も止まることなくそのまま弟を刺したそう。
弟の腹からは真っ赤な液体が溢れ出てきていた。すると弟は力をなくしたかのようにその場に倒れる。
男はその後、さらに狂ったかのように叫びだし、ナイフをただ一目散に振り回した。
きっと男の目には人なんて見えておらず、見えるのはただの闇だっただろう。誰と構わず人を切りつけた。そして最後には自分すらも切り裂いてしまったという。
取り残されたのは双子の姉と、誕生日会に参加していた近所の大人だけだった。誰もが一瞬の出来事を把握できずにいる中、双子の姉は動かない弟の姿を見るなり声も出さずにただ泣いていたという。
彼女は自分に問い詰める。何故、罪もないはずなのに弟は殺された。何故、私でなくて弟なのか。
庭は血の海となり、誰もが声を出せずにいたらしい。
家族を失った少女に対して周りの大人達は可哀想とそればかり言っていた。そして弟がいなくなってから三回目の誕生日。面倒を見てくれていた大人達が欲しい物は何かと問いてくる。
正直、欲しいものなんてない。あるとすればあの日なくなった家族の、弟の命だけだ。ただ、それだけだった────。
だがそのしばらく後に、さらなる悲劇が襲う。彼女は絶望の中でしか、生きられなかったらしい。
そんな、悲しい昔話────。
────朝。日が昇り、窓から明るい光が差し込んでくる。
「ん…もう朝か……しかし眠いな……もう少し寝よう」
だが二度寝しようとした瞬間に教室のドアが思い切り開く。
「おはようございますお兄ちゃん! 朝だよ!新しい一日が始まるよ!」
嫌なほど頭に響く大きな声で蓮を起こしに来た天華。その斜め背後には天茉の姿もあった。
「お姉ちゃん朝からうるさいです」
「そうそう……朝からうるさいぞー…ってうぐぉへ!?」
天華がこっちに向かって走ってきたかと思えば敷布団にダイブしてきた。ちょうど天華の膝が俺のムスコに直撃し、一瞬意識が遠のく。いっぽう天茉は、苦い顔で申し訳なさそうに頭を下げていた。
「あれ? お兄ちゃんまた寝ちゃったよ? もう、お寝坊さんなんだから」
いや違う…今のは君のせいだ……と言いたかったが必死に堪える。
「あ、朝から元気なのはいいことだ……だが敷布団にダイブするのはやめてくれ……」
────だが、こんな賑やかな朝もたまには悪くないかも知れない。今まで起きる時間と言えばいつも昼過ぎだったし。
「おうおう、楽しそうで何よりだが朝ごはんの時間だぞ」
鈴桜がドアの向こうから顔を覗かせていた。
「すみません。わざわざ僕達の分まで」
「気にするなって。そのかわり、少し話がある。食べ終わったらそのまま拠点で待っていてくれ」
「拠点…? 拠点とはどこのことですか?」
「校長室だよ。まぁ着いてくればわかる」
そう言うと鈴桜が去っていく。その後を親についていくようなひよこみたいに天華と天茉が歩いていった。
「蓮もなるべくはやく来るように。あと身だしなみはしっかり整えような。ちゃんと鏡みておけ」
「へ?」
近くにあった鏡を覗いてみると、酷いものだった。主に髪が。
「確かに酷いなこりゃ…」
手ぐしでもあまり直らなかったので、水道の水で軽く濡らしたらなんとかまとまった。
「さて、行くか」
教室…部屋のドアを閉め、校長室に向かった。
「……遅い…」
校長室に入ると、ソファーにみんな座っていた。特に天華は待ちきれないのかスプーンを片手にこっちを見ていた。
テーブルには桜組の人数のコーンフレークと、真ん中にミルク、水の入ったコップがあった。意外と普通の朝ご飯だったのでよかった。
「おかわりはないが、そこに置いてあるビスケットは食べていい」
そう言って指さしたところにはビスケットで有名なあのお菓子が置いてあった。
「もおーはやく食べようよぉ」
天華が急かすようにそう言い、頬を軽く膨らませる。
「そうだな。じゃ、食べようか」
鈴桜が手と手を合わせると、他の皆も真似をした。瑠々にいたってはまるで黙祷をしているみたいだった。
「よし、いただきますっと」
そう言って、味わうように朝食を食べ始めた。
───朝食はコーンフレークだけだったからか10分程度で食べ終わった。
天華は少し物足りなさそうだが、そのかわりにビスケットを頬張っていた。
───そういえばさっき、鈴桜が双子に話があると言っていたがあれは何なのだろうか。なんとなく予想はつくが。
「すまない、瑠々と蓮。少し席を外してくれるか?」
「あ、あぁ。わかった」
桜組の勧誘なら俺らはいてもいいのでは…? とか思いつつ校長室を後にした───。
ある街の小さな家に双子が生まれたらしい。
その街で双子はとても珍しく、近所からも愛されてながら育っていった。姉は明るく元気な性格で、弟とはそれとは真逆の物静かな性格だった。
時は経ち、二人は九歳になった。九歳になった誕生日も大勢で集まり、楽しくお祝いしていた───はずだった。
誕生日会も終わりに近づいた頃だっただろうか。双子の家の庭に一人の男が刃物を片手に入ってくる。
双子の母がその男の前に駆け寄り、外に出てもらうよう説得していた。だが男は母の姿など眼中になく、その目には双子の姿だけが映っていた。
すると男は目の前の母を邪魔そうに突き飛ばし、ナイフを双子の姉に向けながら走っていく。双子の姉は動揺したまま動くことができずにただその場に立っていた。それを見た弟は姉を守るかのように姉の前に立ったらしい。男は尚も止まることなくそのまま弟を刺したそう。
弟の腹からは真っ赤な液体が溢れ出てきていた。すると弟は力をなくしたかのようにその場に倒れる。
男はその後、さらに狂ったかのように叫びだし、ナイフをただ一目散に振り回した。
きっと男の目には人なんて見えておらず、見えるのはただの闇だっただろう。誰と構わず人を切りつけた。そして最後には自分すらも切り裂いてしまったという。
取り残されたのは双子の姉と、誕生日会に参加していた近所の大人だけだった。誰もが一瞬の出来事を把握できずにいる中、双子の姉は動かない弟の姿を見るなり声も出さずにただ泣いていたという。
彼女は自分に問い詰める。何故、罪もないはずなのに弟は殺された。何故、私でなくて弟なのか。
庭は血の海となり、誰もが声を出せずにいたらしい。
家族を失った少女に対して周りの大人達は可哀想とそればかり言っていた。そして弟がいなくなってから三回目の誕生日。面倒を見てくれていた大人達が欲しい物は何かと問いてくる。
正直、欲しいものなんてない。あるとすればあの日なくなった家族の、弟の命だけだ。ただ、それだけだった────。
だがそのしばらく後に、さらなる悲劇が襲う。彼女は絶望の中でしか、生きられなかったらしい。
そんな、悲しい昔話────。
────朝。日が昇り、窓から明るい光が差し込んでくる。
「ん…もう朝か……しかし眠いな……もう少し寝よう」
だが二度寝しようとした瞬間に教室のドアが思い切り開く。
「おはようございますお兄ちゃん! 朝だよ!新しい一日が始まるよ!」
嫌なほど頭に響く大きな声で蓮を起こしに来た天華。その斜め背後には天茉の姿もあった。
「お姉ちゃん朝からうるさいです」
「そうそう……朝からうるさいぞー…ってうぐぉへ!?」
天華がこっちに向かって走ってきたかと思えば敷布団にダイブしてきた。ちょうど天華の膝が俺のムスコに直撃し、一瞬意識が遠のく。いっぽう天茉は、苦い顔で申し訳なさそうに頭を下げていた。
「あれ? お兄ちゃんまた寝ちゃったよ? もう、お寝坊さんなんだから」
いや違う…今のは君のせいだ……と言いたかったが必死に堪える。
「あ、朝から元気なのはいいことだ……だが敷布団にダイブするのはやめてくれ……」
────だが、こんな賑やかな朝もたまには悪くないかも知れない。今まで起きる時間と言えばいつも昼過ぎだったし。
「おうおう、楽しそうで何よりだが朝ごはんの時間だぞ」
鈴桜がドアの向こうから顔を覗かせていた。
「すみません。わざわざ僕達の分まで」
「気にするなって。そのかわり、少し話がある。食べ終わったらそのまま拠点で待っていてくれ」
「拠点…? 拠点とはどこのことですか?」
「校長室だよ。まぁ着いてくればわかる」
そう言うと鈴桜が去っていく。その後を親についていくようなひよこみたいに天華と天茉が歩いていった。
「蓮もなるべくはやく来るように。あと身だしなみはしっかり整えような。ちゃんと鏡みておけ」
「へ?」
近くにあった鏡を覗いてみると、酷いものだった。主に髪が。
「確かに酷いなこりゃ…」
手ぐしでもあまり直らなかったので、水道の水で軽く濡らしたらなんとかまとまった。
「さて、行くか」
教室…部屋のドアを閉め、校長室に向かった。
「……遅い…」
校長室に入ると、ソファーにみんな座っていた。特に天華は待ちきれないのかスプーンを片手にこっちを見ていた。
テーブルには桜組の人数のコーンフレークと、真ん中にミルク、水の入ったコップがあった。意外と普通の朝ご飯だったのでよかった。
「おかわりはないが、そこに置いてあるビスケットは食べていい」
そう言って指さしたところにはビスケットで有名なあのお菓子が置いてあった。
「もおーはやく食べようよぉ」
天華が急かすようにそう言い、頬を軽く膨らませる。
「そうだな。じゃ、食べようか」
鈴桜が手と手を合わせると、他の皆も真似をした。瑠々にいたってはまるで黙祷をしているみたいだった。
「よし、いただきますっと」
そう言って、味わうように朝食を食べ始めた。
───朝食はコーンフレークだけだったからか10分程度で食べ終わった。
天華は少し物足りなさそうだが、そのかわりにビスケットを頬張っていた。
───そういえばさっき、鈴桜が双子に話があると言っていたがあれは何なのだろうか。なんとなく予想はつくが。
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