僕はこれに夢想転移という名をつけた。

七瀬黒芭

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第一章 異変

四話 出会ってからの帰還

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  気がつくと俺は寝ていた。
「起きたか。おはよう」
  車庫らしきところで、鈴桜は槍に付着した血を拭いていた。そういえばその槍ってどこで手に入れたのだろうか。
  ……まぁどこでもいいが。
「すまない。俺はどのぐらい寝ていたんだ?」
「そうだなぁ…10分程度かな」
「そうか……ならよかった」
  少ししか寝ていなかったみたいだがさっきより心は落ち着いていた。状況整理ができたのだろうか。
「どうだ、もう出発できそうか?」
「あぁ、問題ない」

  鈴桜が立ち上がると、瑠々もすぐさま立ち上がる。
「さ、目的地まではあと少しだ。ダッシュでいくぞ」
「……了解…」
  車庫のシャッターを開け、辺りに奴らがいないか確認し、鈴桜が合図をする。その合図と共に瑠々が走り出し、蓮もそれに続く。ただひたすらに走り続ける。
「い、意外と足速いな二人とも…予想はしていたが……」
  蓮はと言えば、最近はほとんど走っていなかったからか少し遅れをとっていたが、なんとか必死に付いていっていた。

「目的地まではあと少しだ。いくぞ!」
  目の前の奴らを退けつつ、更にスピードをあげる。正直それ以上速くなったらついていけないほどだった。

  スーパーのドアのわずかな隙間を通り抜け、目的地に到着した。
「なんか…静かだな。奴らはいないのか?」
  蓮がここに来るのは初めてで、中にも奴らがいるかと思っていたが、気配を感じない。
「そうだな。以前、ここに来たときに瑠々と一緒にほとんど倒したからほぼいないだろう」
 「でも……油断……だめ…」
「ははっ そうだな。用心深くていいことだ。瑠々」
  鈴桜に褒められて嬉しかったのかわずかに微笑んでいた気がする。
「一応、手分けして食品を集めるが何かあったら助けを呼べ。特に連はな」
「あぁ、わかった」
  
  ここのスーパーは特別広くなかった。鈴桜は自分達以外の避難者の食べ物を集め、瑠々が桜組の三人分を集める。蓮は飲み物を持ってくることになっていた。
「やっぱり水とお茶がいいか……? だが小さい子もいたような気がするし、一応ジュースも持っていくか」
  避難者の数は多くない、というか少ないからたくさん持っていく必要はなかった。
「…よし、こんなもんかな」

「…………め………………よ…」
  ────鈴桜か瑠々が独り言でも言っているのだろうか? 瑠々はないとして、鈴桜は何を言っているのだ。
「………やめ…………だよ……」
  ……やはり聞こえるが、鈴桜ではない気がする。でも他に誰かいるはず────

  ──────どこからか物音がした。奴らかと思ったが妙なうめき声は聞こえない。誰か……あの二人以外に誰かいるのか……?

「蓮。さっきっからしゃべっているのは君か?」
「っぬぇ? あ、あぁ…鈴桜か…驚かすなよ……」
  突然過ぎて変な驚き方をしてしまった。少し恥ずかしい。
「驚かしたつもりはないんだがな。んで、何をぶつぶつ言っている。こっちにまで聞こえたぞ」
「鈴桜にも聞こえたか。ちなみに俺はしゃべってないからな」
「……生存者か」
「へ…?」
  鈴桜は「生存者」と言った。となると、近くにやはり誰かが…

「───あ、あなた達、誰? 奴らなの?」

  後ろから声が聞こえた。振り向いて見てみるとこっちにナイフを向けた少女がいた。
「ま、待て。私は敵じゃない。……逆に聞くが、君、噛まれたりしていないか?」
「か、噛まれるって……あいつらに? それなら問題ないけど…」
「ふむ、理解がはやくて助かる。では行こうか」  
「い、行くって…どこに……」
「学校だよ。あそこは安全だからここにいるよりましだろう」
「あたしを…助けてくれるの……?」
  少女はナイフをおろし、鈴桜に問いかける。
「あぁ、いこう」
「お、弟も…一緒に……」
「了解だ。食料も充分だろう。さ、戻ろう」
「うん…!」

  後に瑠々が合流し、スーパーを出る。外はさっきより日が暮れて、空は綺麗なオレンジ色になっていた。さらに、さっきまでいなかった奴らが少しずつ集まりつつあった。
「ダッシュはきついか…瑠々、先行頼む。私は後ろを守りながら進む。蓮は二人を見張りつつ周りに気を貼って」
「「了解」」
  瑠々、蓮共に返事をし、作戦通りに進む。

  ───なんとか、学校にたどり着くことができた。途中、二人のうちの下の子がぐだり初めて少し面倒だったが。
「みんな無事…か?」
「……問題…ない……」
「よかったよかったぁ」
  鈴桜が満足そうに微笑む。その姿はとてもかわいかった。

「……んーで、君達の名前を聞こうか」
「あたしは天華。双子の姉だよっ」
「双子の弟の天茉です。よろしく…」
  二人はとても似ていた。
  ───だが、弟と名乗った天茉は見た目は女の子なんだが…
「天茉はこう見えて男の子だから気をつけてね」
  蓮の心を読んだかのように天華がいった。つまり男の娘か。なるほど納得。
「あの…助けてくれてありがとうございました。ここは…学校ですよね? 学校で暮らしているんですか?」
「そうだなぁ…まぁそんな感じ? 学校の中は安全だから安心してくれ」
「そうですか…わかりました。ありがとうございます」
「んもぉ天茉ったら相変わらず敬語…そんなんじゃこの世の中生きていけないぞっ」
「その言葉そのまま返します。お姉ちゃんはもっとしっかりするべきです」
「な…生意気ぃ……」
  このまま放っておいたら永遠に続きそうだった。それほど仲がいいって事だろう。

「まぁ、校内の案内は後にしよう。瑠々、空いてる部屋に案内してやってくれ」
「…うん……」
「よし、今日は解散だ。体をしっかり休めておくようにな」
  その一言を聞いた瑠々が、鈴桜と蓮を置いて天茉と天華を連れて拠点を出て行った。
  そして訪れる静寂。
「なぁ、蓮」
「は、はいっ?」
  鈴桜の声に少し驚いて、また返事が少し変になる。
「あの二人とあまり仲良くしすぎないようにな」
「……は? どういうことだよそれって…」
  だが鈴桜は蓮の目をただ見つめるだけで何も答えようとはせずに、蓮を一人取り残し拠点を出ていった。
  
  いったいあの二人の何がおかしいんだ。俺の見た限りでは普通の双子ではないか…何が…どこが……

「こんなクソな世界に来てからわからないことだらけだな…正直、元の世界に戻りたいくらいだぜ…」
  そんなことを思いながら、蓮も拠点をあとにした────。


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