僕はこれに夢想転移という名をつけた。

七瀬黒芭

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第一章 異変

七話 任務もたまにはまったりと

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  ────二階にて
「まぁまぁ散らかってるが掃除するほどじゃなさそうだな」
  もういっそのことさぼってしまおうか、とすら考えていた。
 
 ────そういえば、桜組以外の人もいると鈴桜が言っていた。
 おそらく鈴桜のことだからここにいる人全員に声をかけたのだろう。しかしもちろんだが俺のような人はいないだろうし、鈴桜のように奴らに憎しみを持っていても、その想いを行動に移すことができる人もわずかだろう。
 感情だけではどうにもできない……か。

「……掃除するか」
 仕方なく掃除を始めることにした。

  ────一階にて
 どうか、どうかこんな世界に生まれてしまった私でも生きていていいと言うのなら……
「……鈴桜…?」
「……へ?」
「返事がなくて……大丈夫…?」
「あ、あぁ。平気だ」
 つい違うことを考えていた。まったく、任務中なのにな…任務と言っても掃除だが。
「ところで鈴桜……目の前……」
「え?」
 言われた通り前を見てみるとそこには黒く光った奴がいた。
 ────Gが。

「な、ななな何奴……っ!」
「……出ましたね…奴が……」
  もはやこの世に名が存在するだけで誰からも嫌われる奴。
「い…いやぁぁぁあああああっっ!」

「……お前、何してんだ」
  鈴桜の声を聞きつけた蓮が様子を見に来たが、少しばかり呆れているようだ。
「れ、れれ、蓮……助けてくれ……」
  涙目でさらに上目遣い……美少女にこんなんされたら流石に断れない。だが、奴は……
「ま、まかせr……」
 最後まで言う前にGが蓮の顔に飛びつく。
 
「あ…なんだかめまいが……」
 そう言った瞬間に意識が飛んでいった。
 こんなことで意識失うなんて……男と…して────

 ────あれ……いつの間に外に……
 ……鈴桜? それにみんな……なんで血が体についているんだ? またゾンビと戦ったのか?
 
  ────ゆっくりと全身の力が抜けたようにこっちに歩いてくる。そして口を開けたかと思えば俺は……

 ────彼女に噛まれた。

「蓮……いい加減起きて……」
 目が覚めると拠点にいた。…さっきのはただの夢か。
「すまない、何がどうなっていたのか……」
「奴……ゴキブリが蓮の顔に飛びかかってな。その直後に君の意識が無くなった」
「……ぷふっ」
 さりげなく天茉が笑っていた。
「まぁ、あの後天華がほうきで蓮の顔を思いっきり叩いて駆除したから大丈夫だ、問題ない」
「大丈夫じゃない、問題だ…」

「まぁ何はともあれ、任務終了だな」
「なんか今日は地味な任務だったな」
「息抜きみたいなものだ」
 確かに、毎日外に出てばかりじゃ流石に疲れるし、精神的にもやられちまう。
「……お昼ご飯……食べよ……?」
 瑠々が小さくお腹を鳴らしながらそう言った。なんだか可愛いな。
「そうだな。お昼を食べたらみんな自由にしてていいからな」
 そう言って箱の中にあったパンをテーブルに並べ始めた。

 ────なんだか、普通の世界みたいなのに全然普通なんかじゃなくて、だけど普通で……
 きっと本当の、もともと自分がいた世界でこんなことになっていたらきっと俺はとっくに心がやられてしまっていただろう。いつあいつらに殺られるか。自分もやつらみたいになってしまうのか。考えるだけでぞっとする。

 だがこの可笑しな世界に来る前、本物のゾンビなんか見たことがなかった俺は正直奴らのことを甘くみていた。
 非現実的だと、そんなことばかり思っていたのに。
 今となっては、前はよくそんなことを考えていられるものだとか思う。

 ────まったく、せっかくの異世界だと思ったのに全然そんな感じではない。
 もっとこう……エルフがいたりとか、精霊使いがいたりだとかそんなものがよかった。
 だが、こんな世界でも一緒にいて楽しいと思える仲間を見つけた。ずっと部屋にこもって独りだった俺にも、楽しいと思える……友達を見つけた。
 ならこんな世界でも充分だ。ゾンビがいたって構わない。
 だって……俺は今……

 ────こんなにも、幸せなのだから。

 つまらない世界とか、そんな馬鹿なことばかり考えていた俺でもずっと心の何処かで思っていたこと。分かり合える仲間がほしいと、今みたいな幸せを願っていた。
 
 だから、だからどうか……こんな日常が続きますように。
 誰にも壊されないように。
 ────願っていた。



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