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学~後編~
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しおりを挟む着替えを済ませてリビングに行く。両親がダイニングテーブルの席に着いていた。すぐに父さんが手招きしたが、俺は喉が渇いていたので冷蔵庫からジュースを取り出しグラスに注いだ。一息に飲み干して、二杯目を注ぐ。
「学、早く来い」父さんが不機嫌そうに言う。「何があったか聞かせろ」
「これ飲んだら行くよ」
「早くしろ。おい、それ持ったまま来ればいいだろうが」
「うるせぇなもう、分かったよ」
俺はグラスを持って父さんの隣の席に腰掛ける。さっきとは対応が大違いだ。もう少し心配してくれてもいいように思って苛ついた。
「何ふて腐れてんだ。反抗期気取りか、この馬鹿」
何だよそれ。ふざけんなよ。
俺は苛々しながら二杯目のジュースを半分飲んで、グラスをテーブルに置いた。母さんが心配そうに俺を見ていた。本当は治療したいんだと思う。だが、俺に余計な気遣いをするとまた父さんに怒られると思って遠慮しているのだろう。
「母さん、ごめん。怪我の手当てしたいんだけど」
「あ、うん。そうね。ちょっと待ってて」
母さんは挙動不審な様子で席を立ち、荷物のほうへ小走りに向かった。
「ああ、いいよいいよ」父さんが面倒そうに言う。「そんな過保護にすることないって」
俺は小さく舌打ちした。この自己中親父。
「何言ってるのよぉ、大丈夫かどうか、ちゃんと確認しないと駄目じゃない」
「母さん」俺は投げやりに言う。「もういいよ、別に」
「えぇ? 良くないわよぉ」
母さんがあたふたしながら立ち上がり、こっちに向かってきた。テーブルの上に治療セットの入ったポーチを置いて俺の隣でしゃがみ、もたつきながら治療を始める。
「ほら、酷いじゃなぁい。どうしてこんな怪我してるのよぉ?」
「転んだ。変な女に追い掛けられて」
「何だと? 変な女? 男じゃなくてか?」
「え、いや、女だよ?」
俺は父さんのリアクションに驚いていた。信じてもらえないとばかり思っていたからだ。鼻で笑って済まされると予想していただけに呆気に取られたようになってしまった。
「学、詳しく聞かせろ」
父さんは真面目な顔で言った。母さんも治療の手を止めていた。俺は二人の意外な反応に頭が真っ白になってしまい、
「ええっと、変な女が、三人追っ掛けてきたんだよ」
と、さっきとほとんど同じことしか言えなかった。
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