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静かな森の出会い編
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《この先が最奥だ》
シャドウウルフが言った。もう着くらしい。
いくつかの枝分かれはあったけど案内があったのですぐだった。
道中の暗闇は、ルシウスが魔法で照らしてくれた。
「僕は光と水の魔法が使えるんだよ」
「ほぁー、ルチウちゅ、しゅごいねー。ほんちょに、しゅごいねー」
天井付近を漂う光の球を見て、私は感動しながらちょっと考える。
ルシウスがいなかったら、暗くて何も見えずに困っていたところだ。
シャドウウルフの方はすぐに仲間になってくれそうだし、もう一体の魔物も助けることができれば、きっとそっちも仲間になってくれるはず。
そうなれば、私たちの生存率はぐんと上がる。
たぶん、エルモアはそれも分かってて私たちをここに案内したのだと思う。
私たち皆が生き延びれるように、取り計らってくれたに違いなかった。
それに、この洞窟も……。
奥に向かうにつれて、人の手が入っているように思えた。シャドウウルフに訊いてみたところ、やっぱり昔は人が暮らしていたらしかった。
《俺たちの住処の奥には、人間が住んでいた部屋がある》
そう聞かされて、私はすぐにルシウスに伝えた。
ルシウスは「え、それは助かるね!」と顔を綻ばせた。
私は嬉しくなって手を差し出した。ルシウスと手をつなぎたかった。
ルシウスは微笑んで私の手を握った。
その瞬間、表情を凍らせて身震いした。
あ、シャドウウルフの脂がべっとりの方だったわ。
恋は盲目とはよく言ったものだと思う。すっかり忘れていた。
「ごめんにぇ。くちゃい方の手だったにぇ」
「あとで洗えばいいさ。でも、本当に臭いね。アハハ」
白い歯が眩しいっ!
ルシウスの輝きに目を細めている間に最奥に到達した。
聞いていた通り、壁に木製のドアがあった。その脇で真っ白な狼が身をくるめている。厚めに敷かれた枯れ草の上で、苦し気に息を吐いている。
《俺のつがいのライトウルフだ。レッドキャップにやられてな》
《仲間って、奥さんだったのね。それで、レッドキャップって?》
《赤い帽子を被ったゴブリンだ。普通のと違って頭が回る》
ライトウルフの怪我を診たいので、シャドウウルフに頼んで話をつけてもらいに行った。交渉も難しそうだし、気が立っていたら危険だからね。
私たちは離れた場所で見守ることにした……はずだったんだけど、突然、シクレアが翅を広げてシャドウウルフの方に飛んで行った。
《シクレア? どうしたの?》
《嫌な臭いがするのよ。とても興味深い毒の予感よ》
《毒だと⁉》
《えぇ。何をされたのか詳しく聞かせてちょうだい。あ、ノイン、ここは任せて。あとで教えるから扉の向こうを先に見ておくといいわ》
《わかった。ありがとう、シクレア》
シクレアはとても優秀。ベビーとは思えないお姉さんっぷりを発揮してくれる。
ん? でもベビーって飽くまで名称なだけで、年齢は関係ないのかしら?
シクレアじゃないけど、興味深いわね。
とにかく、シクレアに任せておけば安心だわ。
私は軽く笑って、ルシウスと一緒に部屋に入った。
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