【完結】エルモアの使者~突然死したアラフォー女子が異世界転生したらハーフエルフの王女になってました~

月城 亜希人

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星の守護者編

エルモアの使者アンコ

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 あー、びっくりしたー。
 まさか翼が生えるなんて思ってなかったわ。
 みんな、唖然呆然って感じで固まっちゃってる。
 それはそうよね。翼を生やした張本人の私が驚いてるんだもの。
 そうならない方がおかしいわよね。

 呆気にとられたみんなの顔を見ながら、私は苦笑して空へと舞い上がる。

 はぁ、良かった。ちゃんと飛べたわ……。

 ぶっつけ本番だから、ヒヤヒヤしちゃった。
 エルモアったらもう、本当に急なんだから!

「みんな、私はドルモアを倒しに向かうわ! ゴーレム兵は任せたからね!」

 場がしんと静まり返る。一拍置いて一際大きな鬨の声が上がった。

 ああもう、ドキドキした!
 反応がなかったらどうしようかと思っちゃったじゃない!

「ルシウス、ラーマ、負けたら承知しないからね!」

「あ、ああ」

 私は戸惑って目が点になっているラーマとルシウスに手を振ってゴーレム兵の方へ飛んだ。さっきまで感じていた悲しさや怒りはもう落ち着いていた。
 エルモアとの同化が、私の心を鎮めてくれた。

 少し前――私が嘆いているところに、エルモアからの声が届いた。

(ノインさん)

 エルモア?

 左右を見たけど、姿が見えなかった。

(すいません、少しでも力を温存したくて、クピドの姿もとっていないんです。ついでに言うと、もうノインさんの中にいます)

 え? 私の中?

 そう聞いた直後、ルインから情報が届けられた。その中に、エルモアの正体が、この体の元の持ち主だっていうものもあった。
 それが原因で、私はものすごくアンコであることを自覚させられた。

(あー……。内緒だって言ったのに……)

 なるほどね。おおよその事情は察したわ。

(すいません、黙ってて。ええっと、そのですね。つまり、僕は、ノインさんとの親和性が凄く高いんです。なのでこうして体に入ることもできるんです)

 それで、どうしたいの? 私はどうすればいいの?

(ドルモアの討伐をお願いします。僕は力を与えることしかできないので、ノインさんに委ねるしかないんです。ルイン兄さんは一人で戦うつもりですけど、今の力では勝てません。でも、僕とノインさんが加われば――)

 分かったわ。

 私がそう返答すると、エルモアは礼を言って私と同化した。
 その瞬間、すごい力が溢れてきて、何ができるのかが分かった。
 それで空を飛ぼうとしたら、どーんと翼が生えちゃった訳だ。

 私はゴーレム兵の上を飛びながら、戦場を浄化していった。彷徨える魂に私の体から流れ出る燐光が降り注いで、感謝の気持ちが伝わってくる。

 感謝されるようなことじゃないわ。私の方こそ、みんなに感謝してるわ。
 誰かの為に、一生懸命戦ってくれてありがとう。ゆっくりと休んでね。
 分かるわ。去り難いわよね。大切な人を悲しませてしまうもの。
 でも、ここに留まっていても、いずれはレイスになってしまうだけ。
 あんなのになっちゃ絶対に駄目よ。そうなる前に、還らなくちゃ。
 悔しいわよね。私もそうよ。だから、みんなの想いは私が継ぐわ。

 任せて。きっと邪悪を討ち果たしてみせる。そして想いを繋ぐわ。

 平和で幸せな世界の為に――。

 私はルインとドルモアが戦っている場所を視界に捉えた。

 ドルモア、報いが訪れるときがきたわ。
 エルモアが怒ってる。
 当然、私も。あんたのせいで悲しみの中にいるみんなもよ。
 もう、あんたの好きにはさせない。
 誰もあんたを許しはしない。

 私は飛びながら両手の平をドルモアに向けた。
 
 
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