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1‐1 艦を降りた日(前編)
しおりを挟む夕陽に照らされた木々がさわさわと音を鳴らした。
風が吹いたようだ。そう思った頃には側を吹き抜けていた。
「あー涼しい」
思わずだらしない声が出た。
そろそろ作業も大詰めだ。
「よし、こんなもんでいいんじゃないかなー」
バレッタで留めた緑の髪を揺らしてメリッサが言った。額に輝く汗をツナギの袖で拭いながら、そばかすのある整った顔に満足げな笑みを浮かべている。
「ああ、立派なもんだ」
俺も汗を拭いながら笑う。思ったより組み上げるのが大変だった。
しかし、驚くよな。数時間前まで潰れた倒木しかなかったのに。
俺たちがエルバレン商会の所有する小型艦マリーチから、この惑星ジルオラの無人島に降り立ったのが昼過ぎ。確かにそれからすぐに生活拠点を築き始めたが、たった三時間ほどの作業で組み立て式のコンテナハウスが完成してしまうとは思わなかった。
しかも頑丈そうなんだよな、これ。
壁は厚みのある金属製で窓には鉄格子。これならハイオウガに攻撃されてもしばらくは耐えられそうだ。まぁそんな物騒なもん早々出やしないだろうがな。
メリッサとハイタッチしていると、空から折り畳み式の小さなテーブルのようなものが空気の噴出音を出しながら降りてきた。俺の相棒、小型四脚偵察機改のポチだ。
ポチが着陸すると、中から四つの翅を持つ黒いスーツ姿の妖精が出てくる。艶やかな黒髪を靡かせ現れたのは、こちらも俺の相棒、サポートAIのエレスだ。
【マスター、半径百メートル内に危険な魔物の反応はありませんでした】
「そうか。偵察ご苦労さん、エレス」
【踏破マッピングも偵察分は済んでいます。しばらく周囲を警戒しますね】
「おう、頼む」
俺はツナギの胸に付けてあるホログラムカードを手に取って、ぐいんと引き伸ばし踏破マップを確認する。結構、広い島のようだ。周りは木で囲まれてるな。
というか、このホログラムカードも謎過ぎるよな。
触ろうと思えば触れて、そうでないと透過する。タッチパネルにもなる上、伸縮自在。おまけに好きなところに固定できてしまう。やっぱ意味不明だな神器の力。
そんなことを考えて頭を掻いていると、メリッサが慌てた声を上げた。
「あ! ポチは置いてってねー! 急場しのぎの修理しかしてないからー!」
【はい、私一人で行くので大丈夫です。メリッサ、ポチをお願いしますね】
「まーかせーとけー。明日中には完璧に飛べるようにしとくー」
メリッサがスパナをぶんぶん振ってエレスを見送る。危ねぇよ。
時刻は十八時過ぎ。太陽が沈みかけていてやや薄暗い。
空には小さな月が二つ浮かび上がり、星が瞬き始めている。
「はー疲れたな。風呂入って休むか」
「露天風呂で混浴ってのもいいよねー」
メリッサが俺の腕にしがみつき、体を密着させる。
「勘弁してくれ。もうくたくただ」
「ちぇっ。もちっと良い反応してくれたっていいだろー」
「死んでしまうわ。休ませてくれ」
膨れっ面をするメリッサをやんわりと引き離し、俺はポチを背負ってコンテナハウスに入る。まだ建てただけで家具の設置をしていないからな。
早く終わらせて寝たいんだ俺は。
ポチは小型偵察機というだけでなく、俺に装着されるバックパック型ウェアラブルデバイスでもある。ポチを装着することで、俺は神器の力が使えるようになる。
そのうちの一つがストレージだ。
どういう仕組みかは考えるだけ無駄。とにかくゲームでよくある謎の異空間収納を行うことができる。これを使ってコンテナハウスに家具を置いていく。
ベッド、棚、ゴミ箱、冷蔵庫、簡易バスルームと洗面台にトイレ。
位置がずれたらストレージに回収してやり直し。
あとは、タオルとかティッシュなんかの生活用品もだな。
できればコンテナハウスごと大型輸送艦ウシャスの格納庫で仕上げておきたかったんだが、皆忙しかったからな。自分のことは自分でやらないと。
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