セイジ第二部~異世界召喚されたおじさんが役立たずと蔑まれている少年の秘められた力を解放する為の旅をする~

月城 亜希人

文字の大きさ
4 / 81

1‐1 艦を降りた日(前編)

しおりを挟む
 
 
 夕陽に照らされた木々がさわさわと音を鳴らした。
 風が吹いたようだ。そう思った頃には側を吹き抜けていた。

「あー涼しい」

 思わずだらしない声が出た。
 そろそろ作業も大詰めだ。

「よし、こんなもんでいいんじゃないかなー」

 バレッタで留めた緑の髪を揺らしてメリッサが言った。額に輝く汗をツナギの袖で拭いながら、そばかすのある整った顔に満足げな笑みを浮かべている。

「ああ、立派なもんだ」

 俺も汗を拭いながら笑う。思ったより組み上げるのが大変だった。

 しかし、驚くよな。数時間前まで潰れた倒木しかなかったのに。

 俺たちがエルバレン商会の所有する小型艦マリーチから、この惑星ジルオラの無人島に降り立ったのが昼過ぎ。確かにそれからすぐに生活拠点を築き始めたが、たった三時間ほどの作業で組み立て式のコンテナハウスが完成してしまうとは思わなかった。

 しかも頑丈そうなんだよな、これ。

 壁は厚みのある金属製で窓には鉄格子。これならハイオウガに攻撃されてもしばらくは耐えられそうだ。まぁそんな物騒なもん早々出やしないだろうがな。

 メリッサとハイタッチしていると、空から折り畳み式の小さなテーブルのようなものが空気の噴出音を出しながら降りてきた。俺の相棒、小型四脚偵察機改のポチだ。
 ポチが着陸すると、中から四つの翅を持つ黒いスーツ姿の妖精が出てくる。艶やかな黒髪を靡かせ現れたのは、こちらも俺の相棒、サポートAIのエレスだ。 

【マスター、半径百メートル内に危険な魔物の反応はありませんでした】
「そうか。偵察ご苦労さん、エレス」
【踏破マッピングも偵察分は済んでいます。しばらく周囲を警戒しますね】
「おう、頼む」

 俺はツナギの胸に付けてあるホログラムカードを手に取って、ぐいんと引き伸ばし踏破マップを確認する。結構、広い島のようだ。周りは木で囲まれてるな。

 というか、このホログラムカードも謎過ぎるよな。

 触ろうと思えば触れて、そうでないと透過する。タッチパネルにもなる上、伸縮自在。おまけに好きなところに固定できてしまう。やっぱ意味不明だな神器の力。

 そんなことを考えて頭を掻いていると、メリッサが慌てた声を上げた。

「あ! ポチは置いてってねー! 急場しのぎの修理しかしてないからー!」
【はい、私一人で行くので大丈夫です。メリッサ、ポチをお願いしますね】
「まーかせーとけー。明日中には完璧に飛べるようにしとくー」

 メリッサがスパナをぶんぶん振ってエレスを見送る。危ねぇよ。

 時刻は十八時過ぎ。太陽が沈みかけていてやや薄暗い。
 空には小さな月が二つ浮かび上がり、星が瞬き始めている。

「はー疲れたな。風呂入って休むか」
「露天風呂で混浴ってのもいいよねー」

 メリッサが俺の腕にしがみつき、体を密着させる。

「勘弁してくれ。もうくたくただ」
「ちぇっ。もちっと良い反応してくれたっていいだろー」
「死んでしまうわ。休ませてくれ」

 膨れっ面をするメリッサをやんわりと引き離し、俺はポチを背負ってコンテナハウスに入る。まだ建てただけで家具の設置をしていないからな。

 早く終わらせて寝たいんだ俺は。

 ポチは小型偵察機というだけでなく、俺に装着されるバックパック型ウェアラブルデバイスでもある。ポチを装着することで、俺は神器の力が使えるようになる。

 そのうちの一つがストレージだ。

 どういう仕組みかは考えるだけ無駄。とにかくゲームでよくある謎の異空間収納を行うことができる。これを使ってコンテナハウスに家具を置いていく。

 ベッド、棚、ゴミ箱、冷蔵庫、簡易バスルームと洗面台にトイレ。
 位置がずれたらストレージに回収してやり直し。
 あとは、タオルとかティッシュなんかの生活用品もだな。

 できればコンテナハウスごと大型輸送艦ウシャスの格納庫で仕上げておきたかったんだが、皆忙しかったからな。自分のことは自分でやらないと。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...