セイジ第二部~異世界召喚されたおじさんが役立たずと蔑まれている少年の秘められた力を解放する為の旅をする~

月城 亜希人

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6‐1 ダンジョン(前編)

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 記録係がどんな記録を取っているのか興味があったので少し楽しみにしていたのだがかなり簡易的で拍子抜けした。出身国や名前などの個人情報を任意で話すだけだった。

 どちらかと言えば外見的特徴の記入と把握の方が重要で、偽ることのできる個人情報はそこまででもないそうだ。側にいたギエンが立派な口髭を撫でながら教えてくれた。

「外見の特徴はこちらが勝手に記録している。時間がかかる理由はそれだ。探索者が犯罪行為に及んだ報告が入れば、それを元に絵付きの手配書を作らねばならんのでな」

「文字で残してあるだけで似顔絵を描けるものですか?」

「それ専門の絵師がいるのだよ。特徴も詳細に型で分けて残すからな。それなりに精度の高いものが仕上がる。もっとも、変化する部分はどうしようもないがな」

 髪型や髭、体格、装飾品などはあえて詳細には残さないそうだ。

 むしろそれらを描き加え、日本の指名手配ポスターのようにパターンを変えた似顔絵を何種類か作るという話を聞いて驚かされた。とにかく顔の特徴に力を注ぐとか。

 未開惑星と侮るなかれ。すごい人たちがいっぱいいるぞ。

 でも、思えば日本でもそうだったな。昔の人の方が技術的に優れていたとかよく耳にしたもんな。機械的な作業が進歩した結果、失われてしまうことも出てくるか。

 その途上をまざまざと見せられている気がする。この特徴の捉え方や人相書きの書き方も、カメラが開発されたら継承者が減って失われる運命にあるんだろうな。

 感慨深い思いに晒されながらギエンに見送られてダンジョン突入。

 事前情報通り中は暗くて足場が悪い。岩肌が剥き出しで単なる岩の洞窟のように感じられる。ピッケルを担いでる冒険者もいたから鉱物資源の採取もできるようだ。

 先の一件から俺と距離を取っている三人が角灯に火を入れる。捜索が目的なので三人はそれ以外の荷物は持ってきていない。俺はストレージがあるから関係ないけどな。

「あ、あの、セイジさん、先に行って下さい」

 オットーがおずおずとそう言った。こそこそと「お前が言えよ」「嫌よあんたが言いなさいよ」と揉めた結果、オットーにお鉢が回ったらしい。

「いや、俺は角灯持ってないんだが」

「そ、それは、おっさ……あんたが準備しなかったからだろ」

「その、僕らのパーティーでは、先頭を歩くのは、一番強い人って決まってるんです。だから、セイジさんに先に行ってもらわないと困るんですよ」

「ふぅん、あっそ。それで? 誰か角灯貸す気あんのか?」

 三人が目配せし合い、今度はリンシャオが口を開いた。

「だ、誰も貸せないわよ。ダンジョンに入るんだから角灯くらいは持ってきて当然でしょ。私たちだって自分の分しか用意してないんだから、無理よ」

「先行させるのにか? 最も危険な立ち位置だぞ?」

「んなもん、あんたの自業自得だろうがよ。一番強い奴が魔物の一撃を防いで、後ろが援護するってのがうちの作戦なんだよ。つべこべ言うなおっさん」

 正気かよこいつら。先行する者に視界を与えないってのは常軌を逸してるだろ。もはや作戦云々とかそういう話じゃない。ただの悪意だこんなもんは。

 あー、読めたわ。俺を殺す気だなこりゃ。殺して金品奪おうって魂胆だ。俺が金持ってるって知ってるからなこいつら。魔物に襲わせて弱ったところをグサーか。

 残念ながら弱らんのよ俺は。浅はかだな本当に。ここまでくると滑稽だわ。
 俺の中では評価がだだ下がりだよ。どうしようもねぇな本当に。

 正直なところ、こいつらに背を向けて歩くのは御免被りたいところだが、真面目に捜索する気が感じられない奴らの後ろを歩くってのも時間の無駄だよな。

 どうしたもんだろか。

 んー、ぱっと見だが遠距離武器を持っているようでもないし、フレンドリーファイアのおそれがないのであれば距離を取って先行すれば問題ないかな。
 
 あ、念の為〈機能拡張Ⅳ〉で入手したスキルを使っておくか。

 三人に背を向け、胸についているホログラムカードを操作する。この手のスキルは手動操作でないと使用できないんだよな。エレスに頼んで使えるなら楽なのに。

 これでよし、と。

 作業が済んだので俺は三人に先行するのを承諾し素早く距離を取った。

「エレス、外部出力状態で全身をライトで覆って光源化することは可能か?」
【可能です。光る球体に姿を設定することもできますので】
「なら頼む。明度調節も自動でしてくれると助かる」
【はいマスター。かしこまりました】

 後ろの三人がこそこそするなら俺だって負けてられんよな。エレスと小声で遣り取りして光源を手に入れさせてもらった。ざまぁみやがれ。角灯より遥かに便利だぞ。
 
 
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