セイジ第二部~異世界召喚されたおじさんが役立たずと蔑まれている少年の秘められた力を解放する為の旅をする~

月城 亜希人

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13‐1 馬鹿な真似(前編)

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 農村では好き放題にやってしまった。文明に影響を及ぼすとは思えないという理由から段々と大胆な行動に出始めていることを反省しつつバギーで南に移動。

 そうはいっても、知らん顔できるほど冷淡にはなれんからな。

 しかしストレージに入れた死体はどうしようか?
 やはり荼毘に付すというのが一番なんだろうが……。

 思い悩んでいるうちに聞いた村と思しき場所に着いた。

 先ほどの農村よりは柵がしっかりしていて壊れている箇所は補修されている。

 バギーをストレージに収めホログラムカードを胸に付ける。そのあとでポチを解除して撫で回し、エレスの喘ぎ声を聞きながら村に歩み寄る。

【はああっ、マ、マスター、もう、十分ですうっ】
「そうか。気持ちよかったか?」
【は、はい。とても心地よかったです】
「そりゃよかった」

 本当に一体どこを撫でているのかと疑問に思いつつポチを装着し、しれっと村の中に入る。見た限りでは、ここは稲作ではなく畑作のようだ。

 畑には葉が繁り、豆や瓜、トマトやナスに似た野菜が育っている。

 獣か魔物に食い荒らされたようで一部が酷く荒らされているものの、無事な畑の方が多く先の村とは違い余裕があるように見える。

 なのに雰囲気が剣呑だ。『第六感』が働いているので間違いない。

 項の毛が引っ張られているようなチリチリとした感じがする。

 なんか、気持ち悪い村だな。

 見た感じはそれなりに豊かなのに、妙な気配がある。
 怨念というか、邪悪なものが漂っているように思えてならない。

 違和を感じつつ、麻の服を着た村民が暗い顔で野菜を収穫している姿を眺めて歩いていると、灰色のチャンパオに似た服を着た四十代ほどの小太りな男が近づいてきた。

「おい! そこのお前! 見ない顔だが行商か!?」

 男は手招きしながら言う。丸顔の中にある大きな目がギラついているのと、やや横柄な態度に気分が悪くなる。髪型がイルマと同じだからか。

 ただ、事を荒立てる気は更々ない。俺は情報を得たらさっさと立ち去るだけだ。

「いえ、残念ですが。俺は人を捜しに来たセイジという者です」

 男は露骨に面白くなさそうな顔をして舌打ちした。

「ちっ、なんだなんだ、また人捜しか。子供ならそこらにおるから勝手に見ていけ。用が済んだらとっとと出てってくれ。うちの村には泊める余裕はないぞ」

 最初っから感じ悪いな。イルマはまだ愛嬌があったぞ。

「厄介になるつもりはありませんのでご安心を。失礼ですが、あなたは?」

「わしはここの地主をしとるジウルイだ。それがなんだ?」

「おお、地主さんでしたか。それはそれは。いやちょっとお聞きしたいことがありましてね、俺が捜してるのは馬車の一行なんですが、この村に来ませんでしたかね?」

 俺が笑顔で手揉みしながら訊くと、ジウルイは眉根を寄せて鼻を鳴らした。

「一昨日来た。いい馬車が来て偉いさんが援助に来たかと思えば『先の村で施して何もない』なんて抜かしやがって。さっき言ったが、子供を捜しとったわ」

「その一行は今どちらへ?」

「昨日の朝、隣の集落に向かった。あの山だ。出てってくれて清々したわ。困窮しとるというに、泊めろだの薬はないかだの言いおって。その上、飯まで」

 また鼻を鳴らしやがったよ。
 嫌な癖だな。真似しないようにしよう。

「山の集落は柄の悪い連中がいると聞いてますが?」

「気性は荒いが、この村に魔物が出たら退治してくれる連中だ。獣の肉と収穫物も交換してくれるしな。無茶を言うこともあるが付き合わざるを得んのだ」

 ごねるように話していたジウルイが、不意にハッとした顔で声を上げる。

「おお、そうだ! セイジとか言ったな。その馬車の連中を追うんなら、集落で獣の肉をあるだけ貰ってきてくれ。向こうはここまで取りに来るから手ぶらでいいぞ」

「はぁ。肉をあるだけ。わかりました」

「帰りのことなら心配するな。わしの息子と村の若いのが何人か先に行っとるから、荷車に乗せてくれればいい。あいつらに言った量じゃ心許ないからな」

 ジウルイは言うだけ言うとさっさと踵を返してしまう。俺に対する礼とか願う言葉は一切なし。その上、謝礼なんかも全く頭にないようだ。

 なんとも自己中心的な男だと思いつつ、俺は東の山へと続く道に向かった。


 ***


 山道はなだらかな傾斜が続いていた。道幅も荷車が行き交うことのできる広さがあり、朽木も幾らか見て取れるものの、大半の木々が青々と茂っている。

 無人島から出て数日しか経っていないのに、久々に生きた木の匂いを嗅いだ気がした。葉と土の臭いに若干の獣臭さと肥やしのような臭いがする。

 時間が惜しいのでバギーを出して進んでいると、少し先で見覚えのある赤い犬が数頭何かに群がっていた。ブラッディハウンドの群れだ。八頭いる。

 俺はバギーを止め、エンジンを切って様子を見る。

 こちらに気づいた半分が威嚇するように牙を剥き出して唸り声を上げている。残りは一度こちらを見はしたものの、また顔を背けてガツガツと音をたてる。

 何か食ってるなありゃ。人じゃないといいが。
 
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