セイジ第二部~異世界召喚されたおじさんが役立たずと蔑まれている少年の秘められた力を解放する為の旅をする~

月城 亜希人

文字の大きさ
63 / 81

21‐2 十階の主(後編)

しおりを挟む
 
【ここを突破すればマスターが最深階到達者ですね】
「もうここで終わりでいいんだが」

 愚痴をこぼしつつ、無駄に重厚な主部屋の扉を押し開く。すると──。

「お?」

 部屋の雰囲気が変わった。暗灰色だった壁の色味が白に近くなり、どこかに照明があるのかエレスの〈ライト〉が必要ないくらい明るくなった。

 洞窟から石積の遺跡へと場所が移ったという印象で、床を埋め尽くす石畳の中央に、岩をくっつけ合わせたような歪な石像が立っている。背丈は三メートルほどだ。

「部屋が人工物っぽくなったと思ったら主もかよ。エレス、あれはなんだ?」
【検索の結果、ゴーレムが近似種に該当します】
「多分そうじゃないかと思ってたがやっぱりそうか」
【光弾突撃銃を出しますか?】
「あー、どうすっかな。いや、接近戦で仕留めるわ」

 接近戦を選んだ理由はゴーレムの行動パターンを見ておきたかったから。
 五階の主だったハイオウガがそうであったように、魔物のラインナップが変更された時点でおそらくゴーレムが階を彷徨きだすと予想がついたのでそうした。

 予想が外れても初見だし慣れておいた方が無難だ。
 どこで戦うことになるかもわからんからな。

 それにバカスカ撃ってるが光弾突撃銃の弾は無料じゃない。弾倉に魔力を充填するのに費用がかかる。その請求書を俺に渡すのが愛しのメリッサってのがまた……。

 なんとも世知辛いよな。給料とは別ってところがちゃっかりしてるよ。もっとも、それ以上の働きをしてくれてるから口が裂けても文句は言えんが。

「稼ぎに来たんだから支出は少なくしないとな」
【十分少ないと思いますが】
「いや、まだだ。もっと収入と支出のことを考えるべきだった」

 ダメージを受けても回復薬入りのカプセル一つで事足りる。そっちの方が光弾一発よりも安く済む。なんなら食事をとりながら休息するだけでもHPは自然回復する。

【ですが、マスターがダンジョンに入ってから使用したのは光弾四発だけですし、光源の燃料費もかかっていません。現状、装備品のメンテナンスも不要です】

「む、言われてみりゃそうか」

 ノーダメージな上に奪った金棒使って討伐してりゃそうなるよな。そういや俺、ジョニーとヨハンから『金のかからない男』って呼ばれてたわ。

 あれはこういうことか。的を射てんな二人共。

「無自覚にどケチの道を進むところだった。ありがとなエレス」
【いえ、大したことでは。それより〈アナリシス〉の使用を進言します】
「おうよ」

 ゴーレムに向かって〈アナリシス〉を使う。ホログラムカードにゴーレムの情報が表示されるが、相変わらず最初は何一つ明かされていない。名前の入力しとこ。

「やっぱ初戦だと〈アナリシス〉で情報は見えねぇな」
【そういう仕様ですから仕方ありません。ですが弱点はレクタスと同じかと】
「訊くまでもなく打撃だろう」
【はい、その通りです】
「金棒はお誂え向きって訳だな。そんじゃ、行ってくるかね」

 金棒を手に、ゆっくりとゴーレムに歩み寄る。するとゴーレムはすぐに反応した。それまではただの岩人形という感じだったが、目に光が灯り俺に顔を向けた。

 そこで俺はハッとした。

 もしかして反応するラインがあるのか?

 五階のハイオウガが全く反応しなかった理由とも繋がる。

 もしこの推測が正しければ、出入口で光弾突撃銃を撃っているだけで、どの階の主も簡単に仕留めることができてしまうのではなかろうか?

 あーもう、また失敗したよちくしょう。

 そっちを検証すべきだったと思いつつ、足を速めて金棒を振り上げる。するとゴーレムがこちらに手の平を向けた。鈍重すぎる防御行動だ。欠伸が出るっての。

 そう思った瞬間、嫌な予感がした。『第六感』が項の毛をちりつかせる。

「下か!」

 叫んで間もなく、床から鋭く尖った岩が突き出した。咄嗟に横に跳んだお陰で回避できたが心臓が縮んだ。まさか魔法を使うとは思っていなかった。

 手のひらを向けるのは防御行動じゃなくて魔法の予備動作だったのか。

 観察と理解を進めつつ、石畳を蹴って攻撃を再開する。
 その途端、またゴーレムに手のひらを向けられた。

「馬鹿にしすぎだろ!」

 流石に頭にきた。今見たばかりの攻撃を食らう訳がない。
 一旦横に跳んでからまた距離を詰めにかかる。

 だがそこで予期せぬ事態が起きた。

 ゴーレムの手の形が変わった。中指を折り込んで親指で留めている。

「デコピン!?」

 驚きのあまり思わず叫んだ直後、ゴッという音を発してゴーレムの中指が放たれた。それと同時に、十メートルもない距離からボウリングの球ほどの岩塊が飛んできた。

 凄まじい速度で眼前に迫る岩塊を首を傾げて躱すが、完全には躱し切れず頬と耳を掠めた。少しピリッと痺れが走ったのでHPが減少したとわかる。

 うおおお、久し振りにヒヤッとしたあああ。

 岩塊が直撃していたら転倒していたかもしれない。だがそうならなかったってことは金棒を振りかぶった俺がゴーレムに肉薄してるってことなんだわ。

「危ねぇだろうがあっ!」

 心臓が遅れて縮み上がるという稀有な経験をさせてもらったお礼にデコピンしてきた手から順に四肢を金棒で粉砕してやった。

 というのは言い訳で、実際は頭をぶん殴れなかっただけだ。お陰で五発も殴る羽目になった。なになに、〈アナリシス〉の情報だと弱点は頭で打撃が通ると。

 いやそれは予想通りなんだけどもな。その頭を打つのが難しいんだわ。

 ただでさえ高い位置にあって狙いにくいのに両手が邪魔で頭が遠い。それに魔法とデコピンも厄介で、更に頭を打つ難易度が上がっている。

 こんなのが道中で出現するってか。おじさん信じたくねぇなぁ。何体かでつるんでたりするんだろうなぁ。面倒臭ぇなぁもうと溜め息が出る。

 ドロップアイテムは『ゴーレムコア』という野球ボールサイズの黒い球体のみ。装備がもらえないからこいつと道中遭遇しても大ハズレ扱い決定だな。

 そう心に決めて、俺は階下へ向かう部屋の扉を開けた。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

処理中です...