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23‐2 驚天動地(中編)
しおりを挟む召喚者ではなくサポートAI?
しかも風間柊一って、カザマ君のことだよな?
どうにか頭を働かせようと額に手を当て、眉間に力を込めて思い起こす。
カザマ君は──。
背後からエイゲンに長剣で刺されたのを見たとリュウエンが言っていた。俺も同じ目に遭ったから言えるが致命傷だ。あの状況で助かるとは思えない。
実際、俺は死んだしな。
それで使い勝手の悪い回復スキルか再生促進液と回復薬を使わないと生存が無理な上に、一命を取り留めたとしても三人に襲われたら厳しいって結論に至ったんだよ。
でもって、リンシャオはカザマ君の死体がダンジョンに呑み込まれたと言っていたし、それについてエイゲンとオットーも否定していなかった。
リュウエンはともかく、あの三人はしっかりとカザマ君の最期を見届けている。
当然だ。殺した張本人なんだから確認しないと落ち着かんだろ。
なのに何故サポートAIが……。
いや、もう結論は出てる。召喚者とサポートAIは一蓮托生。ウェアラブルデバイスの所持者が死ねば、サポートAIもまた存在できないのだから。
「あー、つまりその、カザマ君は生きてるってことだな?」
混乱しながら訊くと、柔らかな笑みを浮かべたエリーゼが頷いた。
【はい。現在所用で出ておりますが、もし正木様がダンジョンを攻略されたら家へ案内するようにと言われております。どうぞこちらへ。ご案内します】
エリーゼが淑やかに手で促し歩き始める。
家って……ここじゃないのかよ?
腑に落ちないまま後に続くと、扉も何もない場所でエリーゼが足を止めて振り返り、相変わらずの微笑みをたたえた顔で【こちらです】と壁を手で示して言った。
なんの冗談だ?
そう怪訝に思ったのも束の間、エリーゼが壁をすり抜けていった。
「いや、本当になんの冗談だよ」
向かった先が階段の横だったので、裏側に地下室の階段でもあるのだろうと考えていたがまさか壁とは。予想の斜め上もいいところ。そもそも俺は実体があるんだが。
【マスター、行きましょう】
「無茶言うな。サポートAI限定の通り道じゃねぇか」
【うふふ、今日のマスターは早とちりを続けますね。私たちはそんな場所に案内するほど無能ではありませんよ? 少し考えればわかるはずです。お先に失礼しますね】
エレスがにこやかに言って壁をすり抜ける。
わかりやすく含みのある言い方をしていったな。
そう思いつつ壁に触れてみると感触もなく手が通過した。確認してみれば付近の壁はしっかりと存在している。一部だけがホログラムだ。
「なるほど。そういうことか」
こんな芸当、五千分の一を引き当てないと無理だよな。
カザマ君が限定シークレットスキル所持者だと想定した途端一気に腑に落ちた。たったそれだけで納得できてしまうのが通常スキルと一線を画している所以。
なんたって俺も所持者だからな。そのチートぶりは理解しているつもりだ。
カザマ君は少なくとも、俺の〈セーブ〉のような死んでも生き返るスキルと、ホログラムを利用した隠蔽スキルを所持しているってことだな。
と、推測しつつ壁をすり抜ける。
すると空気が一変した。
壁を抜けた先にあったのは懐かしい和風の玄関だった。焦げ茶色を基調とした空間。板張りの廊下の左側に磨りガラスの窓が入った引き戸があり、奥に和室が見える。
右側は縁側になっていて引き戸が開け放たれている。その先にあるのは苔庭で、石畳と松、丸みのある小さな石灯籠と鹿威しが目に入る。
「風情あんなぁ」
思わず呟く。侘び寂びの世界ってやつだ。
よく手入れされた田舎の古民家のようで落ち着く。
【どうぞお履物を脱いで──あら、主人が帰ってきたようです】
廊下で正座していたエリーゼが背後に顔を向けて言った。
主人て……。
色んな呼ばせ方があるなぁと思って間もなく、庭から男が顔を出した。短く刈り上げた黒髪と小麦色の肌、目に力のある顔つきも含め快活な印象だ。
そして黒い耳掛け型イヤホン。間違いなく召喚者だ。
「お、間に合ったみたいだな。ちょうどよかった感じか?」
言いながら縁側に座り靴を脱ぐ。装いは半袖の白いシャツにジーンズで首にタオルを巻いている。年は二十代後半から三十半ばくらいに見える。
おかしいな。青年って聞いてたんだが。
【旦那様、お客様の前で失礼ですよ】
「固いこと言うなよ。正木さんだって気にしないでしょこんなこと。ねぇ?」
「え? ええまぁ、そうですね。ははは」
唐突に話を振られて驚いた。それ以上に、しっかりと人生を生きた人が持つ特有の貫禄を感じたことに戸惑う。落ち着いた雰囲気も含めて違和感がすごい。
エリーゼとの遣り取りも長く連れ添った夫婦のような感じがする。【もう、困ったお人ですね】なんて言いながら眉を下げて笑うって時代劇でしか見たことねぇよ。
でも外見がゴスロリ吸血鬼風なんだよな。
他人の趣味をとやかく言うつもりはないが着物なら完璧だったのに。
「おっと、申し訳ない。お見苦しいところを。どうぞ上がって下さい」
「はい、お邪魔します」
ブーツを脱いで上がり框を踏んで廊下へ。
それから両膝を着いてブーツを揃える。
【まぁ素敵。旦那様、ご覧になりましたか? 正木様を見倣って下さいませ】
「だー、わかったわかった。全く口煩いったらありゃしねぇ」
【そんなことを仰るんですね。なら設定を変えれば宜しいじゃありませんか】
「お、おいおい、怒るなよ。悪かったよ。気をつけるから機嫌直してくれよ」
マジかよ。痴話喧嘩まですんのかよ。
「な、なんかすげぇな」
【そ、そうですね】
それからしばらく、そっぽを向いてツーンとしてしまったエリーゼを必死になって宥めるカザマ君、いや風間さんをエレスと共に若干引きながら傍観した。
こんな設定、不便だろうに。
世の中、色んな人がいるもんだと驚きを禁じ得なかった。
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