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㈢カラノカガミ
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こどもの日は、まるで真夏のひざしだった。猫ひげ堂の庭で、石灯籠の陰からゴンタは水鉄砲を撃った。一五〇〇ミリリットルタンクの超強力飛距離のやつだ。十メートルは余裕で水が飛ぶ。映山紅と庭石に隠れたシュンスケは、顔面にくらった。それに対し、シュンスケの水鉄砲ときたら駄菓子屋で百円で売ってるちゃちなシロモノで、たいして飛ばないうえに、すぐ水が切れた。てんで勝負にならない。一五〇〇ミリリットルを撃ち終えるころには、ゴンタはほとんど濡れていないのに、シュンスケは髪からスニーカーまで濡れ鼠だった。シュンスケは顔をTシャツの袖でふいた。
「やばい、パンツまでしみてる」
「着がえてこいよ」
シュンスケはうなずいて、雑木林へ駆けていった。その先のバラ線をくぐれば、ゴンタたちの家まで五分だ。ぎょうぎょうしい仰々しい……大葦雀が林で騒いだ。
車のエンジン音がして、店のまえで止まった。ゴンタは店の門から顔をだした。猫ひげ堂には一応ささやかながらきちんとした杉板の門があった。おもては仙雲寺のべっぴん地蔵横丁だ。
灰色のセダンの運転席から、身なりのいい老人が降りてくるところだった。老人はトランクルームをあけて、長くて大きな荷づつみをとりだした。危なっかしく運んでくる。
思わず、ゴンタは走りでて、荷物をになった。老人は目を丸くした。
「ああ、助かるよ。この店の子かい?」
「いえ。でも、近所に住んでます」
荷づつみは、ずしりと重かった。ゴンタの手にした部分は薄くて長く、老人の手にした部分は四角く太かった。なんだろう、このかたちは?
猫ひげ堂は、紅殻塗りの木造二階屋だった。店主いわく、大正十四年の建物らしい。猫髯堂という看板と、春夏冬中という札(あきないちゅう、と読むのだそうだ)。札の下の呼び鈴を、老人は押した。すりガラスの格子戸があいて、唐棧の着物のオサカベが顔をだした。店主のオサカベのほうが髪は白かったけれど、ゴンタにはゴマ塩頭の老人のほうがずっと年上にみえた。
「お電話くだすった唐沢さんですな。お待ちしておりました」
オサカベはあいさつして、細い腕でかるがると荷づつみをになった。
座敷に置いた荷づつみの紐を、オサカベは大鋏で断った。つつみ紙を剝がすと、細長い鏡がきれいに光った。三つのひきだしに、牡丹の彫刻。鏡台だ。みごとな品だった。ゴンタはつくづくみいってしまった。オサカベが云う。
「鎌倉彫ですな」
「半世紀前、妻が嫁入り道具に持ってきたものでして。日露戦争のころの品で、母の形見といっていました。春先に妻が亡くなったので、もう使い道がないのです。うちには娘はいませんから」
「手放すので?」
「ええ。いくらになりますか」
老人は落ちつかない様子で店のあちこちをみていた。何かうしろめたいことでもしているみたいだ。オサカベは鏡台のひきだしをはずして、中や裏や奥をチェックした。大切に使われていたんだろう。ほとんど傷んでいなかった。
「一万三千でどうですかな」
子供のゴンタでも、その値段が安すぎるのがわかった。
「それで結構です」
老人は即答した。一刻も早く帰りたがっているようだった。なんでこのおじいさんは、そんなにこの鏡をうとんでいるんだろう。奥さんがよっぽどこわい人だったとか……。
老人は台帖に名前と住所を書いた。海岸沿いの、となりの市だ。わざわざこんな遠くの店まで? ゴンタの違和感はふくらんだ。オサカベから受けとった封筒を、老人は中身を確かめもせずジャケットのかくしに押しこんだ。店の戸がしまり、車の走ってゆく音がした。
入れ代わりのように、店の戸があいて全身を着がえたシュンスケが現れた。髪はまだ濡れている。大きな鏡台に、シュンスケは赤茶の目を丸くした。
「お客さん来たの?」
「ちょうど帰ったとこ」
ゴンタはいった。シュンスケはいう。
「鏡と、ひきだしのあるもんは、中古で買っちゃダメって、うちの母ちゃんいってるぜ。鏡で、ひきだしがあって、これ売れねえんじゃねえの?」
「そう。鏡は道になるし、抽斗は念がこもりやすいからな」
オサカベは否定しなかった。シュンスケは靴を脱いで、細長い鏡のまえに正座した。黒猫の夜叉が、シュンスケの膝に寄りそった。オサカベがいう。
「何かわかるか?」
「ばあさんが使ってたんだな」
シュンスケはいい当てた。ゴンタもオサカベも驚かなかった。いつものことなので。
「ほかに何かわかるか?」
「うちの人はハクジョーだっていってる」
「そうか」
オサカベは口をゆがめた。ゴンタはため息をついた。
オサカベは鏡台をふきんで丹念に磨いて、鏡の両脇に盛り塩の小皿と、そのまんなかに水のコップを置いた。骨ばった両手を合わせて、黙とうする。ゴンタとシュンスケも真似して手を合わせた。
🐈⬛
翌日のゴールデンウィーク明けは、小雨がぱらついた。放課後、ゴンタとシュンスケは、猫ひげ堂へ遊びにいった。座敷にあの鏡台はなかった。ゴンタはいう。
「あの鏡台、もう売れたんですか?」
「いや。あれは家に帰った」
勘定台でオサカベは夜叉を撫でた。やっぱり安すぎたので、あの老人が買い戻したのだろうか、とゴンタは思った。シュンスケがつぶやいた。
「あのばあさん、さみしそうだったからな」
ボーン、ボーン、ボーン、と柱時計が三べん鳴った。オサカベはほうじ茶をいれて、安い割れ煎をつけてくれた。ゴンタたちは言葉少なにぼりぼり齧った。
小一時間ほどして、車の音がきこえた。まもなく、店の呼び鈴が鳴った。ぴん・ぽん、と(倉田宅の呼び鈴とちがって)小気味いい音がした。夜叉が座敷に下りた。オサカベは格子戸をあけた。あの老人が荷づつみをかかえていた。かたちからして、鏡台にちがいない。ゴンタはわけがわからなかった。オサカベがいう。
「お待ちしておりました」
荷づつみを座敷へ置いて、老人は肩を落とした。オサカベは老人のぶんもほうじ茶をいれた。
「この鏡台を売るのは何度目ですか?」
老人は備前焼の湯呑みをすすって、話しだした。
「こんどで三度目です。この連休のあいだ、どうにかこの鏡台を手ばなそうとしました。でも、駄目なのです。どんなに遠くの店へやっても、夜になるとこの鏡台は家に戻ってきてしまう。挙句、あなたが盗んだんだろう、と警察を呼ばれそうになって……。二軒目の店で、猫ひげ堂さんのうわさを耳にしました。あの店ならなんとかしてくれるかもしれない、と」
「困っているのは、それだけですか?」
「それが、その……、夜になると、鏡から妻が現れましてね、一晩中うらみごとをいうのです。それで私はろくに眠ることもできなくてね、もうノイローゼになりそうです。お代はいくらでもお支払いします。なんとかしてください。お願いです」
「でも、ばあさんは、あんたを愛してんだよ」
シュンスケが云った。老人は目をみはった。オサカベがいう。
「そいつもいろいろとみえてしまうやつでしてね。まだまだ半端者ですがね。残念ながらその鏡は、もう私の力では抑えられない」
そんな、と老人はいった。ゴンタとシュンスケは声を飲んだ。
「方法をお教えしますから、あなたが供養してさしあげなさい。いいですか、唐沢さん。あなたがしなくては、意味がない。奥さまはお酒がお好きでしょう。これから毎晩、この鏡台にコップ一杯の酒と、肴を供えてください。できたら、あなたの手づくりで。なに、簡単なものでかまわんのです。ただし、毎晩ですよ。奥さまは五十年間、あなたにそうしてくだすったでしょう」
「それを、いつまで続ければいいのでしょうか?」
「奥さまの気のすむまでです。そのときが来れば、わかります」
オサカベは重おもしくうなずいた。
老人は鏡台を丁寧にくるんで、セダンに積んで去った。シュンスケはいう。
「オサカベのおっちゃん、なんかかっけえな」
🐈⬛
五月も終わりに近づいたころ、ゴンタが猫ひげ堂の座敷にあがると、あの鎌倉彫の鏡台があった。細長い鏡は初夏の光をはねかえし、清らかだった。
ゴンタはなんとなく鏡台を持ちあげてみた。それは驚くほど軽くなっていた。
「やばい、パンツまでしみてる」
「着がえてこいよ」
シュンスケはうなずいて、雑木林へ駆けていった。その先のバラ線をくぐれば、ゴンタたちの家まで五分だ。ぎょうぎょうしい仰々しい……大葦雀が林で騒いだ。
車のエンジン音がして、店のまえで止まった。ゴンタは店の門から顔をだした。猫ひげ堂には一応ささやかながらきちんとした杉板の門があった。おもては仙雲寺のべっぴん地蔵横丁だ。
灰色のセダンの運転席から、身なりのいい老人が降りてくるところだった。老人はトランクルームをあけて、長くて大きな荷づつみをとりだした。危なっかしく運んでくる。
思わず、ゴンタは走りでて、荷物をになった。老人は目を丸くした。
「ああ、助かるよ。この店の子かい?」
「いえ。でも、近所に住んでます」
荷づつみは、ずしりと重かった。ゴンタの手にした部分は薄くて長く、老人の手にした部分は四角く太かった。なんだろう、このかたちは?
猫ひげ堂は、紅殻塗りの木造二階屋だった。店主いわく、大正十四年の建物らしい。猫髯堂という看板と、春夏冬中という札(あきないちゅう、と読むのだそうだ)。札の下の呼び鈴を、老人は押した。すりガラスの格子戸があいて、唐棧の着物のオサカベが顔をだした。店主のオサカベのほうが髪は白かったけれど、ゴンタにはゴマ塩頭の老人のほうがずっと年上にみえた。
「お電話くだすった唐沢さんですな。お待ちしておりました」
オサカベはあいさつして、細い腕でかるがると荷づつみをになった。
座敷に置いた荷づつみの紐を、オサカベは大鋏で断った。つつみ紙を剝がすと、細長い鏡がきれいに光った。三つのひきだしに、牡丹の彫刻。鏡台だ。みごとな品だった。ゴンタはつくづくみいってしまった。オサカベが云う。
「鎌倉彫ですな」
「半世紀前、妻が嫁入り道具に持ってきたものでして。日露戦争のころの品で、母の形見といっていました。春先に妻が亡くなったので、もう使い道がないのです。うちには娘はいませんから」
「手放すので?」
「ええ。いくらになりますか」
老人は落ちつかない様子で店のあちこちをみていた。何かうしろめたいことでもしているみたいだ。オサカベは鏡台のひきだしをはずして、中や裏や奥をチェックした。大切に使われていたんだろう。ほとんど傷んでいなかった。
「一万三千でどうですかな」
子供のゴンタでも、その値段が安すぎるのがわかった。
「それで結構です」
老人は即答した。一刻も早く帰りたがっているようだった。なんでこのおじいさんは、そんなにこの鏡をうとんでいるんだろう。奥さんがよっぽどこわい人だったとか……。
老人は台帖に名前と住所を書いた。海岸沿いの、となりの市だ。わざわざこんな遠くの店まで? ゴンタの違和感はふくらんだ。オサカベから受けとった封筒を、老人は中身を確かめもせずジャケットのかくしに押しこんだ。店の戸がしまり、車の走ってゆく音がした。
入れ代わりのように、店の戸があいて全身を着がえたシュンスケが現れた。髪はまだ濡れている。大きな鏡台に、シュンスケは赤茶の目を丸くした。
「お客さん来たの?」
「ちょうど帰ったとこ」
ゴンタはいった。シュンスケはいう。
「鏡と、ひきだしのあるもんは、中古で買っちゃダメって、うちの母ちゃんいってるぜ。鏡で、ひきだしがあって、これ売れねえんじゃねえの?」
「そう。鏡は道になるし、抽斗は念がこもりやすいからな」
オサカベは否定しなかった。シュンスケは靴を脱いで、細長い鏡のまえに正座した。黒猫の夜叉が、シュンスケの膝に寄りそった。オサカベがいう。
「何かわかるか?」
「ばあさんが使ってたんだな」
シュンスケはいい当てた。ゴンタもオサカベも驚かなかった。いつものことなので。
「ほかに何かわかるか?」
「うちの人はハクジョーだっていってる」
「そうか」
オサカベは口をゆがめた。ゴンタはため息をついた。
オサカベは鏡台をふきんで丹念に磨いて、鏡の両脇に盛り塩の小皿と、そのまんなかに水のコップを置いた。骨ばった両手を合わせて、黙とうする。ゴンタとシュンスケも真似して手を合わせた。
🐈⬛
翌日のゴールデンウィーク明けは、小雨がぱらついた。放課後、ゴンタとシュンスケは、猫ひげ堂へ遊びにいった。座敷にあの鏡台はなかった。ゴンタはいう。
「あの鏡台、もう売れたんですか?」
「いや。あれは家に帰った」
勘定台でオサカベは夜叉を撫でた。やっぱり安すぎたので、あの老人が買い戻したのだろうか、とゴンタは思った。シュンスケがつぶやいた。
「あのばあさん、さみしそうだったからな」
ボーン、ボーン、ボーン、と柱時計が三べん鳴った。オサカベはほうじ茶をいれて、安い割れ煎をつけてくれた。ゴンタたちは言葉少なにぼりぼり齧った。
小一時間ほどして、車の音がきこえた。まもなく、店の呼び鈴が鳴った。ぴん・ぽん、と(倉田宅の呼び鈴とちがって)小気味いい音がした。夜叉が座敷に下りた。オサカベは格子戸をあけた。あの老人が荷づつみをかかえていた。かたちからして、鏡台にちがいない。ゴンタはわけがわからなかった。オサカベがいう。
「お待ちしておりました」
荷づつみを座敷へ置いて、老人は肩を落とした。オサカベは老人のぶんもほうじ茶をいれた。
「この鏡台を売るのは何度目ですか?」
老人は備前焼の湯呑みをすすって、話しだした。
「こんどで三度目です。この連休のあいだ、どうにかこの鏡台を手ばなそうとしました。でも、駄目なのです。どんなに遠くの店へやっても、夜になるとこの鏡台は家に戻ってきてしまう。挙句、あなたが盗んだんだろう、と警察を呼ばれそうになって……。二軒目の店で、猫ひげ堂さんのうわさを耳にしました。あの店ならなんとかしてくれるかもしれない、と」
「困っているのは、それだけですか?」
「それが、その……、夜になると、鏡から妻が現れましてね、一晩中うらみごとをいうのです。それで私はろくに眠ることもできなくてね、もうノイローゼになりそうです。お代はいくらでもお支払いします。なんとかしてください。お願いです」
「でも、ばあさんは、あんたを愛してんだよ」
シュンスケが云った。老人は目をみはった。オサカベがいう。
「そいつもいろいろとみえてしまうやつでしてね。まだまだ半端者ですがね。残念ながらその鏡は、もう私の力では抑えられない」
そんな、と老人はいった。ゴンタとシュンスケは声を飲んだ。
「方法をお教えしますから、あなたが供養してさしあげなさい。いいですか、唐沢さん。あなたがしなくては、意味がない。奥さまはお酒がお好きでしょう。これから毎晩、この鏡台にコップ一杯の酒と、肴を供えてください。できたら、あなたの手づくりで。なに、簡単なものでかまわんのです。ただし、毎晩ですよ。奥さまは五十年間、あなたにそうしてくだすったでしょう」
「それを、いつまで続ければいいのでしょうか?」
「奥さまの気のすむまでです。そのときが来れば、わかります」
オサカベは重おもしくうなずいた。
老人は鏡台を丁寧にくるんで、セダンに積んで去った。シュンスケはいう。
「オサカベのおっちゃん、なんかかっけえな」
🐈⬛
五月も終わりに近づいたころ、ゴンタが猫ひげ堂の座敷にあがると、あの鎌倉彫の鏡台があった。細長い鏡は初夏の光をはねかえし、清らかだった。
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