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意外な人物
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翌日、ガルド殿下の屋台で買い占めておいたマンゴーの半分と、取り急ぎ試作用に手持ちの白玉粉を料理長に託し、屋敷を出た。
お兄様はレイモンド王太子殿下が王宮にいるとのことでそちらに付き添いしなくてはならないと言って、渋々お父様と王宮へ向かった。
うわー、頑張ってお兄様……
マリエルちゃんを拾ってからセイを迎えに行こうとしたのだけど、白虎様からの念話を受けた黒銀が待ったをかけた。
それによると「領地の本店へ商品受け取りと追加発注のため転移で向かうからあとで落ち合おうぜ!」とのことなのでバステア商会王都支店には向かわずに屋台が立ち並ぶ市場に向かうことにした。
せっかくなので、王都で売られている品物で何か使えるものがないか物色してみようと思ってね。
王都は他領からも色々な品が集まるから、何かしら見つかるのではないかしら?
マリエルちゃんと共に商家のお嬢さんっぽい簡素なワンピースを身につけ、あれこれとお店をひやかし、途中で果実水を買って噴水のある広場で涼みながら休憩する。
「やはり、ものによってはうちの領地で買うほうが安いわねぇ」
「確かに、エリスフィード領はここ数年農産業もうまくいってますもんね。やっぱりクリステアさんのチートであれこれやってたとかです?」
「いや別にそういうわけでは……」
ちょっと飼料にしか利用されていなかったラース(お米)を食べられるようにしたとか、自宅(領地の館)の裏庭にこっそり(でもなかったけど)実をつける花で埋め尽くされた花壇(ではなく実際はしっかり菜園だった)で連作障害について庭師とあれこれ話していたのがお父様に伝わり、密かに領内で運用されていたのを後から知った……とかならあるけど。
私が農産業発展のためにあれこれしたわけではない。ないったらない。
私は私のためにしたいことをしただけです。
頑張ったのは周りの人たちです、はい。
「……何かしたって顔してますよ?」
「えっ⁉︎ うそ!」
「やっぱりしたんですね?」
「イヤワタシガシタワケデハナクデスネ……」
「したんですね……」
マリエルちゃんがもはや確信しているかのような目つきで私を見るので、サッと目を逸らすと、その視線の先にはエリスフィード領で手に入れたらしいベーコンが領地より高値で売られていた。
前世では転売ヤー死すべしとばかりに蛇蝎の如く嫌われている転売行為だけど、この世界では違法ではない。
ベーコン一つのために領地を移動してまで買いに行くとか、平民には無理な話だ。
前世みたいに「美味しいもののために国内外を旅して食べ歩きしよー!」なんて気軽にできるわけがないのだ。
あぁ……いいなあ。
食べ歩き旅行、してみたいなぁ……
おっといけない。話が逸れた。
まあ、転売行為は見逃されているわけだからこんな風に◯◯領でしか味わえないこれが食べられるよ、ちょっと色はつけてるけど、わざわざそこまで行くとしたら高くつくことを考えたらこの金額はお得だよ! というギリギリのところを突いている。
王都や他の領地では今のところエリスフィード領の冒険者ギルドでしか買えないから、冒険者に依頼して何とか手に入れているわけだからコスト面を考えたらしかたないのだけど。
ベーコンの製法やレシピを商業ギルドに登録して情報解禁すべきか考えたこともあるけれど、現時点でもオークが減っていることを考えたらあっという間にベーコンが作れなくなってレシピを売り出した私が詐欺だなんだと訴えられそうでねぇ。
オークは魔物だから、本来ならいなくなるほうがいいのだけど、食用肉としては優秀なので難しいところである。
「あ、ベーコンですね。わあ、あれ結構強気の値付けしてますねえ」
マリエルちゃんが私の視線の先に気づいてわかりやすくうわぁ、という顔をした。
「え、そうなの?」
「ですです。相場より銀貨5枚分くらいお高いです」
「ひえ……あ、あれ?」
件の屋台に近寄り、ベーコンを買おうとしている人物に見覚えがあった。
「で、殿下⁉︎」
特徴的な赤い髪の色は暗めの茶色に変えていたけれど、どう見てもレイモンド王太子殿下だった。
---------------------------
短めですが、キリが悪かったので今回はここまで。
いつもコメントやエール・いいねをポチッとありがとうございます( ´ ▽ ` )
執筆の励みになっております~!
ようやく秋らしくなってきましたね。
ええ……秋らしくブタクサがね……ぐぬぬ。
お兄様はレイモンド王太子殿下が王宮にいるとのことでそちらに付き添いしなくてはならないと言って、渋々お父様と王宮へ向かった。
うわー、頑張ってお兄様……
マリエルちゃんを拾ってからセイを迎えに行こうとしたのだけど、白虎様からの念話を受けた黒銀が待ったをかけた。
それによると「領地の本店へ商品受け取りと追加発注のため転移で向かうからあとで落ち合おうぜ!」とのことなのでバステア商会王都支店には向かわずに屋台が立ち並ぶ市場に向かうことにした。
せっかくなので、王都で売られている品物で何か使えるものがないか物色してみようと思ってね。
王都は他領からも色々な品が集まるから、何かしら見つかるのではないかしら?
マリエルちゃんと共に商家のお嬢さんっぽい簡素なワンピースを身につけ、あれこれとお店をひやかし、途中で果実水を買って噴水のある広場で涼みながら休憩する。
「やはり、ものによってはうちの領地で買うほうが安いわねぇ」
「確かに、エリスフィード領はここ数年農産業もうまくいってますもんね。やっぱりクリステアさんのチートであれこれやってたとかです?」
「いや別にそういうわけでは……」
ちょっと飼料にしか利用されていなかったラース(お米)を食べられるようにしたとか、自宅(領地の館)の裏庭にこっそり(でもなかったけど)実をつける花で埋め尽くされた花壇(ではなく実際はしっかり菜園だった)で連作障害について庭師とあれこれ話していたのがお父様に伝わり、密かに領内で運用されていたのを後から知った……とかならあるけど。
私が農産業発展のためにあれこれしたわけではない。ないったらない。
私は私のためにしたいことをしただけです。
頑張ったのは周りの人たちです、はい。
「……何かしたって顔してますよ?」
「えっ⁉︎ うそ!」
「やっぱりしたんですね?」
「イヤワタシガシタワケデハナクデスネ……」
「したんですね……」
マリエルちゃんがもはや確信しているかのような目つきで私を見るので、サッと目を逸らすと、その視線の先にはエリスフィード領で手に入れたらしいベーコンが領地より高値で売られていた。
前世では転売ヤー死すべしとばかりに蛇蝎の如く嫌われている転売行為だけど、この世界では違法ではない。
ベーコン一つのために領地を移動してまで買いに行くとか、平民には無理な話だ。
前世みたいに「美味しいもののために国内外を旅して食べ歩きしよー!」なんて気軽にできるわけがないのだ。
あぁ……いいなあ。
食べ歩き旅行、してみたいなぁ……
おっといけない。話が逸れた。
まあ、転売行為は見逃されているわけだからこんな風に◯◯領でしか味わえないこれが食べられるよ、ちょっと色はつけてるけど、わざわざそこまで行くとしたら高くつくことを考えたらこの金額はお得だよ! というギリギリのところを突いている。
王都や他の領地では今のところエリスフィード領の冒険者ギルドでしか買えないから、冒険者に依頼して何とか手に入れているわけだからコスト面を考えたらしかたないのだけど。
ベーコンの製法やレシピを商業ギルドに登録して情報解禁すべきか考えたこともあるけれど、現時点でもオークが減っていることを考えたらあっという間にベーコンが作れなくなってレシピを売り出した私が詐欺だなんだと訴えられそうでねぇ。
オークは魔物だから、本来ならいなくなるほうがいいのだけど、食用肉としては優秀なので難しいところである。
「あ、ベーコンですね。わあ、あれ結構強気の値付けしてますねえ」
マリエルちゃんが私の視線の先に気づいてわかりやすくうわぁ、という顔をした。
「え、そうなの?」
「ですです。相場より銀貨5枚分くらいお高いです」
「ひえ……あ、あれ?」
件の屋台に近寄り、ベーコンを買おうとしている人物に見覚えがあった。
「で、殿下⁉︎」
特徴的な赤い髪の色は暗めの茶色に変えていたけれど、どう見てもレイモンド王太子殿下だった。
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ようやく秋らしくなってきましたね。
ええ……秋らしくブタクサがね……ぐぬぬ。
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