転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)

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報・連・相は大事ですよね…… その2

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こうしてはいられない。
一刻も早く収束に向けて動かなくちゃ領民が魔物の脅威に晒されることになりかねないじゃない!
「ねえ、黒銀くろがね、領地内のどこかにダンジョンができていたりしなかった? そういう場所に心当たりはない?」
「ダンジョン? 特に気になる様子もなかったが……そもそも、あのオークは領地で狩ったものではないしな」
「「「……は?」」」
黒銀くろがねさん?
今なんて言った?
「……あの、黒銀くろがね? あのオークはどこに集落を作っていたの?」
「うん? 王都よりさらに西の方だな。オークがよく出現する地に心当たりがあったゆえ向かったのだが、案の定集落を作っておったのでな。はぐれだけ狩るかと思ったが、集落は殲滅してほしいと頼まれていたから仕方なく殲滅したのだ」
「「「……」」」
黒銀くろがねェ……よその領地に狩に出て、そこのオークの集落を殲滅しちゃったってことぉ?
いや、別に冒険者がどこでオークを狩ろうが問題ないし、冒険者登録をしている黒銀くろがねは要望通り脅威となりかねないオークの群れを殲滅しただけで、悪いことしたわけじゃないんだけど……ええと。
「……ティリエ。どうする?」
「どうするも何も……そこの管轄に報告しとかなきゃならないでしょ……ああもう、面倒なことになったわね」
ですよねー……うわぁ。
以前、うちの領地で黒銀くろがねが殲滅した時も、冒険者ギルドで討伐隊を編成する動きがあったのに黒銀くろがねが先回りして殲滅しちゃったもんだから、それを誤魔化すのにティリエさんを巻き込んだんだよねぇ。
ティリエさんには私が黒銀くろがねたちと聖獣契約したことをバラした上で、お父様と昔馴染みだったこともあって上手いこと秘密にしてもらっているけれど、他領のギルドに私達のことを秘密にした上で報告するのってかなり面倒だよね……?
「問題のオークはお前のところに納品済みなのだから、ギルドマスターであるお前が責任持って説明するように。私はこの件は関与せんぞ。今の今までことの顛末を知らなかったのだからな。黒銀くろがね様、集落のあった位置をティリエに説明してやっていただけますか?」
「うむ。大体でよければ位置は把握している」
「それで結構ですので、よろしくお願いします。では報告は任せたぞ、ティリエ」
「……ええぇ……ちょっと待ってよぉ。報告するの、とっても面倒なんだけど……?」
「くれぐれも余計なことは言わぬよう頼むぞ、ギルドマスター。それでは黒銀くろがね様、あちらで地図を見ながら位置の説明を」
「うむ。よかろう」
「ちょっ! 本気で丸投げする気?」
「丸投げとは人聞きの悪い。我が領地の優秀なギルドマスターに全幅の信頼をおいているだけだ。それでは後ほど地図を転送するので頼むぞ。ではな」
「ちょ⁉︎ 待ちなさいよ……っ」
お父様は言いたいことだけ言うと、魔導具から手を離し、通信を切ってしまった。
すぐにティリエさんが折り返し通信しようとしたみたいで魔導具がピカピカ光っているけれど、お父様は一瞥しただけでそのまま黒銀くろがねと一緒に応接テーブルに移動してしまった。
うわぁ……ティリエさんが気の毒すぎる。
他領のオークの集落を殲滅して、その現物であるオークの納品もないのに討伐終了の報告だけティリエさんがするってことだよね?
説明が超めんどくさそう……
ティリエさんには今度何かお詫びの品を差し入れしないといけないかも……もちろん黒銀くろがね便でね!
とりあえず、早速スイーツでも作っておこうかな……
「クリステア。其方はここでそのまま待っているように」
「えっ?」
お父様はそーっと執務室を出て調理場へ向かおうとした私を引き止めた。
うわぁ、嫌な予感が……
「何か行動を起こす前に必ず報告するようにとあれほど言っていたにも関わらずこれだ。……其方とはしっかり話をする必要があるようだな」
「えええええ⁉︎」

この後たっぷりお説教されました。
確かに、報・連・相は大事だけど!
お父様と約束してたけど!
……これ私、悪くなくない⁉︎ 解せぬ‼︎

そして、お説教されながらもしっかり解体場所の確保をした私を、誰か、褒めて欲しい……!
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