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シンに助手?
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お父様とお母様の圧力に負けたこともあり、シンがおさらいも兼ねた分とは別にオークが追加で解体され、シンは解体と内臓処理に追われて泣くことになった。
ごめんね、シン。
ソーセージについてはレシピを当面秘密にしようということになったので、限られた人間以外には作り方を見られるわけにはいかないのよね……
シン一人では大変だし、結界を張って作業工程を見せないようにしないといけないこともあり、私も手伝うつもりでシンのいる調理場へ向かった。
「主は手伝わなくてよい」
「おれたちがやるから、くりすてあはへやにいて?」
今度こそ解体から手伝おうと、覚悟を決めて解体場へ向かったのに、黒銀と真白に止められてしまった。
「え、でも、解体を覚えたいし……」
「また気分が悪くなったりでもしてはと思うと気が気ではない。我らの心の平穏のためにも、ここは我らに任せてほしい」
「くりすてあがげんきないと、おれたちしんぱいだから、ね?」
そこまで言われてしまうと、これ以上は私が駄々をこねているだけになってしまう。
うう、黒銀も真白も私を甘やかしすぎじゃない?
聖獣は契約を交わすと心地よい魔力が損なわれることのないよう、契約者を護ることに全力を尽くすそうなんだけど、甘やかしすぎたらそれはそれでよろしくないと思うんだけど……もちろん、心配してくれるのは嬉しいんだけどね。
「それに、今回は新たに助手をつけるので人手は足りている」
「えっ? 助手⁉︎」
レシピは秘匿することになっているから、人手を増やすのは……
「クリステア様! 私めが立派に助手を務めあげますのでご心配なく!」
「りょ、料理長⁉︎」
「この度のレシピは以前お話した内臓を使ったものなのですよね? お館様や奥方様も魅了してしまう内臓料理……私めが知らずしてどうなりましょう!」
「……」
キリッとして言ってるけれど、料理長の口の端に若干のよだれが見えるのは気のせいですかね……?
「このレシピは秘匿するようにお父様はおっしゃられたのだけれど?」
「ええ、伺っております。しかし、私は情報提供者として知る権利、そして正しく理解した上で秘密を共有すべきだと考えております! ですから! なにとぞ……!」
料理長、さっきから格好つけて熱弁をふるっているけれど、よだれ、拭こうよ……
「……私以外にひと通り作り方を知るのはシンだけなの。料理長は立場関係なく、シンの助手として動くことを約束できるかしら?」
「新たな世界を知る先達は立場関係なく我が師であります」
真剣な表情で答える料理長の背後で、シンが心底嫌そうな顔をして、口パクで「断れ」と言っているのが見えた。気持ちはわかる。
でも人手があった方がいいだろうし……
「そこまで言うのなら許可します。ただし、レシピは絶対に秘密ですからね?」
ため息混じりに言うと、料理長はパアァ……! と笑顔になった。
「もちろんでございます! さあシン師匠、ご指導お願いしますよ!」
「うえっ⁉︎ 師匠は止めてくださいよ! 料理長は解体はできるんですか?」
「いや、初めてだ。ふふ……素材を一から手がけることになるとは、人生何事も勉強だな!」
「マジかよ……頼みますからぶっ倒れないでくださいよ?」
「はっはっは、私は料理人だよ? 素材を前にして倒れたりなんてするわけがないだろう?」
うんざりとした表情のシンと新レシピを知りたくてうずうずしている料理長との落差がすごい。
はあ……素材を前に倒れたりしない、か。さすが料理長にまで登りつめただけはあるわね。それに比べて私ときたら……
「それじゃ、あとはよろしくね」
ここにいてもできることはなさそうなので、自室に戻ることにしよう。
「ああ……」
「おまかせください!」
「うむ。主は部屋でゆるりと過ごすとよい。結界を張るが何かあれば呼んでくれ」
「くりすてあ、またあとでね」
解体を覚えられないのを残念に思う反面、まだスプラッタな場面に立ち会わなくて済むことに少しホッとした私なのだった。
「クリステア様? 解体に立ち会うのではございませんでしたか?」
ミリアは私がすぐに自室へ戻ってきたことに驚きながらもお茶を淹れてくれた。
「人手は足りているから部屋にいろって黒銀達がね」
私はお茶をいただきながら答えた。
はあ……あったかい。
春先とはいえ、外はまだ冷えるものね。結界を張っている間はさほど外気温は気にならないんだけど……
まだ仕事の残っているミリアを下がらせ、私はのんびりお茶を楽しみことにした。
『アンタは貴族の令嬢のくせにあれやこれや下々のことに手を出しすぎなんだよ。ちったあお嬢様らしくしてみちゃどうなのさ?』
窓辺で丸くなっていた輝夜がそう言ってソファに座る私の膝に飛び乗り、再び丸くなった。
「そうは言うけど、私が実際に作らないと新レシピはできないんだし……何より作るのが楽しいんだもの」
『まったく、変な娘だよ。普通なら働きたくはないだろうに』
元が庶民なんだから仕方ない。あくせく働きたくはないけれど、何もしないのは嫌なんだもの。
『まあいいよ。こんな機会は滅多とないからアタシが相手をしてやるよ』
「ふふ、ありがとう。そうね、久しぶりにブラッシングとマッサージのフルコースをするとしましょうか」
私はインベントリから輝夜用のブラシを取り出したのだった。
久々に輝夜とまったり過ごしていた私の元へ「料理長がぶっ倒れた」と知らせが入ったのはそれから少ししてからのことだった。料理長ぉ……
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12/12(木)にコミカライズ版第五話が更新されております!モフモフが充実の回ですのでモフスキー様はぜひ!
ごめんね、シン。
ソーセージについてはレシピを当面秘密にしようということになったので、限られた人間以外には作り方を見られるわけにはいかないのよね……
シン一人では大変だし、結界を張って作業工程を見せないようにしないといけないこともあり、私も手伝うつもりでシンのいる調理場へ向かった。
「主は手伝わなくてよい」
「おれたちがやるから、くりすてあはへやにいて?」
今度こそ解体から手伝おうと、覚悟を決めて解体場へ向かったのに、黒銀と真白に止められてしまった。
「え、でも、解体を覚えたいし……」
「また気分が悪くなったりでもしてはと思うと気が気ではない。我らの心の平穏のためにも、ここは我らに任せてほしい」
「くりすてあがげんきないと、おれたちしんぱいだから、ね?」
そこまで言われてしまうと、これ以上は私が駄々をこねているだけになってしまう。
うう、黒銀も真白も私を甘やかしすぎじゃない?
聖獣は契約を交わすと心地よい魔力が損なわれることのないよう、契約者を護ることに全力を尽くすそうなんだけど、甘やかしすぎたらそれはそれでよろしくないと思うんだけど……もちろん、心配してくれるのは嬉しいんだけどね。
「それに、今回は新たに助手をつけるので人手は足りている」
「えっ? 助手⁉︎」
レシピは秘匿することになっているから、人手を増やすのは……
「クリステア様! 私めが立派に助手を務めあげますのでご心配なく!」
「りょ、料理長⁉︎」
「この度のレシピは以前お話した内臓を使ったものなのですよね? お館様や奥方様も魅了してしまう内臓料理……私めが知らずしてどうなりましょう!」
「……」
キリッとして言ってるけれど、料理長の口の端に若干のよだれが見えるのは気のせいですかね……?
「このレシピは秘匿するようにお父様はおっしゃられたのだけれど?」
「ええ、伺っております。しかし、私は情報提供者として知る権利、そして正しく理解した上で秘密を共有すべきだと考えております! ですから! なにとぞ……!」
料理長、さっきから格好つけて熱弁をふるっているけれど、よだれ、拭こうよ……
「……私以外にひと通り作り方を知るのはシンだけなの。料理長は立場関係なく、シンの助手として動くことを約束できるかしら?」
「新たな世界を知る先達は立場関係なく我が師であります」
真剣な表情で答える料理長の背後で、シンが心底嫌そうな顔をして、口パクで「断れ」と言っているのが見えた。気持ちはわかる。
でも人手があった方がいいだろうし……
「そこまで言うのなら許可します。ただし、レシピは絶対に秘密ですからね?」
ため息混じりに言うと、料理長はパアァ……! と笑顔になった。
「もちろんでございます! さあシン師匠、ご指導お願いしますよ!」
「うえっ⁉︎ 師匠は止めてくださいよ! 料理長は解体はできるんですか?」
「いや、初めてだ。ふふ……素材を一から手がけることになるとは、人生何事も勉強だな!」
「マジかよ……頼みますからぶっ倒れないでくださいよ?」
「はっはっは、私は料理人だよ? 素材を前にして倒れたりなんてするわけがないだろう?」
うんざりとした表情のシンと新レシピを知りたくてうずうずしている料理長との落差がすごい。
はあ……素材を前に倒れたりしない、か。さすが料理長にまで登りつめただけはあるわね。それに比べて私ときたら……
「それじゃ、あとはよろしくね」
ここにいてもできることはなさそうなので、自室に戻ることにしよう。
「ああ……」
「おまかせください!」
「うむ。主は部屋でゆるりと過ごすとよい。結界を張るが何かあれば呼んでくれ」
「くりすてあ、またあとでね」
解体を覚えられないのを残念に思う反面、まだスプラッタな場面に立ち会わなくて済むことに少しホッとした私なのだった。
「クリステア様? 解体に立ち会うのではございませんでしたか?」
ミリアは私がすぐに自室へ戻ってきたことに驚きながらもお茶を淹れてくれた。
「人手は足りているから部屋にいろって黒銀達がね」
私はお茶をいただきながら答えた。
はあ……あったかい。
春先とはいえ、外はまだ冷えるものね。結界を張っている間はさほど外気温は気にならないんだけど……
まだ仕事の残っているミリアを下がらせ、私はのんびりお茶を楽しみことにした。
『アンタは貴族の令嬢のくせにあれやこれや下々のことに手を出しすぎなんだよ。ちったあお嬢様らしくしてみちゃどうなのさ?』
窓辺で丸くなっていた輝夜がそう言ってソファに座る私の膝に飛び乗り、再び丸くなった。
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元が庶民なんだから仕方ない。あくせく働きたくはないけれど、何もしないのは嫌なんだもの。
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「ふふ、ありがとう。そうね、久しぶりにブラッシングとマッサージのフルコースをするとしましょうか」
私はインベントリから輝夜用のブラシを取り出したのだった。
久々に輝夜とまったり過ごしていた私の元へ「料理長がぶっ倒れた」と知らせが入ったのはそれから少ししてからのことだった。料理長ぉ……
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