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私の部屋
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ミリアが特別寮に来てくれるのなら、私としても心強いしありがたい。
でも、基本的に貴族がメイドを連れてくるのは禁止されているはずなんだけど……?
「本来ならメイドを個人的に伴って入寮するのは原則禁止としていますが、今回は学園側で人員が手配できませんので特例です。それに、彼女は在学中に寮での決まりごとを把握していますから、我々が一から指導しなくてもよいのでこちらとしても助かるのですよ。もちろん、一時的な措置として公爵家から派遣という形にして追加人員が確保でき次第交代することも可能です」
「ありがとうございます。ミリアが来てくれるのであれば私としても助かります。人員の交代についてはまた相談させてくださいませ」
や、やったー! ミリアなら真白達を恐れたりしないし安心だね! それに、この男子だらけの寮に女子が増えるのは大歓迎だよー!
……って、あれ? ちょっと待って?
そういえばここにはセイがいるんだった!
ミリアはいちまさん姿のおセイちゃんしか知らないのよね。
ミリアはおセイちゃんと面識があるから、お兄様のようにごまかすのは難しいだろう。近くで見たら、同一人物だとバレちゃうかも……⁉︎
チラッとセイを見ると、同じことを懸念していたようで、複雑そうに笑いかえした。
うーん、ミリアなら事情を話せば騒ぎ立てることはないと思うんだけど……後でセイに確認しようっと。
「では、そのように公爵様にお願いいたしましょうね。私から後ほどお手紙をお出ししますわ。さあ、お部屋に案内しましょうね」
ミセス・ドーラはそう言ってすっくと立ち上がった。
「は、はい!」
「じゃあ僕はそろそろ男子寮へ行かないと。ミセス・ドーラ、後はよろしくお願いします」
「ええ、おまかせくださいな」
「ちょっ、ここの管理は僕の管轄なんだけど⁉︎」
「クリステア、ミセス・ドーラにしっかり寮のことを教わるんだよ。じゃあ、また明日くるからね」
「ひどい!」
お兄様はニール先生の言葉を無視して、男子寮へ戻っていった。
ミセス・ドーラの後をついて談話室を出ると、広いホールを横切り、奥にある右側の大きな階段を登って扉の前に立った。
「こちらがクリステアさんの部屋に繋がる扉になります。登録しますから鍵をここへ差し込んでください」
私はミセス・ドーラが指し示した鍵穴に鍵を差し込んだ。
「そのまま鍵穴の上にある魔石に手を置いて魔力を流してください」
ミセス・ドーラの説明に従い、魔石に触れて魔力を流すと、魔石がポウッと淡く光った。
「これで、クリステアさんが部屋の主であるという登録ができました。続けて聖獣のお二方も登録してください。ああ、鍵は差し込んだままでね」
私が鍵を持ったままで、真白と黒銀が魔石に触れて登録を済ませた。
「ミリアが来た時は同様に登録してくださいね。ノーマンさんはご兄妹ですが、異性の身内の方は登録しないでください。クリステアさんが在室中にご招待されてお部屋に招き入れる分にはかまいませんが、防犯面を考えるとおすすめしません。談話室か応接室を利用されたほうがよいと思いますよ」
「わかりました。そうします」
お兄様だけならともかく、レイモンド殿下もついてきたら面倒だからね。
「それでは、鍵を開けてください」
私はミセス・ドーラに従い鍵を開けると
カチャリという音とともに魔石が光った。
「それで登録完了になります。今後登録者は魔石に触れて魔力を流すだけで解錠できます。登録者以外がその鍵を使っても魔力を流しても扉は開けられません。貴女が退寮する際に登録解除するまでその効果は続きます。さあ、扉を開けてください」
扉を開けると、その先にあるのは小さめのホールだった。
「この扉は登録に使用した鍵によって行き先が違います。くれぐれも鍵を無くさないようにしてくださいね」
「あの、行き先が変わるというのはどういうことでしょうか?」
「この扉には転移魔法の応用で、鍵によって登録されている各部屋へ繋がる仕掛けになっているのですよ。違う鍵を使ってこの扉を開いても違う部屋に繋がるだけなのです」
「それはすごいですね……!」
それって、行き先限定だけど某アニメのドアみたいじゃない?
「不審者の侵入を避けるためですよ。ちなみに、窓には結界魔法が施されていますが、窓を開けている時は効果は薄れますので気をつけてくださいね」
おお……防犯対策バッチリって感じ。
ミセス・ドーラの先導で奥へ進んでいくと、いくつかドアがあり「ここはバスルーム、ここはトイレで……」と簡単に説明を受けた。
「ここが貴女の私室で、奥が寝室です」
奥にある扉を開くと、そこは広々とした部屋だった。
「聖獣の皆様も寛いでいただけるように広めになっています。寝室もそれなりに広いですが、別室を聖獣様用にすることもできますよ」
なんと、聖獣のための部屋もあるらしい。
まあ、真白と黒銀は寝る時も一緒だから不要なんだけどね。
「あの……その別室をミリアの部屋にしても良いでしょうか」
「メイド用にしては広すぎるかもしれませんが……貴女の専属ということであれば問題ないでしょう。メイド用の使用人棟では好奇心から群がる者もいるでしょうから」
ああ、聖獣の主人の部屋はどんななのかとか、興味津々で聞いてくる人とかいそうだものね。そういうことなら是が非でもここにいてもらわないとだね。
「ありがとうございます」
「荷物はここにまとめてあります。ミリアがくるまでは、当面必要なものだけ出しておきなさいね。では私は女子寮に戻りますが、何かあればこの通信機に魔力を流してください。使い方はわかりますか?」
ミセス・ドーラが見せてくれたのは自宅のお父様の部屋にある通信機と同じものだった。
「はい、わかります」
「こちらがニール先生の部屋、こちらが私の部屋に繋がりますよ。それでは、私はこれで失礼しますね」
「はい。ミセス・ドーラ、ありがとうございました」
ミセス・ドーラが部屋を出るのを確認してから、私は部屋の中を探検することにしたのだった。
でも、基本的に貴族がメイドを連れてくるのは禁止されているはずなんだけど……?
「本来ならメイドを個人的に伴って入寮するのは原則禁止としていますが、今回は学園側で人員が手配できませんので特例です。それに、彼女は在学中に寮での決まりごとを把握していますから、我々が一から指導しなくてもよいのでこちらとしても助かるのですよ。もちろん、一時的な措置として公爵家から派遣という形にして追加人員が確保でき次第交代することも可能です」
「ありがとうございます。ミリアが来てくれるのであれば私としても助かります。人員の交代についてはまた相談させてくださいませ」
や、やったー! ミリアなら真白達を恐れたりしないし安心だね! それに、この男子だらけの寮に女子が増えるのは大歓迎だよー!
……って、あれ? ちょっと待って?
そういえばここにはセイがいるんだった!
ミリアはいちまさん姿のおセイちゃんしか知らないのよね。
ミリアはおセイちゃんと面識があるから、お兄様のようにごまかすのは難しいだろう。近くで見たら、同一人物だとバレちゃうかも……⁉︎
チラッとセイを見ると、同じことを懸念していたようで、複雑そうに笑いかえした。
うーん、ミリアなら事情を話せば騒ぎ立てることはないと思うんだけど……後でセイに確認しようっと。
「では、そのように公爵様にお願いいたしましょうね。私から後ほどお手紙をお出ししますわ。さあ、お部屋に案内しましょうね」
ミセス・ドーラはそう言ってすっくと立ち上がった。
「は、はい!」
「じゃあ僕はそろそろ男子寮へ行かないと。ミセス・ドーラ、後はよろしくお願いします」
「ええ、おまかせくださいな」
「ちょっ、ここの管理は僕の管轄なんだけど⁉︎」
「クリステア、ミセス・ドーラにしっかり寮のことを教わるんだよ。じゃあ、また明日くるからね」
「ひどい!」
お兄様はニール先生の言葉を無視して、男子寮へ戻っていった。
ミセス・ドーラの後をついて談話室を出ると、広いホールを横切り、奥にある右側の大きな階段を登って扉の前に立った。
「こちらがクリステアさんの部屋に繋がる扉になります。登録しますから鍵をここへ差し込んでください」
私はミセス・ドーラが指し示した鍵穴に鍵を差し込んだ。
「そのまま鍵穴の上にある魔石に手を置いて魔力を流してください」
ミセス・ドーラの説明に従い、魔石に触れて魔力を流すと、魔石がポウッと淡く光った。
「これで、クリステアさんが部屋の主であるという登録ができました。続けて聖獣のお二方も登録してください。ああ、鍵は差し込んだままでね」
私が鍵を持ったままで、真白と黒銀が魔石に触れて登録を済ませた。
「ミリアが来た時は同様に登録してくださいね。ノーマンさんはご兄妹ですが、異性の身内の方は登録しないでください。クリステアさんが在室中にご招待されてお部屋に招き入れる分にはかまいませんが、防犯面を考えるとおすすめしません。談話室か応接室を利用されたほうがよいと思いますよ」
「わかりました。そうします」
お兄様だけならともかく、レイモンド殿下もついてきたら面倒だからね。
「それでは、鍵を開けてください」
私はミセス・ドーラに従い鍵を開けると
カチャリという音とともに魔石が光った。
「それで登録完了になります。今後登録者は魔石に触れて魔力を流すだけで解錠できます。登録者以外がその鍵を使っても魔力を流しても扉は開けられません。貴女が退寮する際に登録解除するまでその効果は続きます。さあ、扉を開けてください」
扉を開けると、その先にあるのは小さめのホールだった。
「この扉は登録に使用した鍵によって行き先が違います。くれぐれも鍵を無くさないようにしてくださいね」
「あの、行き先が変わるというのはどういうことでしょうか?」
「この扉には転移魔法の応用で、鍵によって登録されている各部屋へ繋がる仕掛けになっているのですよ。違う鍵を使ってこの扉を開いても違う部屋に繋がるだけなのです」
「それはすごいですね……!」
それって、行き先限定だけど某アニメのドアみたいじゃない?
「不審者の侵入を避けるためですよ。ちなみに、窓には結界魔法が施されていますが、窓を開けている時は効果は薄れますので気をつけてくださいね」
おお……防犯対策バッチリって感じ。
ミセス・ドーラの先導で奥へ進んでいくと、いくつかドアがあり「ここはバスルーム、ここはトイレで……」と簡単に説明を受けた。
「ここが貴女の私室で、奥が寝室です」
奥にある扉を開くと、そこは広々とした部屋だった。
「聖獣の皆様も寛いでいただけるように広めになっています。寝室もそれなりに広いですが、別室を聖獣様用にすることもできますよ」
なんと、聖獣のための部屋もあるらしい。
まあ、真白と黒銀は寝る時も一緒だから不要なんだけどね。
「あの……その別室をミリアの部屋にしても良いでしょうか」
「メイド用にしては広すぎるかもしれませんが……貴女の専属ということであれば問題ないでしょう。メイド用の使用人棟では好奇心から群がる者もいるでしょうから」
ああ、聖獣の主人の部屋はどんななのかとか、興味津々で聞いてくる人とかいそうだものね。そういうことなら是が非でもここにいてもらわないとだね。
「ありがとうございます」
「荷物はここにまとめてあります。ミリアがくるまでは、当面必要なものだけ出しておきなさいね。では私は女子寮に戻りますが、何かあればこの通信機に魔力を流してください。使い方はわかりますか?」
ミセス・ドーラが見せてくれたのは自宅のお父様の部屋にある通信機と同じものだった。
「はい、わかります」
「こちらがニール先生の部屋、こちらが私の部屋に繋がりますよ。それでは、私はこれで失礼しますね」
「はい。ミセス・ドーラ、ありがとうございました」
ミセス・ドーラが部屋を出るのを確認してから、私は部屋の中を探検することにしたのだった。
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