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なんとかなった……かな?
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私たちは学園長室を出て、控えの間で待機していた秘書のパメラさんに会釈をして廊下に出た。
エレベーターに乗り、下の階のボタンを押すとガタン、と下降しはじめる。
「……お父様、お母様。本日はありがとうございました。そして、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
私がしょげながら謝罪すると、お父様はゴホン、と軽く咳払いをして言った。
「其方が気にすることはない。こうなることは予めわかっていたことだ……まあ、予想よりも大分早かったがな」
「そうよ、クリステア。遅かれ早かれ呼び出しがあるとお父様から聞かされていましたからね。確かにびっくりするほど早かったけれど、いつ知られるかと気を揉んでいるよりも良かったのじゃないかしら?」
叱られるかと思いきや、あっさりとした返答で拍子抜けしてしまった。
「学園の門のところにニール先生がいらっしゃいまして……先生の使役獣が黒銀たちの正体に気づいてしまい、どうしようもなくて……」
「ああ、ミセス・ドーラからの手紙で大まかな経緯は聞いている。ミリアのことも彼女の進言らしいな。後で礼を言わねば」
「ええ。あの方の気配りには本当に助けられますわね」
おお、ミセス・ドーラのお陰でお小言回避できたっぽい⁉︎
ミセス・ドーラ、ありがとうございます!
「しかし。あの……ニールだったか? あれはなんなのだ。あんな教師がいたとは……」
お父様は先ほどのニール先生の言動を思い出してしかめ面になった。
「あなた、私たちの在学中にマーレン先生と一緒に魔獣や聖獣についてよく議論していた学生がいましたわ。恐らく、あの時の学生ではないかしら」
「うん? ……そういえば、小さな魔獣を捕まえては学園に持ち込む問題児がいたな。あれか……」
うひゃー……ニール先生ってば、学生時代からそんな感じだったのか。
「当時は聖獣や魔獣の研究に没頭しすぎて、研究棟で魔獣の世話をしながら暮らす変人と聞いていたが……あれが教師になったのか。クリステア、あまり関わらないようにしなさい」
「……あの、ニール先生は特別寮の寮監です。関わらないわけにはいかないかと存じます」
「……あれが? 特別寮の寮監だと?」
「はい。魔獣や聖獣と契約している者は特別寮に入るのでしょう? ニール先生はここ何年かずっと特別寮にお一人で生活されていたそうです」
「……何か相談事があれば基本ミセス・ドーラにするように。あれには極力近づかないように気をつけなさい」
「はい」
それはもう全力で頑張りたいです。
「そういえばお父様。先ほどレオン様の許可を得ているとおっしゃっいましたが、大丈夫なのですか?」
明日陛下に報告した後でレオン様に確認すればすぐにバレることなのに。
「問題ない。レオン様からの提案だ」
「えっ」
レオン様が?
「昨日、ヤハトゥールからの留学生が聖獣契約者だと報告を受けた後、レオン様がいらしたのだ」
レオン様が「遅かれ早かれあいつらのことも知られるだろう。俺に相談したことにしておけ。幼い身で大人の事情に振り回されるのはかわいそうだろ。俺が黙っとけって言ったことにしといてやるから」とおっしゃったそうだ。
えっ、なにその男前発言。ほれてまうやろ……!
「とはいえ、レオン様だけに押し付けるつもりはない。私の判断で報告しないと決めたのだからな」
そういってお父様は私の頭を撫でた。
「お父様……ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
「うむ。後のことはレオン様と私にまかせておくがいい」
「はい」
やったー! これで国への報告はなんとかなりそう!
ホッとしていると、背後からギリッと歯軋りが聞こえた。
「……彼奴め。余計な事を」
「やっぱり、あいつ、きらい」
はっ! 黒銀と真白から負のオーラが。
「ま、まあまあ。レオン様のお陰で助かったじゃない。私もお父様も貴方たちのことを黙っていたのを怒られなくて済むもの」
「それは、そうだが……主を喜ばせるのは我らでありたいのだ」
「うん。くりすてあのためにがんばるのがおれたちのやくめだからね」
「……ありがとう。二人とも、いつも頑張ってくれているのはわかってるし、感謝してるわ。でも、今回はレオン様のご厚意に甘えましょう」
「……うむ」
「……うん」
うう、しょんぼりしてる彼らをなでなでしてあげたいところだけど、今は人型だし、お父様やお母様もいるからなあ。
後で元気付けるためにもしっかりブラッシングしてあげなくちゃ。
エレベーターから出ると、お父様たちが初めに来た時とは違う方へと向かうので不思議に思いながらもついていくと、豪華な設えのホールに着いた。
なるはど、はじめに通ったのは関係者用の通用口で、ここは恐らく来客用の出入り口なのだろう。そこを出ると、車寄せに我が家の馬車が待機していた。
「ミリア!」
扉の前でミリアが待っていたので思わず駆け寄ると、ミリアが嬉しそうに柔らかな笑みを浮かべた。
「クリステア様。大変でしたね」
「ええ。でもきっと大丈夫。ミリアも来てくれたし、心強いわ」
「私もクリステア様のお側にいられるのは嬉しいです」
ミリアとふふっと笑いあい、私たちは馬車に乗り込んだ。
エレベーターに乗り、下の階のボタンを押すとガタン、と下降しはじめる。
「……お父様、お母様。本日はありがとうございました。そして、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
私がしょげながら謝罪すると、お父様はゴホン、と軽く咳払いをして言った。
「其方が気にすることはない。こうなることは予めわかっていたことだ……まあ、予想よりも大分早かったがな」
「そうよ、クリステア。遅かれ早かれ呼び出しがあるとお父様から聞かされていましたからね。確かにびっくりするほど早かったけれど、いつ知られるかと気を揉んでいるよりも良かったのじゃないかしら?」
叱られるかと思いきや、あっさりとした返答で拍子抜けしてしまった。
「学園の門のところにニール先生がいらっしゃいまして……先生の使役獣が黒銀たちの正体に気づいてしまい、どうしようもなくて……」
「ああ、ミセス・ドーラからの手紙で大まかな経緯は聞いている。ミリアのことも彼女の進言らしいな。後で礼を言わねば」
「ええ。あの方の気配りには本当に助けられますわね」
おお、ミセス・ドーラのお陰でお小言回避できたっぽい⁉︎
ミセス・ドーラ、ありがとうございます!
「しかし。あの……ニールだったか? あれはなんなのだ。あんな教師がいたとは……」
お父様は先ほどのニール先生の言動を思い出してしかめ面になった。
「あなた、私たちの在学中にマーレン先生と一緒に魔獣や聖獣についてよく議論していた学生がいましたわ。恐らく、あの時の学生ではないかしら」
「うん? ……そういえば、小さな魔獣を捕まえては学園に持ち込む問題児がいたな。あれか……」
うひゃー……ニール先生ってば、学生時代からそんな感じだったのか。
「当時は聖獣や魔獣の研究に没頭しすぎて、研究棟で魔獣の世話をしながら暮らす変人と聞いていたが……あれが教師になったのか。クリステア、あまり関わらないようにしなさい」
「……あの、ニール先生は特別寮の寮監です。関わらないわけにはいかないかと存じます」
「……あれが? 特別寮の寮監だと?」
「はい。魔獣や聖獣と契約している者は特別寮に入るのでしょう? ニール先生はここ何年かずっと特別寮にお一人で生活されていたそうです」
「……何か相談事があれば基本ミセス・ドーラにするように。あれには極力近づかないように気をつけなさい」
「はい」
それはもう全力で頑張りたいです。
「そういえばお父様。先ほどレオン様の許可を得ているとおっしゃっいましたが、大丈夫なのですか?」
明日陛下に報告した後でレオン様に確認すればすぐにバレることなのに。
「問題ない。レオン様からの提案だ」
「えっ」
レオン様が?
「昨日、ヤハトゥールからの留学生が聖獣契約者だと報告を受けた後、レオン様がいらしたのだ」
レオン様が「遅かれ早かれあいつらのことも知られるだろう。俺に相談したことにしておけ。幼い身で大人の事情に振り回されるのはかわいそうだろ。俺が黙っとけって言ったことにしといてやるから」とおっしゃったそうだ。
えっ、なにその男前発言。ほれてまうやろ……!
「とはいえ、レオン様だけに押し付けるつもりはない。私の判断で報告しないと決めたのだからな」
そういってお父様は私の頭を撫でた。
「お父様……ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
「うむ。後のことはレオン様と私にまかせておくがいい」
「はい」
やったー! これで国への報告はなんとかなりそう!
ホッとしていると、背後からギリッと歯軋りが聞こえた。
「……彼奴め。余計な事を」
「やっぱり、あいつ、きらい」
はっ! 黒銀と真白から負のオーラが。
「ま、まあまあ。レオン様のお陰で助かったじゃない。私もお父様も貴方たちのことを黙っていたのを怒られなくて済むもの」
「それは、そうだが……主を喜ばせるのは我らでありたいのだ」
「うん。くりすてあのためにがんばるのがおれたちのやくめだからね」
「……ありがとう。二人とも、いつも頑張ってくれているのはわかってるし、感謝してるわ。でも、今回はレオン様のご厚意に甘えましょう」
「……うむ」
「……うん」
うう、しょんぼりしてる彼らをなでなでしてあげたいところだけど、今は人型だし、お父様やお母様もいるからなあ。
後で元気付けるためにもしっかりブラッシングしてあげなくちゃ。
エレベーターから出ると、お父様たちが初めに来た時とは違う方へと向かうので不思議に思いながらもついていくと、豪華な設えのホールに着いた。
なるはど、はじめに通ったのは関係者用の通用口で、ここは恐らく来客用の出入り口なのだろう。そこを出ると、車寄せに我が家の馬車が待機していた。
「ミリア!」
扉の前でミリアが待っていたので思わず駆け寄ると、ミリアが嬉しそうに柔らかな笑みを浮かべた。
「クリステア様。大変でしたね」
「ええ。でもきっと大丈夫。ミリアも来てくれたし、心強いわ」
「私もクリステア様のお側にいられるのは嬉しいです」
ミリアとふふっと笑いあい、私たちは馬車に乗り込んだ。
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