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私の侍女は有能です!
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まったく、白虎様は何かと理由をつけてはごはんをたかってくるんだから!
大体、貸しって何よ? ニール先生に聞かれないように配慮してくれたのは確かにありがたいけれど、女装……じゃない、変装していたのがバレたら困るのはセイなんだからね?
そりゃあ「女装したセイをしょっちゅう領地の我が家に連れ込んでいた」なんて破廉恥且ついかがわしい誤解を招く事態は避けられたと思えば、そうかもしれないけど……
ぷんすこ怒りながら自室に戻ると、ミリアが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、クリステア様。そろそろ夕食のお時間なので談話室にお迎えに行かなくてはと思っていたところですよ」
「ええ、私もそう思ってミリアと輝夜を迎えにきたの」
……セーフ。ニアミスは避けられた。
「それから……あのね、ミリア。食事に向かう前に伝えておかなくちゃいけないことがあって、それで戻ってきたの」
「私に……ですか? なんでしょう?」
ミリアがこてん、と首を傾げる。
「ええと、この特別寮にはニール先生と私の他にもう一人契約者がいるんだけど……」
「はい、セイ様ですよね?」
「えっ⁉︎」
どうしてミリアがそのことを知ってるの⁉︎
私が驚いていると、ミリアが微笑む。
「セイ様も学園に入学すると伺っておりましたし、白虎様や他の聖獣様がセイ様と契約していらっしゃいましたから、クリステア様と同じ特別寮になると思っておりました」
「あ……そっか、そうよね」
ミリアはセイがアデリア学園へ留学しにきたことをはじめから知ってたんだった。
加えて、白虎様たち聖獣……ヤハトゥールでは神獣と呼ばれている彼らと契約していることを知っていたんだから、当然特別寮に入るものと思っていたのね。
でも、一番肝心の「セイが実は男の子である」ことは知らないはず。
「ミリアの予想通り、もう一人はセイなんだけど……実は、セイは……男の子なの!」
「……それも、存じておりました」
「……え?」
「もちろん、当初は女の方と思っておりました。ですが、ふとした表情や仕草が少年らしいものでしたから、もしかして……と注意深く見ておりました」
えええ……私なんて、転移魔法でうっかり着替え中のセイのところへ行っちゃって、褌姿を見てようやくわかったのに⁉︎
「……よくわかったわね」
「ふふ。私の実家は大家族で、弟妹の世話もよくしていましたから、なんとなくですけどね」
「そうなんだ……」
「一応気にかけて見ておりましたが、クリステア様に不名誉な噂にならないように配慮してあの姿でいらしていたのでしょう? それに、クリステア様が故郷を離れて過ごすセイ様を心配なさっているのはよくわかりましたし、ましてや黒銀様と真白様がお側にいて変なことにはならないだろうと信じておりましたから」
「うむ。ミリアよ、よく言った」
「うん! おれたちがついてたら、だいじょうぶ、だよ!」
ミリアが笑顔で言うと、黒銀と真白がうんうん、と頷き相槌を打った。ちょっと、二人ともにやにやして嬉しそうなの隠し切れてないんですけど?
それにしても、ミリアの観察力はすごい。
「……そっか。ありがとう、ミリア」
私のことを信じてくれていたから、見守っていてくれたのね。
「正直申し上げますと、もっと早く打ち明けていただきたかったなと思いますね。仲間外れのようでさみしかったですから」
「あうぅ……ごめんなさい。セイのことは秘密にしていたから、相談できなかったの」
ふと悲しそうな表情を浮かべたミリアに、私は慌てて謝る。
「ふふ、わかっております。お友達との約束だったのでしょう? 私はそんなお優しいクリステア様が大好きなのです」
「もう……ミリアったら。ごめんね、それから、ありがとう」
いたずらっぽく笑うミリアにホッとした私は、もう一度謝罪と礼を言い、セイのことはお家の事情で変装をしなければならなかったことや、お兄様には領地にいたセイは従兄妹と説明していることを伝えた。
「かしこまりました。それにしてもよかったですね」
「え?」
「仲の良いお友達とこうして学園で過ごせるようになったことです。心の許せる友人と共に過ごせる学生時代は何ものにも変えがたい価値ある時間になると思いますよ」
ミリアはにっこりと笑ってそう言うと、夕食に向かいましょう、と促した。
「ええ、そうね……そうよね」
セイや白虎様たち、そしてマリエルちゃん。これからの学園生活が楽しみだ。
私はワクワクした気持ちで軽くスキップしつつ夕食のために部屋を出ようと扉に足を向けた。
『ちょっと待ちな!』
「えっ?」
そんな私を引き止める小さな黒い影。
「どうしたの、輝夜。ご飯食べに行くわよ?」
『行くわよ、じゃないよ! この建物の中にあの神獣たちがいるだって⁉︎ そんなのアタシゃ聞いてないよ⁉︎』
「え……だって、セイたちが学園に行くことは知ってたでしょう? 私もまさか同じ寮になるとは思わなかったけど」
『ああもう! こんなことなら屋敷で待ってりゃ良かった! あんなおっかないのと同じ建物で暮らすとか!』
ああ……そういえば、輝夜は白虎様や朱雀様をかなり恐れていたんだっけ。
領地の屋敷でセイたちが来た時はどこかに雲隠れしてたものね。
「まあまあ。おっかないなんてことないわよ。この際だから仲良くしていただいたらいいじゃないの。さ、行きましょう」
『やだったらやだよ! アタシはここから一歩も出ないからねッ』
輝夜はそう言うと、シュタタターッと奥の部屋へ走り去ってしまった。
「もう……そんなに恐れることないのに。仕方ないわね、輝夜のごはんは後で備蓄から出してあげましょう」
きっとベッドの下や家具の隙間に逃げ込んだであろう輝夜を引きずり出してまで連れて行くのは酷だと思い、私は諦めて部屋を出たのだった。
---------------------------
先日、近況でも告知いたしましたが、現在四巻の書籍化が進行中です。
それに伴い7月15日頃に該当話を引き下げ予定です。
その他詳細については、近況ページやTwitterにて情報解禁、またはわかり次第、随時お知らせ予定ですので、よろしくお願いいたします( ´ ▽ ` )
あともうひと頑張り!٩( 'ω' )وファイッオー!
大体、貸しって何よ? ニール先生に聞かれないように配慮してくれたのは確かにありがたいけれど、女装……じゃない、変装していたのがバレたら困るのはセイなんだからね?
そりゃあ「女装したセイをしょっちゅう領地の我が家に連れ込んでいた」なんて破廉恥且ついかがわしい誤解を招く事態は避けられたと思えば、そうかもしれないけど……
ぷんすこ怒りながら自室に戻ると、ミリアが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、クリステア様。そろそろ夕食のお時間なので談話室にお迎えに行かなくてはと思っていたところですよ」
「ええ、私もそう思ってミリアと輝夜を迎えにきたの」
……セーフ。ニアミスは避けられた。
「それから……あのね、ミリア。食事に向かう前に伝えておかなくちゃいけないことがあって、それで戻ってきたの」
「私に……ですか? なんでしょう?」
ミリアがこてん、と首を傾げる。
「ええと、この特別寮にはニール先生と私の他にもう一人契約者がいるんだけど……」
「はい、セイ様ですよね?」
「えっ⁉︎」
どうしてミリアがそのことを知ってるの⁉︎
私が驚いていると、ミリアが微笑む。
「セイ様も学園に入学すると伺っておりましたし、白虎様や他の聖獣様がセイ様と契約していらっしゃいましたから、クリステア様と同じ特別寮になると思っておりました」
「あ……そっか、そうよね」
ミリアはセイがアデリア学園へ留学しにきたことをはじめから知ってたんだった。
加えて、白虎様たち聖獣……ヤハトゥールでは神獣と呼ばれている彼らと契約していることを知っていたんだから、当然特別寮に入るものと思っていたのね。
でも、一番肝心の「セイが実は男の子である」ことは知らないはず。
「ミリアの予想通り、もう一人はセイなんだけど……実は、セイは……男の子なの!」
「……それも、存じておりました」
「……え?」
「もちろん、当初は女の方と思っておりました。ですが、ふとした表情や仕草が少年らしいものでしたから、もしかして……と注意深く見ておりました」
えええ……私なんて、転移魔法でうっかり着替え中のセイのところへ行っちゃって、褌姿を見てようやくわかったのに⁉︎
「……よくわかったわね」
「ふふ。私の実家は大家族で、弟妹の世話もよくしていましたから、なんとなくですけどね」
「そうなんだ……」
「一応気にかけて見ておりましたが、クリステア様に不名誉な噂にならないように配慮してあの姿でいらしていたのでしょう? それに、クリステア様が故郷を離れて過ごすセイ様を心配なさっているのはよくわかりましたし、ましてや黒銀様と真白様がお側にいて変なことにはならないだろうと信じておりましたから」
「うむ。ミリアよ、よく言った」
「うん! おれたちがついてたら、だいじょうぶ、だよ!」
ミリアが笑顔で言うと、黒銀と真白がうんうん、と頷き相槌を打った。ちょっと、二人ともにやにやして嬉しそうなの隠し切れてないんですけど?
それにしても、ミリアの観察力はすごい。
「……そっか。ありがとう、ミリア」
私のことを信じてくれていたから、見守っていてくれたのね。
「正直申し上げますと、もっと早く打ち明けていただきたかったなと思いますね。仲間外れのようでさみしかったですから」
「あうぅ……ごめんなさい。セイのことは秘密にしていたから、相談できなかったの」
ふと悲しそうな表情を浮かべたミリアに、私は慌てて謝る。
「ふふ、わかっております。お友達との約束だったのでしょう? 私はそんなお優しいクリステア様が大好きなのです」
「もう……ミリアったら。ごめんね、それから、ありがとう」
いたずらっぽく笑うミリアにホッとした私は、もう一度謝罪と礼を言い、セイのことはお家の事情で変装をしなければならなかったことや、お兄様には領地にいたセイは従兄妹と説明していることを伝えた。
「かしこまりました。それにしてもよかったですね」
「え?」
「仲の良いお友達とこうして学園で過ごせるようになったことです。心の許せる友人と共に過ごせる学生時代は何ものにも変えがたい価値ある時間になると思いますよ」
ミリアはにっこりと笑ってそう言うと、夕食に向かいましょう、と促した。
「ええ、そうね……そうよね」
セイや白虎様たち、そしてマリエルちゃん。これからの学園生活が楽しみだ。
私はワクワクした気持ちで軽くスキップしつつ夕食のために部屋を出ようと扉に足を向けた。
『ちょっと待ちな!』
「えっ?」
そんな私を引き止める小さな黒い影。
「どうしたの、輝夜。ご飯食べに行くわよ?」
『行くわよ、じゃないよ! この建物の中にあの神獣たちがいるだって⁉︎ そんなのアタシゃ聞いてないよ⁉︎』
「え……だって、セイたちが学園に行くことは知ってたでしょう? 私もまさか同じ寮になるとは思わなかったけど」
『ああもう! こんなことなら屋敷で待ってりゃ良かった! あんなおっかないのと同じ建物で暮らすとか!』
ああ……そういえば、輝夜は白虎様や朱雀様をかなり恐れていたんだっけ。
領地の屋敷でセイたちが来た時はどこかに雲隠れしてたものね。
「まあまあ。おっかないなんてことないわよ。この際だから仲良くしていただいたらいいじゃないの。さ、行きましょう」
『やだったらやだよ! アタシはここから一歩も出ないからねッ』
輝夜はそう言うと、シュタタターッと奥の部屋へ走り去ってしまった。
「もう……そんなに恐れることないのに。仕方ないわね、輝夜のごはんは後で備蓄から出してあげましょう」
きっとベッドの下や家具の隙間に逃げ込んだであろう輝夜を引きずり出してまで連れて行くのは酷だと思い、私は諦めて部屋を出たのだった。
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先日、近況でも告知いたしましたが、現在四巻の書籍化が進行中です。
それに伴い7月15日頃に該当話を引き下げ予定です。
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