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ふわっとトロッと
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「あ、あの、クリステア様。これで大丈夫でしょうか……?」
私たちのやり取りを見ていたミリアがおずおずとくし切りにした玉ねぎを適量入れたボウルを差し出した。
「ありがとう、ミリア。ちょうどいい量だわ」
笑顔で受け取るとミリアはホッとした様子を見せた。
あんなやりとり見たらびっくりするし、怖かったわよね。私もだもの。
私はくし切りにしたキャベツとざく切りにしたセロリをそれぞれボウルに入れ、インベントリに収納していたコンソメのスープストックを取り出した。
「そしてこれを使わないとね」
そう言ってさらにインベントリから取り出したのはエリスフィード家謹製のベーコンだ。
「おっ! それ美味いんだよなぁ!」
「ええ、風味豊かで美味しいですわよね」
「ありがとうございます。職人たちが聞いたらきっと喜びますわ」
ゴロゴロ野菜たっぷりのポトフに合うような大きさにベーコンを切り、あとは鍋に油を入れ、キャベツ以外の野菜とベーコンをよく炒めてから最後にキャベツを加える。
そうしたらスープストックを注ぎ入れて、塩胡椒を入れ煮込めば完成だ。
あとは、黒パンを薄くスライスして温めて。
あとはふわふわなオムレツでも焼いたらいいよね!
「くりすてあー。てーぶるせってぃんぐできたよ!」
「うむ。いつでも食べられるぞ」
真白と黒銀、セイも準備を終わらせていた。
よぉし、あとはニール先生が戻ってくるのを待つだけね。
私はすぐに食べられるようにとオムレツ作りにとりかかった。
オムレツはプレーンではなく、皆のリクエストでチーズ入りにすることに。
インベントリからオムレツ専用のマイフライパンと生みたて卵を取り出し、ボウルに卵を割り入れ泡立て器で混ぜ、卵液をザルで漉す。ザルで漉しておくとカラザも取れるし、卵液のキメが細かくなるからね。
人数分の卵液を漉すのは大変なので、そこはもちろん手伝ってもらった。
濡れフキンを傍に用意してから魔導コンロを起動し、熱したフライパンに入れたバターが溶けきったら適量の卵液を一気に流し入れる。
フライパンを細かく揺すりつつ、ヘラで混ぜ続けて半熟の細かいスクランブルエッグのような状態になったらフライパンを濡れフキンの上でトントンとして、フライパンの温度を少し下げる。
そして、手早くチーズを投下してから卵の縁を丁寧にこそいで、フライパンを傾けつつ手前から中央に向かって卵をたたんでいく。奥側からもたたんで、卵を奥へ詰めてからの……よっと! 卵をヘラで手前に返してっと。後は、強火でたたんだ面を固めて出来上がり!
フライパンの上を滑るようにしてオムレツがフルンッと揺れながらお皿に載ると、皆が「おおー!」と拍手してくれた。
……ちょっと、恥ずかしい。
さっとインベントリに収納して、ミリアと朱雀様を残して他の人たちは厨房から出てもらった。火を使ってるし、見られていると落ちつかないからね。
朱雀様は火を扱う場所だからと、安全対策を兼ねて側にいてくれた。
私のやり方をずっと見ていたからか、朱雀様に途中から作るのを代わってもらえたので助かったわ。人数分を一気に作るとなると、手が疲れちゃうもの。
朱雀様の作ったオムレツは、見よう見まねでやったにしては上手にできていた。
基本スペックが高いからか、やり方さえ教えたらまともな料理が作れるみたいなのでちょっと安心したよ……後は味付けの問題がクリアできたらいいわけで。
そこは今後お手伝いしている間に覚えていただくことにしよう。
セイをはじめとした四神獣の皆様の料理の腕が壊滅的なまま、自分たちだけではまともな料理が作れない、なんてことにならないようにね。過去の毒殺話なんて聞いたからには尚更だわ。
私は使命感に燃えながら、彼らに最低限のことはできるようになっていただこうと心に誓った。
程なくしてニール先生が戻ってきたので、皆で揃って食堂の席についた。
「おお、これは美味しそうだ!」
ニール先生はテーブルの上の料理を見て満面の笑顔だ。
「美味しそうだ、ではなく間違いなく美味いのだ」
「そうだよ、くりすてあのごはんはおいしいんだからね!」
これこれ、黒銀さんに真白さんや、恥ずかしいからやめなさいね?
私は二人の褒め言葉を遮るように立ち上がり厨房のカウンター前に置かれたワゴンを指して説明する。
「本日はチーズオムレツにポトフ、それから黒パンをご用意いたしました。ポトフのおかわりはあの鍋にありますから、必要な方は各自でよそってくださいね」
ミリアが給仕しますと申し出たけれど、食欲魔人、いや聖獣たち相手だと大変だろうし、ミリアも一緒に食べて欲しかったのでおかわりはセルフ式にしたのだ。
青龍様や玄武様、輝夜の分は取り分けてそれぞれの部屋に届けておいたので抜かりはない。
輝夜も食堂に来るように言ったけれど「おっかないやつらと食事なんて食べた気がしないからやだね!」と拒否されてしまった。
いつまでも引きこもってるわけにはいかないんだし、諦めが肝心だと思うんだけど。
……って、そういえばニール先生に輝夜のことを伝えていなかったんだった。
輝夜は今は猫の姿とはいえ、元は魔獣なんだから早めに相談しないと。
つい、厨房のことに夢中になってしまってすっぽりと抜けていた。
「美味しい! 本当だ、これは見事だね!」
ニール先生はオムレツを口にするや否や、目を輝かせてがっつき始めた。
「お口に合ったようでよかったですわ」
他の皆も無言で優雅に、かつすごいスピードで食べている。
私とミリアが唖然としていると、白虎様がガタッと立ち上がり、お皿を片手にポトフの入っている鍋に早足で向かった。
間髪入れずに黒銀と真白が立ち上がり、同様に鍋のほうへ。えええ……
お玉を手にしようとした白虎様の手を黒銀がガッ!っと掴み、ギギギギギ……と持ち上げた。
「……何すんだ、黒の」
「黒銀と呼ばぬか。主の料理のお代わりは我らが最初ぞ」
「あ? んな決まりはねぇだろ? それにこれは俺も作るのを手伝ってんだ。お前が後だろ」
そう言った拍子に白虎様と黒銀がガン!と額を突き合わせ睨み合いになった。
ひええ……おかわりのことなんかで聖獣大戦争とか、ほんとやめてくださいよ⁉︎
すると、穏やかでない空気の中で、真白がしれっとお玉を手にしてポトフのおかわりをよそった。
「くりすてあなら、けんかするやつに、おかわりのしかくなし! っていうよ? ばかなの?」
「「うぐっ!」」
「はっ! そ、そうよね! 真白の言う通りだわ! 寮内……いいえ、学園内での諍いはダメよ! 黒銀、おかわり禁止にするわよ?」
「なっ! 主、そんな殺生な⁉︎」
「トラ、お前もつまらん争いをするならおかわり禁止だ!」
「ちょっ! 俺もかよ⁉︎」
セイが私の言葉に続いて通告すると、二人はそろーっと離れた。
「おかわりするならちゃんと並んで譲り合うこと!」
私がそう言うと、二人は顔を見合わせて、渋々真白の後ろに並んだ。
今回は白虎様を遮った自覚があったからか、黒銀が後ろについた。
よしよし、いい子。後でブラッシングしてあげるからね。
そんな私たちを見て、ニール先生が一所懸命、なにやらメモを取っていたのはどういうことなの……?
---------------------------
9/10(木)にコミカライズ版「転生令嬢は庶民の味に飢えている」第9話が更新されております( ´ ▽ ` )
まだの方は是非お読みくださいませ~!
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そう言ってさらにインベントリから取り出したのはエリスフィード家謹製のベーコンだ。
「おっ! それ美味いんだよなぁ!」
「ええ、風味豊かで美味しいですわよね」
「ありがとうございます。職人たちが聞いたらきっと喜びますわ」
ゴロゴロ野菜たっぷりのポトフに合うような大きさにベーコンを切り、あとは鍋に油を入れ、キャベツ以外の野菜とベーコンをよく炒めてから最後にキャベツを加える。
そうしたらスープストックを注ぎ入れて、塩胡椒を入れ煮込めば完成だ。
あとは、黒パンを薄くスライスして温めて。
あとはふわふわなオムレツでも焼いたらいいよね!
「くりすてあー。てーぶるせってぃんぐできたよ!」
「うむ。いつでも食べられるぞ」
真白と黒銀、セイも準備を終わらせていた。
よぉし、あとはニール先生が戻ってくるのを待つだけね。
私はすぐに食べられるようにとオムレツ作りにとりかかった。
オムレツはプレーンではなく、皆のリクエストでチーズ入りにすることに。
インベントリからオムレツ専用のマイフライパンと生みたて卵を取り出し、ボウルに卵を割り入れ泡立て器で混ぜ、卵液をザルで漉す。ザルで漉しておくとカラザも取れるし、卵液のキメが細かくなるからね。
人数分の卵液を漉すのは大変なので、そこはもちろん手伝ってもらった。
濡れフキンを傍に用意してから魔導コンロを起動し、熱したフライパンに入れたバターが溶けきったら適量の卵液を一気に流し入れる。
フライパンを細かく揺すりつつ、ヘラで混ぜ続けて半熟の細かいスクランブルエッグのような状態になったらフライパンを濡れフキンの上でトントンとして、フライパンの温度を少し下げる。
そして、手早くチーズを投下してから卵の縁を丁寧にこそいで、フライパンを傾けつつ手前から中央に向かって卵をたたんでいく。奥側からもたたんで、卵を奥へ詰めてからの……よっと! 卵をヘラで手前に返してっと。後は、強火でたたんだ面を固めて出来上がり!
フライパンの上を滑るようにしてオムレツがフルンッと揺れながらお皿に載ると、皆が「おおー!」と拍手してくれた。
……ちょっと、恥ずかしい。
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私は使命感に燃えながら、彼らに最低限のことはできるようになっていただこうと心に誓った。
程なくしてニール先生が戻ってきたので、皆で揃って食堂の席についた。
「おお、これは美味しそうだ!」
ニール先生はテーブルの上の料理を見て満面の笑顔だ。
「美味しそうだ、ではなく間違いなく美味いのだ」
「そうだよ、くりすてあのごはんはおいしいんだからね!」
これこれ、黒銀さんに真白さんや、恥ずかしいからやめなさいね?
私は二人の褒め言葉を遮るように立ち上がり厨房のカウンター前に置かれたワゴンを指して説明する。
「本日はチーズオムレツにポトフ、それから黒パンをご用意いたしました。ポトフのおかわりはあの鍋にありますから、必要な方は各自でよそってくださいね」
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「……何すんだ、黒の」
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「あ? んな決まりはねぇだろ? それにこれは俺も作るのを手伝ってんだ。お前が後だろ」
そう言った拍子に白虎様と黒銀がガン!と額を突き合わせ睨み合いになった。
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すると、穏やかでない空気の中で、真白がしれっとお玉を手にしてポトフのおかわりをよそった。
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「「うぐっ!」」
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そんな私たちを見て、ニール先生が一所懸命、なにやらメモを取っていたのはどういうことなの……?
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