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有意義なランチタイム
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学園生活が始まって数週間が過ぎた。
カフェテリアで売り出されたギュードンは安価で美味しく、食べると力が湧くと評判になった。
特に騎士コースの生徒たちが訓練後にお腹を空かせて大挙してくることが増えたそう。
ローストビーフは部位的に割高になるけれど、一頭まるまる買い上げて、解体は魔物学や魔導具コースを選択している生徒がアルバイトで行い、肉以外の素材を報酬として市場より安価で売ったりして上手く価格を抑えているそうな。
それに、ローストビーフは一品として出す他にサラダやサンドイッチなど、ギュードンとは違い色々と変化させて提供することで特別感を出している模様。
「……それで、これが噂のローストビーフサンドです。テイクアウトもできるから人気なんだそうですよ」
マリエルちゃんは私の友人としてカフェテリアでは知られていて、一人一セットの限定販売のところを「クリステアさんや聖獣の皆さんと一緒にいただくのでぜひとも人数分を」と伝えたらどっさりと渡されたそうだ。タダで。
受け取りに行ったマリエルちゃんとセイは二人では持ち切れないと急遽白虎様を呼んで転移で特別寮に戻ってきたのだった。
いや、料理長。これだけの量なんだから、そこはちゃんとお金とろうよ……
「私も一応お金は払いますって言ったんですけど、クリステアさんがなかなかお店にいらっしゃらないし、聖獣の皆様にもこの機会にぜひお試しいただきたいからって受け取ってもらえませんでした」
あー……VIP扱いが面倒だから近寄らなかったせいもあるのか。
しかたない、ここはありがたくいただくとして、今度アレンジレシピのヒントでも提供するとしよう。
「それではいただきましょう」
ローストビーフサンドは聖獣の皆様も納得の美味しさでした。
「午前中は一般教養で授業免除だったけど、午後は魔法学でしたっけ?」
「そうね。今日は実技だから実習棟に行かなきゃ」
ミリアに食後の紅茶を淹れてもらい、まったりしつつ答える。
魔法学は相変わらず先生の助手を務めながら受けているのだけど、他の生徒の練度を見て、自分の魔力量や魔法の使い方がいかにデタラメだったのかよくわかったわ。
私、魔法の使い方、雑すぎぃ……!
魔力量が多い私は、イメージで魔法を発動できるのをいいことに魔力が垂れ流しだったみたいで、その分威力が増していたのだ。
同級生たちが自分の持つ魔力で魔法を発動させるのに四苦八苦しているのを見て、これではいけないと猛省し、威力を抑えて魔力を発動できるようになろうと思った。
「いや……主の場合、ある程度魔力を放出せねばならんのではないか?」
「うん、そうだね」
「確かに。お嬢はある程度発散させるべきだろ」
「え?」
私の決意表明を聞いた黒銀と真白、そして白虎様にに指摘された。なんでや。
「主は体内に内包している魔力もさることながら、取り込む魔力も他の者よりはるかに多いのだ」
「取り込む?」
黒銀の説明によると、人間をはじめとする生き物は様々なものから魔力の元となるものを得ているそうだ。
植物は大気や大地、水などから。動物は魔力を含んだ植物や水、それらを取り込んだ動物から。その動物が死んで朽ちるとその魔力は大地に戻り……要は前世で言うところの食物連鎖みたいに魔力が循環されている感じかしら。
なるほど、昔から魔力枯渇予防に「食べる」というのは方法として正しかったのね。
「主は捕食によって得る魔力の他に、大気などからも無意識に魔力を取り込み精製しておるのだ」
「……はい?」
「くりすてあはいろんなものからまりょくをとりこんでるみたいだよ?」
「え? そうなの?」
「うむ、それゆえ幼い頃は己の器以上の魔力を体内に留めきれず暴走しておったのだろう」
「ひえぇ……クリステアさん、すごかったんですね……」
なんと。私の魔力量が多いのはあらゆるものから魔力を取り込んでいたかららしい。
普通なら赤ん坊のうちはミルクや離乳食から得る魔力だけだから魔力量は少ないのが当たり前なんだけど、私の場合、大気中からでも魔力を取り込んでいたからキャパオーバーで暴走を起こしていた……と。
魔力量が多いのは単なる体質だと考えられてきたけど、魔力の取り込みすぎが原因だとは……
「今は取り込みすぎた魔力を上手く放出しておるので安定しているのだろう。精度を高めるのは良いことだが、魔力を抑えすぎるとまた暴走しかねないのでほどほどにしたほうがよかろう」
「だね」
うーむ、決意した途端、出鼻を挫かれてしまった。
「まーお嬢の場合、魔力の放出の仕方が雑なのは間違いないから、コントロールできるにこしたこたないけどな」
白虎様……言ってることは正論だけど、言い方ァ!
「トラ、お前はもう少し口の利き方を考えんか!」
「いっでぇ!」
セイの鉄扇制裁が炸裂した。痛そう。
うーん、精度を高めつつ、頻度を上げて魔力を放出したらいいのかしらね。
今後の魔力の扱いに悩んでいると、黒銀がカップを置いて私を見た。
「それに、主の魔力は料理にも溶け込んでおるので、我らとしては抑えるのは好ましくないな」
「うん、くりすてあのまりょくのこもったりょうりはおいしいもんね」
「あー、わかる! あれは大事だな!」
「そうですわね。あれが有ると無いとではかなり違いますものね」
「そ、そうなの……?」
そういえばそんなことを前にも言っていたっけ。
「料理人として大成しているものは、おそらく料理に魔力を込めるのが上手いものが多いのだと我は思うぞ。無論、魔力の相性や味の良し悪しもあるが……」
確かに、私が料理を始める前の我が家の料理はくどかったけれど、皆特に不満なく食べていたような気がする。
私のあっさりめのレシピが我が家に浸透した後でも魔力的に問題なかったのは、それもあるのかしら?
なかなか興味深い話だわ。
とりあえずお父様に相談してみよう。
料理で魔力を効率よく回復する方法なんて、貴族にとって貴重な情報だもの。
それに、生まれながら魔力量が多い子供は私のように魔力の取り込みすぎが原因という可能性があるとわかったのは朗報だわ。
昔、お父様がマーレン師に製作を依頼した魔力量を一定にするバングルみたいな魔導具を使えば、私みたいに暴走を恐れて引きこもらなきゃならない事態は避けられるかもしれない。
これは、お父様に相談した上でマーレン師に協力を仰ぐべきかもね。
「わ、クリステアさん! そろそろ行かないと」
マリエルちゃんが時計を見て慌てて立ち上がった。
「本当だ! トラたち、悪いが後片付けを……」
「あー、やっとくから早く行け。気をつけてな」
「ありがとうございます! いってきます!」
私たちはあたふたと身支度をして特別寮を飛び出し、実習棟へ向かったのだった。
---------------------------
この週末は副反応による発熱でダウンしておりました。
いやー、更新間に合ってよかった……
熱は下がったものの、身体のあちこちに痛みがあるので回復するのに時間がかかりそうです……しょんぼり。
カフェテリアで売り出されたギュードンは安価で美味しく、食べると力が湧くと評判になった。
特に騎士コースの生徒たちが訓練後にお腹を空かせて大挙してくることが増えたそう。
ローストビーフは部位的に割高になるけれど、一頭まるまる買い上げて、解体は魔物学や魔導具コースを選択している生徒がアルバイトで行い、肉以外の素材を報酬として市場より安価で売ったりして上手く価格を抑えているそうな。
それに、ローストビーフは一品として出す他にサラダやサンドイッチなど、ギュードンとは違い色々と変化させて提供することで特別感を出している模様。
「……それで、これが噂のローストビーフサンドです。テイクアウトもできるから人気なんだそうですよ」
マリエルちゃんは私の友人としてカフェテリアでは知られていて、一人一セットの限定販売のところを「クリステアさんや聖獣の皆さんと一緒にいただくのでぜひとも人数分を」と伝えたらどっさりと渡されたそうだ。タダで。
受け取りに行ったマリエルちゃんとセイは二人では持ち切れないと急遽白虎様を呼んで転移で特別寮に戻ってきたのだった。
いや、料理長。これだけの量なんだから、そこはちゃんとお金とろうよ……
「私も一応お金は払いますって言ったんですけど、クリステアさんがなかなかお店にいらっしゃらないし、聖獣の皆様にもこの機会にぜひお試しいただきたいからって受け取ってもらえませんでした」
あー……VIP扱いが面倒だから近寄らなかったせいもあるのか。
しかたない、ここはありがたくいただくとして、今度アレンジレシピのヒントでも提供するとしよう。
「それではいただきましょう」
ローストビーフサンドは聖獣の皆様も納得の美味しさでした。
「午前中は一般教養で授業免除だったけど、午後は魔法学でしたっけ?」
「そうね。今日は実技だから実習棟に行かなきゃ」
ミリアに食後の紅茶を淹れてもらい、まったりしつつ答える。
魔法学は相変わらず先生の助手を務めながら受けているのだけど、他の生徒の練度を見て、自分の魔力量や魔法の使い方がいかにデタラメだったのかよくわかったわ。
私、魔法の使い方、雑すぎぃ……!
魔力量が多い私は、イメージで魔法を発動できるのをいいことに魔力が垂れ流しだったみたいで、その分威力が増していたのだ。
同級生たちが自分の持つ魔力で魔法を発動させるのに四苦八苦しているのを見て、これではいけないと猛省し、威力を抑えて魔力を発動できるようになろうと思った。
「いや……主の場合、ある程度魔力を放出せねばならんのではないか?」
「うん、そうだね」
「確かに。お嬢はある程度発散させるべきだろ」
「え?」
私の決意表明を聞いた黒銀と真白、そして白虎様にに指摘された。なんでや。
「主は体内に内包している魔力もさることながら、取り込む魔力も他の者よりはるかに多いのだ」
「取り込む?」
黒銀の説明によると、人間をはじめとする生き物は様々なものから魔力の元となるものを得ているそうだ。
植物は大気や大地、水などから。動物は魔力を含んだ植物や水、それらを取り込んだ動物から。その動物が死んで朽ちるとその魔力は大地に戻り……要は前世で言うところの食物連鎖みたいに魔力が循環されている感じかしら。
なるほど、昔から魔力枯渇予防に「食べる」というのは方法として正しかったのね。
「主は捕食によって得る魔力の他に、大気などからも無意識に魔力を取り込み精製しておるのだ」
「……はい?」
「くりすてあはいろんなものからまりょくをとりこんでるみたいだよ?」
「え? そうなの?」
「うむ、それゆえ幼い頃は己の器以上の魔力を体内に留めきれず暴走しておったのだろう」
「ひえぇ……クリステアさん、すごかったんですね……」
なんと。私の魔力量が多いのはあらゆるものから魔力を取り込んでいたかららしい。
普通なら赤ん坊のうちはミルクや離乳食から得る魔力だけだから魔力量は少ないのが当たり前なんだけど、私の場合、大気中からでも魔力を取り込んでいたからキャパオーバーで暴走を起こしていた……と。
魔力量が多いのは単なる体質だと考えられてきたけど、魔力の取り込みすぎが原因だとは……
「今は取り込みすぎた魔力を上手く放出しておるので安定しているのだろう。精度を高めるのは良いことだが、魔力を抑えすぎるとまた暴走しかねないのでほどほどにしたほうがよかろう」
「だね」
うーむ、決意した途端、出鼻を挫かれてしまった。
「まーお嬢の場合、魔力の放出の仕方が雑なのは間違いないから、コントロールできるにこしたこたないけどな」
白虎様……言ってることは正論だけど、言い方ァ!
「トラ、お前はもう少し口の利き方を考えんか!」
「いっでぇ!」
セイの鉄扇制裁が炸裂した。痛そう。
うーん、精度を高めつつ、頻度を上げて魔力を放出したらいいのかしらね。
今後の魔力の扱いに悩んでいると、黒銀がカップを置いて私を見た。
「それに、主の魔力は料理にも溶け込んでおるので、我らとしては抑えるのは好ましくないな」
「うん、くりすてあのまりょくのこもったりょうりはおいしいもんね」
「あー、わかる! あれは大事だな!」
「そうですわね。あれが有ると無いとではかなり違いますものね」
「そ、そうなの……?」
そういえばそんなことを前にも言っていたっけ。
「料理人として大成しているものは、おそらく料理に魔力を込めるのが上手いものが多いのだと我は思うぞ。無論、魔力の相性や味の良し悪しもあるが……」
確かに、私が料理を始める前の我が家の料理はくどかったけれど、皆特に不満なく食べていたような気がする。
私のあっさりめのレシピが我が家に浸透した後でも魔力的に問題なかったのは、それもあるのかしら?
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とりあえずお父様に相談してみよう。
料理で魔力を効率よく回復する方法なんて、貴族にとって貴重な情報だもの。
それに、生まれながら魔力量が多い子供は私のように魔力の取り込みすぎが原因という可能性があるとわかったのは朗報だわ。
昔、お父様がマーレン師に製作を依頼した魔力量を一定にするバングルみたいな魔導具を使えば、私みたいに暴走を恐れて引きこもらなきゃならない事態は避けられるかもしれない。
これは、お父様に相談した上でマーレン師に協力を仰ぐべきかもね。
「わ、クリステアさん! そろそろ行かないと」
マリエルちゃんが時計を見て慌てて立ち上がった。
「本当だ! トラたち、悪いが後片付けを……」
「あー、やっとくから早く行け。気をつけてな」
「ありがとうございます! いってきます!」
私たちはあたふたと身支度をして特別寮を飛び出し、実習棟へ向かったのだった。
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