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【王太子視点】この出会いは必然か3

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「…なあ、ノーマン。夏期休暇は領地の屋敷に戻らないのか?」
ノーマンは学園に入学してからというもの、週末はともかく長期の休みですら王都にある屋敷でほとんどを過ごし、俺のお目付役よろしく側にいるのが常だった。

「レイ殿下が、私の留守中に何をしでかすかわかりませんので、心配でおちおち帰省なんてしてられませんよ。」
ノーマンは不敬ともとれる発言をさらりとする。俺が何をしでかすって言うんだ?心配することなんか何もないぞ?

「しかし…たまの休みなんだから、家族と一緒に過ごすべきではないか?」
そうすれば、俺は友人の元へ遊びに行くという名目でノーマンの妹に会えるだろうと目論んでいた。

最近の令嬢はヤハトゥールの食材に注目しているらしく、新作のレシピを屋敷で次々と披露していると公爵から聞いていた。そしてそのどれもが素晴らしく美味いらしい。まあ、親の欲目もあるだろうが…。
それに、実際は腕の立つ料理人がいるのだろう。

「そうですね…両親はともかく、妹とはしばらく会っていませんからね。」
そう言って笑うノーマンは少しさみしそうだ。

「この夏期休暇は帰ってやったらどうだ?」
「…それでは、数日ほど帰省することにします。」
いやいや、数日じゃ俺が押しかけられないじゃないか。
「数日と言わず休暇中いればいいじゃないか。」
「それは…。」
俺を放置するのが問題ってわけか?それなら…。
「俺もちょうどお前のとこの領地を視察してみたいと思っていたんだ。」
「レイ殿下!?」
「公爵家にその間世話になる。お前はゆっくり帰省できる、俺は王宮から離れてのびのびできる。一石二鳥ってヤツだ。」
「レイ殿下…。」
ニヤリと笑って言うと、ノーマンは少し複雑そうな表情だ。
臣下となる者を喜ばせるのも王太子たる俺の役目ってもんだ。遠慮するな。

「それにお前の妹の作る美味い飯を実際に食べられるしな!」
「…やはりそれが目的ですか。」
おっと…笑顔なのに目が笑ってないとか怖いからやめろ。あと、涼しいのを通り越して寒くなってきたからやめろ。やめてくれ。頼むから。

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そうして迎えた夏期休暇。
移動は転移陣を使って王宮からエリスフィード公爵邸の離れへ直接転移することになった。さほど遠くないから俺としては騎馬で移動してみたかったんだが…近場だからこそ警護の人手をあまり割きたくなかったらしい。視察という名目ではあるものの、要は同級生の家に遊びに行くのだからと数名の護衛を付けただけのお忍びということになった。
仰々しく、たくさんの護衛をつけるのは俺としても嫌だったので、まあいいだろう。

王宮からあっと言う間に転移し、エリスフィード公爵領の屋敷に着いた。
旅の情緒ってもんがないな…といささか興を削がれながらも、王宮とも学園とも違う雰囲気を醸し出す、エリスフィード公爵邸の品の良い調度品や装飾をきょろきょろと眺めていた。そうこうしているうちに、先に転移部屋を出たノーマンは家族との挨拶を済ませたようなので続いて俺も部屋を出た。

「ああ殿下。娘のクリステアです。クリステア、ご挨拶しなさい。」
公爵夫妻と挨拶をかわし、公爵が後ろに控えていた娘を紹介した。

「初めまして王太子殿下。エリスフィード公爵が娘、クリステアです。」

俺の目の前に、可愛らしい妖精がいた。
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