転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)

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【王太子視点】この出会いは必然か2

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俺が一目惚れしてから失恋するまではあっという間だった。剣の練習の後で汗を流すために風呂に入ろうと、子どもであることをいいことにスケベ心で誘ったら、なんと付いてきた。そしてその時俺はノーマンに俺と同じものが付いてるのを見つけ、大層驚いたのだった…。その瞬間に、俺の恋は終わった。
それまでノーマンが男だと気づかなかった俺も俺だが。
俺が驚いた理由を察したノーマンが、怒りに任せて一瞬で熱々の風呂を水風呂…いや氷風呂に変えてしまったのはここだけの話だ。

それ以来、俺はノーマンにどうにも頭が上がらない。もちろんあいつは王太子である俺に敬意を払ってくれているが…なんというか、ここぞという時は頭が上がらないのだ…。

ノーマンは色んなことをソツなくこなす。努力家なのは近くで見ているから知っているが、それを表に出さないようにしている。俺も負けないように頑張らないとな。将来、情けない主と思われないように。

そんなノーマンには4歳下の妹がいるそうだ。彼女とはまだ会ったことはないが、色々と噂は聞いている。エリスフィード公爵が溺愛している、というのは昔からだったが、最近は幼いながらも素晴らしい発想力で、次々と特許やレシピを考案し、それが大人顔負けであるらしい…というのがもっぱらの噂だ。実際にそのレシピのいくつかを食べたが、どれも絶品だった。
その反面、いきなり変なものを食べたりするので公爵は気が気ではないらしい。その話については、他の令嬢たちから「エリスフィード公爵の愛娘は、馬の餌を貪る悪食令嬢との噂なのですわ!」と聞かされていた。
ノーマンにその話をしたら、あたたかな陽気であったにも関わらず、周囲は冷え冷えとした空気に包まれ、あまりの寒さに暖炉に火を入れたものの風邪をひきかけたほどだ。
…ノーマンを怒らせてはいけない。こいつはかなりのシスコンだ。

翌週には俺に色んなことを吹き込んできた令嬢達は、親子共々領地に引っ込んでしまったと聞いた。…シスコンと親バカは敵にしない方がいいらしい。

それからというもの、ノーマンや公爵がそこまで溺愛する令嬢がどんな人物なのか気になってしかたなかった。
ノーマンにどんな娘なのか聞いても、「レイ殿下が気になさるほどの者ではございませんよ。」とにこやかに、やんわり遠回しに拒絶される。なのに
「でも、僕にとっては可愛い可愛い妹です。」と言う。
だから、いらぬ手出しはしないでくださいね?と暗にほのめかす。
普通なら王太子妃候補となるチャンスとばかりに身内が売り込むものなんだが…。

王宮で公爵にばったり出会った時にも聞いてみたが、娘自慢は延々とされるものの、「それほど自慢の娘なら会ってみたいな。」と言うと、途端にのらりくらりとかわされる。…親子揃ってなんなんだ?

…ますます、気になってしかたない。
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