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【兄視点】視察の目的
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「はあぁ…。」
視察の名目で街へと向かう馬車の中。
レイ殿下が大きなため息をついたのはこれで何度目だろうか。
「レイ殿下、どうしたんです?そんなにため息ばかりついて。」
理由はわかっているけど。
「ん?…ああ…。せっかく街へ行くのだからクリステア嬢も連れて行けたら良かったのに、と思ってな…。」
まったく、油断も隙もない。今朝いきなり視察に行くと言ったかと思えば、クリステアも一緒に行かないかと誘うとは。
「用事があるのなら仕方ないでしょう?」
…同じ街に行く用事なんだけどね。
目的地は同じだが、クリステアのことだ、きっと上手く立ち回ってばったり出会うなんてことは避けるのだろうな。
せっかくだから、クリステアも連れて行きたかったけれど…レイ殿下とこの狭い馬車の中で一緒に移動するのはちょっとね。
レイ殿下はこの移動の間にもクリステアとの距離を詰めようと思っていたに違いないから。
…クリステアたちは、もう街にいるのだろうか。
転移で移動すると言っていたからな…。
僕にも転移魔法は使えるのだろうか?
転移魔法が使えたら、もう少しマメに帰れるのに…。
「…マン、おい、ノーマン?」
「えっ…?…あ、申し訳ありません。少しぼんやりしていました。」
「珍しいな。お前がぼーっとしてるなんて。」
「そうでしょうか?」
確かに、普段はレイ殿下の護衛のために気を張っているから、ぼんやりしてるなんて僕らしくない。帰省中だからって気を抜きすぎたかな。
「申し訳ありません。気をつけます。」
「いや、いいんだ。帰省中くらいのんびりしてろ。お前はいつも頑張りすぎだ。俺だって王都を離れてる時くらい羽を伸ばしたいよ。視察と銘打って遊びたいだけだしな。」
ニッと笑うレイ殿下。こういうところは憎めないんだよな。
「そんなことを言って、いつも自由気ままに過ごしているでしょうに。」
今度はこちらがため息をつく番だ。
「いいや、お前はわかってない。王宮では王太子たるもの、次期国王として国民に恥ずかしくない振る舞いと気品を持てだの何だのガミガミ言われ、学園にいたらいたで、身分の上下は問わないと言いつつも、王太子として全生徒の模範となるようにと何かあるごとにガミガミと言われ…気の休まる時がない。」
僕以外の人の目がないからか、ズルズルと背もたれからズリ落ち、ぐだ~っと姿勢を崩した。
ちなみに後半の、学園でガミガミ言っているのは僕だ。
「レイ殿下、だらしないですよ。どこで誰に見られているか分からないんですから気を抜かないようにしてください。」
先ほどぼんやりしていた僕が言えた義理ではないけれど。
「へいへい。…あ、そうだノーマン。さっき聞こうと思ったんだが…。」
「何でしょう?」
「クリステア嬢に土産を買おうと思うんだが、何を渡せば喜ぶと思う?」
「…さあ、何が良いでしょうね?僕も何を選ぼうかと考えていたところです。彼女は僕が何をあげても喜んでくれるので、逆に悩んでしまいますね。」
行き先は同じでも、クリステアには何か贈ろうと思っていた。
レイ殿下も同じことを考えていたのか。
「…ふうん。今回はどうするつもりなんだ?」
「最近はヤハトゥールに興味があるようですので、ヤハトゥールの品を買おうかと思っていました。」
「ああ…そういえば、食材もヤハトゥールのものをよく使うようになったんだったな。」
「ええ。これから向かう街には、最近王都でもヤハトゥールの品を豊富に扱う商会として名が知られはじめたバステア商会があるので、そこで買おうかと。」
「よし!俺もそこで何か選ぶとしよう!まずはその商会に向かおうか!」
レイ殿下は嬉々として行き先を御者に伝えたのだった。
僕に選ぶのを手伝わせるつもりだな?まったく…。
視察の名目で街へと向かう馬車の中。
レイ殿下が大きなため息をついたのはこれで何度目だろうか。
「レイ殿下、どうしたんです?そんなにため息ばかりついて。」
理由はわかっているけど。
「ん?…ああ…。せっかく街へ行くのだからクリステア嬢も連れて行けたら良かったのに、と思ってな…。」
まったく、油断も隙もない。今朝いきなり視察に行くと言ったかと思えば、クリステアも一緒に行かないかと誘うとは。
「用事があるのなら仕方ないでしょう?」
…同じ街に行く用事なんだけどね。
目的地は同じだが、クリステアのことだ、きっと上手く立ち回ってばったり出会うなんてことは避けるのだろうな。
せっかくだから、クリステアも連れて行きたかったけれど…レイ殿下とこの狭い馬車の中で一緒に移動するのはちょっとね。
レイ殿下はこの移動の間にもクリステアとの距離を詰めようと思っていたに違いないから。
…クリステアたちは、もう街にいるのだろうか。
転移で移動すると言っていたからな…。
僕にも転移魔法は使えるのだろうか?
転移魔法が使えたら、もう少しマメに帰れるのに…。
「…マン、おい、ノーマン?」
「えっ…?…あ、申し訳ありません。少しぼんやりしていました。」
「珍しいな。お前がぼーっとしてるなんて。」
「そうでしょうか?」
確かに、普段はレイ殿下の護衛のために気を張っているから、ぼんやりしてるなんて僕らしくない。帰省中だからって気を抜きすぎたかな。
「申し訳ありません。気をつけます。」
「いや、いいんだ。帰省中くらいのんびりしてろ。お前はいつも頑張りすぎだ。俺だって王都を離れてる時くらい羽を伸ばしたいよ。視察と銘打って遊びたいだけだしな。」
ニッと笑うレイ殿下。こういうところは憎めないんだよな。
「そんなことを言って、いつも自由気ままに過ごしているでしょうに。」
今度はこちらがため息をつく番だ。
「いいや、お前はわかってない。王宮では王太子たるもの、次期国王として国民に恥ずかしくない振る舞いと気品を持てだの何だのガミガミ言われ、学園にいたらいたで、身分の上下は問わないと言いつつも、王太子として全生徒の模範となるようにと何かあるごとにガミガミと言われ…気の休まる時がない。」
僕以外の人の目がないからか、ズルズルと背もたれからズリ落ち、ぐだ~っと姿勢を崩した。
ちなみに後半の、学園でガミガミ言っているのは僕だ。
「レイ殿下、だらしないですよ。どこで誰に見られているか分からないんですから気を抜かないようにしてください。」
先ほどぼんやりしていた僕が言えた義理ではないけれど。
「へいへい。…あ、そうだノーマン。さっき聞こうと思ったんだが…。」
「何でしょう?」
「クリステア嬢に土産を買おうと思うんだが、何を渡せば喜ぶと思う?」
「…さあ、何が良いでしょうね?僕も何を選ぼうかと考えていたところです。彼女は僕が何をあげても喜んでくれるので、逆に悩んでしまいますね。」
行き先は同じでも、クリステアには何か贈ろうと思っていた。
レイ殿下も同じことを考えていたのか。
「…ふうん。今回はどうするつもりなんだ?」
「最近はヤハトゥールに興味があるようですので、ヤハトゥールの品を買おうかと思っていました。」
「ああ…そういえば、食材もヤハトゥールのものをよく使うようになったんだったな。」
「ええ。これから向かう街には、最近王都でもヤハトゥールの品を豊富に扱う商会として名が知られはじめたバステア商会があるので、そこで買おうかと。」
「よし!俺もそこで何か選ぶとしよう!まずはその商会に向かおうか!」
レイ殿下は嬉々として行き先を御者に伝えたのだった。
僕に選ぶのを手伝わせるつもりだな?まったく…。
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