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試食会のはじまり、はじまりー!
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「おお! どれもこれも美味い!」
「うん、見るからに辛そうものもあるけれどそんなこともなく、むしろ口の中に余韻をもたせてもうひとくちと欲しくなる。美味しいよ、テア」
「ありがとうございます。お口に合いましたようで嬉しいですわ」
ビュッフェ&立食形式の試食会が始まるとさっそく腹ペコ聖獣様たちがテーブルに群がり、それに続いたレイモンド王太子殿下やお兄様はそれぞれ気になる料理から取り分けてぱくつき始めた。
レイモンド王太子殿下は自分好みものからドバッと好きなだけよそっては食べていくスタイル、お兄様は料理を少しずつきれいに盛り付け味を確かめつつ、特に気に入ったものをお代わりしていた。
うーん、食べ方に性格が出てるなあ。
聞けば殿下の王宮での食事は、毒味を終えてから冷めたコース料理を食べているそうだから、学園や我が家のように温かい料理を気にせず好きなように食べられるのは嬉しいことみたい。
王族ともなれば、暗殺対策として小さな頃から少量ずつ毒を摂取して毒耐性をつけたりとか色々あるらしいし……
そのせいかはわからないけれど、殿下は毒の有無がわかる程度の鑑定ならできるんだって。
……やっぱり王族って大変なのね。
鑑定持ちはちょっぴり羨ましいけれど、それがないと命に関わったり普通の生活をするのも難しいとか勘弁してほしい。
まあ、黒銀たちに鑑定能力があるので今のところ私が鑑定できなくても困ってないからいいんだけどね!
レイモンド王太子殿下が体育会系の部活後の男子の如く嬉しそうに色んな料理をパクつくのを見て、普段は明るいやんちゃ坊主な印象なのに、色々と大変なのだなと気の毒に思ってしまったよ。
我が家は殿下に毒を盛ったりなんかしないから、今日は上級者メニュー(激辛)もないから安心してお食べ……
「ほら殿下。そればかり食べてないで他の料理も試してください。試食会なんですから」
「わかってるって。でもほら、この芋を潰したのを油で揚げたやつはカレーの味がするんだよ。いや美味いなぁ、これ」
殿下が美味しそうに食べていたのはカレーコロッケだった。
カレーそのものはないけれど、カレー粉の香りに反応するとは、さすが殿下ね。
「剣の訓練の後とかは特に腹が減るから、夕食前にこういうのがつまめたら最高だろうなぁ。菓子じゃ腹が膨れた気がしないし」
「ふふ、その気持ちはわかるような気がしますね」
殿下の話に同意したお兄様は、殿下の皿に盛られたカレーコロッケを一つ取り上げてパクリ。
「あっ! それ俺が確保してたのに!」
「だから、こればかり食べ過ぎですよ」
ぷぷ、殿下たちが部活帰りの買い食いみたいなやりとりしてる。
二人とも成長期だし食べ盛りだろうから、確かにお菓子をちょっとつまんだ程度じゃお腹は膨れないよね。うんうん。
「はあ……いろんな意味で美味しいですぅ……」
マリエルちゃんもカレーコロッケをパクつきながら殿下とお兄様をうっとりと見つめていた。
……よし、あとでカーテシーの特訓決定。
レティア先生直伝のスパルタメニューを伝授して差し上げよう。ふはは。
「……ハッ⁉︎ なんだか嫌な予感が……⁉︎」
マリエルちゃんがキョロキョロと周囲を見渡した後、私を見たのでにっこりと微笑んで見せたのに、顔がひきつっていた。
んもう、失礼しちゃう。
「どれもこれも、複雑な味と香りが鮮烈で、素晴らしいですわ……」
アリシア様もお兄様同様に少しずつ取り分けてひとつひとつ吟味するかのように丁寧に試食していた。
この中で一番真面目に試食しているのはアリシア様かもしれない。いや、セイもか。
他のメンバーはアリシア様やセイを見習ってほしい。
「アリシア様はどの料理がお好きですか?」
「私ですか? そうですわね……私はこちらが一番美味しいと感じましたわ」
そう言ってアリシア様が指したのは今回初出しの品だった。
「ああ、ジャンバラヤですね」
「まあ、こちらの料理はジャンバラヤという名なのですね」
そう、アリシア様が選んだのはケイジャンスパイスを使ったジャンバラヤだ。
乱暴な説明になるけれど、ケイジャンスパイスを使ったパエリアみたいなもので、前世ではカレーチャーハンみたいなのをジャンバラヤとして出しているところもあったけど私はこちら推しなのよね。
そして今回のジャンバラヤにはトッピングとしてケイジャンチキンをのせたボリューム満点の一品となっている。
アリシア様がガッツリ米メニューを選んだのは意外だったかも。
「色々な食材の旨みがスパイスでまとめあげられ、口の中で素晴らしく調和しておりますわ。辛味もありますけれど、より後を引く一助となっておりますわね」
あー、わかる。ケイジャンスパイスの後引く美味しさってたまらないよね。
「ですが、他の料理も素晴らしく美味しいですわ。これらの味を知ってしまっては、これから何を食べても物足りなくなってしまいそう……」
アリシア様はそう言うと、ほう……とため息を吐いた。
わかる。
スパイスで味は濃くても、我が国のこってりギトギト料理とは違って、もっと食べたい!って思っちゃうのよね。
「そうだな。スパイスの組み合わせ次第でこれほどまで違う料理ができるとは驚きだ。これは、我が国の食事情に大きな影響を与えそうだぞ」
レイモンド王太子殿下が言うと、お兄様が同意するとばかりに頷いた。
「ええ、テアの料理は世界を変えますよ」
いやお兄様、それ大袈裟すぎない?
というか、私のオリジナルってわけじゃないからそんなに褒めちぎられるといたたまれない気持ちになるのよね……
だけど、自分だけ美味しいものを食べるってのは違うと思うし。
皆が美味しいものを食べて、元気に楽しく過ごせるのが一番だもの。
「え……ええと、お兄様ったら大袈裟ですわよ。そうそう! デザートを出し忘れてましたわ!」
皆満遍なく試食できたようだし、これ以上話が盛り上がると居心地が悪くなりそうだからシメのデザートとお茶を出すことにした。
---------------------------
いつもコメントandエールポチッとありがとうございます!
執筆の励みになっております!(嬉)
「うん、見るからに辛そうものもあるけれどそんなこともなく、むしろ口の中に余韻をもたせてもうひとくちと欲しくなる。美味しいよ、テア」
「ありがとうございます。お口に合いましたようで嬉しいですわ」
ビュッフェ&立食形式の試食会が始まるとさっそく腹ペコ聖獣様たちがテーブルに群がり、それに続いたレイモンド王太子殿下やお兄様はそれぞれ気になる料理から取り分けてぱくつき始めた。
レイモンド王太子殿下は自分好みものからドバッと好きなだけよそっては食べていくスタイル、お兄様は料理を少しずつきれいに盛り付け味を確かめつつ、特に気に入ったものをお代わりしていた。
うーん、食べ方に性格が出てるなあ。
聞けば殿下の王宮での食事は、毒味を終えてから冷めたコース料理を食べているそうだから、学園や我が家のように温かい料理を気にせず好きなように食べられるのは嬉しいことみたい。
王族ともなれば、暗殺対策として小さな頃から少量ずつ毒を摂取して毒耐性をつけたりとか色々あるらしいし……
そのせいかはわからないけれど、殿下は毒の有無がわかる程度の鑑定ならできるんだって。
……やっぱり王族って大変なのね。
鑑定持ちはちょっぴり羨ましいけれど、それがないと命に関わったり普通の生活をするのも難しいとか勘弁してほしい。
まあ、黒銀たちに鑑定能力があるので今のところ私が鑑定できなくても困ってないからいいんだけどね!
レイモンド王太子殿下が体育会系の部活後の男子の如く嬉しそうに色んな料理をパクつくのを見て、普段は明るいやんちゃ坊主な印象なのに、色々と大変なのだなと気の毒に思ってしまったよ。
我が家は殿下に毒を盛ったりなんかしないから、今日は上級者メニュー(激辛)もないから安心してお食べ……
「ほら殿下。そればかり食べてないで他の料理も試してください。試食会なんですから」
「わかってるって。でもほら、この芋を潰したのを油で揚げたやつはカレーの味がするんだよ。いや美味いなぁ、これ」
殿下が美味しそうに食べていたのはカレーコロッケだった。
カレーそのものはないけれど、カレー粉の香りに反応するとは、さすが殿下ね。
「剣の訓練の後とかは特に腹が減るから、夕食前にこういうのがつまめたら最高だろうなぁ。菓子じゃ腹が膨れた気がしないし」
「ふふ、その気持ちはわかるような気がしますね」
殿下の話に同意したお兄様は、殿下の皿に盛られたカレーコロッケを一つ取り上げてパクリ。
「あっ! それ俺が確保してたのに!」
「だから、こればかり食べ過ぎですよ」
ぷぷ、殿下たちが部活帰りの買い食いみたいなやりとりしてる。
二人とも成長期だし食べ盛りだろうから、確かにお菓子をちょっとつまんだ程度じゃお腹は膨れないよね。うんうん。
「はあ……いろんな意味で美味しいですぅ……」
マリエルちゃんもカレーコロッケをパクつきながら殿下とお兄様をうっとりと見つめていた。
……よし、あとでカーテシーの特訓決定。
レティア先生直伝のスパルタメニューを伝授して差し上げよう。ふはは。
「……ハッ⁉︎ なんだか嫌な予感が……⁉︎」
マリエルちゃんがキョロキョロと周囲を見渡した後、私を見たのでにっこりと微笑んで見せたのに、顔がひきつっていた。
んもう、失礼しちゃう。
「どれもこれも、複雑な味と香りが鮮烈で、素晴らしいですわ……」
アリシア様もお兄様同様に少しずつ取り分けてひとつひとつ吟味するかのように丁寧に試食していた。
この中で一番真面目に試食しているのはアリシア様かもしれない。いや、セイもか。
他のメンバーはアリシア様やセイを見習ってほしい。
「アリシア様はどの料理がお好きですか?」
「私ですか? そうですわね……私はこちらが一番美味しいと感じましたわ」
そう言ってアリシア様が指したのは今回初出しの品だった。
「ああ、ジャンバラヤですね」
「まあ、こちらの料理はジャンバラヤという名なのですね」
そう、アリシア様が選んだのはケイジャンスパイスを使ったジャンバラヤだ。
乱暴な説明になるけれど、ケイジャンスパイスを使ったパエリアみたいなもので、前世ではカレーチャーハンみたいなのをジャンバラヤとして出しているところもあったけど私はこちら推しなのよね。
そして今回のジャンバラヤにはトッピングとしてケイジャンチキンをのせたボリューム満点の一品となっている。
アリシア様がガッツリ米メニューを選んだのは意外だったかも。
「色々な食材の旨みがスパイスでまとめあげられ、口の中で素晴らしく調和しておりますわ。辛味もありますけれど、より後を引く一助となっておりますわね」
あー、わかる。ケイジャンスパイスの後引く美味しさってたまらないよね。
「ですが、他の料理も素晴らしく美味しいですわ。これらの味を知ってしまっては、これから何を食べても物足りなくなってしまいそう……」
アリシア様はそう言うと、ほう……とため息を吐いた。
わかる。
スパイスで味は濃くても、我が国のこってりギトギト料理とは違って、もっと食べたい!って思っちゃうのよね。
「そうだな。スパイスの組み合わせ次第でこれほどまで違う料理ができるとは驚きだ。これは、我が国の食事情に大きな影響を与えそうだぞ」
レイモンド王太子殿下が言うと、お兄様が同意するとばかりに頷いた。
「ええ、テアの料理は世界を変えますよ」
いやお兄様、それ大袈裟すぎない?
というか、私のオリジナルってわけじゃないからそんなに褒めちぎられるといたたまれない気持ちになるのよね……
だけど、自分だけ美味しいものを食べるってのは違うと思うし。
皆が美味しいものを食べて、元気に楽しく過ごせるのが一番だもの。
「え……ええと、お兄様ったら大袈裟ですわよ。そうそう! デザートを出し忘れてましたわ!」
皆満遍なく試食できたようだし、これ以上話が盛り上がると居心地が悪くなりそうだからシメのデザートとお茶を出すことにした。
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