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お も て な し?
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「此度は年端もいかぬご令嬢を呼び出すなど危険な目にあわせてすまなかった。こちらの思惑通りにいかなかったからといって、やっていいことではなかった」
カルド殿下はそう言って深々と下げた。
「……殿下ぁ、だからやめようって言ったじゃないっすか」
「うるさいな。今となってはティカの言う通りだったが、あの時は何らかの成果を持ち帰ろうと必死だったんだよ!」
ティカさんの呆れたようなツッコミにカルド殿下はバツの悪そうな表情で反論した。
「クリステア嬢、本当にすまなかった」
「いえあの、私は別に……」
実害はなかったわけだし、別に構わないんだけど。
……いや、この後にお説教タイムが設けられることを考えたら実害はあるな⁉︎ ぐぬぬ!
「カルド殿下、娘が今回のように厄介ごと……ゴホン、失敬。色々な物事に首を突っ込むのはよくあることですのでお気になさらず」
お父様……殿下を気遣うためだとしても、何気に私のことディスるのやめていただけますぅ⁉︎
「いや、気にするなと言われても……よくあること、なのか? ……本当に?」
カルド殿下が「貴族の令嬢なのに?」みたいな顔で見てくるのでいたたまれない!
「ええ。それよりも殿下、入国してから今までどこに滞在を?」
「え、ああ……同行した商隊の長と同じ宿を取っている。彼らからしてみれば、いつもよりいい宿にしたそうだが……」
そうは言っても、商人が貴族が泊まるランクの宿を取るのは不自然ということもあって、商人にしてみれば少し見栄を張ってみたという程度の宿のようで、それを聞いたお父様がこのまま殿下が宿に戻ることに難色を示した。
「今日はもう遅い。王宮への報告は明日にして、今夜は我が家にお泊まりください」
「……何から何まですまないが、厚意に甘えよう。世話になる」
話がまとまったタイミングで黒銀が戻ってきた。
先ほど購入したものの納品でついてきた商人やティカさんとともに宿へ同行し、殿下たちの荷物を引き上げてきてもらうことにしたのだった。聖獣使いが荒くて申し訳ない。
でも真白が行くより恙なく事が進むと思うので、適材適所です。
後で長めのブラッシングタイムでサービスするから頑張ってほしい。
「クリステア」
「はい?」
「そういうわけだから、今夜の食事はまかせたぞ」
「……はい?」
「晩餐会と同じ料理を出すわけにはいかないのは其方ならわかっていると思うが」
「あっ」
そう言われればそうか。
今回は王家の威信をかけて晩餐会に臨むのに「あれ? 公爵家で同じものを食べたな?」ってなっちゃまずいよね?
「ええと、やはり香辛料をふんだんに使った料理が望ましいのでしょうか?」
「ふむ、彼の国は濃い味付けのものを好む傾向にあるようだから、そのほうがよかろう」
まあ、前回はそれでこってりした我が国伝統の味を披露して顰蹙を買ったわけで。
我が家ではすっかり形を潜めた「伝統料理」は当然出さないにしても、折角開発したレシピも封印となると……時間が足りない。
「あの、お父様。我が家の秘伝のメニューでもよろしいでしょうか?」
「……む、あれか……急なことだからな、やむを得まい」
よし、オッケーが出たのでアレの出番よ!
夕食まであまり時間がない。
カルド殿下を客室に案内している間に、私は急いで調理場に向かい、料理長とメニューの打ち合わせをしたのだった。
いつもとは違う食堂での夕食。
過度なもてなしは不用とカルド殿下が固辞したため、少しだけランクを上げた部屋での夕食となりました。
しれっとレオン様が同席してますね、食べて帰るんですか。そうですか。
ティカさんは「臣下なので」と同席を断ろうとしたそうだけど、身分を明かしていない平民姿のレオン様が同席しているし、そのレオン様が「同席させてやれ」というので「毒味役」の兼ねてということで同席と相成った。
何気に毒味役とか酷いな⁉︎
「……これは?」
カルド殿下が胡散臭そうに目の前の料理を見つめている。
「我が家秘伝の料理で、カレーというものです。このように同時にすくって召し上がってください」
お父様がスプーンでルーとごはんを一緒にすくい上げてみせる。
「香りは良いのだが……」
「そうっすね、香りは良いんっすけどねぇ……」
カルド殿下とティカさんの食指が動かないようだ。
見た目、見た目ですね⁉︎
ビジュアルはアレだけど、美味しいから食べてごらんなさい⁉︎ ほらほら!
そういえば、レイモンド王太子殿下も初見の時は見た目で引いてたっけ。
今や上級者向け(大辛)もいける強者になったけどね!
便宜上毒味役のはずのティカさんも、スプーンでルーをつんつんといじるだけでなかなか先に進まない。
そんな二人を尻目に、食べ始める私たち。
見た目は兎も角匂いがね、暴力的なまでにそそるもんだからカレーに慣れ切った我が家は待ちきれないよね!
パクパクと美味しそうに食べ進める私たちを見て「うわぁ……」って顔してるけどね、食べたら最後、貴方たちもこうなるんだからね!
「お、美味いなこれ。辛いだけじゃない複雑な味がする」
レオン様は気に入ったようで、私たち同様、勢いよく食べ進めていた。
今日は具材ゴロゴロ系のお家カレー。
玉ねぎはとろとろに溶け切ってしまったので形は見えないけれど、玉ねぎの甘みがしっかり仕事してます。幸せ。
ジャガイモやにんじんは大きめにカットした分食べ応えがあるし、お肉は下ごしらえ済みのすじ肉があったので、それも入れているから、時々クニクニとした食感が楽しめていい。
トッピングに半熟のゆで卵を縦に四つにカットしたものを添えてある。
温玉とどっちにするか迷ったけれど、まだまだ生食に理解がない世界なのでこのくらいで様子見。半熟卵の破壊力でその美味しさに目覚めてほしい。
「……ティカ?」
カルド殿下がティカさんに声をかけた。
「う……わかったっす」
お、ティカさんが観念した様子でカレーにスプーンを突っ込んだ。
「……」
「……ティカ?」
カルド殿下が黙り込んだティカさんを心配そうに見た。
「……う、美っ味ぁ……!」
よし、陥ちたな。
---------------------------
暑い日々が続いておりますが、皆様体調崩したりなさいませんようご自愛くださいませ!
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カルド殿下はそう言って深々と下げた。
「……殿下ぁ、だからやめようって言ったじゃないっすか」
「うるさいな。今となってはティカの言う通りだったが、あの時は何らかの成果を持ち帰ろうと必死だったんだよ!」
ティカさんの呆れたようなツッコミにカルド殿下はバツの悪そうな表情で反論した。
「クリステア嬢、本当にすまなかった」
「いえあの、私は別に……」
実害はなかったわけだし、別に構わないんだけど。
……いや、この後にお説教タイムが設けられることを考えたら実害はあるな⁉︎ ぐぬぬ!
「カルド殿下、娘が今回のように厄介ごと……ゴホン、失敬。色々な物事に首を突っ込むのはよくあることですのでお気になさらず」
お父様……殿下を気遣うためだとしても、何気に私のことディスるのやめていただけますぅ⁉︎
「いや、気にするなと言われても……よくあること、なのか? ……本当に?」
カルド殿下が「貴族の令嬢なのに?」みたいな顔で見てくるのでいたたまれない!
「ええ。それよりも殿下、入国してから今までどこに滞在を?」
「え、ああ……同行した商隊の長と同じ宿を取っている。彼らからしてみれば、いつもよりいい宿にしたそうだが……」
そうは言っても、商人が貴族が泊まるランクの宿を取るのは不自然ということもあって、商人にしてみれば少し見栄を張ってみたという程度の宿のようで、それを聞いたお父様がこのまま殿下が宿に戻ることに難色を示した。
「今日はもう遅い。王宮への報告は明日にして、今夜は我が家にお泊まりください」
「……何から何まですまないが、厚意に甘えよう。世話になる」
話がまとまったタイミングで黒銀が戻ってきた。
先ほど購入したものの納品でついてきた商人やティカさんとともに宿へ同行し、殿下たちの荷物を引き上げてきてもらうことにしたのだった。聖獣使いが荒くて申し訳ない。
でも真白が行くより恙なく事が進むと思うので、適材適所です。
後で長めのブラッシングタイムでサービスするから頑張ってほしい。
「クリステア」
「はい?」
「そういうわけだから、今夜の食事はまかせたぞ」
「……はい?」
「晩餐会と同じ料理を出すわけにはいかないのは其方ならわかっていると思うが」
「あっ」
そう言われればそうか。
今回は王家の威信をかけて晩餐会に臨むのに「あれ? 公爵家で同じものを食べたな?」ってなっちゃまずいよね?
「ええと、やはり香辛料をふんだんに使った料理が望ましいのでしょうか?」
「ふむ、彼の国は濃い味付けのものを好む傾向にあるようだから、そのほうがよかろう」
まあ、前回はそれでこってりした我が国伝統の味を披露して顰蹙を買ったわけで。
我が家ではすっかり形を潜めた「伝統料理」は当然出さないにしても、折角開発したレシピも封印となると……時間が足りない。
「あの、お父様。我が家の秘伝のメニューでもよろしいでしょうか?」
「……む、あれか……急なことだからな、やむを得まい」
よし、オッケーが出たのでアレの出番よ!
夕食まであまり時間がない。
カルド殿下を客室に案内している間に、私は急いで調理場に向かい、料理長とメニューの打ち合わせをしたのだった。
いつもとは違う食堂での夕食。
過度なもてなしは不用とカルド殿下が固辞したため、少しだけランクを上げた部屋での夕食となりました。
しれっとレオン様が同席してますね、食べて帰るんですか。そうですか。
ティカさんは「臣下なので」と同席を断ろうとしたそうだけど、身分を明かしていない平民姿のレオン様が同席しているし、そのレオン様が「同席させてやれ」というので「毒味役」の兼ねてということで同席と相成った。
何気に毒味役とか酷いな⁉︎
「……これは?」
カルド殿下が胡散臭そうに目の前の料理を見つめている。
「我が家秘伝の料理で、カレーというものです。このように同時にすくって召し上がってください」
お父様がスプーンでルーとごはんを一緒にすくい上げてみせる。
「香りは良いのだが……」
「そうっすね、香りは良いんっすけどねぇ……」
カルド殿下とティカさんの食指が動かないようだ。
見た目、見た目ですね⁉︎
ビジュアルはアレだけど、美味しいから食べてごらんなさい⁉︎ ほらほら!
そういえば、レイモンド王太子殿下も初見の時は見た目で引いてたっけ。
今や上級者向け(大辛)もいける強者になったけどね!
便宜上毒味役のはずのティカさんも、スプーンでルーをつんつんといじるだけでなかなか先に進まない。
そんな二人を尻目に、食べ始める私たち。
見た目は兎も角匂いがね、暴力的なまでにそそるもんだからカレーに慣れ切った我が家は待ちきれないよね!
パクパクと美味しそうに食べ進める私たちを見て「うわぁ……」って顔してるけどね、食べたら最後、貴方たちもこうなるんだからね!
「お、美味いなこれ。辛いだけじゃない複雑な味がする」
レオン様は気に入ったようで、私たち同様、勢いよく食べ進めていた。
今日は具材ゴロゴロ系のお家カレー。
玉ねぎはとろとろに溶け切ってしまったので形は見えないけれど、玉ねぎの甘みがしっかり仕事してます。幸せ。
ジャガイモやにんじんは大きめにカットした分食べ応えがあるし、お肉は下ごしらえ済みのすじ肉があったので、それも入れているから、時々クニクニとした食感が楽しめていい。
トッピングに半熟のゆで卵を縦に四つにカットしたものを添えてある。
温玉とどっちにするか迷ったけれど、まだまだ生食に理解がない世界なのでこのくらいで様子見。半熟卵の破壊力でその美味しさに目覚めてほしい。
「……ティカ?」
カルド殿下がティカさんに声をかけた。
「う……わかったっす」
お、ティカさんが観念した様子でカレーにスプーンを突っ込んだ。
「……」
「……ティカ?」
カルド殿下が黙り込んだティカさんを心配そうに見た。
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