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連載
番外編 奥様の秘密のお茶会
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王宮の上階にある王族のプライベートエリアにある応接室。
その室内の豪奢なソファでゆったりと座っていると、ドアの向こうで待ち人が近づいてくる気配がした。
その後の展開を察知した私はすっくと立ちあがる。
するとほぼ同時にドアがバァン!と開き、少女のような可愛らしい顔立ちの女性が満面の笑顔で飛び込んできた。
「アーン! いらっしゃい! 待ってたわ!」
小柄な見た目からは考えられないくらい勢いよく体当たり、もとい抱きついてくるのを咄嗟に身体強化して受け止める。
ドスン! という重量級の衝撃音とともに我が国の王妃が私の懐に飛び込んできたかと思うと、ぎゅぎゅーっと強く抱きしめられた。
「……王妃殿下。毎度のことながら王妃として威厳のある立ち振る舞いをしてくださいとあれほど口うるさく言っていますのに……」
私がため息混じりにそう言うと、ドリスタン王国の国母たるリリアーナはその頬をプクーッと膨らませた。
「もう! アンってば真面目なんだから。今日は私たちだけのお茶会なんだし、ちょっとくらい気を抜いたっていいじゃない。王妃だって息抜きは必要だわ」
「気持ちはわかるけれど、貴女ったらいつも気を抜いてばかりじゃないの」
「そんなことあーりーまーせーんー! それから、これも毎回言っているけれど、私たちだけの時はリリーと呼んでと言ってるでしょう?」
侍女長のヘレナに目を向けると、リリーの背後で諦め混じりのため息を漏らした。
「……いつものように殿下のご要望通り、人払いは済ませておりますよ」
ヘレナだけが同行していることでそうであろうことは察していたが、だからって立場上はいそうですか、というわけにはいかないのだ。
彼女が王家に輿入れする際、実家の爵位が低かったため、一旦私の実家に養女として迎え入れたので彼女は戸籍上では私の義妹なのだから。
元々、私が王太子殿下……現国王陛下の婚約者だったのだが、様々な事情から(というか、当時の殿下の心変わりによる)婚約破棄された。
その原因となったリリーを政治的なあれこれで私の実家の養女にしたことは当時色々と憶測を含む噂が飛び交ったため少々苦い思い出ではある。
だけど、リリーは昔も今も大切な親友であり義妹だ。
だからこそ、エリスフィード公爵夫人として彼女をしっかり支えなくては。
抱きついたままのリリーをやんわりと引き剥がしながらいつものように優しく諭す。
「リリー、ヘレナを困らせてはいけないわ」
ヘレナは当時からリリーを立派な王妃となるべく私の目の届かない王宮内で母親のように見守ってくれた恩人なんだもの。
「いつもは王妃らしく頑張ってるもの。ね、ヘレナ? ねぇ、アン。貴女と二人きりのときくらい私に戻らせてよ……」
リリーは子犬がすがるように悲しげに私を見つめる。
ああ、いつも私は彼女が悲しそうな顔をさせたくなくてつい折れてしまう。
「……まったくもう、しかたない人ね。これで王妃としてやっていけているのだから本当に不思議だわ」
「それは私もそう思うわ。ふふっ」
リリーは肩をすくめる私を真似して笑い、そのまま対面のソファに座るので思わず苦笑してしまう。
「はあ……まあいいわ。まずは報告だけれど、サモナールの第二王子が我が家に滞在しているのは先に知らせた通りよ」
ヘレナがお茶の用意をするのを横目で確認しつつ、リリーに今朝までの出来事を伝える。
クリステアがサモナール国の使者として我が国を訪問予定だった第二王子のカルド殿下とその従者が商人街の屋台で商人に身をやつしているところに遭遇。
(偶然かと思われたがレオン様からの紹介のため、それが故意であるかは不明)
そこで入手した、香辛料や薬草と一緒に渡されたある物がなんと「媚薬」であり、クリステアや料理人たちの検証によって「魔力増量薬」としても活用できることが判明しただけでなく、苦いだけのそれを美味しくすることに成功した。
(もちろん媚薬としても使えることも検証済み)
それらをめぐってカルド殿下たちと揉めることがあったが、その際に彼らの本当の身分が判明したため、とるものもとりあえずエリスフィード公爵家で保護するという名目で招き入れた。
突然のことながらも使者である彼らをもてなさなくてはならないが、晩餐会のメニューは王家に提供した後であり、それらは使えない。
しかし、晩餐会のメニュー考案者であるクリステアがいたため、エリスフィード家秘蔵のメニューであるカレーを饗することで事なきを得た。
そのカレーをきっかけに、サモナール国の飼料として栽培されているイディカをラースのように食用として利用する方法はないかと相談を受け、本日その検証が行われている。
「……とまあ、このような流れかしらね」
私が説明を終えると、リリーとヘレナが呆然と私を見ていた。
「……クリステアちゃんって、一体何者なの? サモナールの使者を料理であっさり陥落させ、彼らの持ってきた媚薬の新たな使い途を発見、さらには彼らの食糧問題を解決しようだなんて……」
「アデリア学園に入学したばかりの幼き令嬢とは思えない才女ですわね」
「……我が娘ながら、私もどうしてこうなったのかまったくわからないのよ……」
数年前までは、魔力過多による体内の魔力暴走による事故でいつ命を落とすかもわからなかったような子なのに。
いつからか魔力を安定させたかと思えば、いきなり料理に目覚め、挙げ句の果てには家畜の飼料を食べられるようにして悪食令嬢なんて不名誉な二つ名で呼ばれるようになったり。
知らないうちに聖獣フェンリルである黒銀様と聖獣ホーリーベアの真白様と複数契約していたり……
領地に引きこもらざるを得なくなったがために、王都で社交界デビューも危うかったこともあり「私、いつか王都の夜会で素敵な方とダンスがしたいわ」なんておませなことを夢見ていたのに突然「王都に行きたくない、できることなら領地に引きこもっていたい」などと言い出したから驚いたものだわ。だけど……
「……あの子は、貴族の娘としては変わり者なのでしょうけれど、健やかに育ってくれただけで私は満足だわ。まあ、少しは親である私たちをヒヤヒヤさせないでくれるとありがたいわね」
生まれてすぐに魔力過多症であることがわかったとき、普通に産んであげられなくてあの子にもスチュワードにも申し訳なかった。
だけど、彼が「君も、娘も無事に生まれてきてくれただけで嬉しいのだから気に病むことはない。この子は私たちで大切に育てよう」と言ってくれたから本当に嬉しかった。
とはいえ、あそこまで娘を溺愛する親バカになってしまうとは思わなかったけれど。
「ふふっ」
「……なによ、リリー」
「だって、すごく嬉しそうなんだもの。どうせスチュワード様のことを考えてるんだろうなって」
「……」
「図星でしょう? 相変わらずラブラブねぇ。まあ、私たちも負けてないけど?」
「そうねぇ。媚薬のお裾分けは必要なかったわね」
「やだ、あれはあれで魔力の高まりが必要だからあると助かるわ。クリステアちゃんには感謝よ~。あーあ、クリステアちゃんがうちの子になってくれたらいいのに」
「それは……」
「ああ、いいの。それは諦めたから。聖獣様方に睨まれたらさすがに無理は通せないもの。陛下もとりあえずは諦めるしかないかって言ってるわ」
「そう……」
「でもね? うちのレイくんがクリステアちゃんを口説き落としたら話は別よね?」
「貴女、諦めてないじゃないの」
「だって、レイくんも満更じゃなさそうなんだもの。私たちが自由恋愛の末に結ばれた以上、息子に政略結婚を強いるわけにはいかないじゃないの」
「あのねぇ……」
クリステア本人は自覚がないが、レイモンド王太子殿下だけでなく、他家からも婚約の打診は日々舞い込んでいる。
なんなら、養子として迎えたスチュワードの妹の忘れ形見であるノーマンもクリステアを一人の女の子として幼い頃から想い続けている。
本人に今のところその気がないのをいいことに、娘バカのスチュワードがガードし続けているのだ。まったく。
クリステアにはそろそろ色恋の何たるかを教え込む必要があるかもしれないわ。
「そううまいこといけばいいけどな?」
「えっ?」
「きゃあ! レオン様⁉︎ もう! 今日はプライベートなお茶会なんですよ⁉︎」
結界を張ったはずの応接室なのだが、この王宮を護るレオン様には関係ないらしい。
私のおもたせであるクリステア作のアップルパイをヘレナから受け取り、行儀悪く手づかみで頬張っている。
「悪い悪い。さっきエリスフィード家の試食会から帰ってきたもんでな」
「え? 試食会⁉︎ なんですかそれ⁉︎」
リリーが聞き捨てならぬとばかりに問い詰める。
私もそれは初耳だ。今日はイディカがラースのように食用可能かどうかの検証ではなかったか。
「イディカだけどよ、調理法こそ異なるがラースのように食用可能だった。それどころか、イディカを使った料理の試作を嬢ちゃんがしたんだけどよ、美味いのなんの」
「「な、なんですってえぇ⁉︎」」
私とリリーの叫びが同時に上がった。
うそでしょ、聞いてないわよそんなこと……!
「お、そうそう。レイモンドとノーマンも試食会に同席したんだが、使者の連中を連れてくるのは明日になるそうだ」
「え⁉︎ レイくんも試食会に⁉︎ ずるい!」
リリーがレイモンド王太子殿下に嫉妬しているのを尻目に、私はスッと席を立つ。
「リリー、急用を思い出したわ。申し訳ないけれど、これで失礼するわね」
「え、ちょ、アン⁉︎ 私も行きたいー!」
駄々をこねるリリーを置いて、私は家路を急ぐのだった。
大丈夫よ、リリー。
きっと貴女たちの分はレオン様が持って帰ってきているでしょうから。
---------------------------
……というわけで、ママンと王妃様の女子会回でした。
ちょいと長めでしたが、前後編にわけるほどでもないので一気にいっちゃいました。
本年も「転生令嬢は庶民の味に飢えている」をどうぞよろしくお願いいたします!
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その室内の豪奢なソファでゆったりと座っていると、ドアの向こうで待ち人が近づいてくる気配がした。
その後の展開を察知した私はすっくと立ちあがる。
するとほぼ同時にドアがバァン!と開き、少女のような可愛らしい顔立ちの女性が満面の笑顔で飛び込んできた。
「アーン! いらっしゃい! 待ってたわ!」
小柄な見た目からは考えられないくらい勢いよく体当たり、もとい抱きついてくるのを咄嗟に身体強化して受け止める。
ドスン! という重量級の衝撃音とともに我が国の王妃が私の懐に飛び込んできたかと思うと、ぎゅぎゅーっと強く抱きしめられた。
「……王妃殿下。毎度のことながら王妃として威厳のある立ち振る舞いをしてくださいとあれほど口うるさく言っていますのに……」
私がため息混じりにそう言うと、ドリスタン王国の国母たるリリアーナはその頬をプクーッと膨らませた。
「もう! アンってば真面目なんだから。今日は私たちだけのお茶会なんだし、ちょっとくらい気を抜いたっていいじゃない。王妃だって息抜きは必要だわ」
「気持ちはわかるけれど、貴女ったらいつも気を抜いてばかりじゃないの」
「そんなことあーりーまーせーんー! それから、これも毎回言っているけれど、私たちだけの時はリリーと呼んでと言ってるでしょう?」
侍女長のヘレナに目を向けると、リリーの背後で諦め混じりのため息を漏らした。
「……いつものように殿下のご要望通り、人払いは済ませておりますよ」
ヘレナだけが同行していることでそうであろうことは察していたが、だからって立場上はいそうですか、というわけにはいかないのだ。
彼女が王家に輿入れする際、実家の爵位が低かったため、一旦私の実家に養女として迎え入れたので彼女は戸籍上では私の義妹なのだから。
元々、私が王太子殿下……現国王陛下の婚約者だったのだが、様々な事情から(というか、当時の殿下の心変わりによる)婚約破棄された。
その原因となったリリーを政治的なあれこれで私の実家の養女にしたことは当時色々と憶測を含む噂が飛び交ったため少々苦い思い出ではある。
だけど、リリーは昔も今も大切な親友であり義妹だ。
だからこそ、エリスフィード公爵夫人として彼女をしっかり支えなくては。
抱きついたままのリリーをやんわりと引き剥がしながらいつものように優しく諭す。
「リリー、ヘレナを困らせてはいけないわ」
ヘレナは当時からリリーを立派な王妃となるべく私の目の届かない王宮内で母親のように見守ってくれた恩人なんだもの。
「いつもは王妃らしく頑張ってるもの。ね、ヘレナ? ねぇ、アン。貴女と二人きりのときくらい私に戻らせてよ……」
リリーは子犬がすがるように悲しげに私を見つめる。
ああ、いつも私は彼女が悲しそうな顔をさせたくなくてつい折れてしまう。
「……まったくもう、しかたない人ね。これで王妃としてやっていけているのだから本当に不思議だわ」
「それは私もそう思うわ。ふふっ」
リリーは肩をすくめる私を真似して笑い、そのまま対面のソファに座るので思わず苦笑してしまう。
「はあ……まあいいわ。まずは報告だけれど、サモナールの第二王子が我が家に滞在しているのは先に知らせた通りよ」
ヘレナがお茶の用意をするのを横目で確認しつつ、リリーに今朝までの出来事を伝える。
クリステアがサモナール国の使者として我が国を訪問予定だった第二王子のカルド殿下とその従者が商人街の屋台で商人に身をやつしているところに遭遇。
(偶然かと思われたがレオン様からの紹介のため、それが故意であるかは不明)
そこで入手した、香辛料や薬草と一緒に渡されたある物がなんと「媚薬」であり、クリステアや料理人たちの検証によって「魔力増量薬」としても活用できることが判明しただけでなく、苦いだけのそれを美味しくすることに成功した。
(もちろん媚薬としても使えることも検証済み)
それらをめぐってカルド殿下たちと揉めることがあったが、その際に彼らの本当の身分が判明したため、とるものもとりあえずエリスフィード公爵家で保護するという名目で招き入れた。
突然のことながらも使者である彼らをもてなさなくてはならないが、晩餐会のメニューは王家に提供した後であり、それらは使えない。
しかし、晩餐会のメニュー考案者であるクリステアがいたため、エリスフィード家秘蔵のメニューであるカレーを饗することで事なきを得た。
そのカレーをきっかけに、サモナール国の飼料として栽培されているイディカをラースのように食用として利用する方法はないかと相談を受け、本日その検証が行われている。
「……とまあ、このような流れかしらね」
私が説明を終えると、リリーとヘレナが呆然と私を見ていた。
「……クリステアちゃんって、一体何者なの? サモナールの使者を料理であっさり陥落させ、彼らの持ってきた媚薬の新たな使い途を発見、さらには彼らの食糧問題を解決しようだなんて……」
「アデリア学園に入学したばかりの幼き令嬢とは思えない才女ですわね」
「……我が娘ながら、私もどうしてこうなったのかまったくわからないのよ……」
数年前までは、魔力過多による体内の魔力暴走による事故でいつ命を落とすかもわからなかったような子なのに。
いつからか魔力を安定させたかと思えば、いきなり料理に目覚め、挙げ句の果てには家畜の飼料を食べられるようにして悪食令嬢なんて不名誉な二つ名で呼ばれるようになったり。
知らないうちに聖獣フェンリルである黒銀様と聖獣ホーリーベアの真白様と複数契約していたり……
領地に引きこもらざるを得なくなったがために、王都で社交界デビューも危うかったこともあり「私、いつか王都の夜会で素敵な方とダンスがしたいわ」なんておませなことを夢見ていたのに突然「王都に行きたくない、できることなら領地に引きこもっていたい」などと言い出したから驚いたものだわ。だけど……
「……あの子は、貴族の娘としては変わり者なのでしょうけれど、健やかに育ってくれただけで私は満足だわ。まあ、少しは親である私たちをヒヤヒヤさせないでくれるとありがたいわね」
生まれてすぐに魔力過多症であることがわかったとき、普通に産んであげられなくてあの子にもスチュワードにも申し訳なかった。
だけど、彼が「君も、娘も無事に生まれてきてくれただけで嬉しいのだから気に病むことはない。この子は私たちで大切に育てよう」と言ってくれたから本当に嬉しかった。
とはいえ、あそこまで娘を溺愛する親バカになってしまうとは思わなかったけれど。
「ふふっ」
「……なによ、リリー」
「だって、すごく嬉しそうなんだもの。どうせスチュワード様のことを考えてるんだろうなって」
「……」
「図星でしょう? 相変わらずラブラブねぇ。まあ、私たちも負けてないけど?」
「そうねぇ。媚薬のお裾分けは必要なかったわね」
「やだ、あれはあれで魔力の高まりが必要だからあると助かるわ。クリステアちゃんには感謝よ~。あーあ、クリステアちゃんがうちの子になってくれたらいいのに」
「それは……」
「ああ、いいの。それは諦めたから。聖獣様方に睨まれたらさすがに無理は通せないもの。陛下もとりあえずは諦めるしかないかって言ってるわ」
「そう……」
「でもね? うちのレイくんがクリステアちゃんを口説き落としたら話は別よね?」
「貴女、諦めてないじゃないの」
「だって、レイくんも満更じゃなさそうなんだもの。私たちが自由恋愛の末に結ばれた以上、息子に政略結婚を強いるわけにはいかないじゃないの」
「あのねぇ……」
クリステア本人は自覚がないが、レイモンド王太子殿下だけでなく、他家からも婚約の打診は日々舞い込んでいる。
なんなら、養子として迎えたスチュワードの妹の忘れ形見であるノーマンもクリステアを一人の女の子として幼い頃から想い続けている。
本人に今のところその気がないのをいいことに、娘バカのスチュワードがガードし続けているのだ。まったく。
クリステアにはそろそろ色恋の何たるかを教え込む必要があるかもしれないわ。
「そううまいこといけばいいけどな?」
「えっ?」
「きゃあ! レオン様⁉︎ もう! 今日はプライベートなお茶会なんですよ⁉︎」
結界を張ったはずの応接室なのだが、この王宮を護るレオン様には関係ないらしい。
私のおもたせであるクリステア作のアップルパイをヘレナから受け取り、行儀悪く手づかみで頬張っている。
「悪い悪い。さっきエリスフィード家の試食会から帰ってきたもんでな」
「え? 試食会⁉︎ なんですかそれ⁉︎」
リリーが聞き捨てならぬとばかりに問い詰める。
私もそれは初耳だ。今日はイディカがラースのように食用可能かどうかの検証ではなかったか。
「イディカだけどよ、調理法こそ異なるがラースのように食用可能だった。それどころか、イディカを使った料理の試作を嬢ちゃんがしたんだけどよ、美味いのなんの」
「「な、なんですってえぇ⁉︎」」
私とリリーの叫びが同時に上がった。
うそでしょ、聞いてないわよそんなこと……!
「お、そうそう。レイモンドとノーマンも試食会に同席したんだが、使者の連中を連れてくるのは明日になるそうだ」
「え⁉︎ レイくんも試食会に⁉︎ ずるい!」
リリーがレイモンド王太子殿下に嫉妬しているのを尻目に、私はスッと席を立つ。
「リリー、急用を思い出したわ。申し訳ないけれど、これで失礼するわね」
「え、ちょ、アン⁉︎ 私も行きたいー!」
駄々をこねるリリーを置いて、私は家路を急ぐのだった。
大丈夫よ、リリー。
きっと貴女たちの分はレオン様が持って帰ってきているでしょうから。
---------------------------
……というわけで、ママンと王妃様の女子会回でした。
ちょいと長めでしたが、前後編にわけるほどでもないので一気にいっちゃいました。
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