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プチ試食会
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寮に戻ってからすぐに調理場に向かい、夕食の準備を始めてからしばらくするとマリエルちゃんたちが授業を終えて帰ってきた。
「クリステアさん! ただいま帰りました!」
「あらマリエルさんにセイ、おかえりなさい」
鍋の火を止め、マリエルちゃんとセイを出迎えた。
「クリステアさん、さっきの呼び出しは大丈夫だったんですか⁉︎」
「え? ええまあ……特に問題はなかったと思うわ」
私の失言のせいなのに、マリエルちゃんは自分が原因で呼び出されたのだと気に病んでいるようだったので、食堂に移動してざっくりと先程のやりとりを説明した。
「ううう……すみません。私が媚薬だ何だと騒いだから……」
「マリエルさんのせいじゃないってば。それをいうならチョコだの媚薬だの話題を出したのは私なんだから大元の原因は私だわ」
「でもぉ……」
「……媚薬? なぜそんなものがありますの?」
「嬢ちゃんには早くね?」
「こら、お前たちが口を挟むんじゃない!」
朱雀様と白虎様がセイの帰宅を感じ取ったのか食堂にやってくるなり飛び込んできた媚薬というワードに反応した。
私たちと同じテーブルに着き無言を貫いていたセイが慌てたように二人を咎めた。
白虎様、私に媚薬が不要なのはその通りだけど、暗に「お子ちゃまなのに」って言ってますよね? いや事実だけど!
「いえ、媚薬として使われていた素材なのですけど……」
私はマーレン師たちに説明した内容を皆にも教えた。
「ほー、なるほどな。確かにお前ら人間が魔力を取り込むのは食いもんからが一番手っ取り早いし、食いもんの中には魔力をたっぷり蓄えてるのや増幅させるもんがあるのは間違いないからな」
白虎様たちからしてみればわかりきっていることのようで、朱雀様も白虎様の言葉に頷いていた。
「私たち聖獣は内包する魔力量が膨大ですし、ありとあらゆるものから魔力を取り込むことは容易ですから気にしたことありませんけれど、魔獣によってはそういった効果のあるものやそれを好んで食べ魔力を増幅させた生き物を狩って魔力を奪うんですのよ。その生き物の中には人間も含まれますけれど」
朱雀様、さらっと怖いこと言うのやめてもらえませんかね⁉︎
確かに、過去に魔獣として私の前に現れた輝夜は私の魔力に惹かれてやってきたから身をもって知ってますけども!
「しっかし、魔力を増幅させる実が媚薬ねぇ……俺らにとっちゃ多少魔力が増えたとところで誤差の範囲だしな」
「そうですわねぇ」
白虎様たちの会話に黒銀や真白もうんうんと頷いている。
貴方たちと比べられてもね……何の参考にもならんのですよ。
「で、これが件の媚薬か」
白虎様たちが媚薬がチョコレートというお菓子になると聞いて興味津々だったので、わずかに確保しておいたチョコを一人ひとかけらずつ出してあげた。
「ふおお……チョコ……ちょこれいと様だぁ……!」
「マ、マリエル嬢は大丈夫なのか……? まさか、まだ食べてもいないのに効果が⁉︎」
前世ぶりのチョコがのった小皿を捧げ持つようにして目を輝かせた興奮気味のマリエルちゃんを見てやや引いた様子のセイに苦笑しながら、まずは小さなかけらを口にして様子を見るようにアドバイスした。
「いただきまぁす! ……? これ、チョコといえばチョコですけど、あの……」
「あんまり美味しいものではないわよね?」
前世のチョコと比べるのがおこがましいほどの出来なので、マリエルちゃんが戸惑うのも無理はない。
なんか、ざらっとしてるもんね。
「いや、苦味と甘さのバランスが面白くて美味いと思うが……」
セイは気に入ったみたいだけど、警戒して渡したかけらをさらに小さく割って食べていたので、その残りを食べていいものか判断に迷っているようだ。
料理人見習いがのぼせて鼻血を出してふらふらになったくだりを聞いていたから、自分がその醜態を晒さないか心配みたい。
「とりあえず、今食べてみた感じはどうかしら? 身体が熱くなったり、魔力が急激に増えていく感覚とかはある?」
「いや、今のところ特には。……少しだけ、ぽかぽかとするような気はしなくもないが」
セイも私同様魔力が多いみたいだから、特に大きな変化はないみたいね。
「それならもう少し食べても大丈夫とは思うけれど、気になるから残りはあげるから部屋で食べるといいわよ」
「そうさせてもらおう」
「え、美味いのに。食べないんなら俺に……」
「お前の分は食べただろうが!」
「痛ってぇ⁉︎」
白虎様がセイのチョコを取ろうと伸ばした手にセイの鉄扇が久々にズバン!とヒットした。
「まったく、白虎は意地汚いったらないですわね。ああ、クリステア様、これ美味しいですわよ。ただ、熱で溶けやすいのが難点ですわね……また手に入ったらお裾分けしていただけますかしら?」
「へ? あ、ひゃい、いや、はいよろこんで!」
朱雀様が指先で溶けたチョコを舐めながら妖艶に私を見つめるのでドギマギしながら返事をしてしまった。
指先を舐めるとか行儀悪いのに、朱雀様がやると官能的で絵になるのよね……
近くで見ていたマリエルちゃんが「ひえぇ……えっっっっ!」とか小声で言いながら真っ赤になってたもの。
え、朱雀様。媚薬は効いてないんですよね?
……って、よくよく考えたら、プリン食べたときの方がヤバかったわ……プリン媚薬説とか? ……ないわー。
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「クリステアさん! ただいま帰りました!」
「あらマリエルさんにセイ、おかえりなさい」
鍋の火を止め、マリエルちゃんとセイを出迎えた。
「クリステアさん、さっきの呼び出しは大丈夫だったんですか⁉︎」
「え? ええまあ……特に問題はなかったと思うわ」
私の失言のせいなのに、マリエルちゃんは自分が原因で呼び出されたのだと気に病んでいるようだったので、食堂に移動してざっくりと先程のやりとりを説明した。
「ううう……すみません。私が媚薬だ何だと騒いだから……」
「マリエルさんのせいじゃないってば。それをいうならチョコだの媚薬だの話題を出したのは私なんだから大元の原因は私だわ」
「でもぉ……」
「……媚薬? なぜそんなものがありますの?」
「嬢ちゃんには早くね?」
「こら、お前たちが口を挟むんじゃない!」
朱雀様と白虎様がセイの帰宅を感じ取ったのか食堂にやってくるなり飛び込んできた媚薬というワードに反応した。
私たちと同じテーブルに着き無言を貫いていたセイが慌てたように二人を咎めた。
白虎様、私に媚薬が不要なのはその通りだけど、暗に「お子ちゃまなのに」って言ってますよね? いや事実だけど!
「いえ、媚薬として使われていた素材なのですけど……」
私はマーレン師たちに説明した内容を皆にも教えた。
「ほー、なるほどな。確かにお前ら人間が魔力を取り込むのは食いもんからが一番手っ取り早いし、食いもんの中には魔力をたっぷり蓄えてるのや増幅させるもんがあるのは間違いないからな」
白虎様たちからしてみればわかりきっていることのようで、朱雀様も白虎様の言葉に頷いていた。
「私たち聖獣は内包する魔力量が膨大ですし、ありとあらゆるものから魔力を取り込むことは容易ですから気にしたことありませんけれど、魔獣によってはそういった効果のあるものやそれを好んで食べ魔力を増幅させた生き物を狩って魔力を奪うんですのよ。その生き物の中には人間も含まれますけれど」
朱雀様、さらっと怖いこと言うのやめてもらえませんかね⁉︎
確かに、過去に魔獣として私の前に現れた輝夜は私の魔力に惹かれてやってきたから身をもって知ってますけども!
「しっかし、魔力を増幅させる実が媚薬ねぇ……俺らにとっちゃ多少魔力が増えたとところで誤差の範囲だしな」
「そうですわねぇ」
白虎様たちの会話に黒銀や真白もうんうんと頷いている。
貴方たちと比べられてもね……何の参考にもならんのですよ。
「で、これが件の媚薬か」
白虎様たちが媚薬がチョコレートというお菓子になると聞いて興味津々だったので、わずかに確保しておいたチョコを一人ひとかけらずつ出してあげた。
「ふおお……チョコ……ちょこれいと様だぁ……!」
「マ、マリエル嬢は大丈夫なのか……? まさか、まだ食べてもいないのに効果が⁉︎」
前世ぶりのチョコがのった小皿を捧げ持つようにして目を輝かせた興奮気味のマリエルちゃんを見てやや引いた様子のセイに苦笑しながら、まずは小さなかけらを口にして様子を見るようにアドバイスした。
「いただきまぁす! ……? これ、チョコといえばチョコですけど、あの……」
「あんまり美味しいものではないわよね?」
前世のチョコと比べるのがおこがましいほどの出来なので、マリエルちゃんが戸惑うのも無理はない。
なんか、ざらっとしてるもんね。
「いや、苦味と甘さのバランスが面白くて美味いと思うが……」
セイは気に入ったみたいだけど、警戒して渡したかけらをさらに小さく割って食べていたので、その残りを食べていいものか判断に迷っているようだ。
料理人見習いがのぼせて鼻血を出してふらふらになったくだりを聞いていたから、自分がその醜態を晒さないか心配みたい。
「とりあえず、今食べてみた感じはどうかしら? 身体が熱くなったり、魔力が急激に増えていく感覚とかはある?」
「いや、今のところ特には。……少しだけ、ぽかぽかとするような気はしなくもないが」
セイも私同様魔力が多いみたいだから、特に大きな変化はないみたいね。
「それならもう少し食べても大丈夫とは思うけれど、気になるから残りはあげるから部屋で食べるといいわよ」
「そうさせてもらおう」
「え、美味いのに。食べないんなら俺に……」
「お前の分は食べただろうが!」
「痛ってぇ⁉︎」
白虎様がセイのチョコを取ろうと伸ばした手にセイの鉄扇が久々にズバン!とヒットした。
「まったく、白虎は意地汚いったらないですわね。ああ、クリステア様、これ美味しいですわよ。ただ、熱で溶けやすいのが難点ですわね……また手に入ったらお裾分けしていただけますかしら?」
「へ? あ、ひゃい、いや、はいよろこんで!」
朱雀様が指先で溶けたチョコを舐めながら妖艶に私を見つめるのでドギマギしながら返事をしてしまった。
指先を舐めるとか行儀悪いのに、朱雀様がやると官能的で絵になるのよね……
近くで見ていたマリエルちゃんが「ひえぇ……えっっっっ!」とか小声で言いながら真っ赤になってたもの。
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