落ちこぼれ仮聖女ですが、王国随一の魔道士に溺愛されました

六花心碧

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続編

6、本物の聖女

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 “予兆”が現れてからというもの、エメラルド塔内はさらに忙しく賑やかになっていた。

 新しい聖女がやってくる、というニュースは瞬く間に広まり準備に余念がない。


 こんなに短期間に異世界から聖女が二人も召喚されるという事実は、古い歴史の中でも前例がないらしく、エメラルド塔は衝撃に包まれているようだった。

 まあ、私は正確には仮聖女なのでなんとも言えないのだけど……。



 そんな中、準備は進み、いよいよ今日のお昼頃、召喚の儀はナジェを筆頭に行われることになった。

 召喚の儀は、必ず太陽の南中時に行うことがこの世界の鉄則らしい。


 私も特別に許可を得て、召喚の儀式を見学させてもらえることになった。

 初めてその場所に足を踏み入れる。


 すごい……!

 神々しいという言葉がぴったりのその場所は、とても神聖な空気に満ち溢れていた。


 もうすでに、魔道士たちが準備を終えて描いた魔法陣の周囲を取り囲んでいる。
 辺りには強い魔力が満ちているのが、私にも手に取るように分かった。


 洗礼室で、聖水によって身を清める儀式を終えてから来たナジェは、まだ髪が少し濡れている。
 儀式用の繊細なローブに身を包んだ彼は、思わず見惚れてしまうほど美しかった。

 水も滴る良い男ってこういうことを言うんだ……。


 って!やだ、そんなこと考えている場合じゃない。

 こんなに大切な儀式の最中、不謹慎なことを思っている自分をちょっと恥じて一人赤面する。


 そんな私を尻目に儀式はどんどん進んでいく。
 辺りに満ちた魔力はさらに強く濃くなって、とうとう部屋中が大きな光に包まれた。


 魔道士たちの微かなどよめきが聞こえて、思わず閉じていた目をそーっと開けると、魔法陣の中心に人が座り込んでいるのが見えた。

 そこに居たのは、黒髪のショートボブにウェーブがかかったふわふわヘアをした、パッチリ目の二十歳そこそこであろう可愛い女の子だった。


 周囲を取り囲んでいる私たちを見た瞬間、とても不安そうな顔をする。
 そりゃそうだよね。私もここに来た時は何が起こっているのかまるで分からなかったもの……。


 ナジェが素早く魔法陣の中心に座るその女の子の前に跪き、説明を始めようとした。

 次の瞬間だった。
 彼女は泣き出しそうな顔をして、ナジェにぎゅっと抱きついたのだ。


 ?!?!?!
 か、可愛い女の子が、ナジェに抱きついてる……!


 その場にいたみんなが、まるで魔法を掛けられたかのように凍りつく。

 想定外すぎる出来事に、ナジェはその美しい顔から表情を消して硬直している。
 周囲にいた魔道士たちもぽかんと口を開けて放心状態だ。

 私も頭が真っ白になって、何が起きているのかよく分からず、呆然とみんなの様子を見つめる。


 そんな中、いち早く動いたのはレニだった。

「だ、大丈夫ですか? どうぞこちらへ」

 優しい言葉とは裏腹に、力強くその女の子をナジェからべりっと剥がすように引き離した。


 潤んだ瞳でナジェとレニを見つめる彼女のその様子は、とても儚げで守ってあげたくなるような雰囲気だ。


 なんだか心がざわつく午後だった。
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