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本編
33、愛する人
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イタタタ……。
気づけば私は尻餅をついて床に伏せっていた。
私を覆っていた黒い霧はいつの間にか跡形もなくなっている。
何が起きたの?!
辺りを見渡しても異変はない。
「レイラ……!」
心配そうな顔でメアリー様がこちらへ駆け寄ってこようとしたが、見えない壁に弾かれるようにしてバチっと火花が散り、後ろに倒れそうになった。
「きゃっ!」
小さく叫ぶメアリー様をエドワード殿下が抱き止めて周囲を警戒しながら厳しい声で叫ぶ。
「皆、状況を把握するまで下手に動くな!」
その声にロジャーは騎士団員とともに近くにいた国王陛下を背に庇い、エリック様も厳しい顔で様子を窺っている。
もしかして、今のって全部魔術……?
私は内心動揺しつつも、そう確信した。
その瞬間、私の前に黒髪をなびかせたエリザがスーッと現れた。
「!!」
私を見下ろすその顔は憎しみに溢れている。
「あんたがロジャー様の想い人だったなんてね」
う、なんかすごい怒ってる。
「せっかくあの女に協力してやってあんたを神殿に閉じ込めたと思ったのにこんなヘマして、なんて役立たずな女なのかしら」
やっぱり、聖女だと間違われたあの時、見えた人影はエリザだったんだ。
「神官さんたちへ私に聖力があるかのように見せたのはあなたの仕業だったのね」
エリザはニヤリと笑いながら答えた。
「そのまま一生神殿にいればよかったのに」
「私は聖女なんかじゃない」
ゆっくりと立ち上がり、エリザを見据えて言った。
「どっちでもいいわよ。せっかく安全な場所にいたのに出てきてしまうなんておバカさんね」
「……?」
「もういいわ。そんなに死にたいのならあんたの望み通りにしてあげる」
「……!!」
その場の全員に緊張感が走る。
な、何言ってるのこの人?!
「そうね、さっきの人たちも反逆罪で捕まっていったことだし、あんたも一緒に反逆者となっちゃいなさい」
はいぃぃ?!
エリザはロジャーをチラッと見てから言う。
「国王陛下を背にした王国騎士団長に襲い掛かれば立派な反逆者よ。私ね、能力移植の魔法が得意なの。あんたに騎士の能力を移植してあげる」
「なにを言って……」
私が言いかけると、エリザはその美しい顔を歪ませて叫んだ。
「あんたと愛し合ってるロジャー様なんかいらない!!!」
悲痛な顔でそう叫ぶエリザを見て、私は一瞬彼女の想いの激しさを見てしまった気がした。
この子、本当にロジャーが好きでたまらなくて、寂しいんだ。
「だから私が直々に呪いをかけてあげる!!! 騎士となって愛する者とお互いに死するまで討ち合うといいわ」
えっ?エリザの呪い??
なんだか小説のフレーズっぽい言葉の数々が出てきて、私は一瞬にして記憶を辿った。
あれ!原作小説の流れなんてもう完全にどこかへ行ってしまったと思ってたんだけど!
まさかまだ有効だったの?!これが小説の強制力ってやつ?!
「さあ、愛する人を襲いなさい」
エリザはニヤリと笑って私に手をかざし始めた。
ちょ、ちょっと!!あなたの愛情歪みすぎよ、それ!
ロジャーのことが好きなのに、何でそんなことができるの?!
慌てる私をエリザの視線から遮るように、目の前に大きな人影が現れた。
「エリック様……」
見上げると、エリック様は真剣な面持ちで私を背に庇い、エリザに向き合っている。
エリザは眉をピクっと動かして言った。
「ふうん。貴方この女に惚れているのね」
エリック様は無言でエリザを見据えているが、それは肯定したも同然だった。
「ふんっ、面白いじゃない。それなら貴方に呪いをかけてあげる」
エリザは体勢を整え、魔力を満たし始めた。
な、なんでこうなるの?!
ああ、エリック様を呪いから守ってバッドエンドを阻止したいと思って頑張ってたつもりなのに……――。
結局それを止めることができないの……?!
そもそも、私が原因でこんな結果になるなんて……
わーん、私の役立たず!!
そんな心の叫びも虚しく、エリザがエリック様に向かって魔法を解き放ったのが見えた。
「この女の愛する者を襲って、この女を地獄の悲しみに突き落とすといいわ! おほほほ!」
エリック様がエリザから放たれた強い光に包まれる。
…………ん?
私の愛する者を襲うって……――――
「さあ、早くロジャー様を襲いなさいよ!」
エリザは焚き付けるようにエリック様に叫んだ。
みんな一様に目が点になっている。
わ、私が愛する人って――――
突如メアリー様の、のほほんとした声が響く。
「レイラが愛している人ってエリック様だけど、この場合ってどうなるの?」
そう言いながらメアリー様はあどけない顔で殿下に問いかけている。
「まあ、術者のかけた対象が色々間違ってる時点で無効だろうな……」
殿下は苦笑いしながら答える。
謎の静けさに包まれた後、重大な間違いに気づいたらしきエリザが青ざめた顔でわなわなと震えていた。
気づけば私は尻餅をついて床に伏せっていた。
私を覆っていた黒い霧はいつの間にか跡形もなくなっている。
何が起きたの?!
辺りを見渡しても異変はない。
「レイラ……!」
心配そうな顔でメアリー様がこちらへ駆け寄ってこようとしたが、見えない壁に弾かれるようにしてバチっと火花が散り、後ろに倒れそうになった。
「きゃっ!」
小さく叫ぶメアリー様をエドワード殿下が抱き止めて周囲を警戒しながら厳しい声で叫ぶ。
「皆、状況を把握するまで下手に動くな!」
その声にロジャーは騎士団員とともに近くにいた国王陛下を背に庇い、エリック様も厳しい顔で様子を窺っている。
もしかして、今のって全部魔術……?
私は内心動揺しつつも、そう確信した。
その瞬間、私の前に黒髪をなびかせたエリザがスーッと現れた。
「!!」
私を見下ろすその顔は憎しみに溢れている。
「あんたがロジャー様の想い人だったなんてね」
う、なんかすごい怒ってる。
「せっかくあの女に協力してやってあんたを神殿に閉じ込めたと思ったのにこんなヘマして、なんて役立たずな女なのかしら」
やっぱり、聖女だと間違われたあの時、見えた人影はエリザだったんだ。
「神官さんたちへ私に聖力があるかのように見せたのはあなたの仕業だったのね」
エリザはニヤリと笑いながら答えた。
「そのまま一生神殿にいればよかったのに」
「私は聖女なんかじゃない」
ゆっくりと立ち上がり、エリザを見据えて言った。
「どっちでもいいわよ。せっかく安全な場所にいたのに出てきてしまうなんておバカさんね」
「……?」
「もういいわ。そんなに死にたいのならあんたの望み通りにしてあげる」
「……!!」
その場の全員に緊張感が走る。
な、何言ってるのこの人?!
「そうね、さっきの人たちも反逆罪で捕まっていったことだし、あんたも一緒に反逆者となっちゃいなさい」
はいぃぃ?!
エリザはロジャーをチラッと見てから言う。
「国王陛下を背にした王国騎士団長に襲い掛かれば立派な反逆者よ。私ね、能力移植の魔法が得意なの。あんたに騎士の能力を移植してあげる」
「なにを言って……」
私が言いかけると、エリザはその美しい顔を歪ませて叫んだ。
「あんたと愛し合ってるロジャー様なんかいらない!!!」
悲痛な顔でそう叫ぶエリザを見て、私は一瞬彼女の想いの激しさを見てしまった気がした。
この子、本当にロジャーが好きでたまらなくて、寂しいんだ。
「だから私が直々に呪いをかけてあげる!!! 騎士となって愛する者とお互いに死するまで討ち合うといいわ」
えっ?エリザの呪い??
なんだか小説のフレーズっぽい言葉の数々が出てきて、私は一瞬にして記憶を辿った。
あれ!原作小説の流れなんてもう完全にどこかへ行ってしまったと思ってたんだけど!
まさかまだ有効だったの?!これが小説の強制力ってやつ?!
「さあ、愛する人を襲いなさい」
エリザはニヤリと笑って私に手をかざし始めた。
ちょ、ちょっと!!あなたの愛情歪みすぎよ、それ!
ロジャーのことが好きなのに、何でそんなことができるの?!
慌てる私をエリザの視線から遮るように、目の前に大きな人影が現れた。
「エリック様……」
見上げると、エリック様は真剣な面持ちで私を背に庇い、エリザに向き合っている。
エリザは眉をピクっと動かして言った。
「ふうん。貴方この女に惚れているのね」
エリック様は無言でエリザを見据えているが、それは肯定したも同然だった。
「ふんっ、面白いじゃない。それなら貴方に呪いをかけてあげる」
エリザは体勢を整え、魔力を満たし始めた。
な、なんでこうなるの?!
ああ、エリック様を呪いから守ってバッドエンドを阻止したいと思って頑張ってたつもりなのに……――。
結局それを止めることができないの……?!
そもそも、私が原因でこんな結果になるなんて……
わーん、私の役立たず!!
そんな心の叫びも虚しく、エリザがエリック様に向かって魔法を解き放ったのが見えた。
「この女の愛する者を襲って、この女を地獄の悲しみに突き落とすといいわ! おほほほ!」
エリック様がエリザから放たれた強い光に包まれる。
…………ん?
私の愛する者を襲うって……――――
「さあ、早くロジャー様を襲いなさいよ!」
エリザは焚き付けるようにエリック様に叫んだ。
みんな一様に目が点になっている。
わ、私が愛する人って――――
突如メアリー様の、のほほんとした声が響く。
「レイラが愛している人ってエリック様だけど、この場合ってどうなるの?」
そう言いながらメアリー様はあどけない顔で殿下に問いかけている。
「まあ、術者のかけた対象が色々間違ってる時点で無効だろうな……」
殿下は苦笑いしながら答える。
謎の静けさに包まれた後、重大な間違いに気づいたらしきエリザが青ざめた顔でわなわなと震えていた。
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